き坊の近況 (2018年12月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

12/1-2018
<原発ADR打ち切り>浪江町民109人提訴「裁判で和解案受け入れへの強制力を持たせたい」(河北新報)

福島県浪江町の人口の7割超の約1万5700人が申し立てた東京電力福島第1原発事故に伴う慰謝料増額の和解仲介手続き(ADR)が打ち切られた問題で、町民49世帯109人が27日、避難などへの慰謝料として東電と国に1人当たり1100万円の支払いを求める訴えを福島地裁に起こした。ADRに加わっていた原告は東電に対し、ADRの和解案を拒まれたことへの慰謝料として1人当たり110万円も求めた。

訴状によると、1100万円は「避難」「コミュニティー破壊」「被ばく不安」に対してで、東電に求めた110万円は早期解決を目的にした和解案を拒否されたことに伴う精神的苦痛に対する慰謝料。

原告団には103世帯246人が参加しており、49世帯以外は追加提訴する予定。弁護団は12月~来年1月、県内と東京で提訴に関する説明会を開く。原告は750世帯の1500~2000人規模になる見通しで、さらに増える可能性もあるという。
浪江町は2013年5月、町民の代理として慰謝料月額10万円を35万円に増額するよう、東電に求める集団ADRを申し立てた。原子力損害賠償紛争解決センターは月額5万円を上乗せする和解案を提示し、東電は6度にわたり拒否。センターは今年4月、町に仲介の打ち切りを伝えていた。

◇+◇

原告団は27日の提訴後、福島市で記者会見した。南相馬市に避難中の団長鈴木正一さん(68)は「ADR申し立てから5年待ったが解決できなかった。裁判で和解案受け入れへの強制力を持たせたい」と強調した。

ADRの先頭に立ってきた馬場有前町長は今年6月27日、69歳で亡くなった。鈴木さんは提訴前の集会で「きょうは前町長の月命日。失われた仲間の思いを胸に、決意を新たにした」と語った。
ADRを申し立てた町民のうち、900人以上が10月末までに亡くなっている。浜野泰嘉弁護士は「(早期解決が目的の)ADRが機能不全に陥っている。提訴を通して東電の姿勢を改めさせたい」と話した。(下表も 河北新報11/28)

【集団訴訟までの経過】
2013年5月29日浪江町が町民1万5700人の代理となって和解仲介手続き(ADR)を申し立て
14年1月31日口頭審理・現地調査
3月20日仲介委員が和解案
5月26日町と弁護団が和解案を受諾
6月25日東電が和解案拒否
8月25日仲介委員が和解案提示理由を補充
9月17日東電が和解案拒否
15年5月1日仲介委員が東電回答に釈明を求める
5月20日東電が将来不安増を認めるも和解案拒否
12月17日仲介委員が和解案受諾を勧告
16年2月5日東電が和解案拒否
11月15日東電が高齢者1人の和解案受諾
17年6月8日仲介委員が他の高齢者についても和解勧告
9月8日東電が和解案拒否
18年2月23日仲介委員が和解案提示理由を補足
3月26日東電が和解案拒否
4月5日仲介委員がADR打ち切り
11月27日浪江町民が東電と国を相手に集団提訴
赤字は引用者による

訴訟ではなくADRによって早期解決をはかるという目的であったのに、幾たびもの東電の和解案拒否によって、この間にADRを申し立てた町民900人以上が亡くなった。

上表を見ていると、東電のひどいやり方に腹が立ってくる。町民たちは結局、集団訴訟に訴えざるを得なかったのである。


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12/2-2018
新小型原発、開発へ 温暖化対策を名目に経産省(東京新聞)

地球温暖化対策を名目に、経済産業省が新たな小型原発の開発を進め、2040年ごろまでに実用化を目指す方針を固めた。太陽光や風力などの再生可能エネルギーが世界的に普及している中、経産省は温室効果ガス削減には原発が必要と判断。将来の建設を想定しており、原発の新増設に道を開くことになる。

新方針は11月14日、経産省内で開かれた非公開の国際会議で、同省資源エネルギー庁の武田伸二郎原子力国際協力推進室長が表明した。本紙は武田室長に取材を申し込んだが、応じていない。

出席者らによると、武田室長は地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」実現のために、原発を活用する方針を表明。国内の多くの原発が40年ごろに寿命を迎えることを受け、「将来も一定の原発比率を維持するには、新原発の建設に向けて今、準備を始める必要がある」と述べた。 開発目的は「再生エネが増えていくので、これをサポート(補完)する必要がある」とした。天候で変わる太陽光などの不安定な出力をならす必要があり、既存の大型原発より出力を調整しやすい小型原発が必要との見解を示した。

また、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムが国内外に大量に蓄積し、核不拡散の観点で各国の懸念が高まっていることから、プルトニウムを大量に燃やす原発が必要としている。東京など大都市圏の需要を満たすには大型の原発も必要とし、従来の軽水炉の改良も目指す。新しい方針は近く正式発表される。

日本は今年から、原発を温暖化対策として進めるための国際的な枠組み「クリーンエネルギーの未来のための原子力革新(略称NICE(ナイス) Future(フューチャー))」に、米国やカナダと共に主体的に関わり、参加国を募っている。今後、参加国の政府や企業との連携を検討し、三年以内に具体的な計画を策定する。

政府が今年夏に決定したエネルギー基本計画は新型炉の研究を進めるとしたが、新設には言及していなかった。世耕弘成(ひろしげ)経産相は国会で「新設、建て替えは全く考えていない」と答弁しており、新増設を想定した新方針は、従来の立場を翻すことになる。(以下省略)(東京新聞 12/1)

経産省が原子力ムラに完全になり代わって発想している。
「原発を温暖化対策として進める」というのは一種のトリックである。原発が発電を行っている最中には、確かに温暖化ガスを発生させないが、ウラニウム燃料を発掘・精製する段階は多量の石油と電力を費やしている。また、その過程で低濃度廃棄物を多量に作り出すことも重大である。発電終了後は核のゴミの処理・管理が必要である。しかも長期間にわたるために、未来世代の負担となる。

日本は、必要もないのにプルトニウムを取り出して蓄積しているのである。「もんじゅ」を廃炉にせざるを得ず、「新型炉の研究」も本欄11月29日に取りあげたが、フランス政府の方針で頓挫してしまった。

原発は危険なだけでなく、トータルに見ると地球温暖化に寄与しない、しかも、未来世代へ負担を課す。原発をいずれ全廃して再生可能エネルギーに切り替えていくべきだ。新小型炉の開発をめざすのは、そういう世界の大勢に逆行する、日本の原子力ムラと経産省官僚の悪あがきとしか思えない。


トップページの写真を、ヒラタアブの交尾からバッタ目コオロギ化科アオマツムシ♀に替えた。

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12/5-2018
トルコ原発輸出、断念へ 三菱重工、巨額建設費で難航(東京新聞)

政府と三菱重工業が、共同で進めてきたトルコへの原発輸出を断念する方向で検討に入ったことが4日わかった。関係筋が明らかにした。建設費が5兆円と当初想定の2倍にのぼる見込みとなり、安価な建設を求めるトルコ側との交渉が難航しているためだ。安倍晋三政権は原発の海外輸出を成長戦略の柱に掲げており、トルコへの輸出計画が頓挫すれば戦略の見直しは避けられなくなる。

トルコへの輸出は安倍首相と当時首相だったエルドアン現大統領が2013年に会談して合意。三菱重工を中心とする企業連合が4基を建設する予定だった。

当初の事業費は220億ドル(2・5兆円)とされ、17年に着工する予定だった。しかし、東京電力福島第一原発の事故後に求められた安全対策のために建設費が高騰。今年7月末には、三菱重工が総事業費が当初の2倍にあたる5兆円にのぼる見通しとなったとする調査報告書をまとめ、日本とトルコの両政府に検討を求めた。さらに8月には、トルコが米国との対立から通貨リラが暴落。建設コストはさらに膨らんだ。

日本側は事業費を回収するための電気料金の引き上げなどを求めたが、国民からの反発を恐れるトルコとの間で交渉が難航。トルコ国内の経済の混乱は長引いており、原発の建設費を捻出するのはさらに難しくなったとみられる。

世耕弘成経済産業相は4日の閣議後会見で「今まさに協議中で、何らかの決定がされた事実はない」と述べた。

相次ぐ海外輸出頓挫 残るは日立の英計画のみ

安倍政権は世界への原発輸出を成長戦略の柱に掲げ、首脳同士のトップ会談で積極的に売り込んできた。しかし、東京電力福島第一原発事故の影響を受けた安全規制の強化による原発の建設費の上昇や、地元住民の反対で、輸出計画は頓挫する例が相次いでいる

これまで政府と国内原発メーカーはベトナムやリトアニア、台湾への輸出を計画してきたが、いずれも相手側が中断を決定。東芝も原発子会社だった米ウェスチングハウス・エレクトリックが経営破綻し、英国など海外での建設事業から撤退した

トルコへの輸出計画が失敗に終わると、残る主要計画は日立製作所が英国の小さな島アングルシー島で進める建設計画だけになる。この計画も当初のコストを大幅に上回っており、日立は建設するかどうか2019年末までに最終判断することにしている。(東京新聞12/4)

原子力発電は、安全性・放射性廃棄物の最終処分・経済性のいずれの面からも、建設が困難になった。「地元住民の反対」はどの地域においても例外はない。原発は、すでに過去の技術となった、と言ってよい。

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12/6-2018
泊3号機の非常発電機不良9年間気づかず 北電、11月発覚(北海道新聞)

原子力規制委員会は5日、北海道電力泊原発3号機(後志管内泊村)の非常用ディーゼル発電機で、端子の取り付け不良が2009年12月の運転開始時から約9年間にわたり放置されていたことを明らかにした。今年11月の点検時に非常用発電機が動かないトラブルが起きて発覚した。規制委は原発の運用ルールを定めた保安規定違反にあたるかどうか調査する。非常用電源は停電時などに備えた安全対策の「とりで」とされ、北電の確認体制が不十分だった可能性がある。

規制委などによると、北電が11月9日に行った点検で、泊3号機の非常用ディーゼル発電機2台のうち1台が動かなかった。発電機の制御盤にねじで固定されているはずの端子2本のうち1本が外れていたことが原因だった。北電はこの事実を同22日にホームページでのみ公表していた。

端子は通常の点検では取り外さず、過去に交換したこともなかったため、規制委は「09年の運転開始から不安定な状態が続いていた」と指摘。問題の端子は固定されていなかったものの電気を通す導体に接して通電しており、発電機は月1回程度の点検や9月の胆振東部地震に伴う停電時もかろうじて動いていた。(図も 北海道新聞12/6)

北海道新聞のもう1本の報道では、次のように伝えている。
北海道電力泊原発3号機(後志管内泊村)で非常用発電機の不具合が9年間にわたり放置されていた問題で、北電は2007年と09年にも別の理由で非常用発電機のトラブルを起こしていた。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「トラブルが多すぎる」と問題視し、北電の対応を厳しく検証する構え。北電がこの件を公表したのは発生から13日後で、情報公開も遅れた

「泊原発は非常用発電機に関しておかしくないか。そんなに故障率が高いはずがない」。更田氏は5日の規制委会合で異例の強い口調で北電を批判、ほかの原発に比べて泊原発の故障発生率がどの水準にあるかを調べる考えを示した。
(北海道新聞12/6)
原子力規制委が厳しく問題点を指摘するのは良いが、規制委は圏外にいて自らの責任を忘れているような口ぶりじゃないか。泊原発でくり返しトラブルが起こっていたのを、放置していた点では規制委も同罪ではないか。
今年9月の胆振東部地震を泊原発が無事に乗り越えたのは、偶然だったのじゃないか。非常用発電機が起ち上がらない事態になり得ていた(あの時は原発は停止中だったが、プールの冷却をしていて、外部電源がすべて落ちた)。


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12/12-2018
被爆体験者161人全面敗訴 長崎第2陣手帳交付認めず 福岡高裁判決(西日本新聞)

国が定めた地域外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」161人が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた第2陣訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は、原告のうち10人を被爆者と認定した一審長崎地裁判決を取り消し、全員の請求を退けた。原告側は上告する方針。

原告161人は爆心地から半径約7・5~12キロの範囲におり、被爆者援護法が「身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」とする「3号被爆者」に当たると主張。主な争点は、3号被爆者に当たるかどうかだった。

判決で矢尾裁判長は、終戦直後に米国の調査団が長崎市とその周辺で計測した放射線量データを基に、原告がいた地域では原爆投下後、1年間の被ばく線量は最大でも18・7ミリシーベルトだったと指摘。内部被ばくについては「長期的にみてもかなり微量にとどまり、健康への影響は直ちに認められない」とした

その上で、「年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくで健康被害が生じるとの確立した科学的知見はない」とし、被爆者には当たらないとの判断を示した。

控訴審で原告側は、米英仏3カ国の原子力施設の従業員が、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくを長期間受けたことで健康被害があったとの研究資料を新たに提出。この主張について、高裁は「がんなどの発症リスクの直接的な増加を読み取ることはできない」として退けた。

一審長崎地裁判決は、原爆による年間の放射線被ばく線量が自然界(世界平均2・4ミリシーベルト)の約10倍を超える「25ミリシーベルト」以上の場合、健康被害が生じる可能性があるとの基準を提示。米国調査団のデータから原告の被ばく線量を個別に推計した医師の意見書を採用し、原告10人を被爆者と認定した。高裁はこの基準については言及しなかった。

先行した第1陣訴訟では昨年12月、最高裁が原告387人を被爆者と認めない判断をしており、敗訴が確定している。 【ワードBOX】被爆体験者

 国が定める長崎原爆の被爆地域は、旧長崎市と近隣旧町村の一部で、爆心地から南北約12キロ、東西約7キロ。行政区域を基に線引きされたため、縦長のいびつな形となっている。「被爆体験者」は同じ半径12キロ圏内でも被爆地域外で原爆に遭い、被爆者援護法に基づく援護が受けられない人たち。医療給付は精神疾患とその合併症に限られ、原則として医療費の自己負担がない被爆者とは格差がある。 (西日本新聞12/11)

日本政府は「年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくで健康被害が生じるとの確立した科学的知見はない」と言いつのっているが、これはもともとはABCC(原爆傷害調査委員会)が広島と長崎で原爆被爆者への調査を行ったことに発している。しかし、これに対する科学的/医学的な反証はその後いくつも出されており、現在はけして金科玉条でもなんでもない、時代遅れのデータでしかない。

ネット上で、手軽にこれについての知識を得るのは、北海道の放射線治療医である西尾正道さんの講演放射線健康被害の真実と今後の対応(2012年9月23日、約2時間)がすぐれている。この講演[46分~1時間4分]に、7つの反証例(論文)の紹介がある。
    ★1 1983年、インゲ博士がABCCの広島・長崎での研究は、爆心から2km以遠の被曝者と入市被曝者(原爆投下後、肉親捜索などのために被爆地に入った人)を無視していることを指摘した。
    ★2 2012年、放影研の論文、30歳で1Svの被曝をした人は、70歳となり固形がんで死亡するリスクが42%増加している。これは1950年~2003年の間、被曝者約12万人を調査したデータをもとにしている。
    ★3 2011年、カナダ・マギール大チーム。心筋梗塞の際のX線検査について、がんリスクを調べた。患者8万2千余人につてい追跡し、うち1万2千余人ががん発症。10~40mSvの被曝でも、10mSvごとにがんリスクが3%増加する
    ★4 2012年、Pearceら、ランセット掲載論文。CT検査を受けたこどもの白血病・脳腫瘍のリスクが増加する。50mSvの被曝でリスクが3倍になる。
    ★5 2005年、放射線業務従事者の被曝調査、15ヶ国40万7千人,100mSvの被曝で白血病以外のがん死が9.7%増加、白血病は19%増。
    ★6 2009年、原爆被爆者とチェルノブイリ被災者・原発労働者を比較したリスクの評価。40万7千人を調査している。同じ被曝量の場合、一度に浴びた場合と少線量を長期間にわたって浴びた場合、後者の方がリスクが低いとは言えない、という結論。
    ★7 2007年、文科省「日本の原発労働者調査」、男性20万3千余人、平均観察年10.9年、平均累積線量13.3mSv。白血病を除く全がん死亡率は累積線量との優位な関係がみとめられるが、生活習慣などによる影響が否定できない。
このように、年間100mSv以下の被曝であっても健康被害があることは、きわめて多数の人々を調査した信頼できるデータがいくつも存在している。しかも、がん発症リスクは被曝量に比例して増加するという結論は共通している。


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12/13-2018
東日本大震災 福島第1原発事故 作業員の50代男性労災 甲状腺がん発症(毎日新聞)

厚生労働省は12日、東京電力福島第1原発事故後に構内で電源の復旧作業に従事し、甲状腺がんを発症した50代の男性について、10日付で労災認定したと発表した。事故後の被ばくとの因果関係を認めた労災認定は甲状腺がんでは2例目で、白血病や肺がんと合わせ計6例になった

厚労省によると、男性は東電の協力会社に所属。1993年11月~2011年3月のうちの約11年に、第1原発を中心に複数の原発で作業し、累積被ばく線量は約108ミリシーベルトだった。このうち約100ミリシーベルトが事故直後の11年3月中の被ばくで、17年6月に甲状腺がんと診断された。

東京電力ホールディングスは「作業員の方にお見舞い申し上げる。引き続き、労働環境の改善、発電所の安全確保に努めたい」とコメントした。(毎日新聞12/13)

フクイチ事故の放射線被曝で発症して労災認定されたということが意義深い。いまだ少数でしかないことは不満であるが、本欄昨日も触れたように、日本政府は「年間100mSv以下の被曝では健康被害が生じない」という政治的偏見のもとにいるのだから。

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12/14-2018
原子力規制委 ヨウ素剤配布、若年層を優先(毎日新聞)

原発事故での甲状腺被ばくを抑えるため、原発5キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤を事前配布しておくことについて、原子力規制委員会の検討チームは13日、被ばくの影響が大きい若年層と妊婦に優先して配る方針を決めた。対象者を絞ることによって、自治体の配布を促す。

現行では、緊急時に配布が難しい原発5キロ圏内の全住民に、自治体が優先順位を付けずに配布するのが原則。しかし、住民への医師の説明などの手続きがあり、配布が進んでいない。

世界保健機関(WHO)は昨年、配布は「発がんリスクが高い若い人を優先すべきだ」「40歳以上は有益性が低い」などとする指針をまとめ、規制委が制度の見直しを検討していた。来夏をめどに、配布方法に関するガイドラインを改正する。(毎日新聞12/14)

規制委がヨウ素剤配布に関して検討を開始したという報道を本欄11月17日で扱った。

NHK(12/14)は同じヨウ素剤配布のニュースの中で、原発5キロ圏内の住民について
NHKが対象となる14の道府県に取材したところ、今月上旬までにヨウ素剤が配布されていない住民は、全国平均で対象の42%に上ることがわかりました。
言うまでもなく、原発事故の初期段階で放射性ヨウ素が拡散する範囲は5キロ圏内と限られているわけではなく、風向きによってすぐ100キロ程度まで広がる。いざという場合に「医師の指導」の下にヨウ素剤を配布するなどという悠長なことができるわけがない。緊急避難の最中になるはずなのだ。

原発のあるところは都道府県単位で配布しておく等の手をあらかじめ打っておくしか、意味のある配布法はないだろう。医師の「説明の文書」ないしスマホアプリURLなどを付けて配布するなど、住民の判断を信頼した配布法に改めるべきである。


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12/15-2018
【社説】 辺野古に土砂 民意も法理もなき暴走(中日新聞)

群青の美(ちゅ)ら海とともに沖縄の民意が埋め立てられていく。辺野古で政権が進める米軍新基地建設は法理に反し、合理性も見いだせない。工事自体が目的化している。土砂投入着手はあまりに乱暴だ。

重ねて言う。

新基地建設は、法を守るべき政府が法をねじ曲げて進めている。なぜそこに新基地が必要か。大義も根底から揺らいでいる。直ちに土砂投入を中止し虚心に計画を見直す必要があろう

辺野古工事の根拠となっているのは2013年、当時の仲井真弘多知事が公有水面埋立法に基づき防衛省沖縄防衛局に与えた埋め立て承認だ。しかし、県はその後の工事の進め方に約束違反があるとしてこの8月、承認を撤回した。この処分は生きていると言える。

防衛局は、国民の権利保護のための行政不服審査法をいわば脱法的に利用。撤回の効力停止を身内の国土交通相に申し立て、国交相は当然のように認めた。県は国地方係争処理委員会に国交相の決定は違法だと訴えており、結論はまだ出ていない。

さらには、埋め立て用土砂の性質や搬出場所、経路なども当初計画や県の条例、規則に反する疑いが続出。県は十二日、防衛局に工事即時中止の行政指導をしたものの、国は無視している。

岩屋毅防衛相は13日、玉城デニー知事との会談で工事を急ぐのは「普天間飛行場の危険性除去」のためと述べ、中止要請を突っぱねた。だが、新基地建設=普天間返還との相関論は破綻寸前だ

土砂投入を始めた辺野古崎南側海域だけでも、埋め立てに必要な土砂は約130万立方メートルという。

防衛局は詳しい工事手順を示していないが、地元の土木技術者は陸揚げ土砂をダンプカーで投入地点まで運ぶ方法では、休みなしに作業を続けても終了に4年を要するとみる。県が新基地完成まで13年と試算したのもうなずける。

県が算出した工費は約2・6兆円。普天間に駐留する海兵隊の役割も、東アジアの安全保障情勢も変化している。途方もない時間と税金を使った末の普天間返還にどれだけ意味があるか。県民は待つだけか。その労力を米国との交渉に用い、普天間の無条件返還につなげる方が現実的だ。

あらゆる民主的な主張や手続きが力ずくで封じられる沖縄。そこで起きていることは、この国の民主主義の否定でもある。
これ以上の政権の暴走は、断じて許されない。(中日新聞12/15)

安倍内閣が率いるこの国のやり方は、とても自分たちの国とは思えない。恥ずかしく、胸潰れる思いだ。

琉球新報の【社説】の末尾を引く。
その民意を無視した土砂投入は暴挙と言わざるを得ない。
歴史的に見れば、軍隊で脅して琉球王国をつぶし、沖縄を「南の関門」と位置付けた1879年の琉球併合(「琉球処分」)とも重なる。日本から切り離し米国統治下に置いた1952年(4月28日)のサンフランシスコ講和条約発効、県民の意に反し広大な米軍基地が残ったままの日本復帰はそれぞれ第2、第3の「琉球処分」と呼ばれてきた。今回は、いわば第4の「琉球処分」の強行である。

歴史から見えるのは、政府が沖縄の人々の意思を尊重せず、「国益」や国策の名の下で沖縄を国防の道具にする手法、いわゆる植民地主義だ。

土砂が投入された12月14日は、4・28(サンフランシスコ講和条約が発効した日)などと同様に「屈辱の日」として県民の記憶に深く刻まれるに違いない。だが沖縄の人々は決して諦めないだろう。自己決定権という人間として当然の権利を侵害され続けているからだ。
(琉球新報12/15)
まったく、その通りだと思う。

安保条約下の日本は、独立国とは言えない。安保条約に手を付けないで、お粗末な改憲を強行しようとしている安倍内閣にあきれてしまう。ものごとの道理が通っていない。それなのに、わが国・政府は平気な顔で無理を通していく。本土国民は見てみないふりだ。

「ちゅら海」が凌辱される「屈辱」に震え、怒り、悲しんでいる沖縄人たちが、今もっとも正常だ。


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12/17-2018
日立、英原発計画を凍結へ 安倍政権輸出案件、全て暗礁に(東京新聞)

日立製作所が、英国での原発新設計画を凍結する方向で調整していることが16日、分かった。3兆円規模に膨らんだ事業への出資企業を確保するのが困難で、巨額の損失が出た場合に単独では補えないためだ。三菱重工業もトルコでの原発新設を断念する方向で、安倍政権が成長戦略の目玉に掲げた原発輸出の案件は全て暗礁に乗り上げることになる。

日立は事業継続の可能性を残すが、現状では事実上、撤退する公算が大きい。日英両政府にこうした方針を非公式に伝えたもようだ。日本の原発輸出政策は、ベトナムやリトアニアでも撤回や凍結など計画の見直しが相次いでおり、実現のめどが立たなくなっている。(図も 東京新聞12/16)

本欄が12月5日で取りあげた安倍政府の原発輸出計画に関するニュースの続報。そこでは
トルコへの輸出計画が失敗に終わると、残る主要計画は日立製作所が英国の小さな島アングルシー島で進める建設計画だけになる。この計画も当初のコストを大幅に上回っており、日立は建設するかどうか2019年末までに最終判断することにしている。(東京新聞12/4)
としてあったが、どうやらアングルーシー島原発も建設中止となる見込みだという。

原子力発電はすでに時代遅れであること、安全性・合理性・経済性などどの面から見ても支持されないことが明らかなのである。


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12/19-2018
高速炉開発計画 当初の目標より100年後退 ロードマップ案で(NHK)

国の核燃料サイクル政策の柱の1つ、高速炉の開発計画について国の作業部会は18日、「本格利用が期待されるタイミングが21世紀後半」とするロードマップの案をまとめました。かつて、1980年代後半の実用化を目指すとしていた当初の目標時期より最長で100年ほど後退する形となり、専門家は「原子力をめぐる環境が不確実になったことの表れで高速炉の開発ありきでなく、時代に合った議論をすべきだ」と話しています。

政府は、おととし高速増殖炉「もんじゅ」を廃炉にする一方、高速炉開発の継続を決め、国の作業部会が18日、今後の開発のロードマップ案をまとめました。
案では「高速炉の本格利用が期待されるタイミングが21世紀後半」としています。

日本が推進する核燃料サイクル政策の中核と位置づけられてきた高速炉開発は、1967年の国の長期計画で実用化の目標を1980年代後半としてきました。

しかし、その原型炉とされたもんじゅの運転開始は1994年で、翌年に起きた冷却材のナトリウムが漏れる事故などトラブルが相次ぎ、1兆円以上が投じられながら、ほとんど稼働せずにおととし廃炉が決まりました。

今回、示された案では福島第一原発の事故後、初めて高速炉開発の目標時期が明記されましたが、当初の目標より最長で100年ほど後退することになります。

これについて元・原子力委員長代理の長崎大学 鈴木達治郎教授は「推進側だけで議論しているのが問題で『もんじゅ』の失敗を踏まえ、1度立ち止まって考えるべきだった。目標時期の後退は原子力をめぐる環境が不確実になったことの表れで、高速炉の開発ありきで研究を進めるのではなく、今の時代に合わせた長期的な研究開発の必要性を議論すべきだ」と話しています。(以下略 NHK12/18)

「国の作業部会」といっても要するに、経産省が集めた原子力ムラと経産省利権を失いたくない官僚たちにすぎない。この者たちは核燃料サイクルとその中核となる高速炉開発の旗を、何があっても降ろしたくないのである。なぜか。核燃料サイクルの巨大利権にしがみついていたいから。

「もんじゅ」だけでも1兆円の金を注ぎこんでいる。まともな神経を持つ組織であれば、まず、「もんじゅ」が失敗した理由はなにかを解明し、納税者たる国民にそれを明らかにするはずである。そして、国民の合意を取り付けた上で、次の目標へ進むべきである。経産省には、その気配さえない。

核燃料サイクルの旗を降ろすと、使用済核燃料からプルトニウムを取り出すという工程がなくなり、使用済核燃料は文字通りゴミとなる(現在は使用済核燃料は資産に計上されている)。そうなれば、日本の原発産業は会計上も大破綻を突きつけられ、単に物理的に「トイレのないマンション」と言っているだけでは済まない。したがって、原子力ムラ官僚たちは、実現の見込みがあろうがあるまいが、核燃料サイクルの旗をけして降ろさないのである。当初の予定より100年遅れるというのに。他の先進諸国はみな止めたというのに。

原子力ムラと通産官僚を太らせるだけの核燃料サイクルは一刻も早く止めるべきだ。


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12/22-2018
ふげん廃炉、3倍以上92億円 19年度政府予算案(中日新聞)

政府が21日に閣議決定した2019年度予算案では、廃炉中の新型転換炉ふげん(敦賀市)の関連予算が18年度の3倍以上に増加。同じく廃炉中の高速増殖原型炉もんじゅ(同市)は、維持管理経費などとして18年度と同額が計上された。北陸新幹線金沢-敦賀間は、建設費の上振れが明らかになったが、追加費用の一部が早速盛り込まれるなど、23年春開業への懸念はなくなった。

廃炉中の新型転換炉ふげん(敦賀市)の関連予算は92億円で、2018年度の27億円から3倍以上に増加した。使用済み核燃料の搬出先がフランスに決まったことによる準備作業が始まるためで、廃炉費用は前年の16倍の69億円となった

ふげんは08年に廃炉作業を開始したが、使用済み燃料466体を東海再処理施設(茨城県東海村)に搬出する計画が行き詰まり12年度末に搬出完了する予定が遅れていた。今年10月に日本原子力研究開発機構がフランスの核燃料会社オラノ・サイクル社と搬出に向けた準備契約を結び、新年度からようやく、燃料搬出の準備が本格化する。

23年度からオラノ社の再処理工場へ搬出する予定で、19年度から準備としてオラノ社側で輸送キャスク(容器)の製造や、両国で輸送に向けた許認可取得などを進める。19年度の燃料搬出費用は63億円を計上した。

施設の解体などの費用も大幅に増額し5億円を充てる。施設の維持管理費は前年度と同程度の23億円とした。(以下は「もんじゅ」関連のため省略)(中日新聞12/22)

「ふげん」の廃炉に伴って、使用済み核燃料466体の処理がもちあがってきた。使用済み核燃料の処理は何もせずに、長期間保管するのがもっとも合理的で安価なのだが、わが国には原発敷地内の仮置き場しかなく、恒久的な保管場所がない。

それどころか、わが国がやろうとしていることは真逆の浪費で、使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを取り出しそれをMOX燃料にして再利用するという「核燃料サイクル」なのである。核燃料サイクルの中心施設となるのが「もんじゅ」など高速増殖炉なのだが、それは廃炉となり、そのさきの目途が立たない。しかも更にひどいことに、わが国には再処理施設がない(六カ所村の再処理施設は未完成)ために、フランスに輸送して再処理して貰い、プルトニウムも高濃度ゴミのガラス固化体も低レベルのゴミもすべて日本へ送り返すという計画である。フランスの原発業者にとって日本がいかにいいお客さんであることか。日本人はだまって税金を納め、電気代を払う。

この計画がいかに高くつくかは言うまでもないが、それだけでなく、多量の高濃度の放射性物質を地球を一廻りする船舶輸送を行う(これまではパナマ運河経由)。それがどれ程危険で危うい輸送工程であることか。航路海域の各国から日本への強い批判が出るのは当然である(わが国はこれまでODA資金などをばらまいて、口封じに躍起となっていた)。

巨額の費用が動くので、この計画の周辺に群がる原発業者がいかに喜んでいるか、想像がつく。その決定を行った官僚の巨大な権益も、いうまでもない。


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12/23-2018
核燃料本格搬出は来年夏に、福島 本年度末に試験取り出し(東京新聞)

東京電力が福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールからの燃料搬出を来年3月末に数体のみ試験的に実施し、本格的な取り出しを来年夏に開始する方向で検討していることが22日、関係者への取材で分かった。搬出に使う装置でトラブルが相次ぎ、11月に予定していた開始は大幅に遅れる見通しとなっていた。修理が必要な箇所について復旧のめどが立ったとみられる。

使用済み燃料は熱と強い放射線を長期間、出し続け、冷却や放射線を遮るためプールに保管されている。3号機には計566体の使用済み燃料と新燃料が保管されており、廃炉作業を進める上で大きなリスクとなっている。(東京新聞12/22)

フクイチ3号機の燃料取り出しについては、幾度も取りあげている。先月の本欄11月3日,11月13日などを見てもらいたい。そこには、更に10月や8月のトラブルについての情報がある。

使用済み核燃料は発熱と強い放射能のために、水が循環しているプールに浸けて冷やしている。3号機の解体作業にかかる前に、使用済核燃料を取り出して別の安全なプールに移動する必要がある。ところが、取り出し機器の不具合などが続発し、その燃料取り出し作業が始められないのである。

今のプールは311大震災に遭って不明のダメージを受けている可能性があり、一刻も早く、安全なプールへ移動しなければならないのだ。


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12/26-2018
商業捕鯨、来年7月再開=政府、IWC脱退を発表-菅長官「歩み寄り見られず」(時事通信)

政府は26日、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、来年7月から商業捕鯨を再開すると発表した。捕鯨をめぐり平行線の議論が続くIWCに加盟したままでは、再開のめどが立たないと判断した。商業捕鯨の再開は約30年ぶり。米国やオーストラリアなど反捕鯨国の反発は確実だ。(以下略)(時事通信12/26)

私は、小学校時代クジラ竜田揚げがご馳走だと思って歓声を上げてそだった世代だ。もうすこし歳を食ってからは鯨ベーコンで焼酎を飲むことで大人になって行った。そういう「クジラびいき」の私だが、今日の政府の発表は違うんじゃないかと思った。実に短慮である。

今の国民の内で、クジラを一度でも口にしたことのある人がどれだけいるだろうか。私は70代だが、若い世代だとどうだろうか。そういう調査をしたらしい気配をまったく知らない。日本国民の内のどれ程の人が、IWCから脱退して、世界中から白眼視されても「商業捕鯨をすべきだ」と考えているだろうか
そう考えている人は、和歌山県や山口県のクジラ漁をしたいと考えている一部の漁業者およびその関連業者(観光業など)に限られていることは明らかだ。

私が子供だった半世紀以上前の食糧事情と現在はまったく相違している。今の若い人たちのなかの多くはクジラ類(イルカなども含む)に対して親愛感を抱いている。食料源としてみるのではなく、優雅で知能の高い海中哺乳類として自分たちに近しい存在であると感じている。そういう人達の気持ちをすくい上げる気持ちをまったく持たない「漁業利益」にしがみつく自民党の一部は、国民の支持を得ないだろう。

わが国民の多くは、たとえその意見が通らなくともIWCに残って日本で継続していたクジラ漁業の歴史的意味をあくまでも説く態度を支持するとおもう。結論に同意されなくとも、世界の意識ある人達から敬意を受けるとおもう。

次図は、私の愛読書のひとつ、五十嵐大介『海獣の子供』第2巻p159 から、美しいクジラの描写である。


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12/27-2018
79原子力施設廃止に1.9兆円 総費用さらに、国民負担 機構試算(東京新聞)


日本原子力研究開発機構は26日、全国に保有する原子力関連の79施設の廃止に、約1兆9千億円かかるとの見積もりを初めて公表した。廃止を終えるまで70年としたが、人件費や老朽化対策などの維持管理費は含まれておらず、総費用の大幅増加は避けられない。機構の運営は国費で賄われるため、全て国民負担となる

機構が各施設の廃止作業の工程表「バックエンドロードマップ」をまとめ、施設解体や廃棄物の処分にかかる費用を示した。老朽化が進み、既に44施設で廃止方針が決まっている。当面は運転を続ける35施設も、将来の廃止にかかる費用を試算した。

最も高いのは、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す東海再処理施設(茨城県東海村)の7700億円。6月から廃止作業が始まっており、当面10年間の維持管理などに別に2170億円を要する。廃止作業中の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)は1500億円だが、政府は維持管理費などを含めた総費用を3750億円と見積もっている。

ウラン濃縮施設(岡山県鏡野町)で発生するウランを含む廃棄物の処分費用は、制度が未整備のため試算には含まれていない。

施設の解体などで発生する放射性廃棄物は、200リットルドラム缶換算で約70万本に上る見通し。既存施設では約43万本しか保管できず、最終処分の見通しが立たなければ保管施設の増設が必要となる。東海再処理施設では、再処理で発生する高レベル廃液を処理したガラス固化体(核のごみ)も約1000体発生する。他に放射能レベルが比較的低く、材料として再利用できるとされるコンクリートや金属なども約21万トン発生する見込みだ。

廃棄物の最終処分先は決まっていないが、工程表では最初の10年間で老朽化対策の工事を進め、次の20年間で廃棄物の処理を本格化、後半の40年間で施設の解体まで完了させるとしている。(東京新聞12/27)

このニュースは各紙が伝えているが、毎日新聞は上乗せされることが確実な額に関して,次のように述べている。
今回、もんじゅと東海再処理施設の廃炉費用を計9200億円としたが、2施設については維持管理などを含む廃炉関連費用として計1兆3620億円かかると公表済みだった。
このため試算された廃炉費用には維持管理費などを加えると、少なくとも約4000億円以上が上乗せされる見通しとなる。さらに、もんじゅの使用済み核燃料や、研究施設の放射性物質などの処分費用も未定だ。
(毎日新聞12/27)
70年後とは2088年のことだ。おそらくこの計画の完了は、もし完了するとしても22世紀まで掛かることだろう。その頃、わが国は人口減少の国力衰退期になっており、何ひとつ生産するわけではない廃炉・解体作業は多額の国費を吸い込むだけの巨大な厄介者になっている。おそらく幾つもの計画が途中で放棄され、処理されない放射性廃棄物の残骸が山となって残るという惨状を呈していることになるのではないか。

原子力関係の産業は一日も早く停止し、国力のある内に処理を進めておかないと、未来の人々の負担を増すばかりである。原子力発電を享受しただけで後始末を考えなかった迷惑な世代として、我々は未来の人々の怨嗟の的となるに違いない。


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12/29-2018
中間貯蔵、福井県外立地を求める 使用済み核燃料で西川知事(中日新聞)

福井県の西川一誠知事は28日の記者会見で、県内の原発から出た使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について「県は発電のために貢献し、その役割を果たす。終わったら更地にして戻してもらうのが基本的な方針だ」と述べ、改めて県外立地を求める考えを示した

中間貯蔵施設を巡っては、関西電力が県に約束していた計画地点の年内提示を断念。岩根茂樹社長が26日に県を訪れて西川知事に謝罪した。

西川知事は「県と関電だけの議論ではなく、他の地域が必ず存在する非常に難しい課題だ」と理解を示し「両方の地域で信頼を得ながら解決することが基本」と話した。(中日新聞12/28)

福井県は「原発銀座」といわれるほど多数の関電の原発が立地しているが、一貫して、使用済み核燃料は県外へ持ち出して貯蔵することを強く要求してきた。中間貯蔵施設を県外に設置することを条件にして関電に原発立地を認めたのである。

本欄17年11月27日で取りあげているが、関電社長は「18年中に中間貯蔵施設の県外建設地点を示す」と西川知事に対して約束している。それが果たせないことが明らかになり、26日に岩根社長が西川知事に謝罪したのである。

今後も、県外候補地が求まる見込みはなく、解決のしようのない問題がずるずると長引くだけになるのだろう。この件に限らず、わが国の原発関連の難問題は例外なく“ずるずる先延ばし”ばかりである。
国が「原発政策を止める」という決定をした上で、国が国民に頭を下げて解決を求める道筋しか、ありえないだろう。今のような、電力会社と立地自治体と一部業者が原発マネーに潤うというだけの原発政策では、けして、国民多数の納得を得る解決策はありえない。


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拙論「清水晴風『世渡風俗図会』の研究」をサイトにアップしてから、1年を経過した。『世渡風俗図会』は清水晴風の遺稿として残された大量の資料であり(約580図の絵と文)、拙論には誤りや不充分な点が多数あることが考えられるため、全体を見直し不充分な点に手を入れることに努めてきた。例えば国会図書館がデジタル公開している『新聞集成明治編年史』を読んで、日付のあるデータを見付けてそれを取り込むことなどの作業をしてきた。
この度一応の区切りとし、「改訂版」をアップした。

特に「長文コメント」として、第四巻-25「三橋 みはし」を新たに書き直した。第七巻-24 「秋葉の原」は大幅に書き加えた。

「改訂版」をご案内いたします、 「清水晴風『世渡風俗図会』の研究」
11月26日(2018)


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