き坊の近況 (2019年2月)


旧 「き坊の近況」

【2019年】: 02 01 月

’18 ’17 ’16 ’15 ’14 ’13 ’12 ’11 ’10 ’09 ’08 ’07 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 

 次月 先月 HOME 


日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

2/2-2019
<福島第1原発>2号機空間線量6分の1に低減 建屋最上階(河北新報)

東京電力は31日、福島第1原発2号機の使用済み核燃料の取り出しに向け、昨年11月から実施中の原子炉建屋最上階の線量測定の途中経過を公表した。床面から高さ1.5メートル地点の空間線量の最大値は毎時148ミリシーベルトだった。2012年の調査時の6分の1程度と大幅に減少したものの高い状況にある。

高さ1.5メートルの線量は最上階の85カ所でロボットを使って測った。最大値は原子炉格納容器の真上のふた「ウェルプラグ」の上で測定された。12年調査では同じウェルプラグ上が毎時880ミリシーベルト(高さ1.1メートル)で最大だった。
低減理由について、東電は「自然減衰のほか、建屋に流入した雨水の影響も考えられる」と説明。事故当時から現場に残っていたフェンスなどを片付けた効果もあったとみられる。

使用済み核燃料取り出しにはさらに大幅な低減が必要で、資源エネルギー庁の担当者は「作業環境が大幅に改善されたとは言えない」と指摘した。先行して取り出し準備が進む3号機は、放射線を遮る対策工事などで建屋最上階の線量を毎時1ミリシーベルトに下げている。

東電は2号機建屋最上階の線量測定を2月上旬まで続け、建屋最上部の解体計画に反映させる。
東電はまた、1、2号機の共用排気筒の解体に向けて安全対策を追加するため、3月の予定だった解体作業開始時期を5月に延期すると明らかにした。(河北新報2/1)


東電の「2号機使用済み燃料プールからの燃料取り出し」(2018)よりここ

空間線量がだいぶ下がったと言うが、使用済み燃料がプールに在って現在も冷やし続けている。それをより安全なプールに移動・退避しないといけない。そのためには、1mSv程度に下げる必要があるが、現在は148mSvという極めて強い線量なのである。
上図は、615体の使用済み燃料が高い位置のプールに保存されている様子を示している。

燃料取り出しまでには、まだまだ、時間を要する。


Top
2/3-2019
東海第二 鉾田市長「判断材料に」 「主婦の会」4242人分署名提出(東京新聞)

日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)の再稼働反対表明を鉾田市の岸田一夫市長に求める署名を集めていた市内の主婦5人でつくる「東海第二原発を動かさず子どもの未来を守る鉾田主婦の会」が31日、市長に署名4242人分を渡した。岸田市長は、是非を判断する際の参考にする考えを明らかにした。

この日、市役所で署名を受け取った岸田市長は「4242人分の気持ちを真摯(しんし)に受け止める」と応じた。再稼働の是非については「今は、どうこう言えないが、この署名は判断材料になる」との考えを示した。

市は東海第二の30キロ圏に入る。昨年8月、再稼働する際、原電に意見を述べる協定を結ぶことで原電と合意。署名は、岸田市長が意見を表明する際に、影響を与える可能性がある。

会のメンバーの木村みね子さん(66)は「市民は、岸田市長が再稼働反対を表明するのを待っている。これだけの有権者の声で、市長も判断しやすくなるのでは」と期待を寄せた。署名は市内の有権者約4万人の10%に当たる。

会は署名欄入りのチラシを新聞に折り込み、住宅に出向くなどして署名を集めた。昨年12月には、目標としていた千人分を大きく上回る3千人分を集めていた。4242人には市民以外に、鹿嶋市や行方市など近隣の住民85人分の署名も含まれる。

3月末まで署名集めを継続し、改めて岸田市長に渡す予定だ。

茨城県鉾田市は水戸市の南側に位置し、一部が東海第二から30km圏に入っているが、「再稼働に事前同意」を求められる6市村(常陸太田市・日立市・那珂市・東海村・ひたちなか市・水戸市)には含まれていない。

しかし、原電が再稼働を判断する際に「意見を述べる協定」などを結ぶことで合意した(18年8月)。
原電と新協定を結ぶのは東海第2原発から半径30キロメートル圏内にある高萩、笠間、常陸大宮、鉾田、茨城、大洗、城里、大子の8市町。同会議の構成自治体で圏外の小美玉市については、協定の代わりに同様の権限が確保できる枠組みを設ける。(日本経済新聞2018/8/29)

本欄1月22日で、この同じ署名活動について扱った。その時は3600名の署名だった。

Top
2/7-2019
汚染土で盛り土計画 環境省、常磐道の4車線化工事(東京新聞)

東京電力福島第一原発事故後の除染で発生した汚染土を、環境省が福島県南相馬市内の常磐自動車道で、4車線化工事の盛り土に利用する計画が浮上した。福島県内で出た膨大な汚染土は、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)に搬入することが原則だが、最終処分地は未定。環境省は公共事業に利用し、最終的な処分量を減らしたい考えだ。地元住民らは「盛り土に使うのは、事実上の最終処分だ」と反発を強めている。

地元関係者によると、環境省の計画では、南相馬市沿岸部の仮置き場に保管している汚染土約千立方メートルを異物を取り除くなどした後に使う。平均放射能濃度は1キログラム当たり770ベクレル程度で特別な処分が必要な指定廃棄物(同8000ベクレル)より低いとされる。常磐道浪江-南相馬インターチェンジ(IC)間で一部区間の拡幅部分の盛り土にし表面を汚染されていない土で覆う。

環境省は昨年12月14日の市議会全員協議会で、盛り土に使うことを「実証事業」として説明した。同26日には事業候補地の同市小高区羽倉(はのくら)地区の相良(さがら)繁広区長(67)に、住民説明会開催の申し入れをした。

本紙の取材に相良区長は「区内にある仮置き場の汚染土が、まだ中間貯蔵施設に搬出されていないのに、新たな汚染土を受け入れるわけにはいかない。候補地の周りに農地があり、大雨などで汚染土の流出が心配だ」と話した。今月3日には住民の緊急役員会を開き、環境省と交渉しない意思を確認するという。

計画について、環境省で担当する山田浩司参事官補佐は「地元に正式に話していないので、お答えできない」としている。

汚染土利用を巡っては、南相馬市の仮置き場で2017年5月から盛り土をつくり、周辺の放射線量や浸透水の放射能濃度を測定した。放射線量の高い飯舘(いいたて)村長泥(ながどろ)地区では18年12月から、汚染土で園芸作物を栽培し、放射性セシウムの移行状況などを調べている。今後、盛り土の造成や露地栽培をする。二本松市では市道の盛り土工事に使う実証事業を計画したが、住民の反対で頓挫している。(下図も 東京新聞2/2)


「汚染土」は、原発事故で汚染された土(表土)を剥いで、袋詰めしてまとめて保管しているもののことだ。それを自動車道の盛り土として再使用するために袋から出してしまうという。

「放射能は閉じ込めて永久保管すべし」という大原則に反する。けっして許してはならない。


Top
2/10-2019
泊原発、消火設備が凍結 暖房故障に寒波影響か(中日新聞)

北海道電力は9日、泊原発1、2号機(泊村)の消火設備の一部が凍結、損傷し、少なくとも同日未明から約6時間にわたって使用不能になったと発表した。設備がある部屋の暖房が故障した上、記録的な寒波の影響で室温が氷点下5度まで低下したことが原因とみている。泊原発は現在、運転停止中。主力の消火設備に問題はなく、異常はなかった。

同社によると、損傷したのは消火ポンプの水圧を保つための「消火加圧水ポンプ」などで、9日午前0時半ごろ、パトロール中の社員が異常に気付いた。加温設備を使って午前6時53分までに凍結を解消した。(中日新聞2/10)

この数日間の寒波の影響で、泊原発の消火設備が凍結などで使用不能に陥っていたという。北海道電力の危機感の欠如したお粗末な態勢が窺われる。

讀賣新聞にはつぎのような報道があった。
同社(北電)広報部は、「他の部屋の暖房は稼働しており、伝熱効果で凍結は発生しないと見込んでいたが、見通しが甘かった。 (讀賣新聞2/9)
「伝導効果」などと言っているが、隣室の暖房の熱が壁を通して伝わると見込んでいた、という意味だろう。伝導効果を解析して自信をもっていたというのではなく、記者らの追求から一時的に逃れるための口実に言ってみたという程度のことに思える。原発技術者たちの腐敗・堕落ぶりが想像される。


Top
2/14-2019
<福島第1・2号機> 東電接触調査 小石状のデブリ動く 取り出しへ前進(河北新報)

東京電力は13日、福島第1原発2号機の原子炉格納容器内部で、溶融核燃料(デブリ)とみられる堆積物の接触調査を初めて実施した。小石状の堆積物は調査装置でつかんで持ち上げることができ、搬出できる可能性が高まった。
ただ、これまでの調査で粘土状に見えていた堆積物は動かすことはできず、今後の取り出しでは複数の機器を使い分ける必要があることが判明した。

調査は格納容器内部に通じる貫通部から最長15メートルに伸びるパイプを挿入。先端からつり下げ式の調査装置を格納容器底部に降ろした。遠隔操作で動く2本の「指」で6カ所の堆積物を挟んだところ、小石状の4カ所と構造物とみられる1カ所は数センチ持ち上げて位置を変えられた。持ち上げた後に崩れることもなかった。

一方、粘土状に見えていた1カ所は「指」でしっかり挟めなかった。接触場所に傷が見られず、実際には粘土状ではなく一定以上の硬さがあると考えられる。
東電は「デブリ取り出しのツールは複数必要で、単につまみ出すだけではないということ。調査結果を踏まえて必要な機械を開発する」と説明した。

調査は8時間、前後の準備などを合わせて10時間かかった。格納容器内部の放射線量や温度、底部以外の場所で実施した接触調査の結果などは近く公表する。調査中に放射性物質の漏えいは確認されなかった。

東電は2019年度、上期に1号機、下期に2号機でデブリの少量採取を実施。同年度に本格的な取り出しの初号機を選ぶ方針で、2号機が有力視される。実際の取り出しは21年に始める予定。

[溶融核燃料]2011年3月に起きた東京電力福島第1原発事故で、原子炉が冷却できなくなり溶け落ちた核燃料。デブリとも呼ばれる。原子炉内にある金属の構造物のほか、コンクリートなどが溶けて混ざっているとみられるが、性状や、どこにどれだけあるかなど詳しいことは分かっていない。2号機原子炉格納容器の底部で確認された小石状の堆積物は、炉心溶融を起こした1979年の米スリーマイルアイランド原発事故のデブリとも似ており、東電はデブリとほぼ断定している。(河北新報2/14)

小石状に見えるもので、つまむことが出来て持ち上げることが可能なものが存在していた、ということ。それに対して、従来「粘土状」と表現されていたものは見かけが粘土のように見えるというだけで、実質は堅くて持ち上がらず、つまむことも出来ないものであった。

つまり、「粘土状」の物質は堅く固着して全体がつながっているのに対して、「小石状」のものは孤立していて周囲とつながらず、掴んで持ち上げることが出来るということらしい。

掴んで持ち出せるものはそのまま格納容器の外へ移動することが可能であろうが、「粘土状」のものは、切り離すのか引きちぎるのか、いずれにせよデブリに対する加工工作を行う必要があることになろう。

「粘土状」のものがどういう質のものであるのか、分かっていない。それを調査することがまず必要であり、その上で、どのような工作具を用意する必要があるのか、非常に困難な課題が見えてきた。
おそらく、いくつかの異なる質の工作具が必要であり、それらをどのように使いこなすのか、果たしてそれは可能なのかどうか、未知のことばかりだ。しかも、1号機、3号機も待っている。

◇+◇

NASAの火星探査機のローバー「オポチュニティー」は昨年6月の砂嵐に巻き込まれ、地球との連絡が途絶えていたが、NASAは13日、15年間に及ぶミッションの終了を宣言した。打ち上げは2003年、火星着陸は2004年。以後、火星の火口から火口を尋ねる旅を続け、幾多の困難を乗り切って、45kmを走行した。初めの計画では90日の命と考えられていたが、驚くべき長期の活躍と、幾つもの発見(火星に於ける流水の痕跡など)をなしとげた。

本欄では何回か取りあげているが、ビクトリア火口に到着した頃の記事、2006年10月1日を見て下さい。 また、2008年11月16日でもビクトリア火口を扱っており、この火口の縁をオポチュニティーが探査した詳細路を取りあげている(ここ)。

下の写真は、このたびNASAがミッション終了に際して発表した、オポチュニティの全行程です。
径700mのビクトリア火口に寄り、巨大なエンデバー火口の縁に達して、そこで砂嵐に埋まってしまった。


Top
2/17-2019
原電と8市町が新協定 事前同意実現せず 東海第二再稼働で20キロ圏(東京新聞)

東海第二原発を巡る15市町村と原電との取り決め
再稼働の際に必要な事前の同意
東海村、水戸市、ひたちなか市、日立市、那珂市、常陸太田市 (6市村
事故時に速やかな連絡を受け、安全対策に意見を述べる
東海村、水戸市、ひたちなか市、日立市、那珂市、常陸太田市
常陸大宮市、笠間市、鉾田市、高萩市、大洗町、茨城町、城里町、太子町、小美玉市(15市町村

東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、30キロ圏の8市町が15日、安全対策に関する意見を述べることなどを盛り込んだ協定を原電と新たに結んだ。一方、当初は一部自治体が、東海村や水戸市など6市村と同等に、再稼働の際の事前同意を含めるよう求めてきたが、実現しなかった。

8市町は、常陸大宮、笠間、鉾田、高萩の4市と、大洗、茨城、城里、大子の4町。加えて、小美玉市を同様な扱いとすることで原電と合意した。

この9市町と、事前同意が必要な東海村や水戸市など6市村は2014年から原電と交渉。6市村のほか、常陸大宮市などの原則20キロ圏の自治体が、事前同意を盛り込んだ協定にするよう求めていた。

このうち、6市村は昨年3月、原電と事前同意の協定を締結。だが今回、残りの20キロ圏の自治体は「意見」の協定にとどまった。

協定書は「安全を確保するため必要があると認める時に原電に意見を述べる」とあるが、再稼働について意見を述べるとまで明記されていない。これに、事務局を務める水戸市の担当者は「再稼働に直接意見が言えるものではないが、安全対策について話す中で、再稼働についても言及できるはずだ」と解釈する。

原電の広報担当者は「具体的にはコメントできない。丁寧な情報提供と自治体への重要事項に関する迅速な報告をして相互関係を強化します」とした。(表も 東京新聞2/16)

鉾田市で行われている「主婦の会」の署名運動については、本欄2月3日で取りあげている。

内容的に不充分な点が多々あるようだが、個別の事案について地元の人々の直接的な意見表明がなされることには、原則的に賛成だ。


Top
2/20-2019
原燃、再処理工場「しっかり動かす」 月内にも補正書 (日本経済新聞)

日本原燃の増田尚宏社長は18日、使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)について「(2021年度上半期としている)竣工時期を守り、しっかり動かしたい」と稼働の意志を強調した。原子力規制委員会との意見交換会の後、報道陣の取材に応じた。政府は日本が保有する約47トンものプルトニウムを削減する方針で、工場の稼働を疑問視する声もある。

再処理工場は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出して再利用する核燃料サイクル政策の中核施設だ。増田社長は、安全審査の補正書を月内をめどに規制委に提出する意向も明らかにした。これを受けて規制委は合格に向けた「審査書」をとりまとめる最終段階に入る。

国の原子力委員会は18年、プルトニウムの保有量を削減する方針を決めた。一方、再処理でできるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やせる原発の再稼働はなかなか進まず、消費が進まない恐れがある。

これについて会合では、「再処理は、使用済み燃料再処理機構がつくる利用計画に合わせて進める。バランスの取れたものが委託されると考えている」(増田社長)と言及した。(日本経済新聞2/18)

青森県六カ所村に再処理工場の建設が始まったのは1993年のことで、実に25年以上も昔のことだ。その間、数え切れないほどの「竣工延期」がアナウンスされ、「稼働の前に老朽化が始まっているんじゃないか」と本気で心配されている。費用はすでに2兆2千億円ほどに達しているという。
「補正書」が承認されれば、規制委の合格へむけて最終段階となる。

国の原子力政策が建前だけの「核燃料サイクル」を下ろしていないために、その中核施設である再処理工場の完成には形だけでも「大義名分」がある。しかし、再処理工場で行うことは、全国の原発から集まる使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す作業であり、「日本が保有する約47トンものプルトニウムを削減する」という国際的な公約に反することになる。

プルトニウム消費の目玉のはずだった「もんじゅ」は廃炉となり、MOX燃料として少しずつでもプルトニウムを消費しようとする計画も原発の再稼働が進まず、プルトニウム消費は滞っている。
つまり、再処理工場が「しっかり動く」のはだれにも歓迎されないのである。現場の技術者・作業員たちの士気が衰退するのは当然のことだ。むしろ、いつまでも「竣工延期」が続く方が、国にも好都合なのである。マンガのような本当の「金食い虫」の話だ。


Top
2/21-2019
原発避難で国家賠償5件目 横浜地裁判決(中日新聞)

東京電力福島第一原発事故で福島県から神奈川県に避難した住民ら175人が国と東電に慰謝料など計約54億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は20日、いずれの賠償責任も認め、152人に計約4億1900万円を支払うよう命じた。全国の同種訴訟約30件のうち8件目の判決。国の責任を認めたのは5件目となり、司法判断として定着しそうだ。

津波対策を巡る国と東電の責任の有無や、国の指針に基づき東電が支払ってきた賠償額が妥当かどうかが主な争点。判決は国が津波到来などを事前に予見でき、事故は回避可能だったと判断し、東電に対する規制権限を行使しなかったのは違法と結論付けた。賠償額では、国の指針を限度と認めることはできないとした。

ただ、原告側は「被害の実態に見合わず、賠償額は十分とは言えない」として控訴を検討する。

東電の責任は8件全てが認め、国も被告となった6件のうち、国の責任を認定しなかったのは2017年9月の千葉地裁判決のみにとどまる。

中平健裁判長は、平安時代の貞観(じょうがん)地震の知見に基づく東電の報告書があった09年9月の時点で、国は津波の到来と、それに伴う全電源喪失を予見できたと認定。「10年末までに非常用電源設備の移設などの対策ができた」と指摘し、事故は回避可能だったとした。

また、原子力安全委員会などが東電の津波対策が基準に適合しているとした判断は「看過しがたい過誤、欠落があった」と非難。国の規制権限の不行使は著しく合理性を欠くとした。

横浜地裁の訴訟の原告は、125人が避難区域からの避難者で50人が自主避難者。判決は、自主避難者らが避難を続ける相当性を認め、ふるさとを失ったことへの慰謝料や自主避難者への支払いを命じた。(中日新聞2/21)

被害者の当たり前の主張の多くが認められている横浜地裁判決である。「司法判断として定着しそうだ」という中日新聞の判断が本当ならうれしいことだ。
近頃は、当たり前のことが否定され、異常極まりない歪んだ理屈がまかり通るのを日々のニュースで見せつけられているので、まっとうなニュースをなかなか信じられない。

54億円の賠償要求に対して4億2000万円弱(約8%弱)しか認められず、175人のうち認められたのは152人にどどまる。賠償要求に対しては、まったくもの足りない判決であった。


Top
2/23-2019
東海第二、再稼働を明言 原電伝達 茨城知事は「不快」(東京新聞)

日本原子力発電(原電)の村松衛社長は22日、茨城県庁で大井川和彦知事と面会し、東海第二原発(同県東海村)の再稼働方針を伝えた。これまで原電は再稼働するかどうかについて明言を避けてきただけに、大井川知事は今回の再稼働方針の表明に「不快を感じざるを得ない」と反発した。再稼働には、県と30キロ圏の6市村の同意が必要となるが、各首長とも慎重な姿勢を崩しておらず、同意取り付けは難航するとみられる

村松社長は面会で「自治体や地域住民のしっかりとした理解を得ながら、再稼働を目指したい」と明言。これに対し大井川知事は「県独自の安全対策委員会の結論が出る前の表明に不快を感じざるを得ない。住民の理解が得られるかどうかが、再稼働の必須条件。くれぐれも誤解がないようにお願いしたい」と応じた。

この後、村松社長は東海村の山田修村長とも面会し、再稼働方針を伝達。山田村長は「今までのような単なる説明会ではなく、どうしたら住民の疑問や不安に応えられるか考えてほしい。最終的に住民の理解がなければ事業はできない」と指摘した。

東海第二は首都圏に立地する唯一の原発。原電は2014年5月、新規制基準に基づく審査を原子力規制委員会に申請。規制委は、東日本大震災で被災した原発としては初めて新基準に適合すると判断した上で、昨年11月に最長20年の運転延長を認めた。これで再稼働に必要な規制委の主な審査を終えている。

だが、原電は「原発施設の安全性を向上させるために規制委の審査を受けている」などと周辺自治体などに説明していた。(東京新聞2/22)

知事や県下の自治体長たちが住民の意思を重視する態度であることは頼もしいことだが、規制委が原発の工学的な安全性審査の枠内に閉じこもってしまい、肝心の住民の安全性には無関心であるということが重大だ。首都圏唯一の原発で、その30km圏内に96万人が住むというのに、それを運転してよいのか、という根本問題をたえず正面から取りあげ、問うていく必要がある。

住民の避難計画などを丸投げされてしまっている周辺自治体は、住民の安全が確かに保証できる体制ができるまでは《再稼働NO!》を貫かないといけない。


Top
2/24-2019
泊原発、「活断層否定できず」 原子力規制委が見解(毎日新聞)

北海道電力泊原発(泊村)の敷地内を走る断層の一つ「F―1断層」について、原子力規制委員会は22日の審査会合で、原発の新規制基準で13万~12万年前以降に動いたと定義される活断層であることを「否定できない」との見解を示した。新基準では、原発の重要施設の直下に活断層があると再稼働できないが、北海道電によると、断層は泊1~3号機の重要施設の直下にはないという。

ただ今後の審査で、より強い地震の発生を想定するよう見直しを求められ設備の耐震対策の強化が必要となれば、5年以上続いている審査がさらに長期化する可能性もある。北電は2013年に1~3号機の再稼働に向けた審査を申請していた。

規制委は次回の会合で、F―1断層について最終判断を示すとしている。泊原発の敷地内には別の断層もあり活動性の有無を確認する。

これまでの審査で、北電は敷地内の断層は「活断層ではない」と主張したが、十分なデータで証明できていなかった。22日の会合では、F―1断層の上の地層が堆積した年代を推定した結果を説明し、断層の活動時期は13万~12万年前よりも十分に古いと証明しようとした。
しかし規制委は納得せず「最新の活動時期を押さえられていない」と指摘。証明のために重要な地層の一部が土地の改変で失われていることなどを挙げ「(北電は)これ以上のデータは示せないとの判断に至った」と述べた。F―1断層上部にある小規模の断層も一連のものである可能性を指摘し、さらに説明を求めた。

規制委は昨年10月に泊原発で現地調査を実施。22日は調査後初めての審査会合だった。(毎日新聞2/23)

泊原発の断層が「活断層であるのか否か」に関して、本欄でも何度も取り上げてきた。例えば泊原発 断層の追加調査指示 データ不足で規制委(2017年12月9日)や、泊原発の審査で北電が承明方針を変更(2018年2月4日)。

昨年9月の北海道震度7の地震で主要活断層帯を刺激する恐れも(毎日新聞/8-2018)という報道があった。その報道では「知られていない活断層があり、どこで地震が起きてもおかしくないと考えて欲しい」と述べる学者もあった。
泊原発敷地内の活断層について、従来に増して真剣に検討してもらいたいものだ。


Top
2/26-2019
東電の和解案拒否は121件 原発事故ADRで(中日新聞)

柴山昌彦文部科学相は25日の衆院予算委員会で、東京電力福島第1原発事故の被害者が申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)を巡り、2018年末までに手続きが終了した約2万3千件のうち、東電の和解案拒否によって打ち切りとなった件数は、121件と明らかにした。

安倍晋三首相は「東電は和解案の尊重を自ら表明しており、誠実に対応することは当然の責務だ。経済産業省からしっかり指導させたい」と述べた。

立憲民主党の枝野幸男氏は「東電の拒否により、被害が救済されないのは想定されていない事態だ」と批判した。(中日新聞2/25)

ADRは、いわば痛み分けであって、被害者と東電の双方になにがしかの痛みを伴う。それを承知で、問題の早期解決をしようという趣旨で実施される制度である。東電はもともと加害者であるのだから、被害者にできる限りの譲歩をおこなう道義的・倫理的な義務がある。

本欄の2018年12月1日や、2019年1月24日などで扱ったが、東電は和解案を拒否するという暴挙を繰り返し行ってきた。政府はきれいごとの言葉だけでなく、東電に対して具体的なペナルティを課すなどの手を打つべきだ。


Top
2/28-2019
東京新聞2/27に、連載記事<原発のない国へ 事故8年の福島>の第1回目募る望郷、戻らぬ暮らしが掲載された。その記事の最後に、興味深い資料が載せられていたので、その部分だけを下に掲げる。全文は上のリンクで読んでください。

史上最悪の原発事故からまもなく八年。避難を強いられた人たちの暮らしぶりを示すデータとともに、福島の今を追う。

移住1万5000件に迫る
避難した住民が、避難先などで住宅や土地を購入すると、特例で不動産取得税を軽減される。本紙は主な避難先の12都道県に特例の適用件数を問い合わせ、事実上の移住の件数を調べてきた。毎年2000~3000件ペースで増加し、2018年末時点では1万5000件近くに達した。

一方、避難指示が解除された自治体で暮らす人は依然少ない。19年1月1日時点で、放射能の汚染度が比較的低い楢葉町では、原発作業員らの転入も含めた居住者数が住民登録者の半数、浪江町や富岡町では1割に満たない。解除が早かった田村市都路町では、9割近くまで回復した。


いったん避難した人たちは、避難指示が解除されても郷里へ戻る人が少ない。望郷の思いを募らせながらも避難先で住宅を取得し生活の定着をはかっている。田村市都路町など例外はあっても、おおむねこの傾向ははっきりしている。

Top


このページのトップ 次月 先月 旧「き坊の近況」 HOME




inserted by FC2 system