き坊の近況 (2018年8月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

8/1-2018
原子力委、プルトニウム削減で新指針 具体的方法・数値示さず(東京新聞)

国の原子力政策を審議・決定する原子力委員会(委員長=岡芳明・元早大理工学術院特任教授)は31日、原発の使用済み核燃料から発生するプルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定し、公表した。現在の保有量約47トンを上限と設定し、これより削減させるとした。ただし具体的な削減の方法や数値目標には言及せず、電力会社に委ねた形で、実際に削減が進むかは見通せない
岡委員長は具体策に踏み込まなかった理由について「民間の経営、創意工夫をできるだけ生かすため」と説明した。

プルトニウムを大量消費する高速炉開発が滞る中、保有量削減には既存の原発で少しずつ消費するプルサーマル方式の実行しか手段がないのが現状。新指針では毎年の(再処理工場での)抽出量を政府の認可事項とし、プルサーマル方式で消費できる量に限定するとした。プルトニウムを抽出する再処理工場(青森県六ケ所村)については現計画通り2021年度上期に完成しても、フル稼働するとプルトニウムが増えすぎるおそれがあるため、「稼働を抑えることもある」(原子力委事務局)としている。

また、「電力会社間の連携を促す」と明記。プルサーマル原発の再稼働のめどが立っていない東京電力などのプルトニウムを、プルサーマル原発が再稼働している関西電力などで消費させることも想定した。
日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルを進めようとしているが、プルトニウムを使う高速増殖原型炉もんじゅは16年に廃炉が決定。原爆6000発に相当する大量のプルトニウムを抱えていることに米中など海外からの警戒感が示されている。

再処理容認 矛盾の政策
原子力委員会の新指針はプルトニウム削減を主張する一方、増加につながる再処理工場稼働を認める矛盾に満ちた内容となった。

再処理工場を運営する日本原燃によるとフル稼働する2025年度には年間8トンのプルトニウムを生産する。一方、プルサーマル原発は1基0・5トンしか消費しないため再稼働している4基の消費分は計2トン。この結果、毎年6トンずつ増える計算。このため、同委は再処理工場の稼働を落とすことが必要と指摘する。

だが、再処理工場の建設・運営費は電気代に託送料などで上乗せ徴収される仕組みになっており、稼働が落ちて赤字が膨らめば、さらに電気代での国民負担が増えかねない。高速炉の後継機も共同開発する予定の仏が計画を縮小、実現のメドは立たない。市民団体・原子力資料情報室の松久保肇氏は「もはや核燃料サイクルが経済的に成り立たないのは明白。撤退が筋だ」と指摘している。(図も 東京新聞8/1)


先月17日は、日米原子力協定の30年満期の日であった。今後は「自動延長」となり、「日米一方が通告するだけで6ヶ月後に協定が失効する」ことになり、日本は原子力政策についてアメリカ政府の意向をより受けやすくなった。

本欄は、この問題に関して先月何本か記事を載せた。まとめておく。
 7月 3日 核燃 消費者、産業界にも重荷 元米国務次官補 一問一答(東京新聞)
 7月10日 もんじゅ廃炉費用、1兆円超えも 使用済み燃料処理に数千億円以上(福井新聞)
 7月13日 日本のプルトニウム保有量に米で懸念の声(NHK)
 7月17日 日米原子力協定が自動延長=通告で失効、米政府の影響拡大も(時事通信)

日本が原子力発電を持つという政策が、無意味なだけでなく経済的にもまったく無駄なことをしていることが弁解のしようも無いほどあからさまになってきた。この政策はプルトニウムを保持して潜在的な軍事大国のポテンシャルを維持するという軍事力願望の一派だけが納得する政策だ。
地震・津波・火山の多いわが国で原発が危険極まりない装置である事は、311東日本大震災で周知の通りだ。
いまやわが国は無駄な原子力政策への資力投入をやめ、太陽熱・風力・地熱・水力発電など、自然エネルギーによる発電に傾注すべきだ。



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8/2-2018
廃炉ごみ 処分場難航 電力各社、選定進まず(毎日新聞)

放射性廃棄物の種類と処分方法 原子力規制委員会が1日、原発の廃炉に伴って原子炉内から出る放射性廃棄物の規制基準案をまとめたことで、廃炉で出るごみの処分ルールが実質的に出そろった。しかし電力会社による処分場の選定は進んでいない。老朽原発が増えて廃炉時代を迎える中、廃棄物の行方は宙に浮いており、廃炉作業が滞りかねない。

東京電力福島第1原発事故を機に、原発の運転期間は原則40年に制限された。老朽原発の廃炉が相次ぎ、福島第1を除き計9基で廃炉作業が進んでいる。
深さ300メートル以上に地層処分される高レベル放射性廃棄物(核のごみ)とは別に、作業に伴う廃炉廃棄物は放射能レベルで「L1」から「L3」に区分され、9基分では計約8万トン発生する見通しだ。このうち汚染度が高い制御棒などL1廃棄物は2200トンに上るという。

さらに別に関西電力大飯1、2号機(福井県)や四国電力伊方2号機(愛媛県)、東京電力福島第2原発も廃炉やその方針を表明しており、ごみの量が膨らむのは確実だ。

しかし、現時点で処分の具体的な計画が進むのは、敷地内に埋設処分する日本原子力発電東海原発(茨城県)のL3廃棄物(約1万6000トン)だけ。今後、L1廃棄物については電気事業連合会が中心となり業界全体で処分場所などを決める方針だが、難航することも予想される。(下図も 毎日新聞8/1)


原発廃炉にともない、発生するゴミをどのように処分するかのルールがやっとはっきりしてきた。その困難さもばからしさもはっきりしてきた。
制御棒や燃料体を入れるケースなどが「L1」で、活断層や火山の影響のない場所で70mより深い地下に10万年間保管する。これが実際可能かどうか、誰にも保証できない。そんな処分法が、はたしてまともな処分法と言えるのか。

40年間使った原発は廃炉にするのが原則であり、今後、続々とこのような困難な処分法を必要とするゴミが発生する。考えてみて欲しいが、わずか40年間発電しただけで10万年の未来にわたって保管を必要とするゴミが次々に生まれるような、そんな発電方法はまともな産業と言えるか。未来の子孫達の利用可能国土をせばめ,彼らにその保守管理をすべてゆだねる。

図中に「使用済み燃料」の所に矢印が付いている。これは使用済み核燃料の再処理を行ってプルトニウムを取り出し、残りの「核のゴミ」をガラス固化体にして300m以深で10万年以上保管するという計画である。世界があきらめた「核燃料サイクル」を日本だけがまだ止めないで、しがみついている。
世界の原発保有国は、使用済み核燃料を再処理せずそのまま地層処分する。その方がずっと安上がりだからだ。その前に忘れてならないことは、世界の多くの原発保有国は原発を停止して脱原発に切り替えている。


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8/3-2018
島根3号機申請、県了解へ 東日本大震災以降2例目(中日新聞)

建設がほぼ完了した島根原発3号機(松江市、出力137万3千キロワット)の新規稼働に必要な原子力規制委員会審査の申請に関し、中国電力から事前了解の申し入れを受けた島根県の溝口善兵衛知事が申請を了解する方針を固めたことが1日、分かった。2011年の東日本大震災当時建設中だった原発が稼働に向けた手続きに入るのは電源開発(Jパワー)の大間原発(青森県)に続き2例目

溝口知事はこれまで「(了解するかの)判断の根拠は立地自治体、周辺自治体だ」とし、これらの自治体が全て了解すれば島根県も容認する意向を表明。1日までに、周辺自治体が事実上全て容認したため方針を固めた。(中日新聞8/1)

原発30km圏にある隣の鳥取県でも、平井伸治知事が2日、県議会の全員協議会で、申請を認める考えを正式に表明した。

これによって規制委の審査が始まるわけであるが、審査のあとに稼働を了解するかどうかというチェックがある。しかし、内堀まで埋められた自治体に抵抗する力はないだろう。


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8/4-2018
もんじゅ燃料出入機で警報 取り出し訓練めど立たず(福島民友)

日本原子力研究開発機構は3日、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で、使用済み核燃料の取り出しに向けた準備作業中に、燃料出入機の異常を知らせる警報が鳴るトラブルが1日にあったと発表した。

機構は今後、要員を増やしてトラブルへの対応を検討し、取り出しを8月中に始めるとしているが、取り出しに向けた模擬訓練実施のめどは立っておらず、予定通りに進まない可能性もある。

機構によると、7月25日、原子炉近くの「炉外燃料貯蔵設備」から制御棒を取り出してステンレス製の缶に収納する作業中、近くに設置していた監視カメラのレンズが水蒸気で曇るトラブルが発生した。(福島民友8/3)

もんじゅ廃炉の準備にかかる入口で、またまたトラブルが生じている。本欄では 7月27日にまとめておいたが、燃料取り出しの動作試験の段階で、7月4日・16日にトラブルが発生している。
ところが、上引の報道では7月25日8月1日に再度トラブルが生じたという。続けて4回もトラブルが発生したのである。

7月25日のトラブルは、毎日新聞が詳しく報じている(ここ)。 燃料取り出しの訓練のために燃料棒ではなく制御棒を、燃料プール(200℃のナトリウムが張ってある)から水のプールまで移動した。制御棒が高温であるため水をかけて冷やしたところ、水蒸気が発生しカメラが曇ってしまった。そのために実験が中断した。
随分おそまつなトラブルのようであるが、あらかじめ想定できていなかったのであろう。「日本原子力研究開発機構は対応に追われている」と毎日新聞は書いている。今月中に本格的な廃炉作業に着手するという予定であったが、遅れる可能性がある。

1日のトラブルの詳細は不明であるが、「燃料出入機の異常を知らせる警報が鳴るトラブル」というのなら、7月4日とそっくりである。地元紙・福井新聞8/3は2日行われた県原子力環境安全管理協議会で「機構の運営や国の監督体制を疑問視する意見が相次いだ」と報じている(ここ)。


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8/6-2018
スペインとポルトガルで46度 水温上昇で原子炉休止 (日本経済新聞)

記録的な熱波に見舞われたスペインとポルトガルで4日、気温が46度を超えた。1977年にギリシャで記録された欧州での史上最高気温の48.0度に迫る勢い。欧州各地では原子炉の運転休止も起き、影響が広がっている。

アフリカから押し寄せた熱波が一因で、英気象庁や欧州メディアによると、スペイン南西部で46.6度、ポルトガル中部で46.4度を記録した。同国の首都リスボン郊外では冷房の利用が集中して大規模な停電が発生。フランスでは冷却水として使う川の水温が上昇し、複数の原子力発電所で原子炉の運転が一時的に止められた

例年は夏も涼しい北欧のフィンランドでも今週は30度に近づいた。冷房を備えた住宅が少なく、首都ヘルシンキのスーパーは4日、冷房の効いた店内で快適に寝泊まりしてもらおうと、近隣住民ら約100人を招待した。

ノルウェーの交通当局は、トナカイや羊が暑さをしのぐためトンネルに避難しているとしてドライバーに注意を要請。スウェーデンの最高峰とされてきたケブネカイセ山の南側山頂部では高さ約4メートル分の氷が解けて山頂の標高が下がり、最高峰でなくなった可能性が指摘されている。(日本経済新聞8/5)

ヨーロッパの原発の多くは大河を冷却水として用いている。今回のフランス原発の発電停止は熱水を河へ戻すと暑さに一層拍車がかかることになるとして、電力会社が発電停止の措置に踏み切ったものという(時事通信8/5)。

ノルウェーで夏に動物がトンネルに避難することは珍しくない現象だが、今年は例年より甚だしい、と。写真付きのAFP記事(ここ)。


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8/7-2018
<原発賠償見直し先送り> 資金確保、不十分なまま(毎日新聞)

原発事故の賠償制度に関する政府内の議論は、電力会社に義務付けた賠償措置額(原発ごとに現行最大1200億円)を引き上げず、実質的な見直しを先送りすることで決着した。

現行制度は賠償措置額を超えた部分については、他の大手電力と協力して賠償する「相互扶助」といえる仕組みだが、電力自由化の流れの中で揺らいでいる。

議論に関わった原子力委員会専門部会の委員は「賠償額が想定より膨らむ恐れがある中、自由化で互いが競合相手になっている。相互扶助は大きな事業リスクで、いずれ行き詰まる」と口をそろえる。地域独占で運営されてきた時代と異なり、電力会社が経営に行き詰まれば、万が一の際の賠償が滞る恐れもある。

2011年の国会の付帯決議で「1年後をめど」とした賠償制度の抜本的見直しは、福島事故から7年以上を経て結局、現状追認となったが、現行制度が持続可能といえないのは明らかだ。

「不十分な備え」という現状を解消するため、政府や電力会社、民間保険会社など関係者は制度見直しについて今度こそ、期限を区切って資金確保の在り方を検討すべきだ。(毎日新聞 8/6)

311・フクイチ事故以前であれば「1200億円」は見上げるような金額の感じがあったが、今や、それではまるで不足していることがあからさまになった。現状では賠償支払額が8・3兆円まで膨らんでいるが、更にどこまで増えるかわからない。もちろん「現行法では、電力会社に上限なしで原発事故の賠償責任を負わせる『無限責任制』を規定。民間保険と政府補償契約で賠償措置額をカバーする」(毎日新聞8/6)。

東電が請け負えない不足部分は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じ肩代わりし、大手電力も協力して返済する仕組み」なのであるが、電力自由化によって、電力会社同士の協力が見通せない情勢となっている。

それにもかかわらず、原子力委員会専門部会は先延ばしを決め込んだ。近い将来に、原発の巨大事故が起きないことを神頼みして時間稼ぎするしかない。まったく、わが国はなんという腐った官僚主導国家に成り下がってしまったのであろう。
充分に事故補償の手当てができないような原発は、まず運転を止めることを工夫するのが、正常な国家官僚の役割のはずだ。


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8/10-2018
福島原発、燃料取扱機が自動停止 検査中に異常警報(中日新聞)

東京電力は9日、福島第1原発3号機の原子炉建屋にある使用済み核燃料プールの燃料取扱機が、8日の原子力規制委員会による使用前検査中に異常警報が鳴り、自動停止したと発表した。原因は調査中で、11月開始予定の核燃料搬出作業への影響の有無について確認を進めている。

東電によると、8日午後3時ごろ、燃料取扱機でプールから模擬燃料を取り出そうとした際、ケーブルが破断していることを示す警報が出て停止。実際にケーブルの破断はなかった。

3号機では3月以降、燃料を入れる輸送容器をつり上げるクレーンの制御盤でも不具合が相次ぎ、部品を交換して7月末に復旧させたばかりだった。(中日新聞8/9)

フクイチの廃炉現場では不安定な状況が続いているということ。そういう状況について、認識をあらたにする。

昨日の福島民友は「「台風13号」福島県上陸の恐れ 9日・昼前から夕方にかけ接近」というニュースを流した。実際は13号は沿岸スレスレを北上して、上陸はなかった。それは幸いだったのだが、雨量が心配である。フクイチの地下水が急増する可能性があるから。
上の福島民友は「9日午後6時までの24時間雨量は浜通りと中通りで200ミリ、会津で150ミリが見込まれる」と報じている。数日間は、関連ニュースに目を配るつもりでいる。


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8/12-2018
東海第二「再稼働」検討 水戸市有識者17人公表 「市民の声反映」疑問の声(東京新聞)

日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)の再稼働の是非を判断するため、安全性などを検討するのに水戸市が独自に設置する有識者会議で、市は10日、会議のメンバー17人を公表した。ただ、一部市議からは、原子力の専門家に議論が引っ張られ「市民の声が反映させられるのか」と疑問の声も出ている。

市によると、17人の内訳は学識経験者が8人。昨年11月まで県の原子力安全対策委員会の委員長を務めた東大院の岡本孝司教授(原子炉工学)や、水戸市医師会の田口雅一理事らが名を連ねる。
市民枠は9人。町内会長の集合体の「市住みよいまちづくり推進協議会」や、地域防災に携わる市女性防火クラブ連合会や消防団のメンバーが参加する。

会議は非公開で、深刻な事故に備えた広域避難計画に関する疑問や問題点を洗い出すほか、原電の事故対策について、委員が意見を出し合う。市の担当者は「11月までには初回を開きたい」と話す。

メンバーの名簿は、この日開かれた市議会総務環境委員会で報告された。ただ、東海第二の運転期限が11月末に迫る中、開催時期が不確定で、運転期限ぎりぎりになることや、市民の声を反映させられる会議になるのか、市議から疑問が投げ掛けられた。
公明の伊藤充朗市議は「当初、再稼働の是非について市民の意見を聞くということだったが、原発の一般的な安全性を問う機関になっているのではないか。本当に市民の声を反映させ、再稼働の是非を判断できる機関になるのか」と疑問を呈した。(図も 東京新聞8/11)


「学識経験者」は地震や災害避難の専門家などがいれば十分だ。「原発の工学的な安全性」はすでに原子力規制委が判断している。岡本孝司らのような原子力ムラを入れる必要がどこにある。

水戸市は、市行政から見える市民秩序にしたがって担当者を選んでいる。商工会議所・観光協会・まちづくり協議会・消防団・PTA等々のトップメンバーは、市行政の一部と言っても良い。
「市民の意見を聞く」のなら、まず、公募が原則だろう。そして、会議は公開でなければならない。ネット中継があれば更によい。


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8/15-2018
環境省、放射性物質の汚染土紛失 11年に宅配後保管 (共同通信)

環境省は14日、東京電力福島第1原発事故後の2011年11月に宅配便で送付され、省内で保管中の放射性物質で汚染されたとみられる土を紛失したと発表した。誤廃棄した可能性があるいう。汚染土の放射性物質の濃度は低く、健康への影響は考えにくいレベルとみられる。

環境省によると、最近、保管状況を調べようとしたが見つからず、紛失に気付いた。備品の整理をした際、誤って一緒に捨てた可能性がある。

11年11月の送付当時は、環境省官房総務課の職員が埼玉県内の自宅に持ち帰り、空き地に廃棄していた問題も発覚。すぐに回収し、省内で保管していた。(共同通信8/14)

2011年11月の、環境省職員が埼玉県内自宅付近の空地に汚染土壌を抛棄していた事例のクリップ
環境省職員 福島から送られてきた汚染土“不法投棄” (スポニチ)

東京電力福島第1原発事故による放射性物質で汚染されているとみられる土壌が環境省に2度送りつけられ、そのうち一つを同省職員が埼玉県の自宅近くの空き地に投棄していたことが17日、分かった。細野豪志環境相が緊急会見で明らかにし、「あってはならない事案」と謝罪。総務課長らを同日付で異動させた上で、関係職員を処分する考えを示した。

環境省によると、最初に土壌が宅配便で送られてきたのは8日。差出人は福島市の男性名で、ポリ袋に入った状態で小さな段ボール箱に詰められており、「福島市の自宅で採取した土であり、環境省で保管、処分されたい」という内容の手紙が添えられていた。

約0・8メートル離れたところから放射線量を測定したところ毎時0・18マイクロシーベルト、ポリ袋のすぐ外側で0・6マイクロシーベルトの数値が出た。

いったん開封したものを送り返すのは難しいとの判断で、不要物として処理することに。同省官房総務課が方法を検討する中で弥元伸也総務課長が「送ってくる住民の気持ちは分かる。線量は低く、関東地方でも多く見られるレベルだから、自宅の庭で処分しようか」と話した。これを受け別の職員が12日に持ち帰り、翌13日空き地に捨てたという。

16日にも、同じ送り主からとみられる段ボール箱が同省に送られてきたため、同課が細野氏や幹部に報告し不適切な処分方法が発覚。環境省は職員が空き地に土を投棄した理由について「処分に困って、してしまった」としている。捨てた土壌は17日に回収した。土が盛り上がった状態で置かれていたため、全て回収できたとしている。

来年1月に全面施行される「放射性物質汚染対処特別措置法」では、除染対象地域の土壌は、線量の大小にかかわらず不法投棄を禁じている。同省は、今回の職員による投棄について、施行後ならば法に抵触する可能性があるとした。

細野氏は「除染の役割を担っている省として対応が極めて不適切」として、総務課長を同日付で自動車環境対策課長に降格させる人事を行った上で、政務三役も含めた関係職員の処分を18日にも行う考えを示した。また自身についても「監督不行き届きがあった」と謝罪した。

特別措置法では、福島県内の土壌は、県内に開設予定の中間貯蔵施設に送ることが義務づけられる。細野氏は土壌を送りつける行為について「気持ちは分かるが、除染に力を尽くすので慎んでほしい」と話した。(スポニチ  2011年11月18日 06:00 )

送りつけられた汚染土を回収して環境省内でロッカーに入れて保管していたが、ロッカーごと業者が処分してしまったようだ、ということ。
福島市民が抗議の意味を込めて自宅庭の土を環境省へ送付してきたといういきさつが伝わるような保管方法でなかったことが想像される。ただ単にロッカーに入れて置いただけなのだろう。環境省の問題意識の無さ、士気の低さがうかがわれる。

このところ、官僚の質の低下・失態が頻発し、呆れるほどの悪質さを見せつけられる事例がしょっちゅうだ。「政治が官僚に使われる」のが日本の官僚主導型国家だが、近頃はその官僚が腐敗し、どうにもならないほどのレベルに墜ちてしまっている。末期的だ。


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8/16-2018
クレーンで不具合、福島第1原発 3号機原子炉建屋、警報鳴り停止(福島民友)

東京電力は15日、福島第1原発3号機の原子炉建屋上部の屋根カバー内に設置されたクレーンが、片付けのため資機材をつり上げた際、異常を知らせる警報が鳴り、自動停止する不具合があったと発表した。クレーンは、建屋上部プールに残された使用済み核燃料などの取り出し作業で、輸送容器のつり下ろし用に使う予定。クレーンは5月にも制御盤がショートするトラブルがあったばかり。

また、同じ建屋上部にある燃料取扱機も今月8日、異常警報が鳴り自動停止している。東電は「原因は調査中だが、11月中に始める燃料搬出作業に向け、復旧を進める」としている。(福島民友8/15)

3号機の使用済み燃料プールに燃料566体が残っているが、それの取り出し作業がなかなか始められない。本欄 6月29日 に3号機の写真がある。その報道(中日新聞)では作業開始が「越年する可能性も出て来た」としていた。

その肝心のクレーンが、15日に異常停止したという。使用済み燃料の搬出の遅れは、来春以降になりかねない。
何はともあれ、環境への放射能漏れ事故だけはないようにして欲しい。しかし、トラブルが何度も重なると、心配になってくる。


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8/17-2018
福島第一原発の除染作業員の安全守る対応を 国連特別報告者(NHK)

国連人権理事会が任命した特別報告者は16日、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う除染作業について、「延べ数万人の作業員が被ばくなどの危険にさらされたという情報がある」として、日本政府は作業員の安全を守るための対応を急ぐべきだとする声明を共同で出しました。

国連人権理事会が「特別報告者」に任命した独立の専門家3人は16日、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う除染作業について、現地から寄せられた情報などをもとに共同で声明を出しました

この中では「作業員にホームレスなどが含まれているという情報が寄せられている」と指摘したうえで、「被ばくのリスクや対策を正しく理解しないまま作業しているおそれがあり、深く憂慮する」としています。

そして「延べ数万人の作業員が被ばくなどの危険にさらされたという情報がある」と指摘して、日本政府は作業員の安全を守るための対応を急ぐべきだとしています。

特別報告者の1人で、有害物質に詳しいバシュクト・トゥンジャク弁護士はNHKの取材に対し、「去年から日本政府と書面でやり取りをして説明を求めてきたが懸念は払しょくされなかった。現地調査を行って真偽を確かめたい」と話しています。

日本「一方的な情報に基づいて声明は遺憾」
今回の声明を受け、ジュネーブ国際機関日本政府代表部は「政府として真摯(しんし)に対応してきたにもかかわらず、特別報告者が一方的な情報に基づいて声明を出したことは遺憾だ」とするコメントを出しました。

そのうえで「いたずらに不安をあおり、混乱を招くとともに、風評被害に苦しむ被災地の人々をさらに苦しめかねない」と指摘して、特別報告者に抗議したことを明らかにしました。(NHK8/17)

放射性物質の除染作業は、専門的知識の教育と訓練を受けた者が行うべきで、素人が見よう見まねで作業のうわつらだけを行うのは危険である。例えば、どのような性能のマスクをどのように着用すべきかというようなことは、現場では自己判断を求められるので、あらかじめ知識を持つ必要があるのである。

下請け企業が除染作業員の人集めを行って給料ピンハネも常習化しつつあることなどは、それほど珍しい情報ではない。国連人権委員会の特別報告者が直接調査を行うというのは、有難いことだ。


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8/18-2018
低レベル廃棄物を敷地内に埋設へ 岡山・人形峠のセンターが検討(福島民友)

日本原子力研究開発機構が、人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町)にあるウラン粉末で汚染された低レベル放射性廃棄物を巡り、早ければ2022年度にも廃棄物を収めたドラム缶数百本を敷地内に埋設して安全性を検証する試験研究を始める方向で検討に入ったことが17日、分かった。事実上の最終処分となる見通し。

低レベル廃棄物は今後、全国の原発で廃炉が進むのに伴い大量に発生する見通しだが、処分先は決まっていない。同センターと同様、各原発の敷地内で埋設する流れが加速しそうだ

センターは1957年発足。核燃料に適したウラン235の濃度を高める濃縮の研究を01年に終えた。(福島民友8/17)

「低レベル放射性廃棄物」をその発生現場の敷地内に埋設するという事例の前例になるだろう、という指摘は怖ろしいし、問題がある。わが国では低レベル廃棄物を浅層へ、高レベル廃棄物を深層へ埋設するという考え方がなんとなく既定方針のようであるが、けしてそれは世界的な常識ではない。ドイツなどでは低レベルも高レベルも深層埋設するのが常識となっている。

第一に低レベル廃棄物は原発の廃炉で多量に発生する。今回の人形峠でも黄色いドラム缶が数百本ある。第二に低レベル廃棄物が安全であるかどうか、誰も保証していない。安全な放射線はない、というのが現在の学的結論である。数十年、数百年先に子孫達の生活環境に露出してこないとは限らないのである。
この問題には、十分な議論と国民的合意と周知が図られるべきである。


トップページの写真を、トゲアシモグリバエの一種からハチ目ドロバチ科ミカドトックリバチに替えた。

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8/20-2018
長寿命の放射性物質が残留 福島第一の浄化水(中日新聞)

東京電力福島第一原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水に、他の放射性物質が除去しきれないまま残留していることが分かった。一部の測定結果は排水の法令基準値を上回っており、放射性物質の量が半分になる半減期が約1570万年の長寿命のものも含まれている。

第一原発でたまり続けるトリチウム水を巡っては、人体への影響は小さいなどとして、処分に向けた議論が政府の小委員会で本格化し、今月末には国民の意見を聞く公聴会が開かれるが、トリチウム以外の放射性物質の存在についてはほとんど議論されていない。

有力な処分方法の海洋放出の場合、トリチウム水を希釈して流すことが想定され、残留放射性物質も基準値以下に薄まるとみられるが風評被害を懸念する地元漁業者をはじめ、国民への丁寧な説明が必要になる。

東電によると、2017年度に汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した後に測定した結果、半減期が約1570万年のヨウ素129が1リットル当たり最大62・2ベクレル検出され、法令基準値の同9ベクレルを上回っていた。このほか、半減期約370日のルテニウム106(基準値100ベクレル)が最大92・5ベクレル、約21万1000年のテクネチウム99(同1000ベクレル)が最大59・0ベクレル検出された。

過去には、ALPS導入当初に浄化性能が安定しないまま運転していた時期もあり、当時はさらに濃度が高かったとみられるが、東電は「詳細は集計していない」と説明。8月時点で保管中のトリチウム水は約92万トンに上るが、約680基のタンクごとの放射性物質濃度も「調べていない」としている。(図表も 中日新聞8/20)


「トリチウム水の処分」について、原子力規制委の委員長がくり返し「海へ放水するほかない」と述べていて、漁協などが承認すればすぐにでも放水しかねないところまで話が進んでいる。更田豊志・委員長は無責任ではないか。

APLSを通ったあとの汚染水のなかの残留核種の濃度について、現実の情報が公表されるべきだ。
それ以上に重大な点は、約680基のタンクについてトリチウム以外の残留物の測定がいまだきちんとなされていなかったことだ。残留物の放射能(半減期と放射線の種類)と化学的毒性などについて、公表し分かりやすく説明があるべきだ。とくに、魚類や貝・海藻などへの吸収や蓄積がどのようになるのかを丁寧に説明するべきだ。

欧米では日本のようには海産物を食料にしていないので(たとえば、海藻をほとんど食べない)、トリチウムの危険性などは日本独自に研究してそのデータを示すべきだ。食べる魚種も国によって相違があるので、魚種ごとに放射能蓄積などをきちんと知らせるべきだ。


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8/21-2018
福島第1、津波対策前倒し=千島海溝地震「切迫」で―東電(時事通信)

北海道太平洋岸にある千島海溝沿いの巨大地震が「切迫性が高い」と評価されたことを受け、東京電力は19日までに、福島第1原発の津波対策の前倒しなどを決めた。

原子炉建屋地下には放射能汚染水がたまっており、対策を進め巨大地震の津波による流出を防ぐ。

政府の地震調査委員会は昨年12月、千島海溝沿いの海溝型地震について、マグニチュード8.8以上の地震が30年以内に起きる確率を7~40%と分析し、「切迫性が高い」とする長期評価を公表した。

東電の推定では、地震が起きた場合、最大高さ10.1メートルの津波が福島原発に押し寄せ、原子炉建屋がある地盤では、最大約1.8メートルまで浸水するという。

津波がハッチや階段などの開口部から流れ込むと、建屋の一部では地下の汚染水が引き波で流出する可能性があり、以前から進めている津波対策の作業前倒しを決めた。

122カ所ある開口部を閉める作業は、半分程度が完了。あふれる可能性がある2、3号機の開口部11カ所について、2020年度末までだった完成時期を20年度上期に前倒しした。ほかに、4号機の9カ所も追加で閉鎖することにした。(時事通信8/19)


東電サイト、千島地震に伴う津波対策(2018/7/6)より

切迫しているという千島地震による津波は、東電の計算ではフクイチで最大10・1mで、1~4号機のところで1・8mの浸水が想定される、という。その際の引き波によって滞留水が流出する可能性がある、としている。
全体的には引き波による流出のおそれはないが,建屋外部のハッチ・階段から滞留水の残る地下部分に直接つながっている(階層構造がない)部分については滞留水が引き波で流出するおそれがある(上掲PDF文書 p8)
そのために、流出路となるハッチなどの閉止工事を前倒して行う、ということ。


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8/23-2018
核燃料集合体のカバー325体に欠損 8割が神戸製鋼製 (朝日新聞)

原子力規制委員会は22日、東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)をもつ全6電力会社の原発で、燃料集合体325体の金属製カバーに欠損があったと発表した。8割近い253体が神戸製鋼所製で、溶接方法に問題があったという。燃料の放射性物質が冷却水中に漏れ出る可能性は低く、安全上の問題はないとしている。

2012年に東北電力女川原発3号機(宮城県)で欠損が見つかったことを受け、同じBWRを持つ東京、東北、中部、北陸、中国の各電力と日本原子力発電の6社に調査を指示していた。

規制委によると、6社の原発で12年以降に調べた燃料集合体のうち、計約3万2千体の金属製カバーの溶接方法に問題があり、劣化しやすくなっていた。うち325体で実際にカバーの一部が欠けるなどしていた。東電が最多で206体、原電が41体、東北電が40体だった。欠損があっても使用に問題はないとして、東電はそのまま使い続ける。他の5社は欠損があるものは使わないようにするという。(朝日新聞 8/22)


図は「燃料集合体」の1つを示している。その一番外側の「チャンネルボックス」
を上の記事では「カバー」と言っている。電気事業連合会サイトから、ここ

溶接が不適切で、溶接部が剥がれたり欠損が生じやすいということ。これは、原子炉のもっとも心臓部である。欠損が生じても、すぐに放射能漏れは起こりにくいから、このまま使用するというのはいかにも投げ遣りで、無神経だ。規制委もそれを追認している。おかしな話だ。耐震強度などに影響は無いのか。
しかも、データ改ざん問題(2017年10月)の神戸製鋼所の製作だという。直接放射能漏れが起こりにくいという言い分が本当だとしても(わたしは疑わしいと思っている)、なぜそのような不適切溶接が行われたのか、神戸製鋼所に特異な問題なのか、他にそのような個所はないのか等々疑問は次々に生まれる。


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8/24-2018
作業員のあごにプルトニウム付着(NHK)

茨城県にある日本原子力研究開発機構の研究施設で、今月6日、作業員のあごに核燃料の材料になるプルトニウムが付着するトラブルがあったことがわかりました。
原子力機構は、すぐに除染し作業員の被ばくは確認されなかったとして、公表しませんでした。

茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の核燃料サイクル工学研究所で、今月6日、作業員1人がプルトニウムを扱う機器を分解する作業を行ったあと、検査で、あごから5ベクレルという微量のプルトニウムが検出されたということです。原子力機構は、すぐに除染し、健康への影響はないとしています。

また、作業着からも33ベクレルが検出されたほか、周辺の床でも飛散したプルトニウムが検出されたということです。

原子力機構によりますと、作業員は顔の鼻から下を覆うマスクをつけ、「グローブボックス」と呼ばれる密閉された箱の中に腕を差し入れて作業をしていましたが、腕を入れるゴム製のグローブに小さな穴があり、箱の中のプルトニウムが漏れ、付着したとみられるということです。

原子力機構の施設では去年6月、プルトニウムなどの核燃料物質を保管する袋が破裂して作業員5人が被ばくする事故が起き、管理体制のあり方が問題となっています。
今回のトラブルについて、原子力機構は「作業員の被ばくは確認されず、施設の外にも影響はないため公表の基準には該当しない」として公表していませんでした。(NHK8/23)

被曝の可能性が疑われる事故が起こったら公表するというのが当たり前だろう。作業員だけの問題じゃない。床にプルトニウムが飛散したのであるから、研究所内で汚染が拡散しないかどうか、部外者も当然心配になる。
作業員の被曝が確認された後に公表するという基準は本当なのか。

作業員が腕をいれる作業手袋にピンホールが開いていないかどうか、常にチェックしているのではないのか。それとも、この作業員がこの作業で手袋に穴を開けたということなのか。あご・作業着・床にプルトニウムが付着し飛散していたというのは、何が起こったのか。詳細な報告が必要である。

日本原子力研究開発機構は「たいした事故じゃあ、ありません」と言うのに一生懸命なんじゃないか。あごにプルトニウムが附着していた場合に、プルトニウムの内部被曝がないということはそう簡単に断言できないはずである。


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8/25-2018
<高浜原発>4号機蒸気漏れ原因「接続部分パッキンに隙間」(毎日新聞)

定期検査中の関西電力高浜原発4号機(福井県高浜町)の原子炉上部から放射性物質を含む1次冷却水の蒸気が漏れた問題で、関電は24日、原子炉容器の上蓋(うわぶた)に設置された「温度計引き出し管」に異物が入り、接続部分のパッキンに隙間(すきま)ができたことが原因とみられると発表した。蒸気漏れは点検中の作業員が20日に見つけたが、関電は「建屋内の放射線量は通常と同じレベルで、限度量を超える被ばくはない」としている。

関電によると、パッキンはステンレス製で外径66ミリのリング状。詳しく調べた結果、内側に0.3ミリ程度へこみが見つかり、ここから蒸気が漏れたとみている。へこみは今月1日に引き出し管を組み立てた際、金属片などの異物が挟まって生じたとみられる。

関電は近くパッキンを交換して原子炉を起動する準備を始める方針。当初は9月19日の営業運転を予定していたが、今回の蒸気漏れの影響で日程は10日前後遅れる見通し。(毎日新聞 8/24)

高浜4号機は昨年5月に再稼働し、今年5月に定検で停止しているが、8月20日、原子炉容器の上蓋に設置された温度計の接続部分から放射性物質を含む微量の蒸気が漏れたと発表した。後に判明した原因は、パッキン部にゴミが挟まっていて隙間が出来ていた、ということらしい。

同じ高浜原発4号機で放射性物質を含む1次系冷却水が漏れた事故(2016年2月21日)が生じたことがあった。このときの漏洩量は34リットルで、けして少ない量ではなかった(本欄 2/24-2016)。原因は配管に取り付けられた弁のナットの締め付けが不充分だった、という関電の説明であった。

1次冷却水は核燃料を直接冷やしており、原子炉の主要部分の一つだ。それが外部へ漏れるというのは、漏洩量の多寡に依らず決して軽視できない深刻な事故である。しかも、くり返し起こっている。


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8/27-2018
Yahoo!ニュース8月23日配信の木野龍逸「「真っ当な対策があれば、原発事故はなかった」 地震学者・島崎氏が見たもの」は素晴らしい内容で、お読みになることを勧めます。木野龍逸がインタビュー取材を行った上の評論で、よく練られた文章で読みやすく、写真(江平龍宣)も良い。ただし、本欄に全文を載せるには長すぎるので、一部を抜萃する。

島崎氏は政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の「長期評価部会」において「長期評価」をまとめようとしてきた。島崎氏は17年間、同部会の部会長であった。
政府に中央防災会議がある。内閣総理大臣が会長であって、防災行政を決定・実行する総本山となる。
「1896年には巨大津波を伴う明治三陸地震があった。地震学の常識からすれば、次に起こる地震の震源域は、その南側、まだ地震が起きていないエリアです。400年間も大きな地震が起きていない福島沖は『本来起きるはずのものが起きていない』わけで、『そろそろ起きてもおかしくない』という意味です。だけど、中央防災会議は『科学的に考えたら南が気になるけど気にしなくていい』という結論にした。もう、むちゃくちゃです」
「長期評価」は中央防災会議に上げられ、そこで決定される。
結局、中央防災会議の専門調査会は2005年、過去に巨大地震や津波の記録がなかった福島沖については、今後も大きな地震は起きないとして検討対象から外した。今後も再び起きる可能性を「否定できない地震」に備えるべきだとした長期評価とは全く異なる方針である。
この異なる方針の強力な出所は「内閣府の防災担当者」であって、「福島沖などで地震が起きる保証はない」として「長期評価」を批判した。
内閣府の防災担当者とは、つまりは高級官僚のひとりである。そこに、東電などからの強い圧力がかかっていたと想像される。
島崎氏によると、東日本大震災の犠牲者の8割近くは、岩手県の陸前高田市より南側で津波に遭遇している。これら地域の津波の高さは、中央防災会議による2006年の想定より2〜5倍も大きかった。

もし、中央防災会議が長期評価に沿った対策を決め、福島沖でも巨大津波を伴う地震が発生する可能性を直視して宮城県南部や福島県でも防災対策を進めていたら、どうだったか。

原発事故をめぐっては、東京電力の元会長ら3人が業務上過失致死傷の罪で強制起訴され、東京地方裁判所で刑事裁判が続いている。島崎氏は今年5月9日、この裁判で証言台に立ち、そして「1万8000余りのうちかなりの命が救われただけでなく、福島の原発事故も起きなかったと思います」と証言したのである
地震の長期評価の専門家の見解をも、内閣府の官僚のさじ加減でどのようにでも味付けされてしまうのである。発表を先送りするか、「地震発生確率には誤差を含んでいることに充分留意する必要がある」というような文章を挿入するとかによって。2011年の「長期評価」第二版に至っては、電力会社に草稿をみせて事務局が手直ししたことが、後に判明している。これが、我が官僚専制国家の実態なのである。

しかし、そのことによって死ななくてもよかったはずの多数の人命が失われたのである。もしかしたら、フクイチ放射能事故そのものが生じなかったかも知れないのだ。島崎氏の言うとおりだ。
要職にあった者たちに刑事罰を課すことによって、彼らに責任を取らせるべきである。


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8/29-2018
小型原子炉の開発に10億円 経産省が概算要求で(中日新聞)

経済産業省が2019年度予算の概算要求で、小型原子炉など新型炉の研究・技術開発支援として新たに10億円を盛り込むことが28日、分かった。政府が7月に閣議決定したエネルギー基本計画では、安全性・経済性・機動性に優れた炉の開発を推進するとしており、従来の原発より冷却が容易とされる小型炉などの研究を促進する方針だ。

基本計画は原発の新増設や建て替えについては明記されなかった一方で、小型炉などは民間の研究開発を促進させる方針を提示。今回の開発支援を基に、将来的には新型炉の導入も視野に入れる。

原子力関連の予算では、昨年とほぼ同規模の38億4千万円を要求する。(中日新聞8/28)

経産省に巣くう原子力ムラどもは、原発や原子力産業をどうしても手放したくないとして、様々な手立てを画策している。新規の原発建設を別とすると、その方向は3種有り、
  • 休止中の原発の再稼働
  • 建設中原発の完成および稼働
  • 新発想の新型炉建設
来年度予算に10億円付けようとしているのは、3つめの新発想の新型炉のなかで「小型炉」の研究である。すぐできなくても、いずれ出来るだろうとして研究が継続していることが(原子力ムラどもにとって)大切なのである。

安全性・経済性など、批判すべき点はいろいろあるが、我が国における原発にとって決して忘れてならないのは、放射性廃棄物の捨て場はどこか、という観点である。われわれは、廃棄物の捨て場が確保できていない原発・核施設は造ってはならないという原則をつねに主張すべきである。

すでに出来てしまっている日本の原発・核施設は、どのひとつも廃棄物の捨て場をもっていない。使用済み核燃料に至っては、廃棄物(ゴミ)ではなく資源である、というのが、核燃サイクルを推進すると言い張っている経産省・原子力ムラの屁理屈である。彼らは核燃サイクルは破綻しているのに、けしてそれを認めようとしないのである。
六ヶ所村の再処理工場のように、いつまでも「建設中」であればそれで充分存在意義があるのである。もんじゅのように廃炉になっても、それの廃炉作業を延々と何十年も続けていれば、「廃炉作業は高速炉の研究に資する」と言い張ることだろう。それは、核燃サイクルのアリバイ作りなのであり、核廃棄物の捨て場(ゴミ捨て場)を持たないことの理屈づけのためなのである。


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8/30-2018
高速増殖炉 もんじゅ核燃料の取り出し 30日から開始(毎日新聞)

廃炉が決まっている高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)について、日本原子力研究開発機構は28日、核燃料の取り出し作業を30日に始めることを明らかにした。本格的な廃炉作業の第1段階で、原子炉と燃料プールの核燃料計530体を2022年度までに取り出す計画。冷却材に液体ナトリウムを使う高速増殖炉の廃炉は初めてで、安全面など課題は多い。

原子力機構の児玉敏雄理事長が28日、県庁に西川一誠知事を訪ねて伝えた。児玉理事長は「安全、確実に実施する。強い覚悟で取り組みたい」と述べた。機器の不具合などで当初予定より開始が1カ月遅れ、西川知事は「あらゆる情報をオープンにし、不安や誤解が生じないように」と求めた。

原子力機構の計画では、47年度までの30年間で4段階に分けて廃炉にする。燃料取り出しは第1段階で18~22年度に実施。燃料プールの160体、原子炉内の370体を1日1体のペースで取り出すほか、2次冷却系のナトリウムの抜き取りなどを行う。

原子炉や燃料プールを満たすナトリウムは水に触れると爆発的反応を起こす。作業ではナトリウムを洗浄して燃料を専用機器に収納し、水中に保管する。原子力機構は年内に燃料プール内の100体を取り出す方針だ。

燃料の取り出しについて原子力機構は当初、7月末にも始める計画だった。しかし、準備段階で装置にナトリウムが固着したり、監視カメラが水蒸気で曇ったりとトラブルが続き、開始を8月中に延期した。燃料の代わりに制御棒を移動させる今月19日からの最終的な訓練でも、初日に異物混入で警報が鳴って中断。ただ、原子力機構は29日まで訓練を続けるとし、8月中に開始する日程は変更しなかった。
28日の原子力規制委員会の会合ではトラブルが相次いだことを指摘され、規制委側が「事前点検が不十分で場当たり的な対応だ」と懸念を示す場面もあった。

もんじゅはプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)を燃料とし、消費した以上のプルトニウムを生み出す原子炉で1994年に運転開始。95年のナトリウム漏れ事故などトラブルが続発し、250日しか稼働しないまま16年12月に政府が廃炉を決めた。第2段階以降の詳細な工程は決まっていない。廃炉費用は3750億円を見込む。

「夢の原子炉」1兆円超す予算投入
高速増殖原型炉もんじゅ(出力28万キロワット)は「夢の原子炉」として国が推進し、これまで1兆円以上の予算が投じられた。1991年に完成し、94年に核分裂が持続する「臨界」に達したが、95年に冷却材のナトリウム漏れ事故が発生。直後に撮影したビデオ映像を一部カットして公開するなど不祥事が発覚し、運営主体の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は核燃料サイクル開発機構(現・原子力機構の前身)に衣替えした。
2010年の運転再開後も炉内中継装置の落下事故で再び運転停止に。その後も約1万件の機器点検漏れが発覚するなどしたため、原子力規制委員会が運営主体の交代を勧告。文部科学省は新たな運営体制を模索したが、再稼働に少なくとも5000億円超を要することも明らかになり、16年末に廃炉が決まった。(図も 毎日新聞8/28)

いよいよもんじゅの本格的な廃炉作業が始まる。もんじゅについて誰もが認めるのは、
    (1):建設・維持に巨額を注ぎこんできたが、廃炉にも巨費が必要で、しかもその費用には使用済み燃料や放射性廃棄物の処理費用は含まれていない、という。「ゴミ捨て場」も未定だ。

    (2):もんじゅは大小の事故を信じられないほど繰り返してきたこと。しかも、事故の隠蔽体質も、チェック体制の甘さも改善されたとは思えない。同じ人脈の組織が廃炉作業も行う(名前は変わったが)。
予定では30年間で廃炉作業が完了するとしているが、初めての未知の作業が30年で終わると誰も考えていない(もんじゅの設計は、廃炉を考えていない設計だと言われる)。研究者・作業員の士気が持つかどうか、心配される。長期に渡る廃炉作業の中で、深刻な事故が生じないことを心から願う。殊に、環境へ放射性物質が漏洩する事故のないことを。


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8/31-2018
ふげん使用済み燃料を仏オラノ社に搬出へ 概算要求で関連費92億円(中日新聞)

廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(敦賀市)の使用済み燃料について、管理する日本原子力研究開発機構が、フランスのオラノサイクル社に搬出する方向で最終調整していることが30日分かった。2023年度から搬出を始め、26年夏ごろの完了を目指す。文部科学省は同日発表した19年度予算概算要求で、輸送の準備を進めていくためふげん関連経費を本年度の28億円から3・2倍の92億円に引き上げた。

概算要求の説明のため、県庁と敦賀市役所を訪れた文科省の増子宏大臣官房審議官が明らかにした。機構とオラノ社は今秋の契約締結を予定している。

使用済み燃料はふげんのプールに466体あり08年の解体開始から1体も搬出されていない。今後輸送に必要なキャスク(容器)の許認可や製造を進め23年度からフランスに4回に分けて輸送する計画。

文科省は概算要求の中で、海外輸送を準備する経費として19年度は63億円を想定。今後も継続的に大きな費用が生じるとみられる。県庁で藤田穣副知事と面談した増子審議官は「契約締結前に、副大臣をトップとする特命チームで、使用済み燃料の搬出工程がしっかりと実現できる内容になっているか確認する。必要な予算もしっかりと確保していきたい」と述べた。

ふげんを巡っては今年2月、機構が17年度末としていた使用済み燃料の搬出完了時期を9年先延ばしした。当初、搬出を予定していた機構の東海再処理施設(茨城県東海村)が廃止となり、新たな搬出先を探していた。(中日新聞8/31)

ふげんは1978年に運転開始、電気出力は16.5万kW。MOX燃料とウラン燃料を使用し、重水を減速剤として使う「新型転換炉」と呼ぶ国産形式の原子炉。2003年に運転終了した。当初は2008年から燃料搬出する予定だったが、上の報道のように23年から搬出するという。当初は03年から26年間で解体する計画だったが、大幅な遅れが生じている。

ふげんの使用済み燃料は東海再処理施設(茨城県)において再処理する予定であったが、東海再処理施設は今年6月に廃止することが本決まりとなった(この廃止作業は、発表されている予定が70年間、1兆円というとんでもないもの)。そのため、ふげんの使用済み燃料の持って行き場がなくなったのであるが、フランスで再処理してもらい、いずれ持ち帰るという最も金のかかるムダで高リスクな処理法となった。持ち帰っても、我が国での最終処分場はどこにもない。

本来なら(世界的な流れとしては)、使用済み核燃料は処理せずにそのまま数十年~百年保管して放射線量がある程度落ちるのを待ち、その後に、地震の無い地域では大深度地下へ貯蔵する方法が有力であるが、オンカロ(フィンランド)などごく一部で進められているだけである。
フランスとの船便の往復は護衛艦も必要なやっかいなものであり、万一ガラス固化体を海中へ落とすような事故が起こった場合(テロや悪天候)、日本は全世界に対して取り返しの付かない信用失墜となることは間違いない。このような高リスクで面倒なだけの「再処理」を行っているのは、日本だけである。



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