き坊の近況 (2018年6月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 06 05 04 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

6/2-2018
仏高速炉 計画規模を大幅縮小 日本も参加(毎日新聞)

日本が研究開発に参加するフランスの高速炉・アストリッド計画について、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)の担当者が1日、日本の高速炉開発を検討する経済産業省の会合に出席し、仏の計画規模を大幅縮小する方針を明らかにした。出力を当初予定の60万キロワットから10~20万キロワットに縮小するとし、高速炉の実用化も「緊急性はない」と指摘した。

日本は2016年に廃炉を決めた高速増殖原型炉「もんじゅ」(出力28万キロワット)の代わりに、原型炉の次段階の実証炉・アストリッドを当面の高速炉開発の柱に据えた。しかし出力が「もんじゅ」を下回るなら、多額の負担に見合った成果とならない可能性があり、日本の高速炉開発も見直しが迫られそうだ。

CEAの担当者は会合で縮小方針について、「コンピューター解析も活用し、従来より低コストで必要なデータが得られる」と主張。日本側からは「もんじゅより小規模で実証炉と言えるか」と疑問も出されたが、仏側は124万キロワットの実証炉を運用した実績を挙げ「経験を生かせば10万~20万キロワットで十分だ」と強調した。

アストリッドを巡って日仏は、基本設計を終える19年までの共同研究で合意。24年に建設を最終判断するとしており、仏は数千億円に上る費用の折半を日本に要求している。日本は費用対効果を見極め、年内に20年以降も仏に協力するか判断し、今後の高速炉開発の工程表を作る。

日本はもんじゅ廃炉を決定後、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を維持するため、アストリッド計画への参加を軸に高速炉開発を続ける構想を掲げた。(毎日新聞6/1)

フランスの「アストリッド計画」は、必ずしも実体を伴ったものではなく、むしろ、ある面で“紙の上の計画”という性格を持ったものである。今回発表された計画縮小は、実体部分は大幅に縮小し残りはコンピュータ・シミュレーションで補うという発想なのである。潤沢な予算を使えないフランスの研究機関らしいやり方だ。

それに対して日本は、「もんじゅ」を廃炉にしたが「核燃料サイクル」は国策であると言ってけして手放さないという経産官僚と原子力ムラの思惑によって、実体としての「実証炉」を是が非でも造りたいのである。正確に言えば、実証炉建設に向かって計画を進めているという形をとりたいのである。

廃炉となった「もんじゅ」に使った総費用は、1兆数千億円という。ほとんど何の利益も生み出していない。これからもんじゅの廃炉にどれだけの年数と費用がかかるか、見当も付かない。青森県六ヶ所村の再処理工場もまともに動いていない(こちらは20兆とも30兆ともいう)。
大赤字を抱えているのに、なぜ、電力会社は「核燃料サイクルから撤退するといわないのか」、それは、電源三法によって必要な費用を電気料金に上乗せすれば良いからである。国民は、不平を言わず毎月の電気料金でせっせと貢いでくれる。赤字が出ても、痛くもかゆくもないのだ。むしろ、予算規模が拡大し金が回転するので美味い汁を存分に吸えるのである。

この腐りきった「核燃サイクル」を巡る日本の電力業界の状況を、根本から一新することが急務である。これは、糞詰まり状態にある日本の原発の「使用済み核燃料」問題でもある。


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6/5-2018
沖縄で核のごみ処分? NUMO説明に疑問相次ぐ(沖縄タイムス)

原子力発電環境整備機構(NUMO)と経産省資源エネルギー庁は2日、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分について「科学的特性マップに関する対話型全国説明会」を那覇市内で開いた。

同事業は昨年、NUMOが広報を委託した業者が謝礼付きで参加者を動員していた問題が発覚。説明会を中断していたが、運営をNUMO直営に切り替えて5月から再開した。県内では初開催で、新聞広告やホームページを見た12人が参加した。

政府は放射性廃棄物の最終処分地について、受け入れ自治体を選定していく方針で、地層処分ができる可能性がある地域を示した地図「科学的特性マップ」を昨年公開。活断層や地下資源など地理的条件を踏まえて適正地域を色分けしたもので、沖縄は大部分が「輸送面でも好ましい」とされている。

説明会では、主催者らが地層処分の方法や科学的マップについて説明。質疑では参加者から「科学的マップに人口密度などの社会的要因が考慮されていない。作成した意味があるのか」「発見されていない活断層の危険性をどう回避するのか」などが出た。「数万年埋めっぱなしになれば、人間の意志伝達法も変わる。危険が将来の人に伝わるとは限らない」などと懸念する声も上がった。(沖縄タイムス6/3)

「科学的特性マップ」をNUMOが発表したのが、昨年7月28日(本欄 7月29日-2017)。発表された地図は、“よくまあ、これに「科学的」とか「特性」とか名付けたなあ”と言わざるを得ないような、大雑把なものだった。NUMOの“本気度”を疑うようなものだった。
話の種になるようなごく大雑把な「マップ」を発表して、それをもとに説明会を開いているという事実さえできれば,それで良いということなのだろう。なお、彼らの潤沢な資金の出所は、最終的には国民の電気料金の上乗せ分である。

NUMOはかなり精力的に全国説明会を消化しつつあるようで、これまでの開催地や今後の予定などはここにある。

わたしのこの問題に対する態度は、ともかく原子力ムラは、原発を止めることを決めたあとで核ゴミの処分の相談を国民に持ちかけるのが順序だろう、というものだ。


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6/6-2018
中間貯蔵施設「地元理解が大前提」 むつ市長、エネ庁長官に訴え(産経新聞)

青森県むつ市の宮下宗一郎市長は5日、経済産業省資源エネルギー庁の日下部聡長官を訪れ、使用済み核燃料の中間貯蔵をめぐって会談した。関西電力がむつ市の中間貯蔵施設の運営会社に出資する方向で最終調整していると前週末に一部で報じられており、宮下市長は「地元への相談や理解が大前提だ」と訴えた。

運営会社には東京電力ホールディングスと日本原子力発電が共同出資。両社の使用済み核燃料を再処理するまで一時保管する。一部報道では、関電の出資は福井県の3原発の使用済み核燃料を搬入し一時保管する目的とされたが、関電側は報道内容を否定している。

宮下市長は「事業者の意向のみで地域に断りのない中で進めるべきではない」と発言。日下部長官は「核燃料サイクル政策に関する事業展開では、事業者に対して地元との関係で丁寧に物事を進めるという指導を改めて徹底する」と答えた。(産経新聞 6/6)

原発の過密県である福井県は、“原子力発電による電力製造には協力するが、使用済み核燃料はかならず県外に搬出すること”という固い方針をつねづね主張している。使用済み核燃料でプールが一杯になりつつある関電は、「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」(東電が8割、日本原子力発電が2割出資)がむつ市に造った使用済み核燃料の「乾式貯蔵施設」に相乗りしようと動き始めている。

本欄5月20日の北海道新聞の優れた記事「 「核燃半島化」進む青森・下北」が取りあげていたことである。その記事の一部を再掲する。
東電と原電の「トランクルーム」を関西電力が使う構想も浮上している。関電は新たな規制基準の下で16年以降、福井県で高浜原発3、4号機、大飯原発3号機を再稼働させたのに続き、今月9日に同4号機を再稼働させた。県は関電に対し、使用済み燃料を早く県外に搬出するよう求めており、関電は今年中に搬出先を決めるとしている。
最有力候補がRFSの施設とみられるが、1月に報道されると地元は猛反発しRFSも関電分の受け入れ計画を否定した。関電が持ち込むには青森県、むつ市と新たに協定を結ぶ必要があり、先行きは不透明だ。
(北海道新聞5/20)
「関電は、まず、むつ市側へ相談すべきだろう」と市長さんが大いにごねて見せたのである。


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「ゴキブリ」の漢字表記は「御器被り」が正しいらしい。「御器」は食器のことで、“食器の影にいる虫”ぐらいの表現であるが、明治時代の「生物学用語集」に誤植があり、「ゴキカブリ」が「ゴキブリ」となったのだという(ウィキペディア)。


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6/7-2018
<震災関連自殺>福島100人超 避難長期化が影響(河北新報)

福島県内の東日本大震災関連の自殺者が100人を超えて101人となったことが、警察庁のまとめで分かった。今年に入ってから4月に2人増えた。福島だけで全国の計214人の半数近くを占め、岩手、宮城を含む被災3県では計204人に上る。

警察庁が集計を始めた2011年6月以降の被災3県で確認された自殺者の累計の推移はグラフの通り。年別で福島は13年の23人が最も多く、その後もやや減った程度で昨年は12人だった。

岩手は4月に1人増えて計49人で、年別は11年の17人が最多。宮城は3月に1人の自殺が確認されて計54人となり、年別は11年の22人が最も多い。

福島県によると、東京電力福島第1原発事故の影響で4万人以上の県民が今も避難生活を続け、精神面を含めた支援が課題となっている。福島大が昨年、原発事故で大きな被害を受けた双葉郡の住民を対象にした実態調査で、半数以上がうつ病に近い傾向を示した。
調査を主導した丹波史紀立命館大准教授(社会福祉論)は、自殺者が絶えない状況について「避難指示解除の時期や帰還のめどなど自分で判断できる材料が少なく、生活再建の見通しが立てづらい」と指摘。「長期化する避難生活の中で心身を病んでしまう傾向がある」とみる。(図も 河北新報6/6)


ふるさとから切り離され、国の方針に振り回され、自分の内発的な気持ちで生きていくことができない状況に長期間置かれていること。それが「心身を病む」原因となる。

宮城県・岩手県と比較すると、福島県は当初はむしろ自殺者が少なかった。2013年以降自殺者数が多くなり宮城・岩手との差が開くばかりだ。この違いは、フクイチ原発事故にある事は明らかだ。

原発事故の被害は、身体的な被害の外に土地そのものが使えなくなってしまうことがある。土地の消滅と言っても大げさではない。放射性セシウムの半減期30年は個々の人生にとっては、長すぎる。仮に60年待ったとしても放射線量が4分の1になるに過ぎない。

自殺者推移のグラフは原発事故から避難できたとしても、すこしも救われていないことをはっきり示している。避難態勢を考えたり避難訓練をするのは必要だとしても次善の策だ。なによりも、原発をなくすことが大切だ。


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6/8-2018
関電“青森進出”に波紋 中間貯蔵検討にむつ市長「関知しないところで変貌している」と不信感(産経新聞)

原子力関連施設が集中する青森県で、関西電力が事業に参画する構想が相次いで取り沙汰され、地元に波紋を広げている。今年1月、関電の原発から出た使用済み核燃料の一時保管先の候補地に同県むつ市の名が挙がり、市が強く反発。その後、同県東通(ひがしどおり)村で建設中の東通原発の共同事業化の協議に関電が加わるとの見方も浮上した。関電は今月、青森市に事務処理拠点を開設。さらに2件目の設置も発表するなど“青森進出”を強めるが、県やむつ市など地元側の受け止め方はさまざまだ。

関電は昨年11月、福井県にある大飯、高浜、美浜の3原発の使用済み核燃料の搬出先について、平成30年中に福井県外の候補地を示すと表明した。東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電が建設したむつ市の中間貯蔵施設も検討しているとみられる。

今年3月には、東電HDが建設中の東通原発の共同事業化に向けて、東電HD、日本原電、東北電力、中部電力、関電の大手電力5社と政府が協議会を設置するとの見方も浮上した。

関電は、むつ市への使用済み燃料搬入について「方針を固めた事実は一切ない」と否定。東通原発の共同事業化への参画についても、福島第1原発事故で経営が悪化した東電HDの原子力事業再編・統合に巻き込まれるならば「協力できない」(関電幹部)と消極姿勢をみせている。

一方で、青森市内に料金徴収業務や電気の使用・廃止の申し込み業務などを担う2つの事業所の開設を発表。関電は「(事業所と中間貯蔵施設は)関係がなく、核燃料サイクル事業の支援に対する貢献」としているが、地元では中間貯蔵施設の利用を念頭に「地ならしのための地域振興」(県関係者)と受け止める向きもある。

具体的な説明を避ける関電に対し、青森県側では憤りや困惑が広がっている。

むつ市の宮下宗一郎市長は今月4日の記者会見で、関電が使用済み燃料を搬入するとの報道について「われわれの関知しないところで事業の姿が変貌している」と不信感を表明。5日には資源エネルギー庁の日下部聡長官と面会し、国の認識を問いただした。
県は、関電の意向について「何も情報がないので動きようがない」(県エネルギー総合対策局)とし、表向きは静観の構えを見せる。

むつ市の商工関係者は、中間貯蔵や東通原発に関電の名が挙がるのは「電力会社の原子力事業を連携、再編させる流れの一環ではないか」と指摘。「地元住民の間では、関電がむつで事業をしてくれれば地域活性化につながるという歓迎の声も多くある。市長や一部住民が反発するのは、説明してもらえないから。筋を通してくれれば協力したい気持ちはある」と話した。(産経新聞 6/6)

6日に本欄が扱った産経新聞の記事の詳報が出ていた。むつ市の宮下市長の「反発」は、地元に“ネゴ”(ネゴシエーション、根回し)が無いのはけしからん、という地元エゴの裏返しの声であることをうまく伝えている(期せずして伝えている?)。
本欄 5月20日で扱った北海道新聞の、下北半島が「核燃料半島化」しつつあるというとらえ方が、まっとうな報道の姿勢であるというべきだろう。

日本の原発は使用済み核燃料の捨て場がないことが致命的になりつつあるが、原発業界はそのことをけして認めようとしない。何せ、「核燃サイクル」が存在している限り使用済み核燃料はゴミではなく資源であると言い張っておれるからである。使用済み核燃料を再生処理してプルトニウムなどの核燃料を取り出す、というのがわが国の「国策」であり、その限りで、使用済み核燃料は資源として保存・貯蔵しておくべきである、と。
核燃サイクルが実際に稼働しているかどうかは問題ではない、「もんじゅ」がなくなり、六ヶ所村の「再処理工場」は動かなくとも、「いずれ稼働します」と言い張っておれる限り、「使用済み核燃料は資源である」と主張しつづけるつもりなのだ。

「もんじゅ」の後継というフランスの「アストリッド計画」にしても、いつ稼働し始めるか分からない「再処理工場」(運転し始める前に、老朽化が心配されている!)にしても、「いずれ稼働する」と言い続けられればよいのであって、早く稼働しなければならないということではない。予算は今後何十兆円かかろうと国民の電気料金に乗せて徴収するまでのことである。
おそらく、こういう切迫感のない現場では、ミスが続発し見落としが決して無くならないだろう。むりに「再処理工場」が稼働すると大事故を起こす可能性があるので、今のようにダラダラといつまでも稼働しないのが良いのかもしらん。退廃の戦後70余年の日本。

「核燃サイクル」というフィクションの上に、わが国の原発業界は使用済み核燃料の山を築きあげている。今後数十万年の管理・保管を必要とする、子孫から徹底して恨まれることになる使用済み核燃料の山である。原発業界はもちろん「核燃料半島」の多数住民たちも、目の前の金に対する欲望でしか動いていない。


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6/10-2018
<除染土活用>環境省の実証事業 二本松市長「慎重に判断する」(河北新報)

東京電力福島第1原発事故で生じた除染土を二本松市の道路造成に再利用する環境省の実証事業について、三保恵一市長は8日の定例記者会見で、実施の可否を「慎重に判断する」と述べた。事業を巡っては、予定地周辺の稲を使う市内の生産組合の発酵飼料が畜産農家から購入拒否されたことが分かっている。

三保市長は購入拒否の事実を確認しているとした上で「除染土は全て(福島県大熊町、双葉町に整備中の)中間貯蔵施設に搬入するというのが国との約束だ」と強調。市内の仮置き場にある除染土の速やかな全量搬出を、環境省に求めていく考えを示した。

市は2016年11月、環境省から実証事業の適地の照会を受け、原セ才木(はらせさいき)地区を選んだ経緯がある。返り咲きで17年12月に就任した三保市長は「当時の判断なのでコメントは控える」と述べた。(河北新報6/9)

環境省の、狂ったとしか思えないこの「除染土利用の実証実験」については 本欄5月2日 に情報を集めておいた。

「実証実験の予定地」の周辺で収穫される家畜用飼料について、生産組合が取引先から購入を拒まれていることが、報じられた。「<除染土活用>はや風評 売れぬ飼料」(河北新報6/8)。これは「風評」の典型である。
事業予定地は同市原セ才木(はらせさいき)地区。飼料は市内の畜産農家5戸でつくる安達太良飼料生産受託組合が生産主体となり、一部を外部に販売している。原料の稲は周辺を含む稲作農家約35戸から購入している。
高野一弘組合長によると、昨年飼料を販売した県内の大規模畜産農家から5月上旬、「そういう餌は要らない」と連絡があった。理由について「除染土再利用事業の影響を不安視する顧客から問い合わせがあった」といった趣旨の説明を受けたという。
(下の写真も 河北新報6/8)

汚染土を再利用して造成が計画されている市道


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6/11-2018
米、プルトニウム削減を日本に要求 核不拡散で懸念 政府、上限制で理解求める(日本経済新聞)

米政府が、日本が保有するプルトニウムの削減を求めてきたことが9日分かった。プルトニウムは原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理で生じ、核兵器の原料にもなるため、米側は核不拡散の観点から懸念を示す。日本は保有量の増加を抑える上限制(キャップ制)を導入し理解を求める。プルトニウムを再利用する核燃料サイクルを進める日本の原子力政策に影響を与えそうだ。

プルトニウムの製造は核兵器への転用を防ぐため原則禁止だが、資源の乏しい日本は再処理して原発で再利用することを日米原子力協定で認められてきた。非核保有国で再処理を認められている国は日本だけだ。
日本は原発などで燃料として消費するはずだったが、2011年の福島第1原発事故以降、全ての原発が停止した。その後も再稼働が進まず、プルトニウムを燃料として再利用できていないため、たまり続けている。すでに原子爆弾約6千発に相当する約47トンに達し、国内外の原子力関連施設で保管する。

核兵器への転用リスクがあるプルトニウムを日本がためこむことは、中国などから「不要の疑念を呼ぶ」とかねて批判されてきた。米国は12日の米朝首脳会談で、北朝鮮に完全な非核化を迫る。国際社会は核不拡散へ断固とした姿勢をみせており、日本を特別扱いできないと判断した可能性もある
このため、米国家安全保障会議(NSC)などは日本政府にプルトニウムの適切な利用・管理を要求した。プルトニウム保有量に上限を設け、削減策を公表することや、日米原子力協定が自動延長されるのにあわせて日米共同文書を発表することなどだ。

米国の要請を受け、日本のプルトニウム管理を担う原子力委員会はプルトニウム保有量を減らし、現在の水準は超えないとの方針を6月中にも決める見通しだ。使用済み核燃料の再処理でプルトニウムを生み出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の操業も、先送りする可能性が高い。事実上の上限制で、国際原子力機関(IAEA)へ6月下旬にも報告する方向で調整している。

政府は大手電力会社でつくる電気事業連合会へ、プルトニウム保有量を減らすよう依頼した。再稼働が進む西日本の四国電力と九州電力の原発で、東京電力と中部電力の保有分を、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)として原発で燃やして消費するよう検討を求めた。

電力各社は国内の原発でMOXを消費してきたが、自社の原発で発生した分に限っており、他社の原発から生じたものは原則利用していなかった。このため他社から受け入れることには抵抗感が強く、立地自治体の反発も予想される。実現へのハードルは高い。

日本は原発を基幹電源と位置づけてエネルギー政策を推進するが、再稼働が思うように進まないにもかかわらず、たまり続けるプルトニウムの問題を放置していた。
再稼働が全国的に進まない現状だとプルトニウムの消費が進む可能性は乏しい。日米原子力協定の自動延長後は、6カ月前までにいずれかが通告すれば一方的に協定を終了できる。保有量が減らないまま米国が協定の見直しを迫れば、再処理が認められなくなり日本のエネルギー政策は岐路に立たされることになる。(日本経済新聞6/10)

2012年6月20日に改悪された「原子力基本法」第2条をここで確認しておこう。「安全保障に資する」というのは軍事用語である(ただし、この法案が参議院を通過した時、内閣法制局は「軍事利用目的と解釈されてはならない」と説明した)。
【改訂前】
第2条 原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

【改訂後】
第2条 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
原発を持ち、「核燃料サイクル」を名目として再処理工場を運転していれば、わが国はプルトニウムを所有し続けられる。いつでもそれを用いて原爆(プルトニウム爆弾)製造が可能である(原発用プルトニウムを品位を上げて原爆用にすることは、技術的に容易である)。
中曽根康弘らが日本に原発を導入した当初から「わが国の安全保障に資する」という魂胆はあったのだが、それを露骨に国民には述べてこなかった。12年6月は民主党政権時代だが、政府原案にはなかった「わが国の安全保障に資する」などを付け加えたのは自民党の塩崎恭久の提案だった。

六ヶ所村の再処理工場はミス続きでいまだ完成しないが、わが原発業界はヨーロッパへ使用済み核燃料を輸送し、すべての処理を依頼し(今はフランスで行っている)、出来上がったガラス固化体と残りの高濃度汚染物を初めとするすべての放射性汚染物を送り返すという、とんでもなく費用のかかることをやっている(フランスを初めヨーロッパ関係国は外貨を稼ぐ絶好のチャンス)。その費用はすべて電気料金に上乗せすれば良いので、原発業界は痛くもかゆくもない。
往復の船舶による高濃度放射性物質の輸送は、地球を一周するきわめて危険な航程であり、国際社会がこれを容認しているのは不思議である。安倍首相がODAなどの名目で世界中に金をばらまくのも効いているのだろう。しかし、万一ガラス固化体などを海底に沈めるような事故があったら、どうするのだ。悪天候だけでなく、この輸送船はテロ組織の標的になりかねない。

原子力基本法に「わが国の安全保障に資する」という一文を持つ点を米国から指摘されたら、日本はどう言い逃れるのだろう。あるいは、したたかな外交力を持つ中国や北朝鮮から指摘されることも、おおいにあり得る。
当分は再処理工場を稼働しないという情けない消極策を述べるしかないだろう。


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6/13-2018
新知事、原発出直し選に再び言及 新潟、「職賭すこともあり得る」(中日新聞)

10日投開票の新潟県知事選で初当選した花角英世知事は12日、県庁での就任記者会見で、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を巡り「職を賭すこともあり得る」と述べ、出直し知事選で判断を仰ぐ可能性に再び言及した。「(県民が)納得しないと運転しない」と語り、県民意思を重視する考えを明らかにした。

同時に県民意思の確認方法で「県議会、住民投票もあるかもしれない」とも話した。県独自の原発の安全性検証終了まで再稼働させないとし、検証期間は今後2~3年が有力との考えを改めて示した。

世耕弘成経済産業相との会談について「ぜひお話しする機会をいただきたい」とした。(中日新聞6/12)

6月10日の新潟県知事選で池田千賀子・野党候補が競り負けた。野党5党の支援が比較的うまく行っていたようであったので、この選挙戦の分析に関心を持っている。
得票数では花角:54万6670票、池田:50万9568票、安中聡:4万5628票と、いい線まで詰め寄っていたことは間違いない。野党5党が選挙協力を成功させれば充分に今後の選挙戦で、自民・公明に対して対等に戦えることがわかる。言い換えれば、野党が票のつぶし合いで政権側に勝ちを譲ってきたということだ。

もう一点、上の報道でも分かるが花角新知事は、原発再稼働について妥当な方針を打ち出しており、けして再稼働に前のめりな安倍政権のような方針ではなかった。つまり、池田候補が脱原発を主張したが、花角は原発稼働を争点にしなかった。再稼働の是非を問う「県民意思の確認」を行うと明言してきたことで、脱原発派をそうとうとりこむことに成功したのであろう。

田中龍作ジャーナル6/11」が、池田千賀子候補が惜敗した理由に、ネット戦術の遅れを挙げている。
一人暮らしの青・壮年層の最も多い新潟市中央区で花角候補は池田候補に1万票もの大差をつけた。池田陣営の支援者や運動員は異口同音に「なぜあんなに中央区で開けられた(大差をつけられた)んだ?」と繰り返した。
組織にもムラ社会にも属さず、ふわっとした個人の動向をうまく取り込んだのはネットではないだろうか? 安倍ちゃんが重宝する右寄りの某会員制大ネットメディア数社は、ユーザーの住所を把握している。新潟のネトウヨをもらさず つかんで いるのだ。
(田中龍作ジャーナル6/11)
わたしはSNSについては何も知らず、この田中の分析の当否は判定できないのだが、これも含めた選挙戦分析をウォッチしていくつもりだ。


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6/14-2018
原子力規制委 東海再処理施設の廃止計画 1兆円、70年工程承認(毎日新聞)


廃止措置計画が認可された茨城県東海村の東海再処理施設=日本原子力研究開発機構提供

原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す「東海再処理施設」(茨城県東海村)について、日本原子力研究開発機構の廃止措置計画を審査していた原子力規制委員会は13日、計画を認可した。だが、国費で賄う廃止費用は約1兆円かかるうえ、施設から出る廃棄物の処分先が決まらず、後継施設である日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)の完成のめども立たないなど、課題は山積している。

廃止作業は完了まで約70年かかる見通し。最初の約10年は施設内の放射能汚染調査や除染、安全対策工事を中心に実施し、施設に残る高レベル放射性廃液のガラス固化処理なども行う。その後約60年は放射性廃棄物を処理し、施設解体などを進めることにしている。

長期で複雑な作業のため、詳細な方法や工程はその都度決め、規制委の認可を得る。規制委は特別のチームを設けて作業を監視する。

施設は1977年から再処理を開始。原発の使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出し、再利用する国の核燃料サイクル政策の中核だ。しかし、東京電力福島第1原発事故後、新規制基準への対応に巨額の費用がかかるため、機構は2014年に廃止を決定し、昨年6月に廃止措置計画の認可申請をした。これまで1140トンの使用済み核燃料を再処理した。(写真も 毎日新聞6/14)

東海再処理施設は、「国策」をうたってきた「核燃料サイクル」の中心施設で、使用済み核燃料をバラバラに細断しプルトニウムやウランを抽出する巨大で複雑な化学工場である。極めて高濃度の放射性汚染水が発生し、それをガラス固化体にして保存する。
ガラス固化処理が終わっていない高濃度放射性汚染水の処理をし、工場の施設全体を解体処分する。それまでに70年かかるという見込みだが、恐らく延び延びになっていく。人口減少期を迎える日本の経済的衰退も考慮に入れる必要があり、先き行きは見通せない。22世紀へ積み残すことになるか。

なによりも、ガラス固化体や施設解体によって生まれる膨大な放射性廃棄物の処分場がない。

70年後と言えば、現在成人に達している日本人のほとんどは死んでしまっている。その子供や孫の時代であるが、このような放射性汚染施設の解体処理に情熱を持って取り組むような人材が、はたしてどれほど居るものなのだろうか。手を付けかねて近寄ることの禁じられる膨大な廃墟が残されることになるのだろうか。


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6/15-2018
東京電力 福島の全原発廃炉へ 社長「第2の4基も」(毎日新聞)

東京電力ホールディングス(HD)は14日、福島第2原発(福島県楢葉町、富岡町)1~4号機を廃炉にする方針を表明した。2011年3月の福島第1原発事故後、第2原発もすべて運転を停止している。既に全6基の廃炉が決まった第1原発に続き全4基が廃炉となれば、地元自治体が求めてきた県内の全原発廃炉が実現する。

東電HDの小早川智明社長が同日、福島県庁で内堀雅雄知事と面会し「福島第2原発を全号機、廃炉の方向で検討に入りたい」と述べた。東電が廃炉方針を明言したのは初めて。第1原発の廃炉作業の進捗(しんちょく)や風評対策への取り組みについて東電側が説明した後、内堀知事が「県民の強い思いだ」として、改めて県内の全原発の廃炉を求めたことに応じた。

内堀知事は面会後に記者会見し、「東日本大震災と第1原発事故以降、多くの県民が県内の原発全基を廃炉にしてほしいと訴えてきた。今日、明確な意思表示をされたことを重く受け止めている。重要なスタートだ」と評価。その上で「今後、どういうスケジュールがあるのか東電や国に確認しながら、まず正式な判断を求めたい」と注文した。  これを受け、世耕弘成経済産業相は14日、国会内で記者団に「経営トップの責任において地元の声や福島の現状を自ら受け止めて判断し、方向性を示したことは高く評価したい」と述べた。15日、小早川社長を呼び、廃炉方針を決めた経緯について説明を聞く。

第2原発は1982年に1号機が営業運転を開始。87年から全4基体制で稼働してきたが、東日本大震災に伴う津波被害を受け、全4基が運転を停止した。第1原発のような炉心溶融事故は免れたものの、一時、冷却機能を失うなど損傷が最も大きい1号機は既に廃炉にする方針を固めていた。比較的被害の少ない2~4号機は、原子力規制委員会の審査に合格すれば再稼働する可能性が残っていたが、地元の根強い反対を受け断念する方向となった。

第1原発の廃炉費用は21・5兆円に上る見込みだが、16年に基金を設立して費用を積み立てるなどの枠組みが決定した。(毎日新聞6/15)

一口で言って、遅すぎた決断であった。東電はそのことによって福島県民の多くを敵に回すことになった。
福島県からは廃炉を求められながらも、「検討中」を繰り返してきた。だが、福島第一原発事故で、今なお数多くの福島県民に避難を強い、普通の生活を奪った東電が、再び福島県で原発を稼働させられる日が来ると考える方がおかしくないか。(東京新聞6/14)
しかし、国と東電は力ずくで「復興」を目差すというかたくなな姿勢をとっており、ハコモノ中心の再建を沿岸部で進めている。土地や山林の放射能汚染を強引に「除染」して農林・牧畜業を復興するというやり方が、奏功するとは到底思えない。

東電が「福島の全原発廃炉」を311直後に決断していれば、県民の復興への意欲や構想が大いに異なったものになっていたと思われる。「廃炉は企業の決断だ」と責任逃れに終始した国の優柔不断な態度も、責任を問われるべきだ。


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6/17-2018
玄海4号機が再稼働 新基準下、5原発9基目(東京新聞)

九州電力は16日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)を再稼働した。東京電力福島第一原発事故後、安全対策を厳格化した新規制基準下での再稼働は、5月の関西電力大飯原発4号機(福井県おおい町)に続き5原発9基目。九電は既に再稼働した川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と玄海3号機を含め、目標としてきた4基体制が実現するが、現行の電気料金は原発の再稼働による効果を織り込んでいるとして維持する方針だ。

玄海4号機の再稼働は、定期検査のため原子炉を停止した2011年12月以来、約6年半ぶり。16日午前11時、中央制御室で運転員が燃料の核分裂を抑えていた制御棒を引き抜くためのレバーを倒し、原子炉が起動した。16日深夜から17日未明にかけて核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に達するとみられる。20日に発送電を始め、7月中旬に営業運転に復帰する見通し。

玄海4号機は5月24日にも再稼働する予定だったが、一次冷却水を循環させるポンプで不具合が発生。3月23日に再稼働した3号機も、その1週間後に穴が開いた配管から蒸気が漏れるトラブルが起きた。佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は再稼働を受け「県民の厳しい目をしっかり受け止め、緊張感を持って取り組んでほしい」とコメント。九電の瓜生(うりう)道明社長は「引き続き国の検査に真摯に取り組み、安全確保を最優先に慎重に進める」とした。

3、4号機の再稼働で、その分の火力発電所などの稼働を抑制することが可能になる。九電は月110億円の費用削減効果があると算出する。ただ、原発の運転を停止した時期に赤字に転落して財務状況が悪化したことから、その回復を優先し当面は電気料金の値下げはしない方針だ。

<玄海原発> 佐賀県玄海町にある九州電力の加圧水型軽水炉。1号機は1975年、2号機は81年、3号機は94年、4号機は97年に運転を始めた。3号機は2009年にウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電を日本で初めて開始。2、3号機は東日本大震災前に定期検査で停止し、1、4号機も11年12月に定期検査で停止した。運転開始後40年が経過した1号機は15年4月に運転を終え、九電が廃炉を決めた。(東京新聞6/16)

上の記事によれば、九電は「3、4号機の再稼働で、月110億円の費用削減効果がある」と見込んでいるという(3号機の再稼働は3月25日だった)。しかし九電においても、日本の原発の共通の悩みの種である「使用済み核燃料の保管・廃棄」について、見通しは暗い。使用済み核燃料の糞詰まり問題である。各原発が備えている貯蔵用プールに余裕がないのである。
使用済み核燃料を巡っては、核燃料サイクルの中核となる青森県六ケ所村の再処理工場がトラブルなどで稼働が遅れている。玄海原発でも使用済み核燃料の保管プールは4号機が5~6年、3号機が6~7年でそれぞれ満杯となる計算だ。
九電は再稼働後、燃料の間隔を狭めてプールの貯蔵容量を増やす「リラッキング」や、燃料を金属容器で密封し空気冷却する「乾式貯蔵」の導入を原子力規制委員会に申請する構えだが、実現の時期は見通せていない。
(東京新聞6/16)
先行の見通しがないのに、日本の電力会社はどうして次々に再稼働するという方針を変えようとしないのだろう。どうして原子力規制委員会は再稼働を認めるのだろう。正気の沙汰とは思えない。

玄海3号機で蒸気漏れトラブルは 本欄 4月2日 で扱った。玄海4号機は5月24日にも再稼働する予定だったが、一次冷却水の循環ポンプに不具合が発生した。九電の原発は、火山・地震に関して現実的な危険性が予想される。周辺住民の不安は当然のことだ。また、日本列島の西端に位置する九州の原発で大事故があれば、西寄りの風で列島全体が汚染される可能性が大きく、誰にとっても他人事ではない。


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6/19-2018
東日本大震災 福島第1原発事故 福島・甲状腺がん新たに2人(毎日新聞)

東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会が18日開かれ、県は事故時18歳以下の子どもの甲状腺検査で、3月末までに新たに2人が甲状腺がんと診断されたと発表した。がん確定は計162人となった。検討委は「被ばくの影響は考えにくい」と説明している。

甲状腺検査は原発事故時、県内に住んでいた子どもを対象に2011年から1巡目を開始。2巡目から事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万人を対象にし、今年5月に4巡目が始まった。

検査を巡っては、心身に負担をかけているとして、検査規模の縮小を求める声が上がる中、委員からは「検査に対する保護者や子どものニーズをしっかり把握すべきだ」などの意見があった。(毎日新聞6/19)

この「県民健康調査」の原資料は「第31回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成30年6月18日)の資料について」に置いてある多数のPDFファイル。
上の記事に触れているような、総括的な数字だけなら、そのうちの「参考資料3 甲状腺検査結果の状況」が分かりやすい。

なお、昨年10月にはじめて判明したことだが、この「県民健康調査」では途中で「経過観察」にまわされ、(自費扱いで)医療機関においてがんと判定された場合の人数が算入されていない。
検討委員会では検査で経過観察となった人が、その後に医療機関で甲状腺がんと診断されても、県が把握できず、がん患者数に反映されない仕組みについても取り上げられた。今後、福島県立医大で甲状腺がんと診断された人については、健康調査の対象かどうかを確認し、患者数にカウントしているのかを調べることが報告された。(毎日新聞10/23-2017)
「県民健康調査」の学術的価値をみずから台無しにしてしまうこのような仕組みをなぜわざわざとったのか。フクイチ事故の放射性物質による被害が存在していることをアイマイにして、無かったことにしてしまおうと考えている勢力によって、意図的に行われているとしか考えられない。その勢力は、執拗な「被曝の影響は考えにくい」というイデオロギー攻勢や「県民健康検査」の規模縮小を主張している勢力と同一の者たちであろう。


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6/20-2018
六ケ所村長選、現職に新人挑む 核燃サイクルの是非争点(共同通信)

核燃料サイクル施設が立地する青森県六ケ所村長選で、任期満了に伴う村長選が19日告示され、現職の戸田衛氏(71)と新人で医師の遠藤順子氏(58)の2人が届け出た。原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムなどを再利用する核燃料サイクル政策の是非が争点。賛成派の現職に反対派の新人が挑む構図となった。24日に投開票される。

「核燃料サイクルを推進していく。国にも必要性を訴えてもらう」。戸田氏が第一声を上げた村役場前には、村議全18人が駆け付けた。一方、遠藤氏は「村内にある反対の声を代弁したい」と支持を呼び掛けた。 (共同通信6/19)

田中龍作ジャーナル6/18」が、この村長選挙を取りあげている。「『核のゴミ捨て場にしてはいけない』人がいない所では手を振る村民も」である。
核燃料施設の恩恵を厚く受ける村では、原発反対を訴えることはタブーだ。その選挙に反対派の遠藤医師が立候補した。どれだけ票を集められるか、注目されている。善戦を期待したい。

核燃料施設が密集する六ヶ所村には原子力関連の「マネー」が垂れ流しされている。その状況を知るための格好の資料として、デーリー東北(6/6)の「六ケ所10年連続最高額 15年度市町村民所得」という記事が優れている。これは現在 「gooニュース」に置いてある(ここ)。
これは青森県が発表したのであるが、青森県内の市町村についての「2015年度の市町村民経済計算」というもの。
市町村民計算は、市町村民所得と市町村内総生産の二つの面から捉えた経済指標。市町村民所得は雇用者報酬の他、企業の利潤なども含むため個人レベルの所得水準とは異なる。 (デーリー東北6/6)
おおよその所は、個人所得と市町村の経済利潤を合計したもの、と考えればよい。その指標「市町村民計算」を比較すると、青森県内で、六ヶ所村がダントツの1位で1514万円、2位は西目屋村449万円、3位は八戸市264万円

村民人数比で、いかにお膨大な原発マネーが六ヶ所村に注ぎ込まれているかが分かる。この原発マネーが欲しくて堪らないのが核施設賛成派であり、それに抗するのが反対派である。もう一度書いておこう、ぜひ、遠藤医師の善戦を!!


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6/21-2018
東海第二の再稼働に反対 水戸市議会が意見書可決(東京新聞)

首都圏唯一の原発で、11月に運転期限の40年を迎える茨城県東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、水戸市議会は19日、現時点での再稼働を認めないとする意見書を賛成多数で可決した

原発30キロ圏の自治体のうち、水戸市など六市村は3月、6市村が事前に了解しなければ再稼働しないとの協定を原電と結んだ。今回の意見書は、同市の高橋靖市長の再稼働を巡る判断や、周辺自治体の動向に影響を与えるとみられる。

高橋市長は本紙の取材に「実にまっとうな意見書が可決された。貴重な意見で真摯(しんし)に受け止める」と述べた。

意見書によると、昨年11月に原電が規制委に最長二十年の運転延長を申請したことを踏まえ、「実効性が伴う避難計画の策定が十分とは言えず、現時点での住民理解が得られるものではない」と指摘。「再稼働を前提とした運転延長を認められない」とした。採決では、議長を除く全議員26人のうち、賛成17人、棄権7人、反対2人だった。
意見書は公明の市議らが主導し、3月の総務環境委員会で全会一致でまとめた。3月の本議会で可決する見通しだったが、手続き上の問題で6月議会に先送りされていた。(東京新聞6/20)

これは重大な前進だ。事前了解を求められる30㎞圏自治体のうち、もっとも人口の大きな水戸市議会が圧倒的多数(26人中賛成17人、反対2人、棄権7人)で、再稼働に反対する意見書を可決した。高橋・水戸市長もその意見書に賛成の考えを示している。

東海第2原発が周辺5市(水戸・日立・ひたちなか・那珂・常陸太田)に「事前了解権」を認めたことを本欄が扱ったのは3月29日である。今後の原電の出方をしっかりと見守る必要がある。


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6/23-2018
2号機の開口作業完了 第一原発、核燃料取り出しに向け(福島民報)

東京電力は21日、福島第一原発2号機の使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しに向けて進めていた西側外壁の開口作業が完了したと発表した。

25日にも開口部から遠隔操作でロボット2台を入れ、建屋内の空間放射線量や汚染状況の詳細な調査を始める。

東電は2号機原子炉建屋の5階にあるオペレーティングフロア西側外壁に幅約5メートル、高さ約7メートルの開口部を設けた。ロボット調査で建屋内の線量や汚染状況のデータを蓄積し、核燃料取り出しに向けた建屋上部解体などの計画立案に役立てる。核燃料の取り出し開始は2023年度を目指している。

開口作業は5月下旬に開始した。厚さ約20センチのコンクリート製の外壁に縦横の切れ目を入れて29のブロックに分け、遠隔操作の無人重機で解体を進めた。開口部付近の高さ1メートルの空間放射線量は速報値で毎時9ミリシーベルトだったという。(福島民報6/22)

この作業について東京新聞は
放射性物質が外に飛散しないよう、外壁に面した部分に気密性の高い部屋を設けて作業。壁は厚さ20センチのコンクリート製で、縦横に複数の切れ目を入れており、遠隔操作の無人重機で壁を解体していく。(東京新聞6/6)
と解説していた。


東電のサイト「1F ALL(5/17)」より

この作業には「放射性物質を飛散させる可能性がある」ことは明らかであり、東電もそれを意識している。ところが、原子力規制委が福島県内のモニタリング・ポスト(約3000台)の8割を撤去する方針を打ち出したのが3月20日だった(本欄 3月22日 参照)。この方針がいかに住民の神経を逆なでするものであり、また、理屈が通らないものであるかは明瞭である。
モニタリング・ポストを設置しておいて初めて、放射性物質の飛散が無かったことを住民に対して主張することができる。

この規制委の方針を容認したのは福島県西郷村ただ1村であった。規制委は今月から西郷村のモニタリング・ポスト27台を撤去し始める予定であったが、同村議会が全会一致で中止を求める意見を可決し国側に提出、村も中止要請に転じたため、撤去作業を中止することになった(毎日新聞6/22)。


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6/24-2018
福島、溶融核燃料採取2号機から 廃炉作業最大の難関(共同通信)

2011年3月の東日本大震災で炉心溶融事故が起きた東京電力福島第1原発1~3号機のうち、東電が溶融核燃料(デブリ)の取り出しに最初に着手するのは2号機とする方向で検討を進めていることが23日、関係者への取材で分かった。21年内のデブリ取り出し開始を目指している。取り出しの初号機が具体的に判明するのは初めて。

事故時に原子炉の冷却ができなくなった1~3号機では核燃料が溶け落ち、原子炉格納容器内に散乱。金属製の燃料被覆管や格納容器のコンクリート材などと混ざり、強い放射線を出している。ロボットアームなど遠隔操作の装置が必要で、廃炉作業の最大の難関となる。(共同通信6/23)

「2号機は内部の調査が最も進み、作業がしやすいとみられることから選ばれた」(中国新聞6/24)とされる。

だが「内部の調査」と言っても、空間線量を一部で測定し、溶け落ちた炉心表面の撮影ができたというだけであり、すべてを遠隔操作で行う装置の開発はこれからである。溶融核燃料(デブリ)の完全な取り出しはそもそも不可能であるという説もあり、廃炉作業の困難さがどれほどのものになるのかその見積りさえできていない。取り出したデブリや解体で発生する膨大な高濃度放射性汚染物質・廃材を、半永久的に保存・管理する場所も無い。

むしろデブリ取り出しは最初からあきらめて、炉心を埋め堅めてしまう方が良いのではないかという「石棺方式」にも一理あるのである。


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「モンクチビル 紋唇」とは、かなり奇っ怪な命名だが、翅中央線の模様が「唇 くちびる」に見えるところから付いたのであろう。

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6/26-2018
伊方原発 乾式貯蔵施設 使用済み核燃料搬出、疑問視の声 町議会特別委で次々(愛媛新聞)

愛媛県伊方町議会原子力発電対策特別委員会(菊池隼人委員長、15人)が22日、町役場であり、5月に四国電力が県と伊方町に事前協議を申し入れた伊方原発敷地内に使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設について担当者から説明を受けた。(愛媛新聞 6/23)

以下有料記事でわたしには読めないので、先月下旬の「日本経済新聞5/26」の詳しい記事がネット上にあるので、そちらを参照する(ここ)。
四国電の計画は250億円かけて、建屋(幅40メートル、奥行き60メートル)をつくり、使用済み燃料(燃料集合体)1200体を貯蔵できる特殊容器(キャスク)45基を収納する。2023年度に運用を始め、15年以上冷やした旧タイプの燃料集合体の保管に使う考えだ。

再処理工場への搬出ができないと24年度ごろに容量超過の可能性があったが、乾式貯蔵が稼働すれば20年以上先に延ばせる計算になる。

国内の原発から発生する使用済み燃料を巡っては最終処分のあり方も決まっていない。中村知事は「国の施策が決まらないとゴールが見えない」と指摘。国の責任で最終処分の場所や方法をまとめるよう、立地県として引き続き要望していく考えも示した。

 乾式貯蔵施設 原子力発電所で発生する使用済み燃料(燃料集合体)を冷却しながら保管する設備。キャスクと呼ばれる金属製の容器1基に燃料集合体を複数まとめて収納する。二重蓋で密閉し、臨界防止や放射線量を大幅に減衰する遮蔽機能がある。建屋内に空気を取り込んで外面を冷やし、暖まった空気は上昇気流で排気する。
(日本経済新聞5/26 より)
使用済み核燃料は使用直後は猛烈な発熱のためプールで保管する「水冷式」であるが、しばらく時間をかけて冷やした後(四国電力の計画は15年以上)に「空冷式」に切り替える。

ただし、わが国には最終処分場がないので、この「乾式貯蔵施設」が事実上の最終処分場になってしまうのではないか、という心配が地元に生まれるのは当然である。
伊方原発に限らず,日本の各地原発で使用済み核燃料の乾式貯蔵が計画されている。本欄が 6月6日に取りあげたむつ市の「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」(東電が8割、日本原子力発電が2割出資)が造った施設も「乾式貯蔵」である。


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6/27-2018
東海第二の再稼働判断 常陸太田市、市民の声反映 年内にも代表者組織(東京新聞)

日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)で、再稼働の事前了解権を持つ常陸太田市は是非を判断する際に、市民の声を反映させるため、市民の代表者でつくる組織を年内にも設置する。組織から出された意見と市議会の意向を踏まえ、大久保太一市長は是非を判断したいとしている。

25日の市長定例会見で明らかにした。組織の規模などは未定だが、大久保市長は「原子力規制委員会があるので、有識者は入れない。市民の代表者のみで構成し、意見を聞いていく」と話した。
大久保市長が再稼働を判断する際に、こうした市民の声に加え、市議会の意向も参考にする。今年3月、市議会は、住民から出された東海第二の延長運転に反対する意見書の提出を求める請願を趣旨採択。国や県などに意見書を提出するには至らなかったが、議員は請願を否決せず、延長運転反対に理解を示した。
その上で、市長が原発メーカーの日立製作所で勤務していた経験を生かし「私自身も技術屋。規制委でも触れられなかった安全性の問題についても原電に直接問いただし、判断したい」と話した。

再稼働の事前了解権を巡っては3月、常陸太田市のほか、水戸市、東海村など三十キロ圏の計6市村が納得しなければ、再稼働しないことを盛り込んだ協定を原電と締結した。
首長が再稼働の是非を判断する際、住民の意思を反映させる方法として、6市村のうち、水戸市は有識者会議を設置し、専門家とともに、市民代表に半数程度入ってもらうとしている。(図も 東京新聞 6/26)


東海第二原発の再稼働について、「事前了解権」を認められた5市1村のなかで序々に議論が進んでいる。避難計画を強要される周辺自治体が納得しなければ再稼働はできないという仕組みは当然のことで、全国の原発で同じ仕組みができていくことが望ましい。

原発が必要なのか、望ましいものか、利益と利害等について、周辺住民に選択ができる対象として問題が投げかけられることに意味があると思う。多くの住民は、自分らの子供や子孫のことを考えて、再生可能エネルギーへの移行が望ましいとするのではないか。


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6/29-2018
3号機の核燃料搬出に遅れ 福島第1原発(中日新聞)

東京電力は28日、福島第1原発3号機の原子炉建屋にある使用済み核燃料プールからの燃料搬出作業の開始が、クレーンのトラブルの影響で最低でも1~2カ月は遅れると発表した。廃炉工程表の開始目標は2018年度中ごろで、早ければ今年10月とみられていたが、越年する可能性も出てきた。

3号機は原子炉建屋上部のプールに燃料566体が残る。東電は放射性物質の飛散を防ぐ屋根カバーを設置し、内部に燃料取扱機や輸送容器を移すクレーンを整備したが今年5月、クレーンの制御盤がショートして損傷。燃料搬出に向けた作業が滞っていた。(写真も 中日新聞6/28)


2015年7月の東電資料であるが、「3号機使用済燃料プールからの燃料取り出し」(PDF)はここ。この資料4ページの「スケジュール」では、燃料取り出し(566本)が18~20年にかけての予定になっている。

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6/30-2018
青森・東通原発 建設再開 今年度後半から地質調査(毎日新聞)

東京電力ホールディングス(HD)は29日、建設作業が中断している東通原発(青森県東通村)について、今年度後半から敷地内の地質調査を始めると発表した。東電が2011年の福島第1原発事故後、建設再開に動き出すのは初めて。

同原発は、1号機(138・5万キロワット)が11年1月に国の新設認可を受けて着工したが、原発事故後は世論に配慮して建設を中断。現状は更地のままだ。

一方、福島事故を受けた規制強化で安全対策コストが膨らみ、地元同意のハードルも高まる中、電力各社も原発の新設を検討しづらい状況だ。そこで東電HDは、既に新設認可を得て「建設中」の段階にある東通原発の共同建設・運営を各社に提案。コストを分担しつつ新たな電源を確保し、建設や運用に関する最先端のノウハウも得られるとアピールしており、東電HDの小早川智明社長は29日の記者会見で「より安全性に優れたものをつくっていきたい」と意欲を示した。

今回始める地質調査は、今年度後半から20年度にかけ、約450ヘクタールの敷地内でボーリングを行い、地質や地質構造を調べる。敷地内に原発を何基建設できるかなどを分析し、調査結果は他の電力会社にも提供して共同事業への参画を判断する材料にしてもらう。東電HDは「20年度ごろまでに共同事業体の枠組み構築を目指したい」としている。
ただ、他電力は巨額の廃炉・賠償費用を抱える東電と組むことを警戒、参画に二の足を踏んでいる。政府には、共同事業化もテコに国内原発事業の再編を進めたい思惑もあるが先行きは不透明だ。(地図も 毎日新聞6/30)


東電は、福島第二を廃炉にする決断をし(本欄 6月15日)、その代わりに、新潟県知事選の保守派勝利に勢いをつけ柏崎刈羽原発の再稼働、および東通原発建設の再開に踏み込もうとしている。

政府・財界も大いに後押ししたいところだが、一方では〈原発事業はペイしない事業である〉という世界的な流れが定着しつつあり、日本国民の間でも〈原発反対が多数である〉という事実は否定しがたいので、政府も様子見をしようとしている。保守政界にも反原発の潮流が生まれる機運がある(小泉純一郎と小沢一郎の仇敵同士が「原発ゼロでタッグ」という見出しは、産経ニュース6/29 である)。


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