き坊の近況 2011-07
き坊の近況 (2011年7月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。

とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。





7/1-2011

子どもを持つ親らでつくる市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」は30日、福島市の6〜16歳の子ども10人を対象に尿検査を行った結果、全員から放射性物質が検出されたと発表した。  同団体によると、放射性セシウム134の最大値は8歳女児の尿1リットル当たり1.13ベクレル。セシウム137の最大値は7歳男児の同1.30ベクレルだった。  尿は5月20〜22日に採取し、フランスの放射能測定機関「アクロ」に検査を依頼した。同機関は仏政府の認証を受けており、チェルノブイリ原発事故でも、子どもの被ばく量を調べるため尿検査を行ったという。(時事通信6/30)

この10人の子供たちは福島原発事故発生時に全員福島市在住。「断水のための水くみや、部活動などで屋外にいる時間があり、マスクをしていないケースもあった」(FNNニュース)という。「ACROのデービッド・ボアイエ理事長によると、事故前はゼロだったと推測されるという」(毎日新聞)。
今回の検査は簡易検査であるが、放射性セシウムによる内部被曝が確認されたことは重大である。ただし、検出量はそれほど大きなものではない。呼吸や水・食物を通じて体内に取り込まれたセシウムは筋肉に蓄えられるので、ガン化のリスクだけでなく心臓病の原因になったりする。今後、内部被曝の程度が分かるホールボディカウンタ検査も含めた精密検査を、福島県の子供たち全員に実施する必要がある。

セシウム134は半減期2年、セシウム137は半減期30年である。


7/2-2011

東京電力・福島第一原発の事故で計画的避難区域になっている福島県川俣町の女性が1日、自宅近くでやけどを負い、倒れているのを夫が見つけました。女性はその後、死亡しました。
死亡したのは、計画的避難区域となっている福島県川俣町の山木屋地区に住む58歳の女性です。1日の朝、自宅近くの空き地から煙が上がっているのを夫が見つけ、駆けつけたところ、女性がやけどをして倒れていたということです。
女性は先月30日から夫と一時、自宅に戻っていて、計画的避難により家を離れることに、最近、不安を漏らしていたということです。

警察などは女性が焼身自殺したとみています。福島県では原発事故後の生活を苦にしたとみられる自殺が相次いでいます。(TBSニュース7/1)

3月末から、野菜出荷を禁じられた農家で自殺や酪農家の自殺、などの記事があった。この方面のニュースへの目配りも必要だと感じた。

しかし、けさ読んだ記事でいちばん腹が立ったのは、文科省が福島市内の子供たちの尿からセシウムが検出されたことについて(本欄昨日)、一般人の年間被曝量1ミリシーベルト(mSv)の100分の1程度で「健康影響は心配ないレベル」(読売新聞7/2)とコメントしたことだ。
外部被曝と内部被曝をゴチャゴチャにしていること、半減期30年のセシウムがこの子供たちの体内に今後ずっと入っている(1年間じゃない!)こと、しかも、この子供たちは現在もおなじ汚染地域で生活していることなどを考えると、“この子たちの健康影響が心配で心配でたまらない”と誰しもが思うはずだ。放射性物質が脳に入ると脳の発育に問題が生じるという研究もある。この国の文科省は子供のための役所じゃなくて、子供を見殺しにする役所だ。


7/3-2011

東京電力は2日、福島第1原発の循環注水冷却を安定させるための貯水タンク(1000立方メートル)を新設し、中断していた汚染浄化処理した水による原子炉への注水を再開した。再開後の注水量(毎時16立方メートル)はすべて処理水に切り替えており、汚染水をこれ以上増やさない完全な循環注水が実現したことになる。

これまでは、ダムからの淡水(毎時3立方メートル)と、汚染水浄化システムで処理した水(毎時13立方メートル)を、別々の系統で1〜3号機へ注水していた。しかし、水位や圧力が変動しやすく、6月27日に汚染浄化した処理水を原子炉に注水し始めてから、水漏れなどで6回も運転が停止した。連続注水できたのは29日午後1時半から7月1日午前7時半までの42時間が最長だった。

東電はトラブル対策として、複数の系統でも安定的に注水するため、圧力変動などを緩衝させる機能を持たせた貯水タンクを1日に新設し、より安定冷却できるようになった。
当面、原子炉への注水は処理水のみを使うが、枯渇が懸念される場合、従来のようにダムからの淡水を、貯水タンクを介して使用できるようにした。

現在、1〜4号機にたまっている汚染水は約12万立方メートル。2日午後5時までに1万1170立方メートルが処理され、うち3580立方メートルが淡水化、原子炉に約10日間注水できる量を確保した。

循環注水の稼働ではトラブルが続いた。経済産業省原子力安全・保安院は「着実に進んでいるが、さらに安定化させる必要がある」としている。(毎日新聞7/2)

毎時16トン(1日384トン)というすごい量を、どうしても核燃料に注水し続けなければならない。その排水を浄化して循環式に使えるようにできた、ということ。こういう巨大なプラントを安定的に運転し始めるまでには思いがけないトラブルが起こりがちで、試行錯誤的にトラブルをつぶしていく。東電の現場作業員たちはよくやっていると思う。まだ、トラブルは起こるだろう。
「浄化」というが、その結果濃縮された高濃度の放射能汚染廃棄物が発生することになる。それを環境に漏れ出ないように厳重に保管・管理していく必要がある。これは、数十年かかる廃炉工程と重なっていく長期の課題になるだろう。

6/25 に述べた「メルトスルー」問題のなりゆきによっては、この浄化工程の成功の意味が消し飛んでしまうことになりかねない。その場合、東電の「工程表」にも書き込まれている「地下水遮蔽壁」が重要になってくる。これは原発周辺のぐるりを地下30mの岩盤にまで到達する頑丈な遮蔽壁でとりかこむ「地下ダム」のことで、1000億円レベルの工事になる。

原発周辺の地下水の汚染調査が注視される。
福島原発周辺の地下水汚染の情報はあまりないが、「5月18日採取の地下水からストロンチウムを検出」を保安院が発表したのが6月12日だった。


トップページの写真を、シロヒゲナガゾウムシからニイジマチビカミキリに替えた。

7/4-2011

毎日新聞が2、3両日に行った全国世論調査では、定期検査のため停止している原発の運転再開に「反対」との回答が51%と半数を超え、「賛成」の37%を上回った。今夏以降の電力不足への懸念から、政府は「安全宣言」を出し、手始めに九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を地元自治体に要請。しかし、東京電力福島第1原発事故の長期化に伴い、原発再稼働に対する世論の慎重論が高まっている。

原発の運転再開に関する賛否を男女別でみると、男性のうち、賛成と答えた人は51%を占め、反対(41%)を上回った。一方、女性で反対と答えた人は58%に達しており、賛成(27%)と大きく差が開いた。

風力や太陽光などの自然エネルギーの利用増に伴う「電気料金の値上がりを容認できるか」との質問には、「容認できる」が60%に上り、「できない」は31%にとどまった。運転停止中の原発の再開に「賛成」と答えた人の中でも、値上がり容認派が68%を占めた。(中略)

電力の約3割を原発に依存してきた日本のエネルギー政策を巡っては、4、5両月と同じ設問で調査した。「原発は減らすべきだ」は5月調査に比べ2ポイント減の45%。「原発は全て廃止すべきだ」は同5ポイント増の17%で、合わせて約6割が「脱原発」を志向している。原発依存が「やむを得ない」との回答は、同1ポイント減の30%だった

一方、被災地復興の財源確保のための増税に関しては、「賛成」が5月調査から5ポイント増の53%。反対は同3ポイント減の38%だった。政府・民主党は所得税と法人税を一定期間引き上げ、復興財源として発行する復興債の償還に充てる方針を固めている。(毎日新聞7/4)

佐賀県の玄海原発の再稼働について玄海町長は容認を打ち出した(6/29)。佐賀県知事は様子見の態度。和歌山共同火力の原発(7万5千キロワット)は今月中に再稼働の方針(毎日新聞7/4)。
福井県の敦賀市長は「判断できる時期にない」と話した。同美浜町長は「美浜原発の再稼働は現時点では判断できない」と述べた。同高浜町長は避難道路の整備という条件を示して「いたずらに再稼働の時期を延ばすつもりはない」と語った(読売新聞6/30)。
自治体の態度はこんなものだ。

福島事故までは“原発安全神話”に囲い込まれていた日本国民が、自信なさげではあるが“脱原発”志向を示し始めている。それぞれの人の生活の現場に足をおいた“脱原発”であるべきだとわたしは考えている。生活の現場においては、なによりも自分や家族や友人らの健康が最優先されるべきだ。
電力が足りるとか足りないとかの議論がどうであろうとも、ともかく脱原発へ進むべきだ。《原発は生命と両立しない》というのがわたしの立場であるから。


7/5-2011

ウォ−ル・ストリート・ジャーナル日本版(7/1)に、長文の、福島原発の設計にまつわる問題を論じた設計上の欠陥が事故を悪化させたという特集記事がある。特に目新しい特ダネがあるわけではないが、「東京電力の現役、および引退した幹部技術者十数人に対する取材」を元にしたもので、この事故を理解するのに有用だと思った。その一部を紹介する。
福島で最も古い原発の建設は、1960年代に行われた。震災以後の放射線問題すべてを引き起こしている福島第1原発は、東電にとって最初の原発だった。同原発は太平洋に面しており、ある意味、実験室のような位置づけだった。第2次世界大戦の終結からわずか20年ほどだった当時、日本には自国で原子力発電所を設計する能力はなかった。そこで、GEから原子力技術を卸してもらったのだと、日本の技術者たちは言う。

初期の原子炉はGEの「マーク1」を用いていた。建設を担当したのは、アメリカのエバスコ(Ebasco)という企業で、同社は現在は存在しない。原子炉を小さく、安価にするために、エバスコは原子炉建屋を小さくしたと、豊田氏(技術系で東電の元副社長)は言う。
原子炉を冷却するために通常は公共の電力線から電力をとるが、その電力が落ちた場合のために非常用のディーゼル発電機が用意してある。ポイントはディーゼル発電機配電盤であり、非常事態において原子炉冷却系を運転しつづけることができるためには、それらは原子炉と一体になった頑丈な設計思想で原子炉建屋のなかに構築されている必要があった。

東電の初期の原子炉建屋は小さく、非常用ディーゼル発電機はより堅固でない「タービン建屋」に置かれることになった。
1970年代以降、何度も福島第1原発を訪れたというある東電の技術者は、原子炉建屋は非常に窮屈で、通常の作業をするあいだ、バルブひとつを設置するのにも苦労したという。「マーク1はひどい設計。1人しか上れないようなはしごを上らなければいけない。時間もかかって、非常に効率が悪い」と、その技術者は言う。

東電の技術者らによると、東電はマーク1にまったく満足しておらず、福島第1原発の6号機を計画している途中で、別の設計を採用することにした。もっと細身のGEの原子炉、「マーク2」を導入し、建屋自体も大きくしたことで、6号機の建屋には予備の発電機を内部に置けるだけの十分なスペースができた。
そのあと、少しずつ改善が図られ、1998年に各原子炉はそれぞれ2台の予備ディーゼル発電機を備えることができ、1〜6号機のすべてが「脆弱なタービン建屋以外の場所に設置された発電機を備えることになった」。
ところが、それらを冷却系と接続する配電盤は依然としてタービン建屋におかれたままであった。その点についての証言。
東電の元副社長で、1990年代後半に予備発電機など、原発設備を担当していた友野勝也氏は言う。「やりやすかったからじゃないか。それ以外には想像できない。メタクラ(配電盤)が(タービン建屋のなかに)あるのだから、わざわざ新しいメタクラをつくらなくてもいいと。設計グループの中に入って、喧々諤々と議論をした事実はない」
GEからの借り物の原子炉を中心にした福島第一原発は、統一的な設計思想をもたないまま、継ぎ足し継ぎ足しで来ていたのである。
3月11日午後3時30分頃、マグニチュード9.0の地震が起きてから45分後に、大津波が福島第1原発を直撃した。送電網は使えなくなり、1970年代からタービン建屋に置かれていた予備発電機は水につかった。

1990年代後半に追加され、山側の建物に置かれていた3台の発電機は動き続けていた。しかし、そのうちの2台は、1号機から4号機では役に立たなかった。なぜなら、非常用発電機から冷却装置に電気を送る「メタクラ」が、タービン建屋の中で水につかっていたからだ。(中略)

その後、1号機から3号機までで、核燃料が過熱し始めた。核燃料が溶け出し、放射線を放出するリスクがあった。数時間のうちに、1号機の燃料はほぼ完全に溶け、圧力容器の底に落ちたと東電は言う。
「外部電源が長時間落ちてしまうことはあり得ないから考えなくてよい」とする「安全設計審査指針」を許してきたように、安全神話のもとで腐っていた日本の原子力技術の慢心がそこにある。この長文記事の最後はつぎの一文である。
だが、振り返ってみると、と岸氏(原子力発電技術担当の元幹部)は言い、東電が高い基準を一貫して適用しなかったことが、「基本的な欠陥」だと言う。それが、福島の運命を決め、世界中の原子力発電の未来に影を落としている。
原子力安全委員会の委員長の班目もそうだが、この長文記事に登場する東電の元技術者達も、シャーシャーと反省の弁をのべる。自分らのしでかしたことを反省的に述べ報告しておくことには意味があると思うが、もう少し何とかならんか、とも痛切に思う。

7/6-2011

3・11大震災は、近代的な地震学が初めて体験する巨大な地殻変動であった。プレートの境界近くで生じる巨大地震について考えられていた断層破壊が、ひとつで止まらずいくつか繋がって超巨大な断層運動に発展し、マグニチュード9.0というレベルにまで至った。
それによって引き起こされた大津波が東日本沿岸を大きく・広く襲い甚大な被害をもたらした。多くの日本人がカメラ付きの携帯電話を日常的に所持する時代であるから、それを直接見聞きしなかった者もその巨大な津波が都市や町や田園を呑み込んでいくすさまじい映像を目の当たりにすることができた。家や道路や鉄道がやすやすと濁流に消え、走って逃げようとする人々を一足先に高み上がった人たちが彼らを見ながら悲鳴にならぬ悲鳴をあげているのが記録された。驚くべき多数の自動車が浮き流れ波間に没するのを見た。石油タンクが燃え漏れ出た油で海が燃え都市が燃えた。
人間のすべての営みに比べて地球の地殻変動がいかに巨大で徹底していてしかも無差別であるかをよく示していた。

この日本列島に棲む人類は、過去にこのような巨大な地殻変動を幾度も幾度も体験してきたはずである。この列島に棲むことは、このような巨大な地殻変動の手の平の上に棲むことであることを、改めて学んだ。3・11大震災は荘厳なものであった。

もし、福島原発の事故が引き起こされていなければ、わたしは3・11大震災は荘厳なものであったと感じ、そこで失われた数えきれない命に瞑目し、たまたま自分が瞑目する側に回っているが瞑目される側であったかも知れなかったことをくり返し思うだろう。人類という生物の在り様[よう]を思うだろう。つまり、祈祷
だが、福島原発事故は現実のものであり、《レベル7》の量の放射性物質を地球表面へ放出してしまった。いや、現在もまだ放出し続けている。そのことによって、現存のまた未来の人々に、計り知れない負荷をかけている。この原発事故は3・11大震災によって不可避的に発生したのではなく、多くの事前の提案・警告のことごとくを拒否しさり、事故発生の可能性をつぶすことを怠って原発災害を引き起こした者たちによる《人災》である。
この者たちによって3・11大震災の荘厳さは汚されてしまった。

わたしはそう考えるが故に、祈祷に遠い。


福島第一原発からの放射能被害は、事故の最初期(事故開始3/11から2週間程度)にまき散らされた大量の放射性物質によるものが主たるものであると考えている。自分で、そのことを納得するために、ネット上でデータを集めて考えやすい形式に表現する作業をしている。
ここに示したのは、まだ、原材料にすぎないが、分析の出発点にはなると考えている。本欄 6/106/11 で既出のグラフと類似のものである。



原発との位置関係(特に方位)が決定的に重要であるので、地図と見くらべて欲しい。北側の観測点が乏しいが、南相馬市が貴重である。すでに12日深夜に濃い放射能雲が南相馬市を通過している。そのときに降下した放射性物質の減衰曲線が長く延びていて、その上に重なって、15日、18日、19日、20日と何度も繰り返してピークが襲っている。
こういうピークのひとつひとつに原発事故現場でのなんらかの事象が対応しているはずである。発表されているパラメータからそれを解明する作業はとても困難である。



いわき市と福島市のピークのレベルはほとんど同じだが(約24μSv/h)、その後の経過が対照的であることに注意して欲しい。いわき市は15日のピークの後数時間ですぐ減衰している。これは放射能雲が“通過した”だけで、放射性物質の降下はあまりなかった(少しはあったが)ことを意味している。そのあと、何度もピークが襲っている。16日に2回、21日に1回。21日は降下物があったために(このとき降雨)ピークの後で曲線が十分に下がっていないことがよく分かる。
福島市は飯舘村と同じとき(15日後半)に放射能雲の襲来があり、ちょうど降雨によって大量の放射性物質の降下があった。この問題については、6/11 にすでに述べている。SPEEDIの図などとの関連を再度考えたいが、それは後日。

本欄では 5/5 に扱ったが、東京新宿区の3月15日の放射能雲のピーク値が0.5μSv/h であった。飯舘村や福島市はそれと2桁違うことをよく認識する必要がある。


7/7-2011

政府は6日、全原発を対象に新たに安全性を点検するストレステスト(耐性試験)を行うと発表したが、経済産業省原子力安全・保安院は6月、定期検査中の原発は「安全」と宣言したばかり。方針変更の背景には、原発再稼働を急ごうとした海江田万里経産相に対し、脱原発に傾く菅直人首相が待ったをかけたことがある。政府の迷走は立地自治体や国民の不信を高める。九州電力玄海原発(佐賀県)などの再稼働が遅れるのは必至で、夏場の電力不足懸念が一段と強まりそうだ。

「原子力安全委員会に聞いたのか」。6月29日に玄海原発の地元に再稼働を要請した海江田氏を待っていたのは、首相の厳しい言葉だった。安全委員会の了解を取っていないことをなじる首相に対し、海江田氏は「安全委員会を通すという法律になっていない」と反論。首相は「それで国民が納得するのか」と再稼働に反対する姿勢を鮮明にした。
しかし、海江田氏が6月18日に行った安全宣言に首相は「私も全く同じ」と同調していた。突然、はしごを外された海江田氏は鳩山由紀夫前首相らに「首相の独走」を報告。「もう頭に来た。今さら何を言っているんだ」と怒りをぶちまけた。

首相が中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の停止要請を発表したのは5月6日。その時点で「ほかの原発は別」というのが政府内の共通認識で、経産省は夏の電力不足を回避しようと立地自治体が最も理解を示している玄海原発の再稼働に照準を合わせ、説得に動いた。
海江田氏の要請を受け玄海町は7月4日、九州電力に再稼働への同意を伝えた。「古川康知事が要望する首相との会談が実現すれば再稼働できる可能性が高い」(経産省幹部)状況までこぎつけたところで、ブレーキをかけられた。脱原発を続投の原動力にしている首相が、自ら再稼働要請する場面を作りたくなかったとの見方もある。

現行制度は経産省原子力安全・保安院の検査で再稼働の是非を判断する仕組みになっている。だが、首相は「(東京電力福島第1原発事故で)一番失敗した役所が自分で作った基準で『はい、安全です』なんて通用するわけないだろう」と周辺に語り、安全委員会を所管することになった細野豪志原発事故担当相をストレステストに関与させることにした。首相は6日の衆院予算委で、海江田氏の安全宣言を事前に了解していたかを聞かれ「本人に聞いて」と否定。海江田氏も「事前にということはない」、安全委員会の班目春樹委員長も「事前に見ていない」と述べ、経産省の独断を印象づけるやりとりとなった。

ストレステストについて首相周辺は「動かすための基準か、将来的に止めるための基準かを考えた方がいい」と再稼働ありきの経産省をけん制。「首相は脱原発を掲げて8月に衆院解散・総選挙に踏み切るのではないか」との臆測も広がる。(以下略 毎日新聞7/7)

福島原発事故を受けてEUでは先月から新たに域内の全143基の原発に対し同一の基準でストレステストを行っている。中間報告が半年後に出る、最終報告は来年6月の予定。そのテストの内容は「想定を上回る地震や洪水といった災害、航空機墜落に耐えられるかどうか。全電源や冷却機能が失われた場合、メルトダウンなど過酷事故に至るかどうか」(毎日新聞7/7)など。
政府がいうストレステストの内容はまだ不明であり、必要期間がどれくらいになるのかも分かっていない。が、EUのストレステストより短期間で終わることは考えにくい。つまり、1年かけて行う事故シミュレーションテストということだろう。
菅首相が海江田経産大臣がうちだした玄海原発早期再開の方針に待ったをかけた形であるが、例によって首尾一貫しておらず、玄海原発再開についていったんは海江田大臣の方針を肯定していた。

別件だが、九州電力が6月26日開催された国主催の“玄海原発再開の説明番組”について、番組宛てに視聴者を装って再開賛成のメールを送るよう子会社などへ指示していたことが明らかになった。九電社長が昨日陳謝したが、九電に限らず電力会社の“独占的企業の汚ないやり方”をはからずも見せつけることになった。これによって、玄海原発の再開が遠のいたことは確かである。


7/8-2011

九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡るやらせメール問題を巡り、定期検査入りしている川内原発1号機の再稼働の是非が焦点となっている(鹿児島)県内でも7日、「裏切られた」などと九電への批判の声が上がった。

市民団体「反原発・かごしまネット」(橋爪健郎代表)など19団体はこの日、川内1号機の再稼働に反対する公開質問状を県に提出。質問は29項目からなり、メール問題に対する今後の県の対応を問うなどしている。橋爪代表はやらせメール問題について「九電がやりそうなこと。私自身に驚きはない」とした。

元九電社員で、川内原発に近い薩摩川内市・峰山地区コミュニティ協議会の徳田勝章会長(73)は「原子力は電力会社側の情報公開と住民との信頼で成り立っている。今回の公正さを欠くやり方は残念でならない」と憤り、「信頼回復に努めることが大事。1号機の再稼働問題は仕切り直してほしい」と再考を求めた。

4日の県議会原子力安全対策等特別委員会で、九電側にメール問題を追及したが否定された松崎真琴議員(共産)は「特別委の時点で事実を把握していたはずで許せない。真摯に住民と向き合うべき電力事業者の裏切り行為だ」と怒りをあらわにした。

鹿児島市の九電鹿児島支社には7日朝から、「(九電のやり方が)許せない」などという苦情や抗議の電話が相次いだという。(読売新聞7/8)

鹿児島県は川内原発を抱えており、佐賀県と同様に「国の説明会が予定されている」ので、関心は高い。この九電のやらせメール問題は、開催(6/26)直後からネットや「赤旗」紙上で取り上げられていた。7/4の段階で鹿児島県議会で共産議員の質問に、「九電の中村明・原子力発電本部副本部長」がメールの存在は認めたがやらせ疑惑は否定していた(朝日新聞7/8)。

玄海町の岸本町長は、いちはやく玄海原発の再稼働を認める発言をしていたが、国がストレステスト実施を急に決定したことと九電のやらせメール問題で、国と九電の両方から面目をつぶされた形になった。町長は再開容認を撤回したが、再度容認させるのは容易ではないだろう。
九電は“どんな汚ない手でも平気でうつ”という評判通りのやり方で、自ら墓穴を掘った。利益誘導に乗ってきた地元側もいくらなんでも目覚めるときだろう。


7/9-2011

原子力発電所の再稼働問題をめぐり、枝野幸男官房長官と海江田万里経済産業相、細野豪志原発担当相は8日、安全性評価(ストレステスト)を含む原発の新たな安全確認手順の統一見解づくりを進めた。3閣僚は新手順を原発再稼働の前提とすることで一致したが、具体的内容を含んだ統一見解は11日にも公表する方向だ。

原発再稼働に向け、新たな安全確認基準を前提条件と位置づけるという首相の意向を受け、海江田氏は今月6日にストレステストの実施を発表。九州電力玄海原発を抱える佐賀県玄海町から「いったん再稼働を容認したのに、なぜ今になってストレステストなのか」との批判が巻き起こったため、同テストを含む新手順の統一見解づくりを迫られていた。

枝野氏ら3閣僚は8日の協議で、統一見解には「ストレステストの結果を地元自治体に示して再稼働への同意を求める」ことを盛り込むことにした。欧州のストレステストを参考に日本版を作成し、定期検査で運転停止中の全原発に適用することでも一致した。日本版の具体的な内容は経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会が今後協議する。(朝日新聞7/9)

菅首相が全原発に対するストレステスト実施を唐突に打ち出したのは、7/6 の衆院予算委員会である。「東電事故で一番失敗したのが保安院なのに、そこが“安全です”と言って再稼働するというは通らないだろう」(主旨のみ、毎日新聞7/7)と菅は周囲に洩らしていたという。菅が言うことは正論だが、なぜ、唐突に打ち出して海江田経産相の首が危ういようなことをするのか、地方自治体へ及ぼす混乱も大きく政府の信頼性を改めて落とすものであった。かねてから自分の内にあった正論なら、もっと早い段階で打ち出していただろう。
こういう印象を受ける菅首相の唐突な発表は、浜岡原発の停止要請(5/6)においてもあった。本来の菅の持論であれば“首相の基本姿勢”が伝わってきているはずだが、それがなかった。

背景にアメリカの意向があるのではないかという論を田中宇「日本も脱原発へ向かう」が発表している(7/8 無料版)。この田中論文で目をひくのは対米従属路線の旗手と田中が位置づける前原誠司前外相が、すでに脱原発路線に踏み出しているという分析である。菅へは直接にオバマから指示があってストレステストをする方針に転換した可能性があると述べている。そして今後数十年かけて「脱原発」へ進むという路線を出してくるだろうと。
田中宇は“陰謀論者”だとして信用しない向きもあるが、わたしは自分ではまったく手が出ない英文情報を連日大量に読んで田中自身のよくこなれた言葉で分析してみせる田中宇を高く評価している。

7/10-2011

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、東電と原子炉メーカーが検討している廃炉に向けた中長期的な工程表案が明らかになった。早くて3年後に使用済み燃料プールから燃料の取り出しを始め、10年後をめどに原子炉内の燃料を取り出し始める。原子炉を解体して撤去する廃炉まで、全体で数十年かかるとしている。

朝日新聞が入手した資料によると、福島第一原発1〜4号機の使用済み燃料プールに保管されている3108体の燃料を、十分に冷やした後、3年後の2014年度初頭をめどに取り出しを始める。取り出した燃料は敷地内の共用プールに移すことを検討する。共用プールの改造のほか、燃料の輸送容器の製造などが必要になる。 (朝日新聞7/10)

今回東電が発表したのは、“メルトスルー”して格納容器の底に溶融した核燃料が溜まっている、という想定が正しかったとしての工程見込みである。ポイントは溶融核燃料が強い放射線を出し続けているために作業が困難になるという点にある。通常の廃炉の場合は水中の作業にして、水によって放射線をさえぎる。今回は、まず溶融した核燃料がどのような状態になっているかを見定めることから始めることになり、破損している格納容器に水をはる工夫も必要であるが、きわめて困難な課題となる。
もし、核燃料が格納容器に穴をあけ、その下のコンクリートの土台、さらにその下の土の層にまで入っていたとすれば、困難さは急増する。地下水汚染問題が深刻になる。

この長い工程が仮に無事に進行したとしても、放射能を含む粉塵を環境へまき散らす心配や、地下水汚染の可能性があったりして、周辺環境が居住条件を充たすようになるのは、50年、100年をもって数える期間が必要だろう。放射性セシウムの半減期が30年であった。
現在強制避難させられている人々が、今の世代のうちにもとの住所にもどることは考えにくい。明治時代(1889年)の水害で奈良県十津川村が新十津川村を北海道空知に開いたことがあったが、そういうレベルの対策を考えることになるだろう。放射能事故がいかに非人間的な悲惨さを大規模につくり出すものであるかを見せつけられる。


トップページの写真を、ブドウハマキチョッキリからセダカマルカスミカメに替えた。

7/11-2011

千葉県柏市は10日、市内の清掃工場で発生した焼却灰から、1キログラム当たり7万ベクレルを超える放射性セシウムを検出したことを明らかにした。東京電力福島第1原発事故の影響とみられ、焼却灰の埋め立てを6月末から中止している。現状では、約2カ月で灰の保管スペースがなくなり、一般家庭などからの可燃ごみの受け入れが不可能になると予想される。

国は6月、同8000ベクレル以上の焼却灰は埋め立てず、一時保管するよう指針を定めたが、一時保管後の処分方法は決めていない。同市は週明けにも国に対し(1)埋め立て可能な最終処分の新基準策定(2)一時保管場所の確保(3)処分費用の全額国庫負担−−を緊急要望する方針という。

同市によると、公園や一般家庭の庭などで放射線量を下げる目的で、草刈りや樹木の枝・葉の剪定を実施し、可燃ごみとして清掃工場へ持ち込まれたため、数値が上がった可能性があるという。

2カ所の清掃工場のうち、6月下旬から7月上旬まで3回の検査の最大値は南部クリーンセンターで同7万800ベクレル、北部クリーンセンターで同9780ベクレル。両センターの焼却灰の最終処分場で同4万8900ベクレルだった。
同市は1日平均280トンの可燃ごみを2清掃工場で受け入れ、同21.3トンの焼却灰を最終処分場に埋め立てている。(毎日新聞7/10)

柏市付近が“ホットスポット”らしいということは多くのブログなどで取り上げられている。本欄では3/21 首都圏降下沈着プロセスの考察を一度紹介している(6/24)。
柏市の焼却灰から7万 Bq/kg超という強い放射性セシウムが検出されたというのである。国が定めた「埋め立てず、一時保管」するように指示した限度が8千 Bq/kgであり、その10倍ほどであるのだから、いかに強い放射能であるか分かる。国の指示は、危険な高濃度放射性廃棄物として特別に管理するから、追って指示するまで待て、という主旨なのだが、“追って指示”がまだ出ていない。
川崎市の焼却灰の最高値は13200 Bq/kgである(東京新聞 7/9)

なお、関連して、「早川由起夫の火山ブログ」に南相馬市を流れる川という記事(7/10)があり、山間部が高濃度汚染地域の場合、その地域を水源としたり流路がある川の下流域は注意すべきだ、という。それに付いたコメントで、
例えば比較的線量の小さい前橋の下水汚泥にセシウムが多かったり、東京都の水道でいまごろでもセシウムが検出されるのは、集水域の上流に高濃度汚染地域を抱えているからと考えられますよね。

いまではセシウムは水溶性のものは減ってきて、浮遊粘土鉱物に多くくっついていると考えられますので、北関東の川遊びは、茨城あたりでの海水浴よりも危険かもしれません。
というのがある(このコメントの主は「地形屋」とある)。
夏休みの「林間学校」などで汚染された山間部へでかけることになる場合があり得ること、同ブログの日光霧降高原と川場村の放射能測定写真のコメントによるやりとりが、有用だと思う。なんとなく、山間の緑の中へでかけると“安全”であるかのような錯覚に陥りがちだが、もちろん、そんなことはない。


7/12-2011

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した牛11頭から基準を超す放射性セシウムが検出された問題で、同県がこの農家から提出を受けたえさなどを検査した結果、稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出されたことが、関係者への取材でわかった。農家は県の聞き取りに、東京電力福島第一原発が爆発した際に屋外に置いていたわらを牛に与えていた、と説明したという。

県と農林水産省は、原発事故で汚染されたわらで内部被曝した可能性が高いと判断。農家は出荷時の県側の聞き取りには正しく申告していなかったとみられ、点検のあり方について改善できないか検討を進める。

県と農水省は10日、農家を実地調査。えさの配合飼料と牧草、わら、井戸水を検査用のサンプルとして採取した。検査の結果、わらからかなり高濃度の放射性セシウムが検出された。(朝日新聞7/11)

TBSニュースによると、わらから検出された放射性セシウムは7万5000Bq/kg という高濃度で、国の規制値の57倍であるという。この濃度は昨日の本欄で取り上げた柏市の清掃工場で焼却灰から検出されたのと同程度であり、南相馬市の汚染がいかにすさまじいものであるかがよく分かる。
「ちゃんと指導を守った餌を与えていたら、放射性物質が検出されるはずがない」と厚生労働省幹部は憤っている(産経ニュース7/12)というが、南相馬市にふつうに人間が住んでいることの方が余程問題だ(半分が20km圏で避難区域になっている、30km圏内は計画的避難区域などになっている)。

本欄 7/6 のグラフと地図を見てもらいたいが、南相馬市は福島原発事故の最初の 3/13 に濃い放射能雲の襲来があった。こういう情報はいまでこそ公開されているが、当時は何も知らされていなかった。はじめから農家に放射能汚染の状況を包み隠さずすべてオープンにしてあれば、農家の危機意識がまるで違ったであろう。

追記7/13:この牛を出荷した農家は、原発から20〜30キロ圏の緊急時避難準備区域にある農家であった。南相馬市では市内のすべての畜産農家の稲藁の放射線量検査を行うことにした。読売新聞7/12による)


トップページの写真を、セダカマルカスミカメからツマムラサキセイボウに替えた。

7/13-2011

厚生労働省は12日、東京電力福島第1原発事故後に日本国民が摂取した食品から受ける放射線量の増加推計値を初めて公表した。3〜6月の4カ月間では全年齢平均で0.034ミリシーベルト、12年2月までの1年間では同0.106ミリシーベルト。通常時に食品に含まれる放射性物質(放射性カリウムなど)の摂取による年間被ばく線量(0.4ミリシーベルト)より25%増える計算だが、厚労省は「安全性の観点で相当程度小さい」と結論づけた。

推計は同省薬事・食品衛生審議会の作業グループが実施。6月20日までに各自治体が実施した食品の放射性物質検査約5000件で検出された放射性セシウムやヨウ素のデータを使い、日本人の各食品の平均摂取量から、全年齢平均▽妊婦▽小児▽胎児▽乳児−−の線量を推計した。

6月までの被ばく線量(単位はミリシーベルト)は妊婦0.03▽小児0.065▽胎児0.038▽乳児0.029。年間線量は妊婦0.07▽小児0.137▽胎児0.063▽乳児0.044。甲状腺に放射性ヨウ素が集まりやすい小児の線量は比較的高い傾向がみられた。

審議会委員で全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は「国民は自分の住む地域でどの程度被ばくし、何に気をつけたらいいのかという正確な情報を知りたい。地域ごとや食品ごとの推計値を出すことも検討してほしい」と話した。(毎日新聞7/12)

全国の自治体が行った農作物や牛乳などの食品5500件の検査結果を基に推計したものだという(日テレニュース7/12)。放射能汚染された食品は市場に出回っていない、という建前通りならこうなるということだろう。市場に出ている規制値以下の食品ばかりを食べていても通常時に比べて放射能摂取が25%増となる。

南相馬市の肉牛の餌に(指導に反して)されていた稲藁は、震災時に野外においてあったということだが、それから検出された放射性セシウムは7万5000Bq/kg もあった。このことは、葉物などの野菜が高濃度に汚染されていた可能性があることを意味している。特に自家菜園から採ってきて食べるという家では、高濃度汚染野菜を口にした可能性がある。
国や自治体が当初“ただちに健康に影響ありません”というばかりで具体的なデータをまったく示してこなかったために、国民の間に放射能の経口摂取は各自が避けるように努力することが大切という姿勢がすこしもつくられなかった。このことは、福島原発事故のなかで国や自治体の犯した重大な犯罪で、刑事罰に相当する。

次は、5月11日の茨城県の小学校の行事の例だが、お茶の葉っぱのテンプラを食べさせている。原発事故から2ヶ月後で、せいぜいこんな感覚でしか、自分らに降りかかっている放射能汚染をとらえていなかったという証拠になる。
「さしま茶ふれあい学習」というイベントで坂東市の13の小学校3年生が参加した。「岩井さくら商店街」のサイト、坂東市環境協会など関連するところはこの記事を削除してしまっているという。わたしが検索したところでは坂東市沓掛小学校のサイトには残っている。
ネタ的なニュースちゃんねるが削除前の記事を残しているようだ。この「ネタ的なニュースちゃんねる」の下の方の書き込みに、
いつから2ちゃんねら−が良識派になってるとち狂った世界になってるんだぜ?
とあるのには、思わず吹きだした。
(なお、この行事の前の測定で「さしま茶」の汚染は国の規制値以下だったらしいが(それでも237Bq/kg)、5日後に規制値を超えた。)(この条は、庄内拓明さんの「Today's Crack5/24」を参考にしました。感謝いたします。)


7/14-2011

菅直人首相は13日夕、官邸で記者会見し、今後のエネルギー政策について「将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」と述べ、深刻な被害をもたらした福島第1原発事故を踏まえ、長期的には原発のない社会を目指す考えを表明した。

首相は事故後、原子力の活用を中心にした現在のエネルギー基本計画の見直しには言及してきたが、「脱原発」に転換する方針を初めて打ち出した。「原発に依存しない社会を目指すべきだと考え、計画的、段階的に原発依存度を下げる」と指摘したが、時期など具体的な目標は「中長期的展望に基づいて議論し固めていきたい」と述べるにとどめた。

脱原発を目指す理由については「事故のリスクの大きさを考えたとき、安全確保というだけでは律することができないと痛感した」と強調した。

また、停止中の原発の再稼働とストレステスト(耐性評価)導入をめぐる政府の混乱を重ねて陳謝した。当面の電力供給には「必要な電力を供給するのは政府の責務」として、具体的な計画案をまとめるよう関係省庁に指示したことを説明。「節電の協力が得られれば、今年の夏と冬の必要な電力供給は可能だ」との見通しを示した。

原発の再稼働は「私を含め4人の大臣で判断する。大丈夫となれば稼働を認めることは十分あり得る」と述べた。

エネルギー政策の見直しには「私の段階だけで全てできるとは思っていない」と指摘した。

「脱原発」を争点にした衆院解散・総選挙の可能性は「どういうエネルギー、社会の在り方を選ぶかは国民が選択すべき政策課題だが、この問題で解散するとかしないとか一切考えていない」と否定した。(中日新聞7/14)

1週間ほど前から、新聞紙上で「脱原発に傾く菅首相」というような表現が見えていた。例えば、本欄では7/7の毎日新聞。民主党は“地球温暖化の元凶は炭酸ガス”という不確かな論に乗って、原発を全世界に売りだす原発推進政策を打ち出していた。それを、あっさりと否定するというわけだ。
例によって党内議論などは無しでしゃべってしまう、菅首相の“思いつき”政策であるが、いまや世界的な潮流となりつつある脱原発の立場が日本の首相の口から述べられたことは歓迎したい。

日本の場合、特に注目したいのは、常陽−もんじゅの高速増殖炉と、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場によって核燃料サイクルを行うという実現の可能性のほとんどない危険な装置に長年巨額の税金を注ぎこんできたことを、どのように考えるのか。核燃料サイクルというのはプルトニウム利用サイクルであり、危険きわまりない計画であるが、それを一刻も早く停止すること。日本の「脱原発」というのはぜひとも「核燃料サイクルの否定」を伴う必要がある。
わたしはその辺りに注目したい。

もんじゅは3トン余の装置が炉内に落下し運転は止まっている。17億円をかけて引き抜くための装置をつくってやっと先月6/24 に引き抜くことができた。その後の炉心の修理をすることになる。
常陽は茨城県大洗町にあるもんじゅの前身となる実験炉であるが、2007年に、やはり装置の一部が炉内に落下して運転が止まっている。小林桂二「高速増殖実験炉「常陽」の事故とその重大性」に明解なその報告がある。落下物のなかでも「6本のピン」は探し出すのが難しく難物らしい。
高速増殖炉は炉心をナトリウムで充たしてあるために、見ることができず、小さなものの落下などがあるとその始末ができないのである。つまり、メンテナンスが非常に困難な仕様になってしまうのである。それに加えて、ナトリウムは空気に触れると発火し始めるという大変扱いにくい液体である。もんじゅで、ナトリウム漏洩の大きな事故があったのが1995年であった。


トップページの写真を、ツマムラサキセイボウからツチスガリに替えた。
万葉集に出てくる「スガル」は、なんといっても「すがるをとめ」だろう(1738 長歌の一部)。
胸わけの豊けき吾妹わぎも、腰細のすがるの、その顔のきらきらしきに、花のごと、みて立てれば


7/15-2011

福島県浅川町の農家が肉牛に与えていたえさの稲わらから、国の目安を大幅に超える放射性セシウムが検出された問題で、この稲わらは、原発事故の直後から少なくとも4日間は、県南部の白河市で屋外に置かれていたことが分かりました。福島県は、稲わらの流通経路や保管の状況をさらに詳しく調べることにしています。

この問題は福島県浅川町の肉牛農家がえさとして肉牛に与えた稲わらから、最大で国の目安のおよそ73倍に当たる1キログラム当たり9万7000ベクレルの放射性セシウムが検出されたものです。稲わらが与えられていた肉牛42頭が4月8日から今月6日までの間に東京・横浜・千葉・仙台の4か所の食肉処理場に出荷されていました。福島県によりますと、問題の稲わらは福島第一原発から南西におよそ80キロ離れ、避難の対象地域になっていない白河市の7戸の農家から集められ原発事故があった3月11日から少なくとも4日間は屋外に置かれていたということです。稲わらはその後、こん包した状態で白河市内の農家の倉庫で保管され、4月上旬に浅川町の肉牛農家が購入したということです。(以下略 NHK7/15)

南相馬市の稲藁よりさらに高濃度の9万7000Bq/kg の放射性セシウムが検出されたという。白河市で作られた稲藁を、東どなりの浅川町の肉牛農家が購入し牛の飼料としていた。白河市は福島原発から80km程度離れている。
本欄 7/6 のグラフを見てもらいたいが、白河市は3月15日の深夜に放射能雲が初めて襲っている。元の県発表の数表をチェックすると、3月15日22:40に7.70μSv/hのピークが来ている。白河市に放射能雲が来たのは同日13時ごろからで、それまでは0.06〜0.07μSv/h で平常値かわずかに高めであったのが、急増しはじめ10時間弱のうちに7.70を記録したのである。そのあとは目立ったピークはなく、しかし、線量は高止まりして漸減していった。
おそらく、問題の稲藁は3月15日の放射能雲から降下した放射性セシウムによって汚染されたのであろう。(7/15の21時のNHKニュースで、この問題の分析を示していたがその中で、「3月15日夕から白河市は雨になった」と述べていた。7/16追記

くり返し述べていることであるが、県や国がこのような数値を示して、農家や消費者に深刻な事態になりうる数字であることをきちんと発表して周知させるべきであった。そういう県や国の姿勢があれば、稲藁を屋外に出したままにしておくことがどれ程危険なことであるのか、酪農業として致命的なことになりかねないことを農家が認識できていたであろう。
3月15日の頃、またそれ以降の国や県の姿勢を振り返ってみるとわかるが、「ただちに健康に影響はありません」を繰り返すばかりで、放射性物質を体内に取り込むと長期にわたる内部被曝のリスクがあることについて警鐘を鳴らすような姿勢は、まったくなかったのである。たとえば、本欄 3/18 では河北新報社の報道を引いているが、福島市で水道水から放射性ヨウ素・セシウムが検出されたのに対して、福島県災害対策本部は「飲んでも健康に問題はないレベルだ」とのべている。
避難についても、国は“念のために避難してもらう”というスタンスを取りつづけていた。そのために、半減期30年のセシウムが農地・山林にかなりの濃度で降下していること、もちろん、住宅地や学校も例外はないこと、そういう厳しい現実に直面するのが遅れた。その間、疑心暗鬼が生まれ、国や県の出す情報を信頼することができなくなった。

こういう国や地方自治体の厳しい現実を表す情報をクリアーに示さない姿勢、“放射能はたいしたことはない、安心してください”という当座のパニック回避しか考えない態度は、“「原子力村」から派遣された御用学者”らの無数の言説によって補強されていた。
だが、住民たちが(農家が)自分たちが陥っている放射能に囲まれた状況について直視できないがために、当座のパニックは回避したかも知れないが、そのツケはより深刻になって巡ってくる。いま生じている福島県産肉牛の問題は、その第1波である。


7/16-2011

宮城県は15日、県北部の登米、栗原両市内の3地点で採取した稲わらから1キロ当たり最高3647ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。水分量を補正しても、飼料の暫定許容値(1キロ当たり300ベクレル)を2・7倍上回る同831ベクレル。県は同日、県内の全畜産農家と農協団体に対し、福島第1原発事故後に収集した稲わらを肉牛・乳牛に与えることや、既に稲わらを与えた牛の出荷の自粛を要請した。

両市は福島第1原発から約150キロ離れており、稲わらの汚染が広域に広がっている可能性が高まった。

こうした状況を踏まえ、農林水産省は同日、岩手▽宮城▽福島▽茨城▽群馬▽栃木▽千葉▽埼玉▽東京▽神奈川▽静岡−−の計11都県で、原発事故後に収集した稲わらなどを肉牛や乳牛に与えていないかどうかを都県を通じて畜産農家に聞き取り調査するよう、東北、関東両農政局に指示した。
22日までに報告を求めている。(毎日新聞7/16)

稲藁を生産するのは米作農家であり、稲藁を購入して飼料や敷き藁として使用するのは畜産農家である。畜産農家に対しては“原発事故後、野外にあった稲藁飼料を与えないように”という指導はあったようだが、米作農家に対して“原発事故後、野外にあった稲藁は販売しないように”という指導はなかった、という。いわば、縦割り指導になっており、農家もその縦割りになれてしまっていて、稲藁の放射能汚染ということはまったく頭になかったらしい。
国・県が放射能汚染のデータをできるだけ出さないようにしていたために、農家が自主的に危険を察知して判断するという態度ができていなかった。

現在は肉牛が問題として取り上げられているが、同じ稲藁は乳牛の飼料としても使われているはずで、牛乳の放射性セシウム汚染問題を調査すれば、より広範で深刻な状況が露呈すると思われる。牛肉の消費層は限られているが、牛乳の飲用は子供から年寄りまで広い層に及んでおり、牛乳を使った食品ということになれば全国民的ということになろう。
問題が、日本人が食べる食品の放射能汚染というレベルにひろがる。国や御用学者たちが言ってきたような“ただちに健康に影響はありません”という考え方ではこの問題を律することができない。また、“規制値以下の放射能汚染だから安心です”というのも同じである。われわれは多様な食品に薄く広く(中にはある程度濃厚な)放射能汚染が分布している状況下にある、という認識が必要になってくる。そして、消費者はできるだけリスクを少なくするような食品摂取を自衛するしかない。その判断は年齢・性別・居住地などによって異なってくる。


7/17-2011

東日本大震災による津波が押し寄せた岩手県宮古市で、陸地を駆け上がった津波の高さ(遡上高)が40.5メートルに達していたことが、研究者らでつくる「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」の調査で分かった。これまでの最高値は、明治三陸津波(1896年)で同県大船渡市に残る38.2メートルだったが、今回はそれを上回り、観測史上最大の津波であることを裏付けた。

同グループは大学や研究機関、建設会社など約50組織の150人で構成。全国の沿岸約5000地点を調べ、残された津波の跡から遡上高を割り出した。

その結果、宮古市重茂姉吉(おもえあねよし)の約500メートル内陸で、海面から約40.5メートルの地点に津波が到達した跡を確認したのをはじめ、岩手県釜石市▽大船渡市▽久慈市▽野田村▽宮城県女川町の6市町村で30メートル超を記録したほか青森、福島、茨城県でも10メートル以上に達した地点があった。

調査結果は研究者間で共有し、地震のメカニズム解明や今後の防災対策に活用される。同グループのウェブサイト(http://www.coastal.jp/ttjt/)で公開している。(毎日新聞7/17)


青色は遡上高、赤色は浸水高


図は、「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」のサイトからいただきました。そこに、遡上高・浸水高その他の詳しい説明図がある。このサイトの多くは専門的すぎてわたしには分からないが、衛星・航空写真は興味が持てる。例えば、その中のひとつに、震災前・後のGoogle画像を並べたものがある(ここ)。

7/18-2011

放射線による健康影響を分析する「欧州放射線リスク委員会」(ECRR)のクリストファー・バズビー科学議長(65)=英国=が17日、東京都内で毎日新聞の単独インタビューに応じた。東京電力福島第1原発事故に伴う健康影響について、内部被ばくが最も懸念されると指摘し、住民の健康とその要因になる大気や土壌など環境中の線量の調査が必要と訴えた。

バズビー氏は、英国の核燃料再処理工場周辺の調査から、河川付近や谷地などが放射線量が局地的に高くなる「ホットスポット」になると指摘。「日本でも原発から200キロ圏内の放射線量をきめ細かく測定し、インターネットで詳細データを公表すべきだ。現状の汚染は深刻だ」と警告。また、健康影響を把握するため、行政から独立した機関が5000人規模を対象に科学的に長期間追跡するよう提言した。

放射性セシウムに汚染された牛肉の流通問題では「食品による内部被ばくは代謝で体外に排出されるので危険性はあまり高くない。呼吸で放射性物質を取り入れる方が問題だ」と語った。

バズビー氏は、低線量放射線による健康被害の専門家として知られ、英政府の内部被ばく調査委員会などの委員を務める。今回、福島県郡山市の保護者ら、児童・生徒の「集団疎開」を求める市民団体の招きで来日した。(毎日新聞7/18)

本論(5/17)ではバズビーの論文「福島惨事の健康評価、ECRR(欧州放射線リスク委員会)リスク・モデルによる最初の解析」(3/30-2011)を紹介した。
ECRRの「2003勧告」の紹介が、美浜の会のサイトにある。「放射線防護のための低線量及び低線量率での電離放射線被曝による健康影響」ECRRとICRPの違いについて知るための必読文献。
同「2010勧告」が同じく美浜の会のサイトにある。「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」こちらはまだ試訳の段階で、十分こなれた訳になっていない。英語版2010 Recommendationsof the European Committee on Radiation Riskを参照しながら読む必要がある。複数の分野の専門家の手の入った完成訳を望む。


7/19-2011

放射性セシウムに汚染された稲わらが肉牛に与えられていた問題で、福島県は18日、新たに県内7戸の畜産農家で汚染された疑いのある稲わらが与えられ、計411頭が出荷されたと発表した。

新潟、山形県も、放射性セシウムに汚染された宮城県産の稲わらを使用した畜産農家があり、それぞれ24頭と70頭を出荷していたと発表。福島県で判明していた143頭と合わせ、汚染された稲わらを食べた疑いのある牛の出荷は3県で計648頭となった。

出荷された牛への汚染された稲わら投与が福島県産以外で発覚したのは初めて。新潟県の24頭は4〜6月、同県内と東京都の食肉処理場に出荷されていた。

福島県産の411頭は3月28日〜今月6日、福島、埼玉、栃木、群馬、兵庫県と東京都の食肉処理場に出荷。出荷したのは二本松市、本宮市、須賀川市、白河市、会津坂下町の各1戸と郡山市2戸の計7戸の畜産農家で、本宮市の1戸が与えた稲わらからは一連の問題の中で最高値となる1キロ・グラムあたり69万ベクレルの放射性セシウムを検出。水分を含んだ状態に換算すると、暫定規制値(300ベクレル)の523倍に相当する。福島県は、18日までの予定だった県内全農家に対する肉用牛の出荷自粛要請期間を延長した。(読売新聞7/18)

肉牛のゆくへは消費者が全国に広がるので重大問題であるが、高濃度に汚染された稲藁がどこで生産されたかも問題である。なぜなら、汚染されたのは稲藁だけではないはずだからである。
69万Bq/kg という恐るべき値が検出された稲藁がどこで生産されたものか、残念ながら報道されていない。本宮[もとみや]市は郡山市の北隣。稲藁生産農家でこれまで報道されたのは、福島県・宮城県である。

稲藁がセシウムを吸着しやすい性質があるのだろうが、信じられない高濃度のセシウムが検出されているのだから、その稲藁の生産場所を特定し、その周辺の線量調査をする必要がある。原発から出た放射能物質(ガスや微粉末)が雲状になって浮遊し移動していく。放射能雲には濃淡があり、その時の風下側へ流れる。しかも、ちょうど降雨があれば放射性物質が地上へ降下し沈着する。地形にも関係がある現象である。こういう現象が3月15〜16日に最初に大規模に起こった。
一般に原発から離れるほど濃度は薄まるが、それは平均した場合の話で、濃い雲状のまま流れていくことがあるので、思いがけない遠い場所で高い線量が検出されたりする。そういう地点を「ホット・スポット」と言う。

知られていないホット・スポットがあるのかも知れないし、そこに居住している人々があるのかもしれない。また、高濃度に汚染された稲藁を飼料に用いている畜産農家の人々の被曝も心配である。


トップページの写真を、ツチスガリからカメムシ目ヨコバイ科クロサジヨコバイに替えた。

7/20-2011

昨日 7/19 に発表された福島原発事故の工程表の見直しによる、ステップ2およびその後に関して、毎日新聞が長文の特集を組んでいる。現在のリンク先はここ
最も中心となる炉心から核燃料を取り出す工程に関する部分を見ておこう。


東京電力福島第1原発事故は、3基の原子炉で同時に炉心溶融(メルトダウン)が起き、溶けた燃料の一部が圧力容器から漏れ出しているという、世界にも例のない深刻な事故だ。政府は19日、原子炉を安定的に冷やすことを目標にしたステップ1は「ほぼ達成した」と発表したが、その後には、数十年にわたる困難な廃炉作業が待ち構えている。

東電や内閣府原子力委員会などは今月初め、廃炉に向けた中長期の工程表案をまとめた。それによると、使用済み核燃料プールから燃料の取り出しを始めるのは早くて3年後。炉内から溶融した核燃料の回収を始めるのは10年後。さらに、原子炉を解体して廃炉完了までは数十年と想定した。

工程表案は79年の米スリーマイル島(TMI)原発事故を参考にした。同事故では、1基の原子炉でさえ、核燃料を取り出し終わるまで10年を要した。
これに対し、福島第1原発は3基の原子炉で事故が起き、原子炉建屋も壊れている。原子炉の損傷や放射性物質による汚染はかなり深刻だ。

1〜3号機の原子炉内の核燃料は合計1496体。工程表案はTMIと同様、溶けた燃料は水中で冷やしながら取り出す。そのためには圧力容器に水を張ることが不可欠で、損傷部を突き止めてふさがなければならない。
核燃料プール内の燃料は3108体(1〜4号機。うち使用済みは2724体)。損傷は少ないとみられ、十分に冷やして別の共用プールに移すことを検討する。

通常、原発から出る使用済み核燃料は、青森県六ケ所村の日本原燃再処理工場に運ばれるが、損傷した核燃料は通常の機器では取り出せない。溶けた核燃料を遠隔操作で切断する装置や搬出のための専用容器の開発が必要だ。
取り出した核燃料をどこに保管するかも課題だ。細野豪志原発事故担当相は「福島県を最終処分場にしない方法を模索しなければならない」と述べている。(以下略 毎日新聞7/20)

メルトダウンした炉心がどのようになっているかは、“開けてみないと分からない”のであるが、そのために(1)効果的に水で冷やし続けること、(2)短い半減期の放射性物質からの線量が下がるのを待つのである。その上で、放射線防護のため水中での作業になるが、炉心-炉底に溶融して不定型になっているウラン燃料を取り出すことになる。十分観察しどのように融けて固まったウラン燃料が炉心-炉底にへばりついているかを知った上で、炉の一部と一体のまま切り出すような手法になると思われる。遠隔操作になるので、そのための機器を設計・用意することが必要だろう。困難で大仕掛けな作業になる。

「使用済み核燃料プールから燃料の取り出しを始めるのは早くて3年後。炉内から溶融した核燃料の回収を始めるのは10年後。さらに、原子炉を解体して廃炉完了までは数十年」、こういう工程のなかで、どの段階で避難指示の解除が可能なのか、見通しは難しい。今回の工程表では、それは示されていない。
廃炉が完成したとして、「最終処分場」をどこにするのか。国内のいずれかの土地へ持って行けるとは考えにくい。とすれば、現在の原発サイトを最終処分場にするしかないことになる。

同じ毎日新聞に佐藤優が「インテリジェンス機関創設を」という寄稿をしている。インテリジェンス機関の必要性をうったえる佐藤優の論は珍しくないが、「東日本大震災の結果、日本は弱くなっている」という観点に目をひかれた。
外交は力の均衡によって成りたっている。日本が弱くなれば、近隣の大国が攻勢に出てくるというのは当然のことである。
ロシアは北方領土の「脱日本化」を本格的にめざし、中国はちかく訓練用空母を就航させ、「日本が弱った隙を突いて、中国は尖閣諸島に対する実効支配を強める措置を取るであろう」と述べている。


7/21-2011

岩手県は20日、一関市と藤沢町の畜産農家計5戸が肉牛に餌として与えていた県内産稲わらから国の暫定規制値(1キロ当たり300ベクレル)を超える583〜1万2984ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。乾燥する前の水分を含んだ状態に換算すると、最大で規制値の約43倍に相当する。福島、宮城両県内に続き、福島第1原発から約200キロ離れた岩手県内でもセシウムに汚染された稲わらが確認された
同県は県内の全農家に稲わらの使用禁止と肉牛の出荷自粛を要請した。

同県の発表によると、両市町の5戸から19頭、別の7戸から62頭の計81頭が、3月下旬から7月中旬にかけ、同県内のほか東京都や神奈川県に出荷された。いずれも汚染された稲わらを与えられていた可能性があるという。

また静岡県富士宮市の肉牛農家1戸が保管していた宮城県登米市産の稲わらからは、換算値で規制値の約7倍に相当する2132ベクレルの放射性セシウムが検出された。県によるとこの農家からは3月11日以降、県内や大阪府、愛知県に計148頭が出荷されていた。
群馬県太田市でも、農家1戸が保管していた登米市産の稲わらから規制値を超える放射性セシウムを検出。県によると4月から7月にかけての同農家からの肉牛出荷頭数は355頭に上る。岐阜県高山市でも、飛騨牛を扱う農家が餌として与えていた宮城県大崎市産などの稲わらが規制値を超えていることが分かり、岐阜県は29頭が出荷されたと発表した。

汚染の疑いのある肉牛はこのほかにも、宮城県内で約200頭、新潟県内で約50頭出荷されていたことが判明。全国での出荷頭数は1500頭以上となった。(時事通信7/21)

岩手県での放射線量はこれまで問題にされてこなかったと思う。本欄が扱ったものでは 6/14 の最後の図は、WSPEEDI によるシミュレーション図だが、3/16〜17に掛けての降雨の際に、宮城・岩手県方面に放射性物質が流れ沈着したことが考えられることを示している。
つまり、岩手県で高濃度に汚染された稲藁が生じたことはすこしも不思議なことではない、というわけだ。

くり返し言うが、こういうシミュレーションをリアルタイムで全国に流して該当地域に警告を与えるようなことをしていれば、今回のように4ヵ月してから、まったく無防備な稲藁生産の農家が出ることは防げたであろう。
“パニックが出ないように”というその場しのぎの策しか打ってこなかった政治家と国-県の官僚たちのために、今になって全国的な大きなダメージが生じているのである。

経口摂取の牛肉のことよりも、稲藁を取り込んでロールにした稲藁農家や、その稲藁を飼料にして毎日牛に与えている畜産農家の人々の呼吸に伴う放射性物質摂取のほうがずっと心配である。


7/22-2011

菅直人首相は20日午前の衆院予算委員会で、原子力発電にかかるコストに関し「これまで言われてきたコスト自体が、現実とは大きく違うのではないか。少なくともかなり高いもので再計算しなければならない」と述べ、コスト計算を見直す考えを示した。海江田万里経済産業相は「再検証し、結果は明らかにする」と述べた。

経産省によると、1キロワット時あたりの発電コストは、原子力が4・8円から6・2円で他電力と比べ安い。しかし、首相は「根本から検証しないとならない」と強調。原発については「今回の事故は想定されていなかった。最終処分地の費用、原発立地のいろいろな費用も入っているのか」と語り、賠償費用や廃棄物処理、自治体への交付金などを除いた計算方法に疑問を呈した。(以下略 毎日新聞7/20)

本欄ですでに何度か紹介した( 4/116/28)大島堅一の「原発のコストは高い」という議論が、毎日新聞で取り上げられている。東京版7/21夕刊は特集記事で「一番高い?!原子力発電」。その中から、地方交付金のところ。

さらに大島教授は、地元自治体への交付金など国の財政支援分も費用に上乗せして計算した。「燃料費などは電気料金を通して国民が負担しているが、財政支援分も元をたどれば、税金。国民がトータルでどの程度負担したかという観点から発電コストを計算しました」

財政支援の柱は、電源3法に基づく交付金。大島教授の分析では、過去の電源3法交付金の7割は原子力に振り向けられていた。「事実上は原子力交付金です」。その結果が「原子力10・68円」なのだ。

毎日新聞京都版7/21は、大島堅一の京都市内で行った講演の要旨を伝えているが、その一部

事故の被害賠償を巡っては「国民の税金や電気料金を当てにしており、東電に完全に責任を取らせるという議論がなされていないのが非常に問題。電力会社に完全に責任を取らせれば、自分から原発をやめていく」と強調。

消費者(国民)の側からしても、子孫の代までをトータルに考えて、安くて安全な電力を求めるのは当然であり合理的である。電力会社にとっても「ペイする発電方式」を行うことは健全な企業論理に合っている。

自治体へ多額の交付金をばらまかないと立地できないような原発は、そもそも、立地手法からして間違っている。しかも、その交付金を発電コストに入れてこなかった従来の計算法は、いったい何だったんだ。
そういう問題を首相・経産大臣が国会で答弁するようになったことは、前進である。


7/23-2011

東京電力福島第一原子力発電所の汚染水処理システムが、停電のため、22日午前7時10分から8時間余りにわたって停止した

3、4号機内の配電盤に電気を送る予備変電所のブレーカーが落ちた。東電は、ブレーカーの不具合か、一時的に容量を超える電流が流れたことが原因とみている。東電によると、3月下旬に外部電源が復旧して以降、大規模な停電は初めて。

停電のため、3号機の使用済み核燃料一時貯蔵プールの冷却設備や、原子炉圧力などを監視する計器類も一時的にストップした。バックアップの電源に順次切り替え、22日午後3時半ごろに全面的に復旧した。停電による原発の安全性への影響はなかった。

汚染水処理システムは21日も電源の切り替え作業のために約16時間停止するなど、稼働率が低迷。原子炉に戻す浄化水が不足する恐れがあるため、原子炉注水用のタンクに、予備の真水を補充した。(読売新聞7/22)

何らかの事情でブレーカーが落ちて外部電源が遮断された場合、自動的に他系統の電源なり自家発電などの電源に切り替わることが必要だが、急ごしらえの福島第一サイトではそうなっていなかった、ということだ。それで、手動で切りかえ作業をして8時間余を費やしたというのである。

今回の場合、ブレーカーが落ちた原因は不明であるが、311大震災のように外部電源の鉄塔が倒壊して電源遮断となったというような大規模な災害が原因である場合には、単独現象ではないことが普通である。鉄塔倒壊と同じ原因が道路破壊をもたらし交通遮断を生じ、大津波でジーゼル発電設備を破壊している等々、というように。津波や放射線のために作業員の退避が必要になったりもする。
したがって、「バックアップの電源に順次切り替え」という作業ができないことになる。

311福島原発事故では、津波到達後5時間半でメルトダウンしている。今回の停電は第1原発の一部の停電であったが、8時間余というのは十分に長い停電であったことを認識する必要がある(もちろんここでは、既にメルトダウンすべき炉はしてしまっているという破滅的状況下にあるわけだが)。
トップページの写真を、クロサジヨコバイから甲虫目カミキリムシ科トゲバカミキリに替えた。

7/24-2011

福島第1原発事故を受け、福島県が浪江町など3地区の住民を対象に放射線医学総合研究所(千葉市)に依頼して実施した検査の結果、体内に取り込んだ放射性物質による内部被ばく量は最大でも年間1ミリシーベルト以下だったことが23日、分かった。放医研の明石真言理事は「検査対象者に大きな健康被害は考えられない」としている。

  同県二本松市で同日、検査を受けた浪江町住民を対象にした説明会があり、明石理事が明らかにした。
明石理事によると、内部被ばく量が最も多かった人でも1ミリシーベルトを超えることはなく、最も少なかった人は検出限界値以下だった

検査は、警戒区域や計画的避難区域に指定された浪江町の89人、飯舘村の20人、川俣町山木屋地区の11人など、3地区の4〜69歳の男女計122人に実施。先月27日から今月16日まで、内部被ばく検査機「ホールボディーカウンター」を使って測定した。(時事通信7/23)

放医研の説明通りであれば住民のためにも喜ばしいことだが、気がかりな点がいくつかある。
本来、この原発事故がなければすべての住民が体内に持つ放射性物質は「検出限界以下」になるはずだろう。1mSv以下(/年か)と言え、体内に放射性物質を取り込んでいることは確かである。
事故以来4ヵ月近く経って測定しているので、ほぼ放射性セシウムからの放射線だけであろうが、初めの数週間が問題であるヨウ素の放射能ははどのように見積もられているのか。
放医研はICRPの考え方で計算しているが、ECRRによる計算ではどうなるのか。

わたしの理解では、内部被曝のリスク計算は個々のケースに応じて難しい問題があり、未知の要素が多分にある。したがって、わたしのような門外漢の市民は、リスクを減らすためにできるだけ体内に放射性物質を取り込まないようにするとしか、責任あることは言えない。
ECRRの「2010年勧告」の「サマリー6」では、次のように述べている。
本委員会(ECRR)は、生物学や遺伝学、またガンの研究における最近の発見は、ICRPの細胞内DNAの標的モデルが、リスク分析のよい基礎ではありえないことを示しており、放射線作用についてのそのような物理的モデルを、被曝した人々についての疫学研究よりも優先して取り扱うことはできないと主張する。最近の研究結果は、細胞に与えられる放射線のヒットから臨床的な発病へとつながるメカニズムについては、ほとんどまったく未解明のままであることを示している。
したがって、ECRRはICRPのリスク計算に“荷重係数”という修正用の係数を用意して、それを乗ずるという仕方で、現実の観測データに合わせるように工夫している。例えば小児白血病のICRPのリスク計算は、セラフィールド(英)での実例と100倍も違うという。
また同「サマリー9」では
本委員会は、低線量での内部被曝による損害を紛れもなく示している2つの被曝研究にとりわけ注目した。チェルノブイリ後の小児白血病と、チェルノブイリ後のミニサテライトDNA突然変異についてである。これらのいずれも、ICRPのリスク評価モデルが100倍から1000倍の規模で誤っていることを示している。
と述べている。(この項目は ここを参照のこと)。


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7/25-2011

福島県は24日、東京電力福島第1原発事故で拡散した放射性物質の影響による甲状腺がんの早期発見のため、18歳以下の全県民約36万人を対象に、継続的な甲状腺検査を行うことを決めた。10月から開始し、20歳までは2年ごと、その後も5年ごとに生涯にわたり検査する。世界的に例がない取り組みという。

 ◇対象36万人
旧ソ連で86年に起きたチェルノブイリ原発事故では、周辺住民が放射性物質を含む牛乳などを摂取して内部被ばくし、事故発生から4〜5年後に小児の甲状腺がんの増加が確認された。甲状腺がんは早期手術で大部分が治癒するとされ、県は継続的な検査が必要と判断した。検査は無料。

対象は92年4月2日〜今年4月1日に生まれた事故当時の県内居住者で、事故後に県外に避難した人も含む。当面は福島県立医大で受け付け、後に民間医療機関の協力も得て、公民館や学校などでの集団検査を実施する。14年3月までに対象者全員の1度目の検査を終える予定。

県は全県民約200万人を対象に、聞き取りで事故後の行動を確認し、地域・時期ごとの線量と照合して個人の被ばく量を推定する方針を決めている。8月から問診票の配布を本格的に始めるほか、避難区域の住民を中心に、事故の精神的影響も調査する。この全県民健康調査の財源は、政府が1000億円規模の基金の創設を検討しており、同調査の一環として行われる18歳以下の甲状腺検査も、それで賄われる見通し。(毎日新聞7/24)

この調査はしなければいけないが、福島県民は被曝被害者になったうえにモルモット扱いでさぞ不愉快なことだろう。この調査とは別の先行調査である「川俣町山木屋地区と浪江町、飯舘村の住民計約2万8000人を対象にした問診票の回収率が 7/21 現在で22.8%である」という(河北新報7/25)。
これらの調査のリーダーシップを取っているのが山下俊一(福島県立医大副学長で検討委座長)であることも気に掛かる。山下俊一は長崎大教授から福島県知事に呼ばれ放射線アドバイザーとなり、「100mSv以下なら大丈夫」と言いまくって、「ミスター大丈夫」とあだ名がついたぐらいの男。戦後米軍時代ののABCC(原爆傷害調査委員会)を受けついだ放影研(放射線影響研究所)の長瀧重信(長崎大名誉教授)の直系である。


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米議会指導者が14兆3000億ドルの連邦債務上限の引き上げをめぐる協議で合意できず、米国が来週にもデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が強くなったことを受け、ドルは下落した。(以下略 ブルームバーグ7/25)

週明けの今朝日本時間午前6時1分現在、対円では1ドル=78円35銭。8月2日がリミットで、もしデフォルトとなれば米国債が暴落するので、ドル基軸が終焉するという大変動になる。議会対策等で10日前の7月22日が実質のリミットといわれてきたが、それを無策のうちに通過してしまった。田中宇「デフォルトに向かう米国(3)」(7/24 無料版)にある情報を勧めます。

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7/26-2011

 ◇経産省「使える設備は織り込んだ」
電力大手の需給計画を巡り、揚水発電以外についても、実際の供給力が計画を上回る可能性が指摘されている。背景には「原発を再稼働させたい電力会社は供給力を低く見積もっているのではないか」(野党議員)との疑念があり、経済産業省への不信感を強める菅直人首相も供給力の洗い直しを指示。経産省などは「使える設備は供給力に織り込んだ」と反論している。

経産省によると、火力と水力の発電能力を示す09年度の設備容量は計1・92億キロワット。これに対し、夏の最大需要は1・7億〜1・8億キロワットで「原発なしでもまかなえる」(福島瑞穂・社民党党首)との指摘もある。だが、火力は定期的に検査が必要で、水力も夏に水量が減少するため「設備容量通りに供給できない」(電気事業連合会)。海江田万里経産相は25日の参院予算委員会で「供給できるのは約1・57億キロワット」と説明した。

東京電力は7月末の供給力5720万キロワットの7割が火力、20〜25%が水力だ。使用可能な揚水の設備は960万キロワット分あるが、原発停止で揚水用の電力を確保できないため、供給力には700万キロワットしか含んでいない。 (中略)

 ◇首相、納得せず精査中
一方、自家発電は全国約3200カ所に計約5400万キロワット分あるが、既に売電や自家用に使っているうえ、「電力大手から買うよりコスト高」(鉄鋼大手)の設備も多い。東電も休止中の自家発電などを総動員して110万キロワット分を集めたが、上積みは難しい。同省は、6月末時点で使える自家発電は162万キロワットにとどまると報告したが、菅首相は納得せず、さらに精査中だ。(以下略 毎日新聞7/26)

電力会社が自分の商品(電気)の価値をできるだけ高くするために、“足りない、足りない”というのはある意味当然だ。「でんき予報」(TEPCO)のようなものを電力会社がやるのは分かるが、NHKが流すのは何のためなんだと、いつも違和感を覚えている。NHKが国民にむかって節電を要請しているかに思える。
経団連の米倉会長は「原発に一定程度依存しないと(電力不足で)国内産業がどんどん海外に逃げ、雇用が守られず、経済成長が落ちる」と発言した(毎日新聞7/20)。これは、一種の恫喝だと思う。この米倉は、3月16日に福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」(北海道新聞3/17 暗黒夜考からいただきました)とトンデモ発言をしてヒンシュクを買った人物。

わたしは節電には賛成だが、上からものを言われるような仕方で節電を要請されるのは不愉快だ。


トップページの写真を、クモガタケシカミキリからハエ目ハナアブ科ナガヒラタアブに替えた。


ナガヒラタアブの空中停飛。背景は、苔むした側溝の壁。


7/27-2011

食品を通じた放射性物質の健康影響を評価していた食品安全委員会(小泉直子委員長)は26日、作業部会を開き、内部被ばくと外部被ばくを合わせ、生涯にわたる累積線量の限度を100ミリシーベルトとすることで取りまとめた。同日中にも検討結果を厚生労働省に答申していく。厚労省は暫定規制値の見直しを検討するが、規制値の引き下げが議論になる可能性がある。

作業部会はこれまで、広島・長崎の被爆者疫学データなどを検討し、成人については「100ミリシーベルトを超えるとがんのリスク増加など健康影響が明確」と判断した。また、「大人より感受性の強い子供にも留意する必要がある」とし、子供の健康に配慮した規制値の必要性も示した。

生涯100ミリシーベルトは、人生を80年とすると年間1.25ミリシーベルトとなる。日本人は宇宙や大地、食べ物から年約1.5ミリシーベルトの自然放射線量を浴びており、同程度の被ばくなら、健康への影響は生じないだろうとの考え方だ

食品安全委員会は3月29日に緊急とりまとめとして、「放射性セシウムは年5ミリシーベルト以下、放射性ヨウ素は甲状腺の線量で年50ミリシーベルト以下」との数値を答申していた。いずれも1.25ミリシーベルトより高く、厚労省が今後設定する規制値は厳しくなる可能性があるが、生涯累積線量を規制値にどう反映するかは不透明だ。

一方、食品安全委は100ミリシーベルト以下なら確実に安全という根拠は見いだせていない。また、食品を通じてセシウムやストロンチウムなどを体に取り込んだ場合の影響は評価するデータがなく、毒性が強いウランを除き、放射性物質ごとに上限値を決めることはできなかった。(毎日新聞7/26)

もともと、年間1mSv/y という規制値であったのを、政府が福島原発の事故のあと、急に勝手に20mSv/y にあげてしまった(暫定規制値)。そして、食品安全委は「放射性セシウムは年5ミリシーベルト以下、放射性ヨウ素は甲状腺の線量で年50ミリシーベルト以下」とべらぼうな答申をしていた(3/29)。それを、今度は急転直下、“自然放射能のレベルが安全のレベル”と答申したのである。

なお、法的規制の対象になるのは、自然放射能以外の人工的な放射能についてであるから、この規制値一杯の1.25mSv/yを浴びた人は、それ以外に自然放射能を平均1.5mSv/y浴びているので、合計2.75mSv/y となる、という話である。ただ、現実問題として自然放射能と人工的放射能の区別はできない場合があるので、ここの議論はあいまいである。(例えば、地表1mの空間線量を線量計で計るという場合、原発から流れてきた人工的放射能と宇宙線などの自然放射能との合計が測定される。)(文科省の告示「放射線を放出する同位元素の数量等」の第24条に「診療を受けるための被ばく及び自然放射線による被ばくを除くものとし」などとある。)

わたしはここで2点指摘しておきたい。

(1):、成人については「100ミリシーベルトを超えるとがんのリスク増加など健康影響が明確」という説がチェルノブイリ事故のあと出回っているが、これは、100mSvを超えるとがんのリスクが上がる、という事実を言うものであって、100mSv以下なら安全だというものではない。以前から低線量被曝についての健康影響については異なる意見があって、100mSv以下については不明である、というのが穏当な見解である。
チェルノブイリ事故から30年以上経過しており、多くの遅発性がんの実例が積み重ねられてきた。低線量被曝についての危険性が明らかになってきた。武田邦彦「なぜ、1ミリシーベルトが妥当か?」(2011-4/4)が分かりやすい。ただし、武田のIAEAへの批判は甘いが。

(2):「日本人は宇宙や大地、食べ物から年約1.5ミリシーベルトの自然放射線量」を受けている、というのは本当で、「放射線科学センター」にある情報では(ここ)、全世界平均は2.4mSv/y(内訳はラドンなど吸入54%、食品による経口摂取15%、大地と宇宙からの外部被曝31%)である。地球上の地域によってずいぶん違いがあり、日本は少ない方である。

食品安全委の「累積線量の限度を100ミリシーベルト」という答申は、自然放射線を浴びる以外には余分な放射線は、せいぜい自然放射線量と同量程度(100mSv)を浴びることまでは許容しよう、という意味。ただし、それで安全であるかどうかは不明なのである。くり返しになるが、低線量被曝の危険性はまだよく解明されていないというべきであるから。

この新しい答申を守ろうとすれば、いまの暫定規制値などは問題にならなくなるので、今後の厚労省の出方が注目される。とくに、食品の現行規制値はヨーロッパ並みまで大幅に引き下げる必要があるだろう。
さらに、福島原発事故により放射線量が高くなっている地域では、外部被曝だけで(生涯)被曝量が数十mSvになるわけで、仮に食品からの放射線量摂取をゼロにしても間に合わないということになりうる。

◆+◆

新潟県の泉田裕彦知事は26日、定期検査中の東京電力柏崎刈羽原発2〜4号機の再稼働について、ストレステスト(耐性評価)を終えても拒否する考えを示した。全国知事会の災害特別委員会委員長として海江田万里経済産業相と会談後、経産省内で記者団の質問に答えた
泉田知事は、東電福島第1原発事故の検証を踏まえることなくストレステストを実施しても「気休め以外の何ものでもない」と批判。「『ストレステストが終わったから安全だ』という虚構の下で動かすことはあり得ない」と強調した。その上で、福島第1原発では津波による電源喪失だけでなく、地震による配管破断などがなかったかどうかも徹底検証を求めた。(時事通信7/26)

ちかごろ、政治家の発言で論旨明快な正論を聞くことは珍しいが、この泉田知事の発言はまっとうである。「福島原発で何があったか、考慮に入れないシミュレーションにどういう意味があるのか」、「安全だから動かしてくれというのはありえない」との発言も報道されている(日本経済新聞7/27)。

トップページの写真を、ナガヒラタアブからハエ目アシナガヤセバエ科ホシアシナガヤセバエに替えた。


クヌギの樹皮にいるホシアシナガヤセバエ。脚に黄色い斑が環状についている。大きな目玉(複眼)も奇妙だが、短い触角が角のように伸びてその先が白いという、バッタ類のようなスタイルも変わっている。
トップページの写真の翅の後半部に黒点が散らばっていることがうかがえるが、それでホシアシナガヤセバエの名前がついた。日本にはもう1種、モンキアシナガヤセバエが知られているだけだという。

ここの情報は、アシナガヤセバエ科という優れたサイトに教えてもらいました。このサイトは、ハエ類についての大きなサイト「ヘキサポーダリサーチ」の中に置かれています。


7/28-2011

秋田県のホームセンターで販売していた腐葉土から高濃度の放射性セシウムが検出された問題で、栃木・鹿沼市の業者が製造した腐葉土の原料となった落ち葉から、1キログラム当たり7万2000ベクレルの高い放射性セシウムが検出された。

この落ち葉は、4トントラックにして400台分あり、その4分の1は福島第一原発事故後に栃木・那須塩原地区から仕入れたものだという。那須塩原地区は福島第一原発から約100キロメートルの場所にある。栃木県は、腐葉土を製造した業者と、これを出荷した市内の別の業者に対し、製品の出荷自粛と自主回収を要請している。
汚染された原料で製造された腐葉土は、秋田県の他、北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県に出荷されたという。(日テレニュース7/28)

那須塩原地区の山林の放射能汚染状況が推測される。7万2000Bq/kg という極めて高い線量が検出されているのであるから、早急に国がこの地区を含む山林や原野・田畑の汚染調査をして、詳細な汚染地図を作る必要があることを示している。
本欄では6/24に紹介してあるが、「早川由起夫の火山ブログ」には汚染地図(三訂版)(7/26)が発表されている。それをぜひ参照してもらいたいが、那須塩原地区はバッチリと1〜2μSv/hの高濃度汚染に色分けされている。
(秋田)県環境管理課によると、秋田市の種苗店「高井南茄園」で、7月3日に入荷した栃木県産の腐葉土から1センチの距離で1・51〜54マイクロシーベルトを計測。店内の空間放射線量は問題なかった。(毎日新聞秋田県版7/27)
と報道されているが、正確に符合している。

福島・宮城の放射能藁の場合と同じ問題であるが、その藁や腐葉土を扱う人にとって危険であること、(肉牛に与えるなどの)使用を禁ずること、などのほかに、これらの藁や腐葉土に沈着している放射性セシウムを全国にばらまくことになるので無秩序な移動は禁ずること、藁や腐葉土の原産地の山林・原野・田畑の汚染状況を把握することなどがぜひ必要である。
台風の雨などで高濃度汚染地域からどのように放射性セシウムなどが流出するか(しないか)などを把握して、下流域なり地下水利用者などへ報知する必要がある。半減期30年の放射性セシウムとつき合っていくのは容易なことではない。だが、日本の国土がこのような汚染状況にあることを認識する必要がある。現状では、上記の早川由起夫の汚染地図は最良の必須データである。


7/29-2011

浄化した水を原子炉の冷却に再利用する「循環注水冷却」が本格的に始まってから28日で1か月が過ぎたが、トラブルが相次ぎ、処理システムの稼働率は現状で6割に満たない。8月上旬までに汚染水を安全な水位まで減らすとしていた計画は、約2か月遅れる見通しになった。

東電によると、26日までの1週間の稼働率は58%。前週は54%だった。運転開始からの平均稼働率は63%で、処理量は1日当たり約760トン。累計は約2万9000トンにとどまる。2か月足らずの突貫工事で作った処理システムは、運転開始直後から弁の操作ミスや警報装置の誤作動などでたびたび停止。今月22日には停電で約8時間止まった。(読売新聞7/28)

急ごしらえの汚染水処理システムの稼働率がよくないことは当初から予想されていたことである。途中の配管に汚泥が付着して水の通りが悪くなる症状も出てきているそうだ。メンテナンスや修理が楽にできるようなシステムということも、この種のシステムの重要な与件なのである。
将来的にはより恒久的なシステムに置き換えていくことになるのだろう。

肝心の汚水の量は、システム稼働により一時減少していたのだが台風の雨で増加し、結局稼働前(6月末)の12万トンに戻っているという。
今日、明日に予想されている豪雨が心配されている。


トップページの写真を、ホシアシナガヤセバエから甲虫目ハンミョウ科エリザハンミョウに替えた。


腹側を見せているエリザハンミョウのペア。大きな眼と口が見えているのが♀で、その下に♂が居るのだが、長めの触角が見えているだけである。
♀の脚の付き方が前・中・後ともよく見えている。後脚は胸部が特別に下まで伸びて(後胸腹板)、やや二股に分かれた造りになり、その先に付いているようだ。「自然観察大学」にコハンミョウの腹側の分かりやすい精細な写真とともに、ハンミョウ類の脚について考えている記事がありました。

7/30-2011

国が開いた浜岡原発(静岡県御前崎市)と伊方原発(愛媛県伊方町)のプルサーマル計画に関するシンポジウムで、原子力安全・保安院が質問などの「やらせ」を指示した問題で、アンケートに答えた参加者の約8割が計画の必要性や安全性について「理解する」としていたことが、29日分かった。両方で反対派のパネリストを務めた舘野淳・元中央大教授は「会場の雰囲気とずれがある。質問にも違和感を覚えた」としている。

2007年の御前崎市のシンポジウムには、保安院の要請で中部電力や関連会社から動員された150人以上を含む524人が参加。このうち357人がアンケートに応じ、計画の必要性について36.7%が「理解できた」と回答。「だいたい理解」「少しは理解」を含めると81.0%に達し、安全性についても同様に計77.9%が「理解する」とした。
一方で、会場からの質疑応答では、計画に反対か慎重な立場からの質問が集中。質疑は会場を六つに分け、司会者が指名して行われたが、10人余りの質問者は「プルサーマル原発の隣に住めるか」などと、いずれも批判的な意見だった。

06年の伊方町のシンポジウムでは、四国電力が要請した10人が質問に立ち、アンケートでは必要性、安全性とも回答者の8割以上が「理解できた」としていた。(時事通信7/29)

原発の安全規制をするはずの保安院が、世論誘導を積極的に働きかけていたということで、あからさまに中立性を自ら放棄したものだ。

06年の四国電力の件では、保安院が「多くの参加者を募り、質問や意見が多く出るようにしてほしい」との要請を出し、四国電力はそれを受けて、従業員らと住民計29名に質問の例文を示して依頼していた(朝日新聞7/29)。実際、ほとんど例文通りの発言がいくつもあった。
国と電力会社が一体になって、“原発稼働ありき”で動いていた。それが、ずっと以前から常態となっていたのであろう。

「もともと、原発推進にアクセルを踏む資源エネルギー庁と、安全確保のためにブレーキを踏む役目の保安院が、経産省内で併存していることに無理があった。実際、政策の意思決定に関わる幹部職員は、数年のサイクルで本省、エネ庁、保安院間を異動する。これでは、保安院が厳格な独立性を保つのは難しいはずだ。」 (毎日新聞社説7/30)
もともと原子力の安全性のみを目標とする組織、独立した強い権限を持った組織が必要だったのである。経済性や利便性を考慮することなく、安全性のみによって原発の是非を決める組織である。原子力はそれぐらい危険で人類(生物)と共存することが困難な技術なのである。

官僚万能のわが国の行政が、はたして、“国家社会主義的な”原子力行政を改革することができるか。わたしは悲観的である。唯一の方法は国が脱原発を決定することである。原子力行政そのものをわが国の行政からなくしてしまう以外に方法はないだろう。
原子力行政の巨大な利権と札束に群がる者たち、その根源を絶つしかこの者たちを無くす方法はないだろう。


7/31-2011

31日午前3時54分ごろ、福島県で震度5強の揺れを観測する地震がありました。この地震による津波の心配はありません。

▽震度5強を観測したのは、福島県楢葉町と川内村、▽震度5弱が福島県郡山市、白河市、田村市、いわき市、茨城県日立市、それに、大田原市などでした。

▽震度4が盛岡市や仙台市宮城野区、宮城県石巻市、福島市、茨城県土浦市、宇都宮市、それに千葉県成田市などでした。

また、北日本と東日本それに滋賀県で震度3から1を観測しました。

気象庁の観測によりますと、震源地は福島県沖で震源の深さは40キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6.4と推定されています。(NHK7/31)

拙宅(東京都府中市)でも、揺れですぐ目が覚める程度の地震だった。はっきりした強い横揺れがあった。わたしは震度3〜4だろうなと思いながら(実際は震度3だった)いつも枕元に転がっている小型ラジオのスイッチを入れると緊急地震速報が流されているとことだった。

「福島県で震度5強」の一報があり、わたしが心配したのは“4号機のプールが崩れないか”ということだった。現在突発的に起きそうな福島原発の大惨事は、ボロボロの4号機が崩れて大量の燃料棒が破壊され散乱することである。燃料棒に閉じこめられている大量の高濃度放射性物質が一気に放出される。
ラジオが「福島原発に異常はない」という保安院の情報を流したので、再び寝た。

5時過ぎにいつものように起きだして、コーヒーを湧かしPCの電源を入れ、朝刊を取りに階下まで行き(拙宅は6階、階段を上下するのがわたしの運動)、それからニュースをチェックする。
次を読んで“ちょうど間に合ったんだな”と思った。


東京電力は30日、原子炉建屋が激しく損傷した福島第1原発4号機で、使用済み燃料プールを補強する作業を完了した。プールの水を循環させて熱を取り除く冷却システムの試運転に向けた準備も実施、31日にも試運転を開始する。

4号機のプールには、同原発の各号機で最多の約1500本の燃料が保管されているが、プールを支える建屋上部の壁が水素爆発で大きく崩れた。東電は「耐震性に問題はない」としながら、安全性をより向上させるとして5月に補強作業をスタート、7月中の完成を目指していた。これまでに(プールの底部にあたる)建屋2階に鋼鉄の支柱を計32本設置、周りにコンクリートを流し込んだ。(共同通信7/30)



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【新たに、「き坊の実験室」にアップしました】

カメラの倍率を固定して、撮影対象のサイズを測定する方法

わたしはネット上の優れた昆虫のサイトやブログを参照することが多いが、そこにはこともなげに「体長は 5.2mm」などと書いてあったりする。そういう方々は、どういう測定法を使っておられるのだろうか、とつねづね知りたく思っていた。
うまい方法が分からないので、ともかく、自己流の素朴きまわりない「倍率固定式」で、せいぜい有効数字2桁なら何とかなる、という測定法を使いはじめてみた。一応実用になること、物差しさえあればできるという方法なので、恥ずかしいのだがアップしてみる。


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