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第六巻 17
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アイスクリンム賣壱はい五厘

  アイスクリムと 西洋の氷菓子
  にて洋食家の好むもの是を
  軽便安直に製し得るは夏季
  下等社会の営業に 極てよし

氷より冷たき
金を借ずとも
元手わつかで
賣るアイスクリム

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「アイスクリンム」と「アイスクリム」があるが、前者は売り声か。
「洋食家」や「下等社会」という語が明治だ。

上田孝吉『実験夏季飲料製法』(明治44年1911)という面白い本が国会図書館デジタル公開されている。それによると東京に明治16年1883 に「東京製氷会社なるもの起り・・・機械的製氷を初めたるものなり」(p145)。やがて、営業用・家庭用のアイスクリーム製造が行われた。

この本のアイスクリーム製法の中には「劣等アイスクリーム」という項目があり、円筒形の桶の中央にブリキ製の細長い円鑵を入れ、その周囲に「氷と塩を入れる」としている。「劣等」なる理由を次のように述べている。
劣等アイスクリームの凍結料液の原料は、・・・蜜柑油の類で香を付けた単一の砂糖水を凍結せしめたものが多い。否、只に簡単軽便なるのそれのみならず、時としては実に不潔なものがある。その凍結原料の如きも、かの有害なるサッカリンを混したものさへあって、一般にその品質は如何はしいものが多いかと思はれる。前掲書p82
これは「アイスキャンデー」ですね。しかし、すでに、サッカリンが有害であることが広まっていたことには、驚く。
なお、「普通アイスクリーム」の原料には、牛乳・卵黄・砂糖・くず粉があがっている。

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