き坊の近況 (2018年10月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

10/1-2018
原子力規制委、20年に抜き打ち検査導入 大飯原発で試行(中日新聞)

原子力規制委員会は1日、関西電力大飯原発(おおい町)で、2020年4月にスタートする新検査制度の試行を始める。検査官が自由に施設に入って抜き打ち検査ができるようになり、見つかった問題点の危険性を五段階で示す分かりやすい指標も導入される予定だ。
xb 現行の検査制度は、電力会社が用意した資料を検査官がチェックするのが中心で、検査できる時期や内容も法令で細かく制限されている。国際原子力機関(IAEA)から抜き打ち検査などができる制度にするよう指摘され、国は17年に原子炉等規制法を改正して新検査制度の導入準備を進めてきた。

新制度では、検査官が安全上、重要な項目を選んでいつでも重点的に調べることができ、安全のために柔軟で効率的な検査が可能になる。

米国の制度を参考に、検査で見つかった問題点などについて、そこから炉心損傷事故に至る確率をもとに危険性を判定し、色分けで分類する方式も導入する。最悪の「赤」から「黄」「白」、軽微な「緑」の四種と、安全性に影響するようなものではない「マイナー事象」の計5段階に判定し、結果をホームページなどで公表する。
検査項目がすべて「緑」であれば検査は終了するが、「白」があれば追加検査が課せられる。「黄」や「赤」がある場合は長期の追加検査が必要になる。

大飯原発で行う火災防護検査を皮切りに、高浜原発(高浜町)や美浜原発(美浜町)ほか全国の原発で順次、新検査制度を試して手順の改善点を確認する。大飯原発と東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)では、5段階の評価判定がうまくいくかの本格的な試行も行われる。

関電は試行について「引き続き規制委の制度検討に積極的に協力し、関電としてもこれまで以上に保全、保守の技術や技能を向上させたい」とコメントした。(中日新聞10/1)

検査側が必要と判断した検査をいつでも実施できる」という当たり前のことが、やっと20年4月から始まるという。わが国の原子力発電の業態全体がいかに原子力推進会社の都合のよいように行われて来たかがよくわかる。
これまでは、あらかじめ検査項目が決まっていて、その検査内容の細部も分かっていて日程も合意している検査を実施したのである。

つまり、これまではすべてが事前に詳細に決められていた内容についてのみ検査されていたのであって、予想外のことについて検査されることはなかったのである。すべてが想定内の事象しか検査されなかったのである。

原子力推進側は「それは想定外のことです」といえば、その事象が免責のことであると考え違いしているのではないか。それは、長年行われてきた行政サイドの検査がすべて想定内の世界ばかりであったことの反映だったのではないか。


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10/4-2018
<女川原発>再稼働是非問う住民投票条例の署名開始(河北新報)

東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の是非を問う住民投票条例制定を目指す仙台市の市民団体「県民投票を実現する会」(多々良哲代表)は2日、県条例制定の直接請求に必要な署名集めを始めた。

直接請求が成立すれば、宮城県では1972年10月の乳幼児医療費助成条例案以来となる。東京電力福島第1原発事故以降、原発再稼働を巡るケースとしては全国で初めてとなる。

署名集めの期間は一部地域を除き12月2日まで。必要署名数は県内有権者の50分の1で、約4万人分に当たる。市民団体は既に署名集めの協力者約7000人を確保しているという。有効署名が必要数、集まれば知事に直接請求する。来年の県議会2月定例会への議案提出を想定する。

多々良代表は「女川原発再稼働の問題について県民一人一人が当事者意識を持って考え、選択する機会をつくりたい」と話した。

東北電は女川2号機について、2020年度以降の再稼働を目指している。(河北新報10/3)

原発の問題は、まさしく「一人一人が当事者」であらざるをえない問題である。放射能の被害者となる事があればそれが個々人に降りかかる問題であることは明らかであり、電気代を支払う消費者の立場としては原発を支えているのである。原発に対して「一人一人が当事者」であると考えていく、という実行委員会の姿勢に賛成である。市民のみなが「選択する機会をつくる」という方針に賛成である。

今年6月2日登米市で行われた結成のための実行委員会で、石川裕清事務局長が
原発問題はまさに民主主義の問題。住民意思をどう反映させていくか学んでいこう。 (河北新報6/3)
と発言されたという。その通りだと思う。「県民投票を実現する会」の発展とご成功を祈る。


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10/6-2018
福島第1原発 汚染処理水「再浄化必要ない」 規制委員長(毎日新聞)

原子力規制委員会の更田豊志委員長は5日、廃炉作業が進められる東京電力福島第1原発を現地視察し、報道陣の取材に応じた。汚染水浄化後の処理水にもトリチウムなど複数の放射性物質が海洋放出の法令基準値を上回って残留している問題に関し、放出前の再浄化は必ずしも必要ではないとの認識を示した。

再浄化は東電が処分前に実施する方針を表明している。更田氏は「科学的な意味では、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げることに大きな意味の違いはない」と指摘。「(再浄化は)絶対に必要だと規制当局として要求する認識ではない」と述べ、再浄化しなくても希釈により基準値を下回れば、海洋放出を容認する考えを示した。

また、3号機の使用済み核燃料プールから遠隔操作で燃料を取り出す装置などにトラブルが相次いでいる問題については「やはり(装置を納入した)東芝からも話を聞かなければいけないと思った」と述べた。(毎日新聞10/5)

更田委員長は「世界中の他の原発がそうしているように、一定の濃度以下なら海へ放出せよ」と主張している。それが最も安上がりだから、と。この前提(一定の濃度以下なら海へ放出)を認めるのなら、今度の発言も正しい。

しかし、汚染水の海洋放出は濃度だけの問題なのだろうか。漁師が魚を捕るその海へ放出する汚染水なのだ。その「一定の濃度」は原発を運転したい者たちが決めた数値だ。原発の利便性を考えれば、これくらいの濃度は我慢すべきだ、と。放射能はいくら少量でも有害である。日本人は毎日魚を食べる民族であり、この海洋放出が生涯にわたる食習慣においてどれほどのリスクをもたらすのか、誰にも分からない。

そもそも、つい先日まで「当該汚染水はトリチウム以外に、有害な放射性物質を規制値以上に含んでいる」ことを国民に説明してこなかった東電である。この会社と国民の間には信頼関係がまったく築かれていない。そういう東電に「汚染水を海に放出していいよ」とは到底いえない。まだ、何が隠されているか分からない。

更田委員長は「原発を動かすための合理性」というメガネで世界を眺めている。


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10/9-2018
「井戸謙一 Facebook」 (2018/10/7)
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=841174066091351&id=100005962957611


(重要・拡散希望)
衝撃のデータが出てきました。私たちは、フクシマが、住民に健康被害が拡がったチェルノブイリのようになる恐れがあるのではないかと心配していました。しかし、国も福島県も、小児甲状腺がんを除き、健康調査をしてきませんでした。この度、南相馬市議会議員の大山弘一氏が南相馬市立総合病院から病名ごとの患者数推移のデータの提供を受けました(医事会計システムから主傷病名を抽出したもの)。

事故前の平成22年度(2010)と平成29年度(2017)を比較すると、なんと、
    成人の甲状腺がんが29倍、
    白血病が10.8倍、
    肺がんが4.2倍、
    小児がんが4倍、
    肺炎が3.98倍、
    心筋梗塞が3.97倍、
    肝臓がんが3.92倍、
    大腸がんが2.99倍、
    胃がんが2.27倍、
    脳卒中が3.52倍
です。確かにデータ数は多くはなく、一病院のデータだけから全体の傾向に短絡するのは注意が必要です。周辺の医療機関の閉鎖や規模の縮小、住民の高齢化、津波や原発事故に伴う心身の疲れや精神的ストレスなどの影響も検討するべきです。

しかし、同病院の外来患者数は、平成22年度の82954人と比較し、平成29年度は81812人で決して増えていません。南相馬市の65歳以上人口は、平成22年が18809人であったのに対し、平成27年は18452人で、これも増えていません。またストレスは、初期の方がより深刻だったと思われますが、患者数は、この7年間、一貫して増え続けています

私たち、子ども脱被ばく裁判弁護団は、次回口頭弁論期日(10月16日)にこの証拠を提出して、問題提起をする予定です。
(上引FBの改行・強調などの加工は引用者・き坊の責任において行いました)

「わが国は唯一の戦争被爆国」などとくり返し言明するくせに、国も県も311福島事故の被曝の実態を隠蔽し続けている。そのなかで、南相馬市立総合病院の事故前後の患者数の推移を示すデータが、初めて出て来た。しかも、衝撃的な内容である。

子供たちだけでなく「成人の甲状腺がん」の患者数が劇的に増加していることが明らかになった。それは前から予想されていたことだが、現場(病院)から数的実態をしめすデータがまったく出されてこなかったのである。少なくとも周辺の病院は南相馬市立総合病院に続いて欲しい。

ガンのみでなく、多様な疾病が増加していることが予想される。本来なら、国が率先して全国の病院に指示してデータを出させ、地域差・年度差などを公表すべきなのである。わが国行政の主体性の無さと暗愚の程度はまったくひどいものであり、政権中枢と原子力ムラに操られるままになっている。


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10/11-2018
靖国神社、宮司退任へ=天皇批判発言で(時事通信)

靖国神社は10日、小堀邦夫宮司(68)が退任する意向を示したと発表した。同宮司をめぐっては、天皇陛下を批判する発言をしたと週刊誌で報じられており、責任を取ったとみられる。

週刊ポストは10月12・19日号で、小堀宮司が6月、神社内の会議で「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ」「はっきり言えば、今上陛下は靖国神社をつぶそうとしてるんだよ」などと発言したと報道した。

靖国神社の広報担当者は、こうした発言があったことを認めた上で、「極めて不穏当な言葉遣いの録音内容が漏れた」と説明。宮司が宮内庁に行き、陳謝するとともに退任の意向を伝えたと述べた。後任宮司については26日の総代会で正式決定するという。

天皇と靖国神社をめぐっては、1978年にA級戦犯が合祀(ごうし)されて以降、昭和天皇の参拝が途絶え、天皇陛下も即位後一度も参拝されていない。
小堀氏は、3月1日から同神社の宮司を務めている。(時事通信10/10)

昭和天皇は新憲法で「国民統合の象徴」と位置づけられて以降、その位置づけを厳格に守ってきたと思う。政治的な行動・発言をいっさいせず、「国民統合」のために祈るという役割に徹してきた。平成天皇(正確にはいまだ今上天皇と言うべきだが)においても、昭和天皇が示した憲法上の位置づけを厳重に守り、誠心誠意「国民統合」のために祈るという役割に徹してきている。祈祷の絶対性をよりどころとして。

戦後史が進展する過程で、皮肉な事が生じてきた。政治が右傾化し戦前返りを夢想する人々(靖国神社やそこへ政治家として参拝する人々)が増え社会的に多数派となるに従って、天皇が民主憲法を守り、総理大臣自らが憲法改定を主張するという奇妙な状況が出現した。
今度伝えられた靖国神社宮司の暴言(だとわたしは思う)は、この奇妙な状況を説明する分かりやすい事例である。

わたしは天皇制に反対である。特殊な血筋であるということで法的に特別扱いするということに反対だからである。それは一種の差別であるから。(ある特別な血筋に生まれたというだけで「○○様」と呼ばれて特別扱いされることが、仮にわたし自身に起こったのだったらどうであろう。皇室の若い人たちが受けている扱いをTVなどで見かけるたびに、痛々しく悲惨に感じられる。)
しかし、欽定の明治憲法が天皇絶対制を創り出し、天皇の名で戦争を幾度も行った。その歴史的反省によって戦後憲法が出来ているのであるから、わたしは現在の天皇制を賛成できないとしつつも、承認している。退任するという靖国神社宮司は戦後憲法が規定している天皇制を認めず、靖国神社こそが国の中核となる精神性を示している、と考えている。考えたがっている。戦争ができる国の中核となる精神性である。


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10/13-2018
九州電力 太陽光の出力制御、13日実施 6県9759件(毎日新聞)

九州電力は12日、太陽光発電の事業者に一時的な発電停止を求める「出力制御」を13日午前9時~午後4時に実施すると発表した。実施は離島を除き全国初で、北部九州を中心に6県43万キロワット分の太陽光(九電の送電網との接続契約数で9759件)が発電を停止する見込み。原発4基の再稼働や太陽光の導入拡大で、九州は昼間の電力が供給過剰気味になっており、需給バランスが保てず大規模停電(ブラックアウト)に陥るのを防ぐ。今後は対象事業者の選定の公平性などが求められそうだ。

出力制御の対象は家庭用を除く太陽光約2万4000件と風力約60件だが、今回は風力は含まれない。9759件の大半は福岡、佐賀、長崎、大分の4県で、鹿児島と宮崎両県も一部含まれる。

九電によると、13日は晴天が見込まれ、太陽光の発電量は正午~午後1時に最大の594万キロワットに上る見通し。これに対し、同時間帯の需要は828万キロワットで、太陽光発電だけでこの72%に達する。原発などを加えると供給過剰が避けられない見込みだ。

電力はためることが難しく、需要と供給を常に同量に調整する必要がある。バランスが崩れると、最悪の場合、ブラックアウトにつながる。このため九電は13日、原発以外の発電を先に抑制する国のルールに基づき、火力発電所の運転を苓北(れいほく)発電所(熊本県苓北町)などに限定し、出力を抑制。揚水発電所の活用や、九州と本州をつなぐ送電線「関門連系線」による他エリアへの送電も行うが、それでも電力が43万キロワット余るため、太陽光の出力制御が必要と判断した。

福岡市で12日に記者会見した和仁(わに)寛・系統運用部長は「事業者間で不公平感が出ないことが重要」と述べ、制御する事業者を県ごとにバランスよく選んだと強調。今後も「秋や春などは(制御が)あり得る」と述べた。

太陽光発電事業者からは不安の声も聞かれる。17カ所のメガソーラーを運営するチョープロ(長崎県長与町)の定富勉新エネルギー事業部長は「どう運用されるのか分からない。制御の頻度を見極めないと、更なる太陽光発電を行うための資金調達も困難だ」と述べた。
こうした声も受け、経済産業省は「透明性・公平性の確保が重要」(世耕弘成経産相)として、実施後に国の審議会で制御の状況を検証する方針。今後、原発を優先する国のルールの妥当性も問われそうだ。(図は毎日新聞10/11より 毎日新聞10/12)

融通の利かない原子力発電が重荷になっていることが、明瞭だ。原発の発電量は、簡単には調節できない。国は今どきの発電事情にそぐわない「ベースロード電源」という古い概念を持ち出して、原発を擁護しようとしている。
しかし、九州電力では天候条件によっては発電過剰になることは前々から予想されていた。原発の出力をあらかじめ落としておく事などの(季節計画)、手を打っておくことができたはずだ。

九州電力管内で太陽光発電だけで必要電力の7割を越えるレベルに達していることが報道されたことも、意義深い。太陽光・風力・潮力・地熱などの自然力発電を主力発電にするのが、世界的潮流になっている。
原子力発電は危険・環境汚染が甚大・経済的にペイしない等々、どの面でも評価できない過去の発電手法となっている。日本が世界の潮流から離れて原発にしがみついているのは、電力会社とつながる大企業、官僚と原子力ムラの既得権益を手放したくないからに過ぎない。

【追記】10/15
九州電力は14日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を13日に続き実施した。システムの不具合により約30分間、熊本、大分両県の約3300件の契約に対し必要のない制御をするトラブルがあった。(中日新聞10/14 による)


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10/15-2018
プラスチック危機 プラ片、河川上流にも ITベンチャー、国内26流域調査(毎日新聞)

ITを利用した環境問題対策をするベンチャー企業「ピリカ」(東京都渋谷区)は12日、関東地方と関西地方の河川11本の流域26カ所中、25カ所から5ミリ以下のマイクロプラスチックなどのプラスチック片が見つかったと発表した。河川の上流でも検出され、汚染が流域全体に広がっていることが浮き彫りとなった。

今年5~9月、関東、関西、米ニューヨークの河川や港湾計38カ所を調査。ピリカが開発したマイクロプラスチックなどの水中での浮遊量を短時間で調べる機器を使用し、水をろ過して採取した固形物の成分を分析した。

利根川水系の綾瀬川(埼玉県)で水1立方メートルあたり約9・1個のプラスチック片を検出し、淀川水系の大川(大阪市)では約19・8個が見つかった。このほか、港湾(9カ所)、米国の河川(3カ所)の全てでも発見された。

プラスチック片のうち約23%は人工芝とみられる緑色のもので、このほか、農業用の肥料カプセルとみられるものもあった。 ピリカの小嶌(こじま)不二夫社長(31)は「調査したほとんどの場所で検出され、驚いた。雨水に混じって流れ込んでいることも考えられ、これまでとは違う対策を考える必要がある」と話している。(毎日新聞10/13)

マイクロプラスチックは径5㎜以下のプラスチック破片を言う。「人工芝」が具体的にどのような場所で使用されているのか(普遍的に使用されているのか)、そういう調査も必要である。

英国での同様の調査はすでに行われていて、
英国北西部の40か所で得られた河川堆積物中のマイクロプラスチックを調べた。その結果、地方の最も小さな河川も含めた全ての河床で、マイクロプラスチックが見つかった。(Nature Geoscience 2018-3/13 ここ

また近頃プラスチック・ストローが問題になっているが、「海洋のプラスチック汚染の真の原因はタバコのポイ捨て」というレポートがある。紙巻きタバコのフィルター部ですね(ここ)。

どれが真実なのか急いで決めつけることはないが、わが地球の海洋もけして無尽蔵の容量ではなく、マイクロプラスチックで汚染されない所はないという水準に至っていることは確か。トリチウム汚染水の放流も同様なことが言える。人類は20世紀半ばから放射性物質を海洋投棄し始めてきたが、その頃の《地球の容量は無尽蔵》という前提は、もうとっくに成立しなくなっている。


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10/16-2018
原子力10施設解体に180億円 研究機関が費用試算(東京新聞)

国内最大の原子力研究機関「日本原子力研究開発機構」が各地に保有する原子力関連の79施設のうち、青森、茨城、岡山3県にある10施設の廃止に伴う「解体費」を約180億円と試算していたことが14日、分かった。機構は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す東海再処理施設(茨城県)など廃止が決まった大規模施設については解体費を含む廃止費用を公表済みだが、より小規模な施設の廃止関連費用も巨額に上ることが判明した。

機構は国の交付金で運営され、解体費は国民負担となる。(東京新聞10/14)

小規模10施設の解体費用が180億円にもなるということ以外に指摘しておきたいことは、
(1) 解体作業の現場に入る作業員たちの被曝が避けられないこと。
(2) 解体によって生じる放射性ゴミの最終的な捨て場をどうすのか。はっきりしていない。
原子力関連の施設は、原発はもちろんそれ以外の小施設であっても、解体に金と人と時間がかかるやっかいなものである。


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10/17-2018
東電元副社長、津波試算「信頼性ないと思った」 (日本経済新聞)

11:05 (2018/10/16 12:58更新) 福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3人の公判が16日、東京地裁(永渕健一裁判長)であり、被告人質問が始まった。争点は巨大津波の襲来を予見し、有効な対策を取ることができたかどうか。事故前の社内での津波対策の検討状況などについて、詳細がどこまで明らかになるか注目される。

この日、証言台に立ったのは、武藤栄元副社長(68)。冒頭、弁護側から事故への思いを問われ、「亡くなった方や遺族、けがをした方、古里をなくした方、長期避難した方に言葉で表せない迷惑をかけた。誠に申し訳ない」と謝罪した。

福島県沖を含む太平洋沖の日本海溝沿いで巨大地震が発生し得るとした政府機関の「長期評価」(2002年公表)について、武藤氏は原子力・立地本部副本部長だった08年6月の会議で「初めて知った」と証言。

最大15.7メートルの津波が襲来するとの試算結果の報告を受けたが「長期評価は信頼性がないと思った。曖昧で、直ちに(津波対策の)設計に取り込むことはできないと感じた」と強調し、津波対策を進める根拠とするには無理があったとの認識を示した。
ほかに強制起訴されているのは、勝俣恒久元会長(78)と武黒一郎元副社長(72)。3人はいずれも初公判で「事故を予見することは不可能だった」と無罪を主張している。

これまでの証人尋問での証言や検察官役の指定弁護士の冒頭陳述などによると、08年6月に巨大津波の試算結果を報告された武藤氏はいったん、防潮堤設置の許認可手続きなどについて検討するよう指示したが、翌月に「当面は従来の評価基準で津波対策を検討する」などと方針を示し、具体的な対策実施を見送ったとされる。

被告人質問は16、17日に武藤氏、19日に武黒氏、30日に勝俣氏への質問を予定。起訴状によると、3人は津波による重大事故を予見しながら原発の運転を続け、事故で長期間の避難を余儀なくされた入院患者らを死傷させたとされる。(日本経済新聞10/16)

2002年の政府機関の「長期予報」を知ったのが08年6月だったというのは、信じられないほど遅い。福島原発の責任者として怠慢といわれても仕方がない。大地震・大津波がいずれ来るだろうということに、真剣に向き合おうとしていない。

「長期予報は信頼性が低い」という判断をし、それゆえ巨額な出費を伴う防波堤建設を決断できなかった、とする。だが、大津波に対する防御策が防波堤建設しかないというのは素人判断に近い。
原発という巨大施設であるから、大津波の波をかぶっても・浸水があっても直ちに破局的段階には達しないような手を打つことは、何段階にもわたってありうる。多面的に多段階的に考えられるはずである。すぐできる・安くできる対策から、長期にわたる大工事・巨額の予算が必要まで。けして防波堤建設か否かの二者択一ではない。

原発の破局的段階は、冷却に最終的に失敗して「メルトダウン」することだろう。それ以前に、幾つもの手が打てる。電源の確保だけでも、分散的に質の異なる幾つもの電源を予備的に持っているべきである。津波による浸水に遭わない位置や性能の発電装置を。
発電装置を地下室に置くような愚は、遥か以前から東電内部で指摘されていたことだ(本欄では 2011年11月30日に扱ったが、そのエピソードは1991年のこと)。電源車を数台・常に整備して安全な場所に置いてあることも重要である。

武藤栄は、「長期予報」が大津波を予報していることに対して原発の責任者として危機感をもって受け止めていない。「長期予報には信頼性がないから防波堤工事は検討する程度にしておこう」という判断をして終わってしまった。判断をここで止まらせたのは長年の原発安全神話である。本当は、小さな予算で・すぐできる対策がいくつもあったのである。


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10/20-2018
野生キノコから基準超えセシウム」(NHK)

山梨)県が今月行った検査で、富士吉田市と鳴沢村で採取した野生のきのこから、国の基準を上回る放射性セシウムが検出されました。
県は富士河口湖町を加えた3つの市町村では野生のきのこを採ったり食べたりしないよう呼びかけています。

県は平成24年10月に富士吉田市と富士河口湖町、それに鳴沢村をきのこの出荷制限区域に指定し、この地域でのきのこの採取や出荷などの自粛を求めるとともに、放射性物質の検査を続けています。

県によりますと、今月11日に調べた野生のきのこ11検体のうち、5つの検体から国の基準値である1キログラムあたり100ベクレルを上回る放射性セシウムが検出されたということです。
検出された数値は、富士吉田市で採れたショウゲンジが200ベクレル、富士吉田市で採れたクリイロイグチとアイシメジが140ベクレル、鳴沢村のハナイグチが130ベクレル、鳴沢村のアミタケが110ベクレルです。

県は引き続き、この3つの市町村では野生のきのこを採ったり食べたりしないよう呼びかけています。(NHK10/18)

2011年3月11日の原発事故で、それ以降約1ヶ月間に降り積もった放射性物質の内、現在に至るまで深刻な影響をもたらしているのがセシウム137で、山林中で循環しつつとどまっている。半減期が約30年なので、人生の長さと比較すると、とても長い。60年後でも放射能が4分の1にしかならない。われわれが生きている間に富士山と山梨方面のキノコや山菜は食べることはできない、と考えておくべきだ。

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10/21-2018
<福島第1>3号機・燃料搬出機器不具合 県、東電に再発防止要請(河北新報)

東京電力福島第1原発3号機で、核燃料を取り出す機器の不具合判明が続いている。9月末からの総点検で新たに4件の不良箇所が見つかるなど「底なし」の状況で、部品の品質に関する内部の指摘も見過ごされていた。福島県は19日、確実な再発防止を東電に申し入れた。

4件のうち3件は、燃料をプールからつり上げる燃料取扱機(FHM)で見つかった。プール内のがれきをつかむ装置は「腕」の関節が緩む異常があり、がれきを吸うポンプにはケーブルに浸水が原因とみられる絶縁不良があった。がれきをつかむ腕を上げ下げする装置の速度センサーの故障も分かった。

別の1件は燃料を建屋外に搬出するクレーンで、重りをつり上げる際にブレーキ異常が検知された。

不具合が相次ぐ理由について、東電は海外から調達した部品の品質管理不備を挙げる。FHMとクレーンは売買契約を結んだ東芝の発注で海外メーカーが製造。部品も海外で調達され、東電は部品ごとの品質確認をしていなかった。
FHMなどは2017年11月の3号機への設置前にも約30件の不具合が発生。東電内部の第三者組織が16、17年の2度、海外調達の問題点を指摘していたが、具体的な対策には結び付かなかったという。

県は東電幹部を県庁に呼び、実際の燃料取り出しは万全の状態で臨むように要請。成田良洋危機管理部長は「責任の所在を曖昧にしないように」とくぎを刺すとともに、「本当に大丈夫かと思わざるを得ない」と懸念を示した。
東電福島第1廃炉推進カンパニーの小河原克実氏は取材に「県の指導を重く受け止め、安全点検をしっかり進める」と強調。「18年度中ごろ」の開始計画を断念した燃料取り出し時期のめどは立っていないとの認識を示した。(河北新報10/20)

東電の組織内部のタルミないし腐敗を言わざるを得ない。くり返し指摘されているにもかかわらず、直っていない。
しかも、問題は東電にととまらず東芝も同様である。

すでに産経新聞(10/15)は、次のように伝えていた。
同社(東芝)はトラブルの原因について、装置を開発した米ウェスチングハウス・エレクトリックとの連絡不備や、部品メーカーの管理不足などを挙げた。また東電は検討会で、設備を東芝ESSの工場で3年間保管した際に約30件の不具合があり、社内の監査部門などから注意喚起されたにも関わらず、対策していなかったことを明らかにした。

3号機の燃料取り出し開始は、国と東電の中長期ロードマップで「平成30年度半ば」とされていたが、設備の試運転を始めた今年3月以降、電圧設定のミスでクレーンが止まったり、雨水による腐食でケーブルが断線し、燃料取り扱い機が止まったりと不具合が続出。ケーブルに欠陥品が多数含まれていることも判明し、取り出しは年明け以降に延期されている。
わが国の大企業の病理はとどまる所を知らない。

改めて言うまでもないが、わが国の国家官僚の腐敗ぶりは先の国会で見せつけられたばかりであり、しかも、その責任を誰も取らないまま、おそまつ顔ぶれの閣僚が再登場している。


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10/22-2018
九電が4回目の出力制御=太陽光発電で、トラブルも(時事通信)

九州電力は21日、一部の太陽光発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力制御」を実施した。離島以外での実施は4回目。この日は晴天で太陽光発電の供給が増える一方、週末で工場などが稼働していないこともあって需要が減少。電力の需給バランスが崩れて大規模停電になることを防ぐため、出力制御に踏み切った。

一方、本来は停止の必要がなかった福岡、鹿児島両県の太陽光発電事業者に誤って出力制御を行うと連絡するトラブルが発生。連絡した先は11件で、実施する前に訂正したため影響はなかったという。九電の出力制御では14日もシステムの不具合が発生していた。

この日最も大きかった出力制御は、午前11時半から正午までの93万キロワットだった。九電は13、14日に続き20日も出力制御を行ったが、瞬間的な水準としては21日が最大となった。(時事通信10/21)

「出力制御」とは電力会社側に立った表現で、太陽光発電の側から言えば「出力禁止」ないし「活動停止」の命令だ。上天気の日は太陽光発電にとって絶好の書き入れ時なのである。

東京新聞の【社説】「九州の太陽光 「潜在力」が示された」(10/20)は良かった。勧めます。その一節、
「自然エネルギーは天候に左右されるので、不安定だ」と言われるが、日本は南北に細長く、気象条件もさまざまだ。例えば、北海道や東北には風が豊富にある。風はお日さまが沈んだ後も吹く。
全国の送電網を充実させて、日本中で電力のやりとりが余裕をもってできるようにすべきだ。
今どき北海道でブラックアウトなど実にみっともないことだった。4回も続いた九電の「出力制御」はブラックアウトの陰画なのだ。


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10/24-2018
茨城・東海第二 那珂市長、再稼働「反対」 同意対象6市村で初(東京新聞)

首都圏唯一の原発で、11月末に40年の運転期限を迎える日本原子力発電(原電)東海第二原発(茨城県東海村)を巡り、再稼働に事前同意が必要とされる地元6市村のうち、那珂(なか)市の海野(うみの)徹市長が22日、本紙の取材に応じ「事故が起きれば、市は立地自治体以上の被害を受けるかもしれない。再稼働に反対だ」と述べた。

那珂市を含めた東海第230キロ圏の6市村は、原電が再稼働時に同意を取る協定を結んでいる。6市村の首長で再稼働反対を表明したのは海野市長が初めて。
海野市長は来年2月に任期満了を迎える。出馬については明言していないが、仮に続投すれば、任期中は東海第二の再稼働は難しくなる。

反対の理由については、市が2016年度に実施した、再稼働についての市民アンケートの結果を挙げた。「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人が約65%を占めた。

「市民の意思を反映したかった。自分が市長であるうちに決断したかった」と語った。
さらに「原発事故が起きれば、風向き次第で那珂市も甚大な被害を受ける」と強調。東海第二が老朽化していると指摘し「早く片付けてほしい」と、早期の廃炉を求めた。

東海第二は11月27日に運転期限の40年を迎えるが、原子力規制委員会が20年の運転延長に必要な審査を進め、認められる見通しになっている。(東京新聞10/23)

那珂市の海野市長は、地方自治体の長として模範になるような対応をしている。地方自治体においては、市民の生命・財産を守ることが至上命題であり、重要な問題について、市民によく説明してアンケートや投票によって直接賛否を問う。それを根拠にして市長が決断する。しかも重要な点は、その決定の過程をガラス張りにし公表しておくこと。

原発のように、市民全員に直接関わるような問題については、こういう決定方式を取ることができるし、また、取るべきだ。

東海第二原発の再稼働に反対であることを6市村のうちの1人の長が表明したので、海野市長の任期が続く限り、東海第二は運転できない。


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10/25-2018
米国 原発用のMOX燃料工場の建設中止 費用かさみ(毎日新聞)

米エネルギー省は22日までに、南部サウスカロライナ州のサバンナリバー核施設で進めていた、原発用のプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を製造する工場の建設中止を決めた。建設が遅れ費用がかさんだためで、同省の核安全保障局(NNSA)は10日付で、建設の事業者に契約の終了を通告した。

工場は2000年の米露による戦略核兵器の一部削減合意に基づき、不要になった核兵器のプルトニウムをMOX燃料に加工する計画だった。だが建設は遅れ、試算では完成時期は想定より30年以上先の48年に延びた。費用も少なくとも170億ドル(約1兆9000億円)と、当初計画を大幅に超えることが判明。連邦政府は取りやめを決めた。

雇用確保のため事業の継続を求める地元サウスカロライナ州と訴訟に発展したが、今月9日リッチモンド連邦高裁が中止を認めた。NNSAは「作業員の雇用や、地域経済への悪影響を最小限にとどめるように協力する」としている。

不要なプルトニウムは今後、化学物質で希釈してニューメキシコ州の地下に保管することが検討されている。造りかけの工場は、新たな核弾頭の中枢部「プルトニウム・ピット」を製造する施設に転換させる案がある。(毎日新聞10/23)

費用が高騰・工期が延伸のため、アメリカのエネルギー省がMOX製造工場の建設を中止した。2018年の完成予定が30年先の2048年となった!!という。

同様なことは日本でも起こっているはずである。日本原燃サイト「MOX燃料加工事業の概要」を見ると、青森県六カ所村でMOX製造工場(年間製造能力130トン)の建設に着工したのが2010年10月。
  建設費 約3,900億円
  竣工時期 2022年度上期
としている。このサイトには、これ以上の情報はない。


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10/26-2018
<女川原発1号機廃炉>運転延長採算合わず 東北電、原発4基で初(河北新報)

東北電力は25日、東日本大震災後に運転を停止している女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市、出力52万4000キロワット)の廃炉を決めたと発表した。運転開始から35年目を迎え、さらなる運転期間の延長に巨額の投資が必要となり、採算が合わないと判断した。東北電の原発4基で初めての廃炉となる。

原田宏哉社長は同日午後、宮城県の村井嘉浩知事に決定を報告。その後の定例記者会見で「地域に丁寧に説明し、安全を確保して廃炉手続きを進めたい」と述べた。再稼働審査中の女川2号機などに経営資源を集中させる考えも示した。

東京電力福島第1原発事故後、国は原発の運転期間を原則40年と定めた。厳しい特別点検の実施などを条件に20年延長できる。
 東北電は1号機の再稼働と運転延長を検討してきたが、安全対策費に1000億円前後かかることも想定される上、女川2、3号機(出力各82万5000キロワット)に比べて出力が6割にとどまり、採算が合わないと判断。沸騰水型炉(BWR)の国内初期のタイプで格納容器が小さく、安全対策工事も困難とした。

今後は廃炉作業の工程を示す「廃止措置計画」を作成し、原子力規制委員会の認可を得て30~40年に及ぶ廃炉作業に入る。着手は1年先から数年先を見込む。

東北電によると、1号機の廃炉費用は今年3月時点で432億円と想定。同月までに296億円を積み立て、残る136億円も残り6年で確保する。ただ、最終的な費用ははっきりしていない。

東北電は残る3基のうち、女川2号機を2020年度以降、東通原発(青森県東通村)を21年度以降に再稼働させるため、規制委の審査への対応や安全対策工事が続く。女川3号機も審査準備を進める。

1号機の廃炉で、事故後に廃炉を決めた商業用原発は7原発10基(福島第1原発6基を除く)になる。

女川原発1号機]東北電力が1984年6月に運転を開始した。同社の原発4基の中で最も古く、国内で運転する39基のうち8番目に古い。東日本大震災当日、運転を自動停止した。事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉(BWR)の国内初期の「マークI型」で、福島を除く他社の4基は廃炉が決まっている。(図も 河北新報10/26)

地元紙「河北新報」は上引記事の他に、数本の良い記事を出している。その一つ「再稼働審査長期化響く 廃棄物処分は難航必至」の中から。
解体で生じる制御棒や原子炉内の構造物などの低レベル放射性廃棄物は、電力各社が埋設処分地を見つけなければならないものの、まだ決まっていない。東北電は「事業者共通の課題。一緒に検討していく」としているが、地元に長期間留め置かれる懸念がある

作業が進めば、1号機の使用済み核燃料をどう処分するかという問題にも直面する。国は最終処分場の候補地すら絞り込めていない
(河北新報10/26)
廃炉にふみきったのは「採算が合わない」からだという。それは結構だが、廃炉が、予定されている廃炉費用の枠内で済むとは到底考えられない。低レベル放射性廃棄物をどこへ埋設するのか、決まっていない(原発敷地内となる可能性が大きい)。まして、「使用済み核燃料」などの高レベル放射性廃棄物については最終処分場の候補地を探そうとすることにさえ、拒否反応が各地から出ている。(その傾向は、全世界共通だ)

「採算が合わない」という話の中に、低レベル・高レベル廃棄物の処分工程全体を含めた費用は、まったく算定されていないということを忘れてはならない。しかも「高レベル廃棄物の処分工程」は数万年を要する。

「河北新報」のもう一本の記事「脱原発活動に長年関わる 廃炉の先不安視」は反原発運動に関わった人たちを取りあげている。篠原弘典さんのエピソードのところから、
19)78年、漁協が女川原発建設に伴う漁業権放棄を可決し、抵抗のすべを失う。「浜に残されたのは、巨大な権力と積み上げられた補償金によって分断された人々だった」と憤る。 (河北新報10/26)
1978年といえば、ちょうど40年前のことだ。原発が何をもたらすのか、直視する必要がある。
東北電力は、まだ女川2,3号機と東通1号機をもっており、それらを稼働させようと準備している。


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10/27-2018
子ども帰還見合わせ要請 国連報告者「年間1ミリシーベルト以下に」(東京新聞)

国連人権理事会で有害物質の管理・処分などを担当するトゥンジャク特別報告者は25日、東京電力福島第一原発事故で避難した子どもや出産年齢の女性について、事故前に安全とされた被ばく線量を上回る地域への帰還を見合わせるよう、日本政府に要請する声明を発表した。

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者は声明に対し「非常に一方的な情報に基づいており遺憾だ。風評被害にもつながりかねない」と批判した。

福島では避難指示が解除された地域から住民の帰還が進んでいる。日本政府は被ばく線量が年間20ミリシーベルト以下を解除要件の一つとしているが、トゥンジャク氏は事故前に安全とされていた年間1ミリシーベルト以下が適切だとの見方を示した。声明は、日本政府には「子どもの被ばくを防ぎ、最小限にする義務がある」と強調した。

また、原発事故の避難者にとって、住宅無償提供の打ち切りなどが「帰還への多大な圧力になっている」と指摘した。

トゥンジャク氏ら人権理の専門家3人は8月、原発事故の除染作業員ら数万人が被ばくの危険にさらされているとして、緊急対策を求める声明を発表。日本政府は一方的な情報に基づくとして「緊急対応が必要とは考えていない」と反論した。(東京新聞10/26)

国連人権理事会の声明はごく穏当なもので、世界標準的なものである。日本もフクイチ事故以前はその基準を掲げていた。「年間1ミリシーベルト」の基準である(放射線管理区域は年間約5ミリシーベルト)。

ところが、フクイチ事故後、日本政府は突然「年間20ミリシーベルト」基準を持ち出し、それを基準として避難区域などを設定したのである。強引に「20ミリシーベルトは安全だ」という宣伝を、多数の御用学者らを動員して行った。それが「風評」なるものの、そもそもの発端である。「年間100ミリシーベルトまではまったく安全です」と宣伝して回った学者までいたことはよく知られている。

ICRPなどの原発推進団体の言い分を日本政府は鵜呑みにしてフクイチ事故に対処しようとした。犠牲になるのは東日本を中心とした国民で、ことに子供たちである。今後数十年の間に健康被害が激増してくると思われる。すでに、その徴候を示す数字は現れ始めている(本欄 10月9日など)。
ちかごろ保険会社は「生涯のうち2人にひとりはガンになります」というような広告を打っているが、日本人はそれを何の不思議とも思わず受けとめている。


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10/31-2018
東電事故 勝俣氏、15.7m津波試算「知らなかった」(毎日新聞)

被告人質問 津波対策、担当部署に一任の見解示す
東京電力福島第1原発を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の公判は30日、東京地裁(永渕健一裁判長)で、勝俣恒久元会長(78)の被告人質問があった。勝俣氏は事故前の津波対策について「安全対策の責任は一義的に(社内の)原子力・立地本部にあった。問題があれば報告があると思っていた」と述べ、担当部署に一任していたとの見解を示した。

弁護人側は被告人質問で、勝俣氏が社長時代の2008年2月に出席した「御前会議」で、政府の「長期評価」(02年公表)に基づき津波対策を進める方針が報告、了承されたとする別の元幹部の供述調書の内容について質問。勝俣氏は「報告を受けた記憶はない」と明確に否定した。

また、弁護人側は08年3月に社内で第1原発への「高さ15.7メートル」の想定津波を試算した点を確認。勝俣氏は「(事故後まで)知らなかった」と述べ、同7月に武藤栄元副社長(68)が専門家への検討を依頼するとして津波対策を保留したことも、「知らなかった」と語った。

さらに弁護人側は09年2月の会議で部下から「14メートル以上の津波が来る可能性があるという人もいる」と報告された点も質問。勝俣氏は「(部下の)トーンは懐疑的だった。いずれ整理されれば(改めて)報告があると思っていた」と述べた。一方、検察官役の指定弁護士から「長期評価」に対する認識について問われると「事故からだいぶたってから(知った)」と述べた。(以下略)(毎日新聞10/30)

「会長」というのは全体を統括する最高責任者であるとわたしは思っていたが、単なるお飾りの人形に過ぎなかった、と自白したようなものだ。第二次世界大戦後の東京裁判と変わりがない。

この元会長は、東京電力のような巨大企業が無責任な人形に操られていて暴走してしまう危険性に気づいてもいなかった。いまもって自覚していないようだ、自分が逃げられればよいとしか考えていない。

原発のような取り返しの付かない巨大災害を引き起こすものを、このように無責任な組織に扱わせてはいけない。原発はできるだけ早く全廃するしかない。人間の手に負えない伎術だと考えるべきだ。


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