き坊の近況 (2018年7月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 07 06 05 04 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

7/1-2018
東海第二 再稼働の環境整備着々 担当役員が2人昇進(東京新聞)

東海村の東海第二原発の再稼働を目指す日本原子力発電(原電)が29日、株主総会を開き、東海第二に関わる役員2人を昇進させ、再稼働に向けた基盤固めを鮮明にした。原子力規制委員会は、11月末に期限が迫る審査のめどが立ったことを明らかにしており、原電は再稼働の環境整備を着々と進めている。

原電によると、規制委による審査の陣頭指揮に当たる和智信隆常務取締役が副社長に昇格、東海第二の江口藤敏発電所長も執行役員から常務執行役員に昇任させる人事案を決定した。
株主総会は、場所や時間を含め非公開。株式の約9割を保有する東京電力など電力9社と電源開発の関係者らが出席し、人事案などに同意したとみられる。

人事の狙いについて原電の村松衛社長は5月の決算会見の際「審査が極めて大事な時期にさしかかっている。地域対応の重要性に鑑み、基本的な枠組みを維持しつつ体制の強化を図る」と説明していた。
村松社長はこれまで、地元の反発を恐れてか、再稼働を明言していない。和智副社長は5月、報道陣に「きちんと運転して社会に貢献したい」と語ったが、村松社長は「会社として経営判断はしていない」と、従来の「再稼働隠し」に終始している

ただ、原電は今回の人事で再稼働シフトを強めるほか、再稼働ありきの姿勢は崩さない。
原電は、事故対策工事費用の1740億円の借入先となる金融機関に返済計画を提示済みという。再稼働して売電収入がなければ、返済できないとみられる。借金の「保証人」となる意向を示した東電も確実な送電を求めており、再稼働が前提となっている

脱原発ネットワーク茨城の共同代表を務める小川仙月さん(54)は「東海第二の再稼働を軸に考えた人事にしか見えない。原電には廃炉専業会社となる別の道があるのだから、そちらへかじを切ってほしい」と求めた。(東京新聞6/30)

「電力9社と電源開発」の電力業界が一致協力して、日本原子力発電(原電)が東海第二を再稼働する後押しの体制固めを行った。それに合わせて、原電の内部体制も強化したということ。

事前了解権」をもつ5市1村(本欄 6月27日)に対する懐柔工作が激しくなることだろう。電力業界も後が無くなってきていることに気がつき始めた、とも言える。



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7/3-2018
核燃 消費者、産業界にも重荷 元米国務次官補 一問一答(東京新聞)

オバマ米政権で米国務次官補を務めたトーマス・カントリーマン氏が本紙の取材に応じた。主なやりとりは次の通り。

 ――日本の核燃料サイクルの問題点は。
「経済的なリスクが高い。プルトニウムはウランより扱いが難しく、管理や安全対策の費用がかかる。ウランと混ぜてつくるMOX燃料も想定より高価だ。続ければ(電気代や税を通じ)消費者や産業界の負担が増す」

 ――なぜいま問題視するのか。
「核燃料サイクル政策の前提が変わったからだ。当初は原発の燃料となるウランが希少資源とされ、使用済み核燃料を再利用する必要があった。現在ウランは豊富にあることが分かっている。東日本大震災以降は原発の再稼働が進まず、新設も難しい。日本のプルトニウムがいつ使われるのか分からなくなった」
「在任中は何度も日本政府と削減策を協議した。米政府を離れたいま、よりはっきりと日本は核燃料サイクルから完全撤退すべきだと言える」

 ――日本のプルトニウム問題が核不拡散にどう影響するのか。
「核爆弾5千発以上に相当する約47トンのプルトニウムは、日本の核不拡散のリーダーとしてのイメージと矛盾し、国際的な評判を落とす」
「米朝間の非核化交渉にも影響する。北朝鮮にプルトニウム抽出やウラン濃縮をあきらめさせようとしても同国から『日本はやっている』といわれてしまう。米国が北朝鮮の完全非核化を目指すにあたり日本の核燃料サイクルはますます許容しがたくなっている」
「他の国でもサウジアラビアをはじめ、米国と原子力協定を結ぼうとする、どの国も『日本に認めているのならわが国も』と求めてくる。日本の余剰プルトニウムへの懸念は、オバマ政権もトランプ政権も同じだ」

 ――日本は具体的に何をすれば。
「東アジアで核燃料サイクルの凍結を呼び掛けるべきだ。日本の中国や韓国との信頼構築につながり、米国も北朝鮮とより強い立場で非核化を交渉できる。非核化協議への大きな貢献にもなる」
「先日、与野党の国会議員にも提案したが、原発への賛否は差し置いて核燃料サイクルの費用を調査することを勧める。プルトニウムを減らす計画も新たに作るべきだ」

<トーマス・カントリーマン> 国務省で2011年9月に次官補(安全保障・核不拡散担当)に就任。16年10月から次官代行(軍縮・安全保障担当)を兼務。17年1月に退任。現米シンクタンク「軍備管理協会」会長。1957年、ワシントン州タコマ生まれ。(東京新聞7/2)

アメリカ政府の高官であった人物が述べた、日本が「国策」としている核燃料サイクルへの否定的な見解、日本が所有する47トンにものぼるというプルトニウムへの忌憚ない意見など、興味深いものだ。トーマス・カントリーマン氏の見解は、おおむね現在の“世界標準”的な考え方で、日本の原子力政策がいかに“ガラパゴス化”しているかが分かる。一度決めた「国策」を路線転換できない官僚主導型国家の特徴を示している。

下線部に注をつけておく。ウラン元素は地球に広く満遍なく分布しているというのが基本で、「ウランは地殻や海水中に微量(濃度)ながら広く分布している元素であり、存在量はスズと同程度である」(ウィキペディア)。


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7/4-2018
2号機建屋内線量低下 最大で6分の1に 第一原発(福島民報)

東京電力は2日、福島第一原発2号機原子炉建屋内部の初の本格調査に着手した。遠隔操作ロボットでオペレーティングフロアの空間放射線量を6年ぶりに測定した結果、約6分の1まで低下した地点があるなど建屋内の線量が全体的に低減している現状が明らかになった。今後、調査をさらに進め、建屋内部の詳細な状況を把握する。

本格調査は、使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しに向けた建屋上部解体計画の策定に反映させる目的。初日の2日は、6月に建屋5階部分に設けた開口部からロボット2台を入れ、フロア内の約450平方メートルの範囲で19カ所の放射線量を測定した。原子炉西側の毎時59・0ミリシーベルトが最も高かった。同地点周辺は前回の2012(平成24)年6月の調査で毎時230ミリシーベルトが計測されており、6年間で4分の1ほどに低下したとみられる。

この他、使用済み核燃料プール西側は毎時31・1ミリシーベルトで、前回の毎時173ミリシーベルトの約6分の1となった。最も低い地点は開口部東側で毎時10・2ミリシーベルトだった。

東電は建屋内の線量低下について、放射性物質が半減期を迎えたことによる自然減衰が要因とみている。担当者は「前回測定値から大幅に低下している現状を確認できた。今後の作業に向けた重要なデータになる」と評価した。

3日はフロア内の床や壁の表面線量を測定する予定。1カ月ほどかけて線量や汚染濃度を測定するとともに、フロア内を撮影する。その後、ロボットによる障害物の撤去などを進め、さらに線量測定の範囲を広げる。収集したデータに基づき、放射性物質の飛散防止対策を含めた建屋上部解体の具体的な計画を策定する。

2号機の使用済み核燃料プール内には615体の核燃料が残されており、東電は2023年度の取り出し開始を目指している。取り出しに向けては建屋上部を解体し、核燃料取り出し用の機材を整備する必要がある。

原発事故で炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機のうち、2号機は水素爆発を免れたものの内部が放射性物質で汚染されたため線量が高く、本格的な調査は困難だった。2012年の前回調査は内部の線量の一時的な把握にとどまっていた。
本格調査に向け、東電は5月下旬から調査ロボットなどの出入り口として開口部の設置を進めてきた。当初は6月25日から調査する予定だったが、ロボットから送られてくる画像が乱れるなどの不具合が生じたため延期していた。(図も 福島民報7/3)


この福島民報の記事には、線量測定結果の詳細が図示してあって、興味深かったので採用した。開口部の位置も示されている。しかし、記事の内容はお粗末である。
下線部の「半減期を迎えたことによる」の部分は削除すべきだ。放射性物質の自然減衰は常に連続的に等確率で生じているものである。

見出しにも取りあげている線量が「最大で6分の1」に減衰した地点がある、ということを強調する意味があるだろうか。わたしは線量の減衰をできるだけ大げさに強調したい意図(東電に対するゴマスリ)しか感じられない。もし減衰率を報道したいのなら、平均値を示したらどうか。

セシウム134(半減期=約2.0年)、セシウム137(半減期=約30.2年)の混合比が場所によって異なっていて、セシウム134が多い個所では減衰が早く起こる。東電の調査は2012年と18年の6年間の間隔を置いての調査なので、セシウム134は約8分の1((1/2)^(6/2.1)=0.125)となり、セシウム137は約0.87となる((1/2)^(6/30.2)=0.871)。^ は累乗を示す。したがって、今後はセシウム134の影響が小さくなり、全体の減衰はセシウム137に合わせるようになり、減り方が少なくなっていく。


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7/5-2018
大飯、二審は運転容認 高裁金沢支部「危険性無視しうる」(中日新聞)

関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを住民らが求めた訴訟の控訴審判決が四日、名古屋高裁金沢支部であった。内藤正之裁判長は「新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。大飯原発の危険性は社会通念上、無視しうる程度にまで管理・統制されている」と述べ、運転差し止めを命じた一審福井地裁判決を取り消し、住民側の請求を棄却した。

2011年3月の東京電力福島第一原発事故後の原発訴訟で、高裁判決が出たのは初めて。

控訴審の争点は、安全対策の前提として関電が想定している地震の揺れの大きさ(基準地震動)だった。元規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授(地震学)が住民側の証人として出廷し「過小評価の可能性がある」と主張したが、内藤裁判長は「活断層の断層面積は詳細な調査を踏まえ大きく設定しており、過小であるとは言えない」と退けた。

14年5月の福井地裁判決は「生命を守り生活を維持するという根幹部分に対する具体的な侵害の恐れがあるときは、差し止めを請求できる。多数の人格権を同時に侵害する性質があるとき、差し止めの要請が強く働くのは当然だ」と指摘。関電の地震対策には構造的な欠陥があるとして住民側の主張を認めていた。
内藤裁判長は、現状の法制度が原発の利用を認めていることに触れ「福島原発事故の深刻な被害に照らし、原発を廃止・禁止することは大いに可能であろうが、その当否の判断はもはや司法の役割を超え、国民世論として幅広く議論され、立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべきだ」と述べた。

大飯原発3、4号機は17年5月、規制委が新規制基準に適合していると認め、3号機は今年3月、4号機は5月からそれぞれ再稼働している。

◆強引に審理打ち切り
<住民側弁護団の島田広弁護団長の話> あまりにひどい判決だ。主体的に原発の安全性を審査していない。科学者の証人尋問を実施し、審理を尽くすべきだったのに、強引に審理を打ち切った。「具体的な危険はないと言いうる」という判断は恐るべき安全軽視であり、司法の責任放棄だ。

◆安全性、理解された
<関西電力のコメント> 控訴して以降、一審判決が合理性を欠くことを指摘するとともに、大飯原発3、4号機の安全性が確保されていることについて、科学的・専門技術的知見に基づき、改めて丁寧な説明をしてきた。裁判所に理解された結果と考える。(図も 中日新聞7/5)

この判決では「社会通念」なるアイマイなものが司法のよりどころになっている。これでは、司法はどのようにでも恣意的な判断を下しうる。

原発稼働の当否は「立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべきだ」としている。政治的な判断は必要だろうが、司法としての筋の通った判断も必要である事は論を待たない。この判決は、司法が自分から原発稼働の当否の判断をする場面から下りる、といっているのである。三権分立もなにもあったものではない。司法がみずからこの国を毀そうとしている。

信じがたいような投げやりな、ひどい判決だとわたしは思う。


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7/7-2018
東海第二 再稼働審査書案  6市村の民意 どう反映?(東京新聞)

東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、原子力規制委員会が再稼働につながる審査書案を了承した。今後、再稼働は30キロ圏にある6市村の首長の同意を必要とする協定が鍵を握る。首長たちは、住民の意思をどのようにくみ取って判断するのか。ただ、最も民意が分かりやすい住民投票や、大規模な住民アンケートを決めた自治体はない

6市村で人口約27万人と、最多の水戸市の高橋靖市長は住民意思のくみ取りについて「政治家の肌感覚で決めるのではなく、市民の理解が得られているかどうか、客観的に捉えられるようにする」と話す。
専門家とともに、市民代表が半数程度入る有識者会議を近く設置し、参考にしたいとしている。

常陸太田市は、専門家は入らず、市民の代表者だけでつくる組織を年内に設置する。那珂市の海野徹市長は「住民の意見を聞いて反映しなければいけない。行政と議会だけでは決められない」と思案。住民投票も視野に入れるが、過去に議会で条例案が否決されている。

一方、ひたちなか市の本間源基市長は「改めて市民に○か×か聞くことはしない。聞くような問題ではない」と述べ、議会の意思表明を踏まえ、市長の判断で決めたいとしている。

日立市は「未定」としている。東海村の山田修村長は「住民投票は自分の責任放棄だ」とするものの「村長と村議だけで決めるのは良くない。住民の意見をどう聞くか、悩んでいる」と判断方法を模索する。

協定は3月、6市村が原電と結んだ。全国で初めて、再稼働の際に原発立地自治体以外に、周辺の複数自治体の同意も必要と定めている。(図も 東京新聞7/6)

東海第二原発は、様々な問題を抱えている。(1)まず、なによりも40年を超える運転期間の老朽原発であること。その認可を受けるのは11月までで、期限が近い。(2)フクイチと同じく太平洋岸に立地する原発で東日本大震災の際には5・4mの津波に襲われ、外部電源を失い、非常用電源も1台が停止し危うかった。冷温停止に至るまで3日半を要した。(3)周辺30kmに約96万人が住むが、その人びとへの避難計画の策定が義務づけられている。実効性のある避難計画はほとんど不可能であろう。(4)30近い自治体の議会が再稼働反対の決議をしており、特に「事前了解権」を持つ5市1村があり、そのすべてから再稼働了解を得ることが可能か。

原子力規制委が再稼働審査に合格を出したことについて、村上達也・前東海村村長の発言
馬鹿げた国だなと私は失望しています。極めて原発周辺の人口が多くて自然的な条件ももろい、技術的な面でも老朽化している東海第二は動かしてはならない。NNN7/5
この発言は、ごくまっとうなものだ。


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7/8-2018
福島で甲状腺がん集計漏れ11人 検査の信頼性揺らぐ(東京新聞)

東京電力福島第一原発事故の後、福島県が県内全ての子ども約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、集計から漏れていた甲状腺がん患者が11人いることが7日、関係者への取材で分かった。県内で多く見つかっている子どもの甲状腺がんと事故との因果関係を調べる検査の信頼性が揺らいだ格好だ。

福島市で8日に開かれる県の「県民健康調査」検討委員会の部会で報告される。県の検査は2011年度に開始、今年5月から4巡目が始まった。これまでがんと確定したのは162人、疑いは36人に上る。

昨年3月、子どもの甲状腺がん患者を支援する民間非営利団体が集計漏れを指摘し、検査の実施主体の福島県立医大が、11年10月から昨年6月までに同大病院で手術を受けた患者を調べていた。

関係者によると、集計されなかった11人の事故当時の年齢は4歳以下が1人、5~9歳が1人、10~14歳が4人、15~19歳が5人。
事故との因果関係について、検討委員会の部会は「放射線の影響とは考えにくい」とする中間報告を15年に取りまとめた。この時、被ばくの影響を受けやすい事故当時5歳以下の子どもにがんが見つかっていないことを根拠の一つとしていたが見直しを迫られそうだ。

県の検査は、超音波を用いた一次検査で甲状腺に一定の大きさのしこりなどが見つかった場合、血液や尿を詳細に調べる二次検査に移り、がんかどうか診断される。11人のうち7人は二次検査の後に経過観察となったが、その後経過がフォローされなかったため集計から漏れた。二次検査を受けなかった1人も集計から漏れた。残り3人は県の検査を受けずに県立医大を受診した。(東京新聞7/8)

民間基金「3・11甲状腺がん子ども基金」が、311事故当時の年齢が5歳以下で甲状腺がんが確定した2つめの事例を発表したのは、昨年3月31日で、その発表の中で、福島県が行っている甲状腺検査では「経過観察の結果がわからなくなり、報告に入らないのは問題だ」という指摘を行った(本欄 2017-4/1)。上図参照のこと。

上の図表は京都新聞7/7から頂戴したが、共同通信が配信したもの。東京新聞の記事は、そもそもこの図表に登場しないケースがあることを指摘している点で、優れている。1次検査までやって2次検査を受けないケース、1次検査をも受けていないケースである。

311事故以降、甲状腺手術を受けた日本人の全数を把握することはそれほど難しいことでは無いだろう。国が病院に報告させればよい。そうすれば、地域別・年齢別の傾向が把握される。その結果を完全に公表するべきである、インフルエンザなどの場合と同様に。被曝の影響があるのかどうか判然とするであろうし、これが“風評被害”などというものを根絶する唯一の方法である。


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7/10-2018
もんじゅ廃炉費用、1兆円超えも 使用済み燃料処理に数千億円以上(福井新聞)

廃炉が決まっている日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)を巡り、使用済み燃料の処理に数千億円以上かかる可能性があることがこのほど、関係者への取材で分かった。政府はもんじゅの廃炉費用を3750億円と試算しているが、燃料処理費は含んでおらず、廃炉の総額は1兆円を超える可能性が出てきた

もんじゅの燃料は毒性の強い放射性物質プルトニウムを多量に含み、国内外に処理できる施設はない。海外の業者に高額で委託するしかなく、施設の新設も含め莫大(ばくだい)な費用がかかるという。

もんじゅは使った以上の燃料を生む「夢の原子炉」として期待され、1兆円を超える国費が投入されたが、相次ぐトラブルでほとんど実績を上げないまま長期停止。政府は2016年、再稼働する場合の安全対策に約6千億円が必要と試算し、費用対効果の問題などから廃炉を決めた。

原子力機構によると、使用済み燃料の処理費用は、含有するプルトニウムの量で大きく左右される。通常の原発で使われた燃料には1%のプルトニウムが含まれる。これを再処理したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は4~9%で、輸送費などを含め処理費用は1体約10億円

機構関係者によると、もんじゅの燃料は小型だがプルトニウムは16~21%で、通常の数倍以上の処理費がかかるという。もんじゅには未使用のものも含めると処理対象になる燃料は約540体あり、費用は数千億円以上になる見通しだ。

原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを回収し、再び燃料として使用する再処理を委託されているフランスの業者にも、もんじゅの使用済み燃料を処理できる施設はなく、対応には新設が必要という。
同機構は22年度までに処理方法を決定し、燃料を取り出す計画。機構関係者は「具体的な処理方法は決まっていない。現実的にはフランスの業者と交渉することになるだろう」としている。(福井新聞7/9)

そもそも、もんじゅは「核燃料サイクル」の中核施設の一つであり(もう一つが再処理工場)、それを廃炉にするのだから、「核燃料サイクル」を止めるというのが本筋の考え方である。どうしても核燃料サイクルをあきらめきれない原子力ムラと官僚が、もんじゅの次期施設としてフランスが計画している「アストリッド計画」になんとか乗ろうとしている。さらに、日本の再処理工場(青森県六ヶ所村)がいつまでも動かないものだから、わざわざフランスまで使用済み核燃料を輸送して再処理してもらい、取り出したプルトニウムで作ったMOX燃料と残余の高濃度放射性汚染物をガラス固化体にして青森へ送り返してもらっている。

大変な高額費用をフランス等へ支払うだけでなく、往復の航路の危険性は海洋汚染の巨大なリスクをはらんでいる。(テロ組織に奪われたり、攻撃されかねないので、日程・航路などを秘密にしている。)

もんじゅを廃炉にすることを取材するのであれば、福井新聞は当然「核燃料サイクルを継続するのか、否か」を視野に入れた記事とすべきだが、それには一言も触れず、もんじゅの特殊な使用済み燃料をフランスへ送って再処理することにして記事を作っている。
通常原子炉の場合は、往復の輸送費をも入れて1体約10億円だという、もんじゅの場合はプルトニウムの含有量が多く、その数倍かかるという。・・・・まあ、余り知られていない事実を記事にしてくれたので、有難いが。

世界の趨勢は、原子力発電を行う場合でも使用済み燃料の処理はせず、そのまま冷却・保管するようになっている(初めの50~100年はプールで、その後は空冷式で保管する)。過剰なプルトニウムを所有する軍事的な意味が失せてきているのである。
日本のようなことをしている国は他に無い。わが国は無駄に国力を消費しているのである。


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7/12-2018
福島第1、トリチウム水処分へ タンク跡地にデブリ保管、政府(東京新聞)

政府が、東京電力福島第1原発で汚染水を処理した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水をためているタンクを撤去し、トリチウム水を処分する方針を固めたことが11日、関係者への取材で分かった。タンクの跡地は1~3号機の溶融核燃料(デブリ)を取り出した後の保管場所などとして整備する。海洋放出を含む処分方法を絞り込む議論が加速しそうだ。

13日開催の政府小委員会で報告される。政府が、トリチウム水をため続けることは不可能とし、処分の必要性を明示するのは初めて。処分に関する公聴会を来月30日に福島県富岡町で、同31日に同県郡山市と東京都内でそれぞれ開くことも決めた。(東京新聞7/11)

福島第一(フクイチ)の敷地内にトリチウム水をため込んだ巨大タンクが約1000基も林立している。このタンク内のトリチウムの濃度はおよそ100万Bq/L(リットル当たり100万ベクレル)とされる。そういう高濃度のトリチウム水が100万トンほども貯えられているのである。これは1千兆Bq。(総Bq数=100万Bq/L × 100万トン=100万 × 100万 Bq・トン/L=1015Bq)

日本の各原発から海へ放出して良いとされているトリチウム水濃度(トリチウム放出の濃度規制基準)は6万Bq/Lとされている。東電は自主規制基準として1500Bq/Lという厳しい基準を設けていると言っているのだが、それを守るには水で約40倍に薄めることになる。
ただし、トリチウム放出について「総量規制」もあり、フクイチの場合22兆Bq/年である。したがって、上で算出しておいた総Bq数を総量規制値で割ると 45年余となる。ここではごく概算値で計算しているから、50年程かかると考えておけばよい。( 1015Bq ÷ (22×1012Bq/年) = 45.5年 )
【追記7/14】
正確な値は、「福島民友7/13」によると、「トリチウム水のタンクは現在約680基、貯蔵量は約89万5千トンに上る」である。それを拙論はタンク約1000基、貯蔵量約100万トンとしている。


ところが、原発と再処理工場とは規制の法律がまるで違うのだそうで(むろん、人間や生物の安全を基準にすれば、馬鹿げた話なのだが)、驚くべき多量のトリチウムなどが海などへ放出されている。
ところが世界を見渡すと全く桁数の違う規制が行われている。例えばフランスのラ・アーグ再処理施設では、15年の1年間で1京3700兆ベクレル(1.37×1016Bq)のトリチウムが合法的に海洋放出されているのだ。一瞬目を疑う単位かもしれないが、1F(フクイチ)の汚染水タンクに貯められたトリチウム総量の13倍以上を1年間に放出しているのだ。
実は意外に知られていないが、今も日本国内で合法的に大量のトリチウムを放出できる場所が1カ所だけある。それは青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設だ。原発と再処理施設は規制法律が違うため、六ヶ所村では1年間に1京8千兆ベクレル(1.8×1016Bq)のトリチウムを合法的に流すことができる。現実に07年度の1年間に青森の海に1300兆ベクレルのトリチウムが海洋放出された。これは1Fの汚染水タンクに貯蔵されている1千兆ベクレルを上回るトリチウム量だこの海域では今も昔も漁獲規制が行われておらず、しかもこの放出規制は現在も有効である
総合情報誌 ザ・ファクタ 6/29
トリチウムの海洋放出を“他に手段がないから、さっさと実施すべきだ”という無倫理で無責任な放言を行っている原子力規制委の更田豊志委員長などを、見逃し許してしまってはいけない。
近海マグロ漁で有名な津軽海峡や、世界に誇る漁業の宝の海である三陸沖をトリチウムのベクレルで汚染してしまって良いのか。

かつてはトリチウムは生物蓄積が無視できるとされていたが、近頃はそう考えられていないことを、ウィキペディア「三重水素」の「規制基準」が書いてくれている。


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7/13-2018
日本のプルトニウム保有量に米で懸念の声(NHK)

原子力発電所から出た使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再利用することをアメリカが日本に認めた「日米原子力協定」について、今月、有効期間の期限を迎えるのを前に、NPO法人がアメリカの議会などから日本のプルトニウムの保有量に対し懸念の声があがっていることを報告しました。

30年前に改定された「日米原子力協定」は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」などをアメリカが日本に認めたもので、今月16日に有効期間の期限を迎えますが、協定は自動延長される見通しです。

こうした中、外交政策を提言するNPO法人などが12日夜、集会を開き、先月までに合わせて3回、アメリカの議会や政府関係者と意見交換した内容を報告しました。

この中で出席者が、核兵器の原料にもなるプルトニウムを日本が合わせて47トン保有していることに触れ、「プルトニウムをどう削減していくのか、具体的な方策を示すべきだとアメリカが求めている」などと懸念の声があがっていると述べました。

プルトニウムの使いみちをめぐっては、プルトニウムを燃料に使う高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まったほか、一般の原発で消費する「プルサーマル」も計画どおりに進んでいません。

このため原子力委員会は今後、プルトニウムを減らすための新たな基本方針を示すことにしています。(NHK7/13)

日米原子力協定の有効期限である7月16日を目前に、日本の「核燃料サイクル」に対する疑問が、アメリカの専門家や関係筋の間で鮮明になっていることを示している。本欄 7月3日では、オバマ政権で国務次官補を務めたトーマス・カントリーマン氏のインタビューを扱った。
北朝鮮にプルトニウム抽出やウラン濃縮をあきらめさせようとしても同国から「日本はやっている」といわれてしまう。米国が北朝鮮の完全非核化を目指すにあたり日本の核燃料サイクルはますます許容しがたくなっている。(東京新聞7/2)
原子力発電という発電方式の問題に視野を限るのではなく、原発が核燃料サイクルに連結することによって核軍事力形成の中心となってしまうことを認識すべきだ。わが国で「反原発」を主張する場合には、核燃料サイクルを消滅させることを視野に入れて主張するのでなければいけない。


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7/14-2018
【社説】 東海第二原発 再稼働の後押しなのか(中日新聞)

この秋40年の法定寿命を迎える東海第二原発(茨城県)が、施行から5年の新規制基準に「適合」と判断された。運転延長の審査はより慎重に進められるべきなのに、どうしてそんなに急ぐのか。

原子力規制委員会とは、福島第一原発事故の反省に基づいて、巨大な危険をはらむ原発を、名前の通り「規制」する機関ではなかったか。その規制委が、日本原子力発電東海第二原発は、3・11後に改められた原発の新規制基準に「適合」すると判断した。

東海第二は1978年11月に運転を開始した。この秋、40年の法定寿命を迎える古い原発だ。ただし、より厳しい審査に通れば、一度限り20年の運転延長が可能なルールになっている。
東海第二の再稼働には、このあと11月までに、運転延長の審査にパスする必要があり、それには3、4カ月かかるという。スケジュール的にはぎりぎりのタイミングで出た適合判断だったのだ。

十数基の再稼働審査が並行して進む中、規制委は最優先で事を進めた。その上審査の中身も甘い。例えば総延長1400キロメートルにも及ぶ電気ケーブルは、本来すべて燃えにくいものに取り換えるべきなのに、原電側が示した対策では、交換するのは4割弱。残りは防火シートなどで覆うという。それでも“合格”なのである。

東海第二が認められれば、延長はすでに4基目だ。そもそも運転延長は極めて例外的な措置だったはずである。これでは、再稼働の後押しだ。3・11以前への後戻りとの批判が出ても仕方あるまい。

原電は、原発による電気の卸売事業者だ。保有する4基の原発のうち、東海と敦賀1号機はすでに廃炉作業中、敦賀2号機は直下に活断層の存在が指摘され、再稼働は非常に困難な状況だ。東海第二は最後の砦(とりで)である。
電力会社の台所事情への“忖度(そんたく)”が、もし働いているのなら、規制委への信頼も地に落ちる。

原電は地元東海村だけでなく、県都水戸市など30キロ圏内の周辺五市とも安全協定を結んでいる。そこに暮らす100万人近い住民の理解を得なければ、再稼働はありえない。

規制委も原子炉の機械的な安全性だけでなく、避難計画の是非など人間の安全と安心にも踏み込んで、規制機関のあるべき姿を国民に示すべきではないか。本来それが、国民が期待する規制委の役割なのではなかったか。(中日新聞7/14)

よい社説だったので、全文掲載する。原子力規制委員会が原発再稼働を推進するために、万難を排して努力している。まったく、ひどい話だ。

本来、規制委には原発畑の人だけでなく、一般市民も入れて構成されるべきだし、内部の議論がオープンにされるべきである。電力を造り出す装置のために、数十万人規模の避難計画が必要であるようなものは、そもそも不適格な装置ではないか。そういう庶民感覚の議論をすべきだ。


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7/15-2018
「東京新聞」の《原発のない国へ 基本政策を問う》という連載の7月14日分の前半は、イギリスのヒンクリーポイント原発の新造計画に関して、英国会計検査院がこの計画は「高リスクで高額である」として, 政府批判に踏み切ったという記事である(ここ)。
後半部は日本の原発の発電コストについて、経産省は無理矢理に「再生エネルギーは高い」という結論を導いて国民に押しつけようとしている、という記事である。ここでは後半部のみ掲げる。

今月閣議決定した日本政府のエネルギー基本計画では、2030年の発電量の2割を原発に依存する。東京電力福島第一原発の事故を経験してもなお再生可能エネルギーの大量導入に消極的で、原発を維持し続ける基本政策を、国内外の現場で検証する。

日本のエネルギー計画 コスト増反映せず推進
原発推進の理由として、経済産業省は「発電コストが他の電源に比べて安い」と、エネルギー基本計画で示している。
根拠は2015年の試算。掃除機を1時間使った際の消費電力量に相当する「1キロワット時」の発電コストは、太陽光が「24・2円」、液化天然ガス(LNG)火力が「13・7円」、水力が「11・0円」。原発は「10・1円~」とあり、最も安いように見える。「~」をつけて最安値を見せているのは原発だけ。経産省はその理由を、発電コストに東京電力福島第一原発事故への対応費が入っており、これが膨らむ可能性があるからと説明する。

実際、福島の事故処理費は大幅に増えている。15年の試算時は12・2兆円だったが、賠償、除染、廃炉費用とも増え、直近では21・5兆円に上る。

15年当時には増大を想定していなかった原発建設費も膨らんだ。1基の建設費は、15年当時は4400億円と想定。その後、三菱重工や東芝が海外で計画した原発は、安全対策のためにコストがかさみ、1基1兆円を超えている。

龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)によると、建設費の高騰を反映させた場合、原発は「17・6円」にはね上がり、水力やLNG火力を大きく上回る。17年度の大型の太陽光発電の固定買い取り価格は「17・2円」まで下がっており、原発の方が高くなる。基本計画で示した試算では、こうした変化を考慮していない。経産省の担当者は「コスト見直しが必要なだけの大きな構造的変化がない」と説明した。

一方、経産省は再生可能エネルギーの新たな試算を公表している。再生エネは天候によって発電量が変動するため、安定供給には蓄電池などが必要という前提を置いた。その費用を含めると、「1キロワット時=69円(19円か)」に高まるというのだ。
現実には、再生エネの供給が低下すれば、LNG火力の発電量を上げて電気の供給を安定させている。蓄電池が必ずいるわけではない。大島教授は経産省の試算について、「無理に再生エネが高いと印象づけ、世論をミスリーディングしようとしている」と厳しく批判した。(図も 東京新聞7/14)

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7/17-2018

日米原子力協定が自動延長=通告で失効、米政府の影響拡大も
(時事通信)

日米原子力協定が17日、発効後30年の満期を迎え、自動延長された。日本の原子力利用を平和目的に限定する同協定は、原発の使用済み核燃料に含まれ、核兵器への転用が可能なプルトニウムの保有を日本に認める根拠でもある。ただ、自動延長により、日米の一方が通告するだけで6カ月後に協定が失効することとなったため、米政府が日本のエネルギー政策に影響を及ぼしやすくなるとの見方もある。

現在の内容の協定は1988年7月に発効。日本は原子力の平和利用を約束する代わりに、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する再処理やウラン濃縮などを認められている。プルトニウムの発電への再利用を柱とする日本の「核燃料サイクル」事業も、この協定を基盤としている。

トランプ米政権は協定の期限切れに際し、日本の原子力政策を容認する形で、改定を求めず自動延長を選択した。しかし、米国内には核拡散への懸念から、既に原爆6000発分に相当する約47トンのプルトニウムを保有する日本に、削減を求める声が根強い。

一方、政府は日本が保有するプルトニウムを削減する方針だが、具体的な削減の見通しは立っていない。再処理工場の稼働の遅れに加え、通常の原発でプルトニウムとウランの混合燃料を使うプルサーマル発電も、東京電力福島第1原発事故の影響による全国的な原発停止で遅々として進まず、核燃料サイクル全体が停滞している。

今回の自動延長で、協定は日米どちらかの一方的な通告でも終了可能となった。政府関係者は日米同盟を根拠に「米国が協定破棄を求めることはない」と説明するが、対外的な強硬姿勢を取るトランプ大統領の下で米側が協定破棄をちらつかせ、自国に有利な形で日本にエネルギー政策の見直しを迫るとの懸念もくすぶっている。(時事通信7/17)

日本が「使用済み核燃料の再処理」という無意味な工程から、一切手を引く、ちょうど良い機会である。

再処理を行おうとするのは、今となっては核兵器の製造の野心がある場合しかあり得ない。ウラン燃料の不足議論や高速増殖炉などはすべて20世紀半ばの夢であって、時代遅れとなってしまった。国を挙げてその夢にしがみついているのは、日本だけになった。
「日米原子力協定が自動延長に切り替わった」この機会に、日本の時代遅れの原子力政策を全面的に考え直すべきである。産業としての原子力からは手を引くべきだ、それは未来の日本にいらざる負荷を残すばかりである。


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7/21-2018
函館市の原発訴訟に寄付1億円超 ふるさと納税など(東京新聞)

北海道函館市が大間原発(青森県大間町)の建設差し止めを求めて起こした訴訟の費用として、全国からふるさと納税制度などを通じて市に集まった寄付金が18日までに1億円を超えた。

同市と大間原発は津軽海峡を挟み約23キロの距離。市は2014年、事故が起きれば大きな被害に遭うとして、事業者の電源開発(Jパワー)と国を相手に、自治体では初の原発建設差し止め訴訟を東京地裁に起こし係争中。ふるさと納税で訴訟費用を募る異例の取り組みを進めていた。

市によると、18日までに一般寄付が約5663万円、ふるさと納税での寄付が約4604万円で、計約1億267万円となった。(東京新聞7/18)

この問題に関して本欄は前から関心を持っていて、1年前の2017年7月17日を見て下さい。全国の方の関心が途切れず持続していることに、言い知れぬ力強さを感じます。

別の分野ですが、「きっこのブログ」の力作、「自衛隊のイラク派遣日報から消された真実」(7/19)を紹介しておきます。
きっこさんが当時「細かくチェックしていた」という現地の報道「イラク・レジスタンス・レポート」が登場するあたりから、手に汗を握るような内容になってくる。必読です。


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7/22-2018
ヒラメから自主基準超放射性物質(NHK)

福島県沖で行われている試験的な漁で、20日、水揚げされた主力魚種のヒラメから、県漁連の自主基準を超える放射性物質が検出され、安全が確認できるまでの当面の間、ヒラメの出荷を見合わせることになりました。

福島県漁業協同組合連合会によりますと、福島県沖で行われている試験的な漁で、いわき市の久之浜沖で20日捕獲されたヒラメから、1キログラムあたり59ベクレルのセシウム137が検出されたということです。

この値は、1キログラムあたり100ベクレルとしている国の出荷基準を下回っているものの、県漁連がより厳しく定めている1キログラムあたり50ベクレルの自主基準を上回っています。
福島県沖でとれる「常磐もの」の代表格として知られるヒラメは、主力魚種の1つで、おととし9月に試験的な漁の対象となって以降、自主基準を上回ったのは今回が初めてだということです。

県漁連では、20日とれたヒラメをすべて回収するとともに当面の間、試験的な漁の対象から外して出荷を見合わせ、調査のために捕獲した個体の検査結果を踏まえて再び試験的な漁の対象とするか判断するとしています。
県漁連は「ヒラメは主要な魚種なので影響は大きいが、消費者の安心安全のために必要な調査を粛々と行っていきたい」としています。(NHK福島7/20)

ヒラメは底生生物や小魚を食べて育つ肉食性の魚であり、ヒラメへの放射性物質の蓄積は複雑な生態系のなかで行われる。海水中のセシウム137が減少しても単純にヒラメに蓄積しているセシウム137が減少するものではない。
また、個々の個体によってその生活史の違いが反映して、放射性物質の蓄積量が相違するものと考えられる。

今回の結果は、放射性物質が生物蓄積をする現象の複雑さをよく示している。おそらく、多数のヒラメについて長期に渡って測定し続ければ、平均的にはセシウム137の半減期(約30年)にしたがった減少傾向を示すものと考えられるが、個々のヒラメの放射線量はその都度測定してみないと何も言えないだろう。


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7/23-2018
核のごみ中間貯蔵施設造らせない 白浜で住民団体設立へ(紀伊民報)

和歌山県白浜町の日置川地域の住民有志が29日、原子力発電所から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設を地元に造らせないための団体をつくる。井澗誠町長は受け入れについて否定的な姿勢を示しているが、団体事務局の冷水喜久夫さん(67)=白浜町大古=は「候補地になる可能性はあると考えている。反対の声を広げていきたい」と話している。

団体は「核のゴミはいらん日置川の会」。約60人が会員になり、うち6人が共同代表に就く予定で、今後は、講演会や署名集めなどの活動を考えているという。

中間貯蔵施設については、関西電力が「2018年中に計画地点を示す」との方針を昨年11月に表明している。

冷水さんによると、日置川地域では関電や関連会社が沿岸部に広大な土地を所有しているとして、一部住民は「施設ができるのでは」と疑念を抱いている。関電は現時点で、具体的な地域名は挙げていない。

設立総会は29日午後1時半から、白浜町日置の日置川拠点公民館で開く。終了後(2時ごろから)は、原発に反対する団体「美浜の会」の小山英之さん(78)=堺市=が「中間貯蔵施設とは何か」と題して講演する。(紀伊民報7/21)

日置川地域では古くから原発反対の運動が存在していたことは、本欄で何度か取り上げている。2014年3月18日2017年1月15日 などをご覧になって下さい。

関西電力とその関連会社は、かつて日置川地域に原発を造ろうとした時期に、広大な土地を購入しているらしい。それで「核のごみ中間貯蔵施設」の候補地になる可能性があるのである。

南紀・熊野地方には原発関連施設は一切造らせないという伝統を、ぜひ堅く守ってほしい。


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7/26-2018
原発新増設「とても競争力持てない」 IEA元事務局長(朝日新聞)

田中伸男・元国際エネルギー機関(IEA)事務局長が23日、都内のシンポジウムで講演し、原発を新設・増設した場合、「(経済性の)競争力は太陽光発電に比べてない」と指摘した。

田中氏は原発メーカーなどでつくる日本原子力産業協会理事を務めるなど原発推進派として知られる。シンポジウムは自然エネルギー財団が主催した。

田中氏は「IEAが昨年の報告で『多くの国で太陽光が最も安くなる』と指摘したことにショックを受けた」と発言。海外で再生可能エネルギーの価格破壊が進み、1キロワット時あたり数円の事例も出ていることなども指摘した。
 一方、原発は東京電力福島第一原発事故以降、安全対策費がかさみ、コストが上昇している。原発の新増設について田中氏は「1基1兆円以上かかり、べらぼうに高い。とても競争力を持てない」と述べ、新増設に否定的な見方を示した。

原発再稼働が進まない現状について「国民の理解がないから」だとし、東電の柏崎刈羽原発の再稼働は「難しいだろう」と話した。そのうえで、田中氏は米国などと共同で、経済性のある次世代原子炉の開発を進め、信頼回復に努めるべきだとの考えを示した。(朝日新聞7/24)

IEA(国際エネルギー機関)は、第一次石油危機後の1974年に設立された、OECD枠内の組織。本部はパリにある。IAEA(国際原子力機関)は国連傘下の機関で、本部はウィーンにある。まるで違うので混同しないように。

IEA元事務局長・田中伸男氏のここで示されている見解は、エネルギー受給の世界常識的な視点で述べられているので、参考になる。日本の原子力ムラのようなバイアスが掛かっていない。

原子力発電は、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー発電と経済的には到底太刀打ちできないことは、世界の常識となっている。官僚専制の日本では、この世界の常識があからさまに語られず、政策に反映されていない。


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7/27-2018
もんじゅ 燃料取り出し延期へ 来月以降 試験中断が影響(中日新聞)

日本原子力研究開発機構が高速増殖原型炉もんじゅ(敦賀市)で、今月下旬に予定していた核燃料の取り出し作業を8月以降に延期することが、関係者への取材で分かった。燃料を取り出すための機器の不具合で動作試験を中断したことが影響した。

機構は当初定めたスケジュール通りに廃炉作業を実施できなくなった。機構を所管する文部科学省は、地元自治体と廃炉の進捗(しんちょく)状況について意見交換する協議会を27日にも開き、延期を伝える。福井県や敦賀市は今後の工程について説明を求める方針だ。

機構は今月下旬から水プールに核燃料を移す作業を始める予定だったが、今月16日、作業開始前の動作試験で燃料出入機に不具合が発生して試験を中断。異常のあった部品を交換して8日後の24日に再開したが、取り出しのための訓練を十分にする時間がなくなった。機構は2022年末までに原子炉内を含めた530体の核燃料を水プールに移し、47年度までに廃炉を完了させる計画。(中日新聞7/26)

廃炉作業に取り掛かろうとしているもんじゅでは、様々のこまごまとしたトラブルが続出する。今月14日に報道されたことだが、燃料を掴んで運び出す装置に、冷却剤であるナトリウムが固着していて警報が発生した。この事故の発生は今月4日であるという。
ナトリウムは空気中で発火する物質で、水銀のように不透明であり、核燃料はその中に沈んでいるので目視できない。燃料を掴んで取り出す装置のいずれかにナトリウムが付いていて、空気中に出て来て発火し警報が鳴ったのだろう。しかし、報道までに10日間を要している。

16日に再び燃料取り出し機に不具合発生、部品交換して動作試験を再開するまでに8日間を要した。この不具合がどのようなもので、4日の事故と関連があるのかどうか、部品交換などになぜ8日間かかったのかなど、詳細は不明。

ナトリウム中に沈んでいる530体の核燃料を取り出して、まず水プールへ移す作業をする。これが2022年末までの予定であるが、取り出しの準備段階でトラブルに見舞われていて、予定が延期となることは避けられない、というのである。
もたついている間に、1995年12月のナトリウム漏れ事故のような深刻な事故を、再度起こさないことを願う。


トップページの写真を、コチャイロヨコバイからハエ目トゲアシモグリバエ科トゲアシモグリバエの一種に替えた。

このところ、猛暑続きで出来るだけ外へ出ないようにしていた。それでもカメラを持って多磨霊園や浅間山周辺を自転車で回ってみるが、落ち着いて虫を探してみる気にならない。猛烈な暑さで、“カメラを持った変な老人が倒れていた”などとニュースになったらかなわないと思って、慌てて帰宅した。
今日は久しぶりに早朝の気温が25℃を切っていて、過ごしやすい。それで、浅間山公園に行ってみた。台風12号の雨が来るというので、期待している。関東は長い間降雨がなく浅間山も雨を待っている。


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7/28-2018
<福島原発事故>燃料デブリ、初の接触調査へ 10月以降(毎日新聞)

政府と東京電力は26日、福島第1原発事故で原子炉格納容器内に溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しに向け、10月以降に2号機内部に機器を投入し、デブリを初めて接触調査すると発表した。硬さなどを確認し、来年度には少量のデブリを試験採取する。

デブリの本格的な取り出し開始予定は2021年中で、政府と東電は同原発で最も調査が進む2号機からの実施を検討している。

今回の接触調査は、1月に内部撮影で用いたカメラ付きパイプを改良して実施する。先端に、挟んでつかめる専用機器を付け、デブリの硬さや動かせるかどうかなどを確かめる。

来年度には1号機を含めたデブリの試験採取を目指し、その調査結果を踏まえて本格取り出しの工法を決める。東電・福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は記者会見で「デブリは未知なるものだが、取り出しに向けてステップ・バイ・ステップで調査する」と説明した。(以下略)(毎日新聞7/26)

2号機の格納容器底部の写真は、例えば本欄 2018年1月20日 にある。ゴロゴロしている小石のように見えるものに「接触」してみて、堅いのか柔らかいのか、グラグラしているものか堅く固着しているものかなどを確かめる。燃料デブリはコンクリートや金属を溶かし込んで固まったものなのだから、堅くて固着しているだろう、と予想されるが。

考えてみると、フクイチでは炉の底部を表面的に写真を撮って見たというだけで、実質はほとんど何も分かっていない。すべてはこれからである。1979年のスリーマイル島事故ではデブリを全部取り出すことが出来ており、燃料デブリは極めて堅いものであることなどが分かっている。
人の近づけない高線量の場所であり、工具を作成し、遠隔操縦で切り削り、つかみ取るなどの難作業が待っている。


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