き坊の近況 (2014年3月)


旧 「き坊の近況」

【2014年】: 03 02 01 月

’13 ’12 ’11 ’10 ’09 ’08 ’07 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 

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ブラウザで読むのに目に入りやすいことを考えて、文字の色分けをしています。
1. Web上の新聞などからの引用は黒字
2. わたしのコメントなど注釈的なものは茶色
3. コメント内の引用などは水色
4. トップページに使っている生物写真に関連したものは緑色
これを原則にしていますが、使い分けできていない場合もあります。

日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

311大震災後は、原発事故および震災に関連したニュースを取り上げている。

3/1-2014

安倍内閣や政権を取りまく者たちの暴言や妄言がひどい。それの究極が安倍晋三の立憲主義否定の発言である。東京新聞「社説」(2/28)が取り上げていたので、その前半部だけ引用する。
首相の「解釈改憲」 立憲主義を破壊する

安倍晋三首相は「解釈改憲」をし、閣議決定すると述べた。集団的自衛権の行使容認のためだ。政権が自由に解釈を改変するなら、憲法の破壊に等しい。

フランスの哲学者モンテスキュー(1689〜1755年)は、名高い「法の精神」の中で、こう記している。

 「権力をもつ者がすべてそれを濫用しがちだということは、永遠の経験の示すところである

権力とはそのような性質を持つため、非行をさせないようにあらかじめ憲法という「鎖」で縛っておく必要がある。それを「立憲主義」という。

◆国家権力の制限が目的

政治も憲法が定める範囲内で行われなければならない。先進国の憲法は、どこも立憲主義の原則を採っている

安倍首相はこの原則について、「王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ」と述べ続けている。明らかに近代立憲主義を無視している。

若手弁護士がバレンタインデーにチョコレートと故・芦部信喜東大名誉教授の「憲法」(岩波書店)を首相に郵送した。憲法学の教科書は「近代立憲主義憲法は、個人の権利・自由を確保するために国家権力を制限することを目的とする」と書いている。

とくに集団的自衛権の行使容認に踏み切る憲法解釈の首相発言が要注意だ。日本と密接な外国への武力攻撃を、日本が直接攻撃されていないのに、実力で阻止する権利のことだ。だが、平和主義を持つ憲法九条がこれを阻んできた。首相はこう語った。

 「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける。審判を受けるのは法制局長官ではない、私だ」「(解釈改憲を)閣議決定し、国会で議論する」以下略)(東京新聞「社説」2/28
安倍首相は「立憲主義」という理念そのものを理解していない、としか考えられない。「王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ」という国会答弁をわたしもTVで見たが、意味がとれなかった。絶対王制がなぜ“自分の権力をしばる憲法”を持つ必要があるのか理解できない。聖徳太子の“十七条憲法”などのことを考えているのか。

憲法解釈によって集団的自衛権を容認してしまうことに関して、「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける。」と述べたのには、あっけにとられた。時の政治権力が改憲を発議することを禁じているのがまさに憲法であって、安倍晋三は“憲法は法律の中の親玉である”ぐらいにしか考えていないらしい。法律は国民全体に対して命令し義務を課す、憲法は国民が政治権力に対して命令し義務を課す。これが「立憲主義」である。

あまりにヒドイ安倍政権の数々の妄言・暴言にたいして、欧米のメディアがさすがにあきれ始めたようで、日本経済新聞(2/21)がフィナンシャル・タイムズ(英)の論評「待望した安倍首相を今は悔やむ米政府」を掲載した。イギリスらしい皮肉のきいた論調である。長い論評のほんのその一部。
米軍による占領終了の交渉を任じられたジョン・フォスター・ダレスは、日本に30万〜35万人規模の軍隊を構築するよう迫った。中国は共産主義国家になり、米国は朝鮮半島で戦争をしていた。東アジアに無力化された「従属国家」を抱えることは、もはや米国に適さなくなっていたのだ。

何年もの間、日本はこうした圧力に抵抗してきた。日本政府は米国の核の傘を頼りにし、ビジネスを築く仕事にいそしんだ。日本の唯一の譲歩は、戦闘を禁じた自衛隊の創設だった。あれから60年たった今、日本には、米国を言葉通りに受け止める指導者がいる。安倍氏には、日本の憲法解釈を見直し、場合によっては平和主義をうたった憲法第9条そのものを覆す、個人的な信念と地政学的な口実がある。

しかし、その瞬間が訪れた今、一部の米国政府関係者は考え直している。ある元ホワイトハウス高官によれば、ジョン・ケリー国務長官は日本を「予測不能で危険」な国と見なしているという。日本のナショナリズムが北京で対抗措置を引き起こすという不安感もある。オーストラリアの学者で元国防省高官のヒュー・ホワイト氏は、これが意味することは明白だと言う。「米国としては、中国と対立する危険を冒すくらいなら日本の国益を犠牲にする」ということだ。(日本経済新聞2/21)
安倍晋三は「自分の信念」を振りまわして熱くなってる小政治家にすぎないという化けの皮が早くもはがれてきた。国内ではこの底の浅いボンボン政治家のことはよく知られていたが、世界的にバレてきたのである。

3/2-2014

「汚染水の調査不十分」科学者会議 緊急提言

福島第1原発の汚染水問題で、日本科学者会議が27日、東京電力による地質や地盤、地下水の調査が不十分だとして、ボーリング調査の範囲を敷地内の空白域と敷地外に拡大するよう求めて緊急提言した。
会議汚染水問題プロジェクトチームの柴崎直明代表(福島大教授)が福島県庁で記者会見し、「現状を放置すれば、今後も汚染水が海や敷地外に流出する危険がある」と国や東電に早急な対応を求めた。提言は

  (1)汚染水タンク敷地地盤の安全性再評価
  (2)汚染水流出時のリスクマップ作成
  (3)原子炉建屋海側地下地質の詳細分析
  (4)敷地周辺部のボーリング調査
  (5)3次元地下水流動解析の実施

の5項目。

東電の地下水調査が、汚染水漏れの起きた場所周辺と原子炉建屋海側に偏っている点を問題視。「敷地外にも汚染地下水が流出している可能性がある」(柴崎代表)と指摘し、敷地周辺の湧き水や地下水分析も行うよう求めた。(河北新報2/28)

超高濃度の汚染水約100トンが洩れた事故は、弁の操作ミスであることは明らかであるが、「そのミスをした人物を特定することに失敗した」と東電は発表した(福島民報3/1)。本来は弁の操作は東電社員のみが行うのが建前であったが、事実上誰でも出来た。今度のことで《東電の管理体制は弁操作を誰がいつ行ったかというレベルまで把握できていない》ことをはっきり示した。

漏れ出た汚染水は地中に滲透していくのだが、それが地下水と混じり合うことは必然である。混じり合った地下水をくみ上げるための井戸をあらかじめ掘ることにした、というNHKニュース(3/1)の中に次のような部分がある。
山側から流れ込む地下水が建屋周辺で汚染される前にくみ上げて海に放出する地下水バイパスが計画され、そのくみ上げ地点が今回の流出場所の海側にあるため、汚染が広がれば影響するおそれがあります。(NHK3/1)
地下水バイパス用の井戸に今度の汚染水が混入するだろうというのである。これで、地下水バイパス計画は地下水そのものの汚染によってまず不可能になったと考えるべきだ。さらに、東電の管理体制がきわめてズサンでいい加減なものであって、地下水バイパスというような漁業に直接影響する計画を、東電を信頼して許可することは出来ない、と判断すべきだ。


3/3-2014

時事通信が「東日本大震災3年」という特集を組んでいて、比較的長文の記事をテーマ毎に流している。その中のひとつ、汚染水問題に関する概括的な記事だが、政府・東電の見解を単にたれ流し的に伝えるのではなく、一々問題点を指摘しようとしている。

正念場の汚染水対策=海に流出、経路不明―福島第1

事故発生から3年を迎える東京電力福島第1原発。原子炉内で溶け落ちた核燃料は今も熱を発し、冷却のため注入された水は放射能汚染水となり地下水に混じって海に流出している。タンクに保管中の汚染水は膨大な量に達しており、対策は正念場を迎えている。

東電が海への流出を公表したのは昨年7月。護岸付近の井戸水からは、その後も高濃度の放射性物質が検出されている。原子炉建屋やタービン建屋の地下にたまった高濃度汚染水がどこから漏れ、どう広がって地下水を汚したのか、東電は把握できていない。

経路として疑われているのは、2号機や3号機のタービン建屋につながるトレンチ(ケーブルなどの地下管路)と1号機タービン建屋など。トレンチでは中の汚染水を抜き取るため、内側を凍らせて建屋との水の行き来を遮断する作業が始まった。だが建屋から直接漏れていれば、場所の特定や対策は難しくなる。

増え続ける汚染水はタンクで保管されるが、漏えいも相次ぐ。増加対策についてはメニューがおおむね出そろった。

第1原発では1日400トンの地下水が原子炉建屋に流入し、汚染水を増やしている。対策として、政府と東電は土壌を凍らせた壁で1〜4号機を囲む案を採用。敷地表面はアスファルトなどで覆い、雨水から地下水になる分を減らす。タンクも漏えいが相次いだ簡易型から、より危険性が少ない溶接型に切り替える。

汚染水からトリチウム以外の放射性物質を大幅に減らす装置「ALPS(アルプス)」の増設も決定。1日最大750トンの処理能力を大幅に増やし、タンクで保管する約34万トンと、毎日発生する汚染水を2015年3月までに処理する計画だ。

ただ、凍土壁で地下水の流入を防ぐことができても、建屋内部より周囲の水位が低くなれば、汚染水が流出する危険が生じる。アルプスもトラブルが相次ぎ、安定して稼働できるか不安がある上、トリチウムは除去できず処理後の水が問題になる。タンクの切り替えや雨水対策も時間がかかりそうだ。

抜本的に解決するには、燃料が溶けた1〜3号機格納容器の破損箇所を特定し、補修して冷却水漏れを防ぐ必要がある。だが、極めて高い放射線量下での作業は難しく、見通しは立たない。(時事通信3/2)

昨日の本欄でも主張したことだが、東電の人的体制、現場の直接の作業員から指導部トップに至るまでの体制が疲弊し劣化している。東電は長年の「安全神話」の中で続いてきた体制を解体・再生することなしに、311事故後もそれで押し切ろうとしている。そういう体制を許している政府にも大いに責任がある。

3/4-2014

福島第一の汚染水保管 満タン運用横行

東京電力が、福島第一原発で処理水を保管しているほとんどのタンクで、ほぼ満水になって送水するポンプが自動停止した後も、警報を解除してさらに水を入れ続けるという、危うい運用をしていたことが分かった。あふれる寸前にもう一度警報が出るが、この際はポンプは自動停止しない設定にしていた。

一般的な液体とは大きく異なり、処理水には超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれている。海に流出すれば魚介類を汚染するほか、周辺の土壌も汚染し、作業員らは土の除去作業を迫られる。厳重な管理が不可欠な水だ。

福島第一では、日々約400トンもの汚染された冷却水の処理に追われ、タンクはぎりぎりの状態が続いている。東電は、最初の警報が出る96%の水位でタンクへの注入をやめると貯蔵が間に合わないため、手動でポンプを動かし、二度目の警報が鳴る水位99%の直前まで水を入れていた。地震などで水面が揺れれば、天板の点検口からあふれ出る恐れのある水位だ

原子力規制委員会は、タンクの水位は95%程度までが限界とみている。

もう一つの問題は、東電はあふれる一歩手前の二度目の警報が出ても、ポンプが自動停止しない設定にしていた点。二度目の警報に即座に対応しないと、今回のようにタンク上部からの水漏れにつながる。

さらなる問題が、超高濃度の処理水が約100トン漏れた先月19日の事故で明らかになった。この事故では、誤操作で弁が開きっぱなしになっており、本来の移送先タンクとは別のタンクに水が送られていた。このため、別のタンク(誤送先タンク)で満水警報が出ても、ポンプ側では異常を検知できず、送水が続く状態だった。(東京新聞3/4)

「満タン運用」という危なっかしい綱渡りを、東電は粗雑で手荒い手法でやっていた。

この記事の最後で言及されていること(ポンプ側には誤送先タンクの警報が異常とは受けとめられないこと)は、この記事でわたしは初めて読んだ。
しかし、本来の移送先タンクの水位をきちんと監視していればその増加がないことから、早い段階で異常発生に気づいていただろうとの指摘は、ブログ「キノリュウが行く」の「汚染水がタンクから100トン以上漏洩 人為ミスの事故が続く可能性あり」(2/21)が早かったと思う。

原発事故関連のスクラップ・ブック(2014年2月)をアップしました。

スクラップ・ブック・1402

ダウンロードできます。zip ファイルですが、解凍すると先月(2014年2月)のファイルと、ReadMe-1402.txtがあります。プレーンなテキスト文です。何かのお役に立てば幸いです。

◇+◇

旧スクラップブック(2014年1月以前のもの全部)をお求めの方は、つぎをクリックすればダウンロードできます。

スクラップ・ブック・1106〜1401
(3月4日)



3/5-2014

安倍首相を「修正主義」と批判=日米関係に「深刻な脅威」―NYタイムズ社説

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4日までに、「安倍晋三首相のナショナリズムが日米関係にとって、より一層深刻な脅威になりつつある」と強く警戒する社説を掲載した。

「安倍氏の危険な修正主義」と題した社説は、中国が東シナ海や南シナ海での領土問題で攻撃的な姿勢を取る中、安倍氏が「修正主義的な歴史」を持ち出すのは危険な挑発に当たると指摘している。

社説は、安倍氏が旧日本軍による1937年の「南京大虐殺」の存在をいまだに否定しているとして問題視している。さらに昨年12月の靖国神社参拝や、政府が先週、従軍慰安婦制度への旧日本軍の関与を認めた河野洋平官房長官談話の検証に乗り出す方針を示したことを批判。「彼(安倍氏)は戦争の歴史を歪曲している」と決め付けた。(時事通信3/4)

本欄 3/1 は、フィナンシャル・タイムズ(英紙)の安倍政府評を紹介しているが、欧米の主要紙が安倍政府を“トンデモ”視はじめたことは重大で、潮目が変わり始めていることを現している。

菅義偉官房長官は4日、「著しい誤認」とニューヨーク・タイムズに抗議したと述べた(産経新聞3/4)。



3/6-2014

福島県南相馬市 大豆の放射性物質調査 対象の6割強から基準超過のセシウム検出

福島県が公表した穀類の最新の緊急時モニタリング検査の結果によると、同県南相馬市で調査した大豆(対象検体24件)の大半にわたる6割強の16件から、食品基準(1kg当たり100ベクレル)を上回るセシウム量を検出した。基準超過大豆の多くが120〜130ベクレルだった。

検査対象となったのは南相馬市の旧石神村で産出した大豆。2月4日に採取した。基準以下の値だった検体も、最低値が43ベクレルで、40ベクレル台が4件、それ以外は70ベクレル〜100ベクレルの”準汚染”レベルだった。

大豆の含有セシウム量が高レベルだったことで、同地域では農作業が依然、適していないことを物語っている。栽培された大豆類が市場に出荷されたり、自家消費されないよう、行政の監視・指導が求められる。大豆は醤油や味噌、豆腐等の加工食品の原料になることから、そうした業界への指導・警告も必要になる。

同時に公開した野菜・果実、山菜・きのこ類の検査では、基準超過の検体は見つからなかった。

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/mon260204c.pdf

FGW

規制委の田中俊一委員長は日本の一般食品の基準100Bq/kgは「欧州の10分の1以下(の厳しさ)で非常に疑問だ」と述べ、基準の緩和にむけての検討を示唆した(東京新聞3/5)。
食品の基準が厳しいことは(それが本当なのなら)世界に誇れることで、それこそ「世界一厳しい基準」と言えばいいことだろう。規制委がどこを向いて物を言っているか、よく分かる。


◇+◇

このところ欧米の主要紙が“日本の立ち位置”を自覚させるような記事を出しているが、ブログ「星の金貨プロジェクト」がワシントン・ポストの【 原子力発電を続けた先に、ほんとうに『豊かな日本』はあるのか?! 】(2/25)を翻訳してくれている。その一部を引用する。
福島第一原発の事故が発生したにもかかわらず、原子力発電を廃止すべきか継続すべきかに関する日本国内の議論はほとんど進んでいません。その原因の一つは、この問題が政治勢力同士の駆け引きの材料にされてしまったためで、目先の議論ばかりが行われています。

この問題に取り組む活動家や有権者の多くは地震が多発する国土で原子力発電を続けることの危険性を訴えていますが、大企業や安倍首相のような政治家は、原子力発電は発電コストが安く、日本経済にとって有利な発電手段だと主張しています。
首相に再任されて14ヶ月、安倍首相は新たな安全基準に適合さえすれば、原子力発電所を再稼働させることに自分の関心と利害がある事を繰り返し述べてきました。
(チコ・ハーラン ワシントン・ポスト2/25)


3/7-2014

余震なお活発、影響長期化 震度4以上、震災前の3・4倍

マグニチュード(M)9を記録した東日本大震災による巨大地震の余震は、減少傾向にはあるものの、震災3年となる現在も続いている。青森県から千葉県房総半島沖までの「余震域」で起きた震度4以上の余震は2月末時点で318回。直近3カ月でも8回と、震災前平均の約3.4倍に上る。影響は長引くとみられ、仙台管区気象台は警戒を呼び掛けている。

気象台によると、震災以降の震度1以上の余震の月別回数はグラフの通り。2月末時点で累計は1万580回を数えた。震災直後の11年3月は月2941回あったが、昨年1月に93回と初めて100回を割り込み、ことし2月は72回と徐々に減っている。それでも地震活動は震災前より活発だ。M5以上の余震は直近3カ月で17回で、震災前の平均の約3.6倍に上った。

1995年の阪神大震災や2007年の新潟県中越沖地震は、約1カ月〜半年で余震が収まった。気象台の吉川一光地震情報官は「M7クラスの両地震とM9では破壊力が約1000倍違う。東日本で余震が多発する状況は10年レベルで続くだろう」と予測する。

昨年10月26日未明には福島県沖でM7.1(最大震度4)の津波を伴う余震があり、津波注意報が発令された。余震で東北地方に津波警報・津波注意報が出されたのはこの3年で8回に達した。
気象台が強く注意を呼び掛けるのは太平洋の日本海溝より東側で起きる「アウターライズ地震」だ。津波が大きくなりやすく、昨年10月26日の余震や1933年に約3000人が犠牲になった昭和三陸津波がこのタイプとみられる。吉川情報官は「アウターライズ地震は震源が遠くて揺れが小さいだけに、特に警戒が必要だ。地震や津波に対する身の回りの備えを万全にしてほしい」と話している。(グラフも 河北新報3/7)

3/8-2014

フランスねこのNews Watching」というオシャレな柔らかい感じのブログがある。「フランス語で発信される福島原発事故関連記事を読むBlog」と副題があり、とても高度ですぐれた情報を載せ続けている。柔らかくてオシャレなのは本当だが、猫のように鋭い爪を隠しているということなのだろう。

最新のものは、福島の森がどのように放射能を貯めこんでいるのかの研究の紹介。ヒノキや杉を中心とするその森は、チェルノブイリの場合よりもずっと低減しにくいという。
木々に溜め込まれるフクシマの「死の灰」/「研究」(2014年3月号)

福島の森は、人々の生活を脅かしているのか。
地面に落ちた木の葉は、川や人々の居住地域を汚染しているのだろうか。

これらの問いがはらむ重要性は、事故を起こした福島原発周辺に広がる重度汚染地域の70%以上が森に覆われているという事実が示している。

フランスの政府機関、「フランス放射線防護原子力安全研究所」(IRSN)と「原子力発電環境整備機構」(ANDRA)が筑波大学の恩田祐一・加藤弘亮両教授らのチームと合同で福島県の川俣町山木屋地区で実施した調査結果によれば、事故から約3年以上がたった現在、福島原発周辺の汚染地域を覆う森林には事故当時吸収された放射性物質の10〜20%もの量が蓄積されたままと見られている。木々に蓄積された死の灰は枯れ葉などを通じて森の地面に移行し、周辺の汚染を助長している。

これは、フランスの専門家らが驚くほどの高い濃度である。
「チェルノブイリでは、事故から2年後には木々に含まれる放射線物質の量が高くても当初の5〜10%になりました。」
ニコラ・ロフレード研究員は指摘する。

ヒノキと杉をはじめとする福島原発周辺の針葉樹林は福島原発事故で空気中に放出された死の灰(放射性降下物)の95%を吸収した。これらの木々に吸収された放射性物質は、杉やヒノキの性質や原発が爆発した際の環境条件により、チェルノブイリ原発事故の際の木々の汚染に比べその低減に予想を大幅に上回る時間を要している。

IRSNのフレデリック・コッパン研究員らが調査を行った山木屋地区の放射線量は年間8〜27ミリシーベルトにのぼる。日本政府は年間20ミリシーベルト以下の地域については住民の帰還が可能との考えを示しているが、フランス国内の規則では年間1ミリシーベルトが許容の上限とされている。針葉樹林に残る高い濃度の放射能汚染は、この高い放射線量の原因になっている。

森の汚染は今後数十年、そして数百年の間残存すると見られている。森林は除染の対象外となっているが、こうした高い濃度の汚染が人々の生活に与える影響はまだ十分に知られていない。どちらにしても、日本人には今後被ばくへの危険に対する強い警戒が求められる。山火事は木々が含む放射性物質を空気中にまき散らす原因になりかねない。また、放射能に汚染された木々を薪として燃やせば高濃度の放射性の灰が発生するため、薪の使用を制限しなければならない。キノコ類や汚染された野禽類は口に入れることを避けなければならない。(抜粋、一部編集)

●元の記事:「放射性物質の貯蔵庫と化した日本の森林」/「研究」(2014年3月号) (≪ Les forets japonaises, les reservoirs radioactifs ≫, La recherche, 2014.3) http://www.larecherche.fr/savoirs/nucleaire/forets-japonaises-reservoirs-radioactifs-01-03-2014-171498

(ブログ「フランスねこのNews Watching」3/7)


3/9-2014

「全事件可視化が原則」 取り調べ意見書 村木次官ら懸念

取り調べの録音・録画(可視化)など刑事司法の見直しを議論する法制審議会の特別部会が七日開かれ、郵便不正事件で冤罪被害に遭った厚生労働省の村木厚子次官ら有識者委員五人が「録音・録画は原則として全事件を対象とするべきだ」とする異例の意見書を提出した

検察や警察出身の委員は裁判員裁判の対象事件を念頭にした案を主張。しかし全事件の約3%しかなく、意見書は「裁判員裁判事件に限定すると、郵便不正事件も、誤認逮捕された人が虚偽自白をしたPC遠隔操作事件も、痴漢事件も対象にならない」と懸念。

その上で、全事件を対象にするという原則を明確にするとの前提で、警察の取り調べに限り、裁判員裁判の対象事件から可視化を始め、将来的には全事件に拡大する妥協案を容認。可視化をある程度進めている検察には、交通事故を除く全事件で行うよう求めた。

村木氏は「『広く国民の声を反映した審議を行う』という特別部会の趣旨から外れた結論が出るのでは、との危機感がある」と話した。部会は四月の次回会合で、最終案のたたき台を示す方針。

特別部会では、日本弁護士連合会出身の委員が全事件で警察と検察の取り調べの全過程を原則可視化する案を主張。検察、警察出身委員と意見が割れている。(東京新聞3/8)

全事件の取り調べで、可視化が原則」というような当たり前の主張が通らない。じつにナサケナイ日本の“民主国家”の実態なのである。検察や警察が反対しているのである。

東京新聞の「社説」(3/8)は、上の記事に合わせて「刑事司法改革 冤罪防止の原点に返れ」を掲げている。こちらも、お勧めします。

2月5日に約1年1ヶ月ぶりに保釈された遠隔操作ウイルス事件の被告・片山祐輔さんの場合、取り調べの可視化を要求したのだが検察は拒否。そのために、なんと一度も取り調べをせずに起訴され裁判開始に至っている(保釈会見youtube約30分ここ )。
検察には片山さんを犯人とする直接的な証拠がなく、情況証拠や間接証拠の積み上げで有罪性を立証しようとしているのだが、それならばこそ直接の取り調べの面談の中で、有罪性の《心証》を得ることが一層必要だと思われるが、それを全くしていない。あくまで「取り調べの可視化」を拒否するというメンツにこだわった恰好だ。


トップページの写真を、ヤツデキジラミから甲虫目テントウムシ科ナナホシテントウに替えた。

3/10-2014

安倍首相の地元・山口で反原発集会 県内最大の規模

東日本大震災から3年を迎えるのを前に、中国電力上関原発(山口県上関町)の建設計画に反対する大規模集会が8日、山口市の維新百年記念公園であった。山口選出の安倍晋三首相は原発再稼働に突き進むが、参加者は「NON」と書かれた紙を掲げ、原発反対の姿勢を鮮明にした。

集まったのは約7千人(主催者発表)。山口県内であった反原発集会としては過去最大規模になった。

集会の共同呼びかけ人の児童文学作家那須正幹さんは「広島で3歳で被爆し、放射線の怖さは身に染みて知っている。もう原発とは手を切ろう」。「上関原発を建てさせない祝島(いわいしま)島民の会」の清水敏保代表は「皆さんと連帯し、上関原発が白紙撤回されるまで闘っていく」と訴えた。(朝日新聞デジタル3/8)

東日本大震災・311原発事故から3年目を前にして、この週末には全国で被災者支援・反原発の集会やデモが行われた。ベルリンでは風車[かざぐるま]をかざしてデモが行われた。台湾の各地で大規模なデモや集会があった。

共同通信社などの日本世論調査会による今月1,2日実施の世論調査で、「即時ゼロ」「段階的に減らし、将来はゼロ」を合わせた脱原発派が69%であった(東京新聞3/9)。


3/11-2014

原発 再稼働積極的な政府の姿勢批判…3事故調の元委員長

 東京電力福島第1原発の事故原因を調査した、政府、国会、民間の3事故調の元委員長らが10日、日本記者クラブで開かれた討論会に出席した。政府が原発再稼働に積極的なことについて、「事故から学んでいない」などの批判が相次いだ。

参加したのは、いずれも各事故調の元委員長の畑村洋太郎(政府事故調)▽黒川清(国会事故調)▽北沢宏一(民間事故調)−−の3氏と、米原子力規制委員会(NRC)前委員長のグレゴリー・ヤツコ氏。

「規制委が安全と認めたものは地元の理解のうえで(原発を)稼働する」という政府の姿勢について、畑村氏は「安全性が確認されたから再稼働というのは論理が違う」と指摘。「想定外」だった福島の事故の教訓を生かしていないとの認識を示した。

黒川氏も「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない」と厳しく批判。北沢氏は「事故は(再び)起こるかもしれない。(再稼働の是非は)国民がしっかり議論しなければならない」と指摘した。ヤツコ氏は「いまだに汚染水問題など課題は多い。事故は終わっていない」と述べた。(毎日新聞3/10)

安倍政権の言い方は、“世界最高水準の基準に適合した原発を動かす。だから安全で安心だ”というもの。世界一の基準であることがそもそも疑わしいという議論もある(ヨーロッパで普及している原発のコア・キャッチャー装置が日本では義務付けられない等)。「世界一の基準」と言い出したら、そのとたんに、新たな安全神話に陥っているのだ、という自戒こそが311事故がもたらした教訓であろう。事故はつねに「想定外」の次元に起こるのである。

原発事故は必ず起こる事を前提として、避難可能性を含めた了解を地元(避難該当地域)がすることを再稼働の条件にすべきである。

今朝のNHKニュースで、NHK世論調査(昨年11〜12月実施)では、
原発をどうすべきかを尋ねたところ、「増やすべきだ」「現状を維持すべきだ」が合わせて20%余りだったのに対し、「減らすべきだ」「すべて廃止すべきだ」が合わせて80%近くを占めたことが分かりました。(NHK3/11)
としている。黒川清のように「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない」とわたしも思わないではないが、「変わる気配」が生まれることを今少し願って行きたい。

◇+◇

わたしの基本的姿勢は《ひとりの市民として》ということに尽きる。

311事故が教えてくれたことは、原子力災害は個々の市民が勉強し、自分の手足・行動で実行していくこと以外にそれを超えていく方法はない、ということだ。
政府やマスコミはウソ情報を平気でまき散らす。学者がそれを権威づける。彼らは原子力マネーに群がっているのだ。原子力災害は五感を超えたところで起こる。原子力災害の多くは“ただちに健康に影響しない”仕方で起こる。したがって、政府・マスコミ・学者らは自分らに都合の良いようにいくらでもウソがつけるし、情報を曲げることができる。時の権力は、自分らに都合の良いように情報を歪曲し、ウソをまき散らし、国民の視線を逸らさせることに力を入れる。それがウソであったことは、数年後、数十年後にやっと明らかになる。

だからわたしたちは《ひとりの市民として》考え判断して生きていく。


3/12-2014

「関連死」本県が突出 原発事故の避難が影響

狭い仮設住宅での暮らしや、慣れない土地で生活する孤立感。長引く東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による避難は、被災者の心身の健康を脅かす。避難後の環境変化などで被災者が亡くなった「震災関連死」は増え続け、地震や津波などの犠牲となった「直接死」を上回る。避難市町村は仮設住宅などを巡って見守り活動などの対策を進めている。ただ、古里の復興は先行きが見通せず、避難生活はさらに長期化が見込まれ、震災関連死を防ぐ取り組みは重要度をさらに増している。

福島)県の10日現在のまとめによると、避難の影響などで震災関連死と認定された死者数は1671人となり、地震や津波などによる直接死の死者1603人を上回っている。同じ被災県の岩手、宮城両県は1月末現在で岩手が434人、宮城879人。本県の関連死は突出して多い。

県内市町村ごとの関連死者数は、南相馬市が447人で最多、浪江町の317人、富岡町の232人と続く。次いでいわき市だが、関連死者数は125人で原発事故による避難者数が多い市町で、関連死が生じている状況が浮かぶ。

復興庁の調査(昨年9月末現在)によると、震災後1年を過ぎてから死亡した割合は岩手、宮城両県が3%以下なのに対し、本県は16%に上る。原発事故による生活環境の変化や先が見えない避難生活へのストレスなどが高齢被災者の体調を悪化させているという。(福島民友ニュース3/11)

東京新聞は、震災関連死のうち原発事故で避難中だった人について聞き取り調査をして、独自に「原発関連死」として集計している。
東京電力福島第一原発事故に伴う避難で体調が悪化し死亡した事例などを、本紙が独自に「原発関連死」と定義し、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも1048人に上ることが分かった。昨年3月の調査では789人で、この1年間で259人増えた。事故から3年がたっても被害は拡大し続けている。

市町村は、災害の直接の犠牲者だけでなく、その後の避難中の死亡などについても「震災関連死」と認定した場合、災害弔慰金(最高500万円)を支給している。福島県内では24市町村が支給。本紙で震災関連死者のうち、原発事故で避難中だった人数などを聞き取り、集計した。

南相馬市といわき市は震災関連死者のうち原発事故を理由とした避難者数を把握していない。ただ担当者は「大半が原発避難者」と話しておりこれを加えると原発関連死者は1500人に迫る。福島県内の震災関連死者数は1671人(7日現在)で原発関連死者は少なくとも6割を占める。昨年4月1日から今年1月末までの震災関連死の認定数は岩手45人、宮城17人に対して福島は277人と大幅に上回り、原発事故の特殊性を物語る。
(東京新聞3/10)
津波による膨大な数の死者があったことは、まことに痛ましい。しかし、その痛ましさには圧倒的な自然災害の絶対性とでもいうべきものがあって、それは祈りの対象となるし時間と共に浄化作用もありうる。
原発被災や「原発関連死」は絶対性を持たない。代わりに加害者を持つ。それは祈りの対象となる以前に怒りを誘発する。被災した場所へ行って祈ることさえ禁じられているという巾乗の痛ましさ。その痛ましさは純化されず、いつまでも濁っている。


トップページの写真を、ナナホシテントウから甲虫目ゾウムシ科ヒレルクチブトゾウムシに替えた。

3/13-2014

原発事故 克明な放射線量データ判明


東京電力福島第一原子力発電所の敷地の外にある観測点で、事故直後の詳細な放射線量のデータが記録され、震災発生の翌日、1号機が水素爆発する1時間以上前から、数値が急上昇する様子を克明にとらえていたことが分かりました。

3年がたって初めて明らかになったデータで、専門家は「放射性物質放出の真相を検証するうえで、非常に重要だ」と話しています。

放射線量の詳細なデータが記録されていたのは、福島第一原発の周辺に設置された福島県が管理するモニタリングポストです。その14か所で、事故後数日の20秒ごとの放射線量の値が記録されていたことが、NHKの取材で分かりました。

このうち、福島第一原発の北西5.6キロにある双葉町上羽鳥のモニタリングポストでは、震災発生の翌日(3月12日)の午後2時10分以降、放射線量が急上昇していました。午後2時40分40秒には、1時間当たり4.6ミリシーベルトと、午後3時36分に起きた1号機の水素爆発のおよそ1時間前にこの日の最大の値を記録しました。データの推移から、最大値を記録した前後およそ20分で、積算の被ばく線量が一般人の年間の被ばく限度の1ミリシーベルトに達するとみられます。

放射性物質の拡散に詳しい日本原子力研究開発機構の茅野政道部門長は、WSPEEDIと呼ばれるコンピューターシミュレーションで、今回のデータと当時の風向きなどを分析しました。その結果、午後2時ごろから1号機で行われたベントと呼ばれる緊急の作業が影響したとみています。

ベントは、格納容器が壊れないよう高まった圧力を下げるため、放射性物質を含む気体を放出します。 途中、水の中に通すことで、放射性セシウムなどの放出量を1000分の1程度に抑えるとされていましたが、今回のデータから、それほどの効果は得られず、かなりの量が出たとみられます。

茅野部門長は、「放射性物質の放出の真相を検証するうえで、非常に重要なデータだ。ベントでどういうことが起きるかや、どれくらいの効果があるかを検証しなければならない。多くの研究者が3年たった今も事故の解析をしているので、思わぬところで新たな発見がある可能性もあり、できるだけ多くのデータが欲しい」と話しています。(以下略)(NHK3/11)

この記事のNHK動画(2:55)が、まだ生きています。ここです。この動画の視聴を勧めます。

福島県がこういうデータを持ちながら、取材があるまで発表しなかったということ。そのことを隠蔽と断じざるを得ない。ベント操作で環境へ放射性物質をまき散らした実態が捕らえられていたことは貴重である。

NHKは水中を通過させることによる洗滌が有効でなかったといっているが、その前に、我が国の原発ではベント装置にフィルタを設置することを義務づけていなかったことの致命的弱点が露呈したことを指摘すべきだ。
その後、柏崎刈羽原発で、再稼働のためにフィルタ付きベント装置の設置が義務づけられたことは、よく知られている。


3/14-2014

原子力規制委職員 「推進官庁と一線」形骸化


原子力を規制する機関としての独立性を保つため、推進側の官庁に職員を異動させない「ノーリターンルール」を定めている原子力規制委員会事務局が、発足してわずか1年半の間に推進側の経済産業、文部科学両省へ2割近い職員を戻していたことが分かった。当初の5年間は例外規定があるが、例外にしてはあまりにも多く、設立時の理念やルールが形骸化しているとの批判を招きかねない。

ルールができたのは、前身の旧経産省原子力安全・保安院(廃止)が組織上も予算上も推進官庁である経産省の強い影響を受けていたからだった。

旧保安院は規制機関なのに、原発をめぐるシンポジウムに推進派を動員するやらせに関与したり、原発事故に備える区域の拡大を阻止しようとしたり任務に逆行する数々の問題を起こした。

こうした問題を踏まえ、規制委設置法の付則で、事務局の全職員は原子力推進の事務を扱う行政組織への配置転換を禁じている。国会の議論で、政府はその組織とは経産、文科両省を指すと明確に答弁している。発足後5年間は「職員の意欲、適性などを考慮して特にやむを得ない事情」がある場合に限り、推進官庁に戻ることも認めているが、あくまで例外としてだ。

ところが、同事務局が発足した2012年9月19日から今年2月1日までの間に、経産省出身の315人のうち49人、文科省出身の88人のうち21人が出身の省に戻った。合わせて18%が戻った計算になる。

経産省に戻った職員の中には、原発が立地する地方局で原発関係の交付金手続きに携わる担当に就いたケースもある。同省の担当者は「ルールはあくまでも規制委事務局の取り決めであり、こちらは関係ない」と説明する。文科省の担当者は「戻り先は科学技術や教育などの分野であり、原発推進の部署ではない」とするものの「その後に推進の部署へ異動することも理論上はあり得る」と話す。

規制委事務局の担当者は「いずれも仕事への意欲や適性を考えての人事だが、個別の説明は控える」とだけ回答。ただ、法律成立の際には衆参両院が「(政府は)5年以内であっても、可能な限りノーリターンルールの趣旨にそった人事をするべきだ」との決議をしており、運用はなし崩し的になりつつある。(図も 東京新聞3/13)

規制委の人事が、官僚の好き勝手に行われている。特に文科省は26%が戻っており、「ノーリタンルール」なぞは無視していると言っていい。官僚の頭では、311事故は存在しないのと同じだ。

官僚が国会の議論をないがしろにしているということだ。政治家が官僚に完璧になめられている。さすがにあまりにヒドイと思ったのだろうか、自民党の「原子力規制に関するPT(プロジェクト・チーム)」は、経済産業、文部科学両省の担当者を呼んで追及することを決めたそうだ(東京新聞3/14)


3/15-2014

東電本店前で原発作業員らデモ

都内の東京電力(TEPCO)本店前で14日、福島第1原子力発電所の事故処理に当たってきた作業員らが、劣悪な労働環境の改善を訴えるデモを行った。

約100人の作業員らは、拳を宙に突き上げ、事故収束作業の人員を確保しようとする下請け企業にだまされたと抗議。AFPの取材に応じた30代の男性は、きちんとした安全対策もないまま理不尽な作業を強要され、数か月働いて被ばく線量が基準を超えると解雇されたと話し、人間が働くべき環境ではなく、プレッシャーの中で些細なミスが起きやすくなっていると訴えた。

東日本大震災に伴う未曽有の原発事故から11日で丸3年が経過したが、福島第1ではまだ廃炉作業に入れる状況とはなっていない。廃炉までの道のりがこの先数十年に及ぶとみられる中、数千人の作業員が毎日、汚染水の処理や無数の修復などの危険な作業を続けている。(AFP3/14)

◇+◇

原発労働者 除染元請の前田建設工業にも直接抗議 「ピンハネやめろ!」「直接雇用せよ!」などと要求

3月14日の「被ばく労働者春闘統一行動」。午前9時、東京・水道橋の前田建設工業が入ったビル前には、たくさんの組合旗が林立していた。代表の平賀雄次郎氏がマイクを握る。「私たちがなぜ怒りをもってここに来たか?

それは日本でいま一番大切な労働に携わって除染作業員の賃金がピンハネされ、現場に回っていないからだ」。前田建設等が請け負っている福島県楢葉町では一日3千人の除染作業員がいるが、賃金は手取りで1万〜1万2000円しかならない。

本来支払われるべき「危険手当1万円」は消えている。また労災死亡事故も起こしているのに、職場環境は劣悪なままだ。こうした前田建設に対して、200人近い人たちが「ピンハネやめろ」「団交に応じろ」とコールを上げた。

最初は入口を閉ざした会社側だが、怒りの声に押され、代表数名を中に入れて申入書を受けとった。その後、福島のメンバーを先頭に、東電・経団連・政府を回り「被ばく労働者」の待遇改善を訴えた。(レイバーネット FGW3/14から)
◇+◇

舩橋淳(ふなはしあつし)監督
「フタバから遠く離れて」

監督挨拶を含め約100分の記録映像。
穏やかな筆致が、ジワッと効いてくる。

ここをクリック

3月11日から23日まで、特別に無料視聴を提供している。


3/16-2014

地下水放出「容認の方向」=福島県漁連、汚染水対策で−福島第1

東京電力が福島第1原発で汚染される前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス計画」について、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長は14日、「大半の組合員は重要性を理解している。執行部としては容認の方向で(傘下の)漁協に説明したい」と述べた。計画容認に向けて各漁協の意見を集約し、25日の組合長会議で最終決定する方針。

野崎会長は「汚染水が(増え続けて)海にどんどん流出する結果にするわけにはいかない」と述べ、汚染水の増加対策に協力する必要性を強調した。同県相馬市で開かれた東電による説明会の後、記者団に語った。

14日の説明会には東電の相沢善吾副社長や経済産業省幹部らが出席し、漁協の組合員に改めて理解を求めた。組合員からは「スムーズな廃炉のためには仕方ない」と容認する意見が出た一方、「海が汚れたらどうするんだ」「東電は信用できない」との反対論もあった。(時事通信3/14)

説明会で、県漁連の会長が組合員の一般漁民にはからずに先行して、東電や経産省の幹部に「要望書」を手渡してしまった。会場から激しい抗議の声が上がり、要望書の「案」だったということにしてその場は切り抜けた。
福島中央テレビ(FCT)の「国・東電の説明続く 『地下水バイパス』漁業者の思いとは?」(ここの動画)が臨場感あった。

東電がまったく信用されていないことが根本に横たわる問題だ。


トップページの写真を、ヒレルクチブトゾウムシからクモ目エビグモ科アサヒエビグモに替えた。

3/17-2014

脱原発集会:鹿児島市で6000人参加…再稼働反対訴え

脱原発を訴える集会が16日、鹿児島市内で開かれ、大勢の参加者が原発の再稼働反対を訴えながら繁華街を練り歩いた。原子力規制委員会が九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の優先審査を決定後、同県内で初の大規模集会となり、主催者によると県内外から約6000人が参加した。

複数の市民団体が主催した。鹿児島市中央公園で開かれた集会では、優先審査によって川内原発が今夏にも再稼働する可能性があることから、「川内原発建設反対連絡協議会」の鳥原良子会長(65)が「子供たちに安全な環境を残すため再稼働は絶対にさせない。福島の苦しみを分かち合おう」と呼びかけた。(毎日新聞3/16)

鹿児島県の川内原発に関する適合審査を優先的に行うと規制委が発表したのは3月13日である。それから初めての日曜日の16日に、脱原発の大きな集会が鹿児島市中央公園でもたれた。

規制委はなんで“川内原発を優先する”とわざわざ発表する必要があるのか。安倍内閣の再稼働前のめり姿勢に呼応したものであることは明らかだ。

今朝はこの問題を取り上げた新聞社説を3社も読んだ。沖縄タイムス「川内原発優先審査]再稼働の条件は整わず」(3/17)、愛媛新聞「川内原発優先審査 イコール再稼働では全くない」(3/16)、北海道新聞「川内原発審査 独立性を疑わせる判断」(3/16)。いずれもよい社説であった。沖縄タイムスの社説から一部を引用する。
なぜ、再稼働を加速させるのか。昨年9月以来続く稼働原発ゼロのままで、電力需要期の夏を迎えることを懸念する安倍政権や産業界の思惑がちらつく。

過酷事故や地震、津波対策を強化した新規制基準に基づく規制委の審査が長引いていることに対する不満も、さまざまな圧力として表出した。茂木敏充経済産業相は先月、「原発によっては申請から相当な時間がたっている」と述べ、規制委に審査の見通しを求める発言をした。自民党の町村信孝元外相は、審査に関し「いたずらに時間をかけていいのか。甚だ疑問を持っている」と述べた。
規制委は、安倍政権などへの配慮は否定するが、優先審査の決定に至る過程を丁寧に国民に説明すべきだ。

安倍晋三首相は参院予算委員会で「原子力規制委員会が厳しい基準で安全と認めたものは、地元の理解をいただいた上で再稼働を進めていく」と述べた。規制委の審査適合判断を「お墨付き」にして順次、再稼働を進める方針だ。しかし、規制委の審査に合格しても、それで住民の安全が保証されるわけではない。

規制基準に避難計画は入っておらず、自治体の住民避難計画は遅れている。規制委の田中委員長は「原発事故時の避難計画に住民理解が得られなければ再稼働は難しい」との認識を示している。
(沖縄タイムス「社説」3/17)
国は規制委の審査は“世界で最も厳しい基準だ”といい加減な事を言い、あたかも規制委の審査が安全を保証するかのような口ぶりである。ほとんどのマスコミはそれの後押しをして「安全審査」という語を連発している。規制委はけして「安全審査」とは言っていない。
万一原発事故が起こった場合の避難体制について、国は地元自治体に丸投げしている。該当する自治体は135市町村あるのだそうだが、机上の計画にせよともかく計画を策定したのはまだ58市町村(43%)であるという。

本論はなんども主張していることだが、仮に避難できたとしても、避難そのものが新たなる災害であることは311福島第一事故が悲しい実例として示していることである。


3/18-2014

原発ゼロ「紀南から広げよう」 田辺で集会

原発ゼロの運動集会「フクシマを忘れない!原発ゼロ!紀南アクション」(実行委員会主催)が16日、和歌山県田辺市扇ケ浜公園であった。参加者は、かつて紀伊半島での原発計画を反対運動で阻止した経験を基に、紀南から「原発ゼロ」の運動が全国に広がるようアピールした。

「紀南の地で原発ゼロを考える」として東牟婁、西牟婁、日高、有田の各地方から1人ずつ発言。西牟婁からは日置川原発(白浜町)の反対運動に参加していた元高校教員で田辺市在住の田所顕平さんが「全国的に原発の計画があった地域は中央から切り捨てられた地域。福島も同じ。1基の原発設置も許していない紀伊半島から全国に原発ゼロを発信する意義は大きい」と訴えた。

東牟婁からは那智勝浦町在住の阪口淑子さんが「原発を再稼働させる必要はない。電気代が上がるなら節電すればよい」、日高からは日高原発(日高町)の反対運動を展開した御坊市在住の橋本武人さんが「原発の反対運動は生活を守る戦い、真の民主主義を守る戦いだった」と述べた。有田からは教諭の楠本香織さん=御坊市=が東日本大震災後、毎年訪れている被災地の現状について報告した。

また3年前の原発事故後、福島県郡山市から和歌山市に避難している女性が、福島の現状や避難生活について述べた。会場では売上金を福島県に送るリサイクルバザーや模擬店、福引き、バンド演奏などがあった。(紀伊民報 3/17)

紀伊半島に原発がひとつもないことは、「熊野古道」や「お伊勢さん」などの価値を断然高くしているだろう。

DailyMotionの動画「原発予定地の旧久美浜町と旧日置川町」(ytv 2011-9/7 8:18)は原発マネーが流れこまなかった地域がいかに健全な生き方を保ってきたかを分かりやすく伝えている。
なお日置川原発の反対運動の記録は原日出夫(編)『紀伊半島にはなぜ原発がないのか―日置川原発反対運動の記録』(紀伊民報2012)がある(わたしは未見です)。

◇+◇

クリミア情勢については、「田中龍作ジャーナル」の健闘ぶりを挙げておきたい。3月3日から田中龍作はクリミアに単身入って、取材し毎日更新している。最新の記事では、クリミアの住民投票の選挙実施を取材しているが、日本では全く取り上げられていない視角からのもので、新鮮だった。
「ロシアへの併合」の是非を問うたクリミアの住民投票(16日実施)には、世界23ヵ国から126人の選挙監視団が現地に入った。アメリカ、イタリア、フィンランドなど西側諸国からの監視員が目立った。親露派による出来レースではなかったのだ。

クリミア全土の投票所は全部で1,206ヵ所。彼らは手分けして投票所を回った。あるチームは40ヵ所もの投票所を視察した。監視団が出した声明によると「住民投票はクリアで、手続きは国際標準に則っていた」。
(田中龍作ジャーナル3/18)
日本では「住民投票は憲法違反だ、国際法違反だ」というアメリカやEUの主張が流されるのみで、プーチンを悪者に仕立てる報道ばかりだ。極めてフェアに行われたという住民投票が憲法違反なら、デモの混乱で極右派が前大統領を追い出したウクライナ新政権は何なのだ。プーチンは余裕綽々であるように、わたしには見える。


トップページの写真を、アサヒエビグモからカメムシ目ナガカメムシ科ニッポンコバネナガカメムシに替えた。

3/19-2014

福島原発 除去装置アルプス全3系統処理を停止

東京電力は18日、福島第1原発で汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の3系統全ての処理を停止したと発表した。アルプス3系統のうち、1系統で水処理後も放射性物質濃度が十分に下がっていないことが判明、東電は残る2系統も止めて原因を調べることにした。

東電によると、問題が発覚したのは18日午後から洗浄するため停止した「B系統」。通常は、処理後の水に含まれるストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質の濃度は、検出限界未満まで下がる。しかし、B系統で17日に処理した水を調べたところ、処理前に1リットル当たり1億ベクレル程度だった濃度が、処理後も同1000万ベクレル程度と高濃度のままだった。

東電は「フィルターが汚れていたり故障していたりする可能性があるので、念のため残る2系統も止めた」と説明している。B系統以外は問題がなければ、調査が終わり次第、再起動するという。

アルプスは汚染水に含まれる63種類の放射性物質のうち、トリチウム以外の62種類を除去する。2012年に完成し、現在は試運転中。(毎日新聞3/18)

“またか!”と誰もが思うALPSの故障のニュースである。ベータ線を出す物質(ストロンチウム90など)の除去が出来ていないことに気づいたということだが、FCT(福島中央テレビ)はこの不具合が始まったのが「いつの時点からか不明」と伝えている。

この緊急に発生した不具合のニュースの前から用意してあった記事であろうが、共同通信は「ALPS廃棄物課題に 最終処分方法決まらず」(3/17)という興味深い情報を流している。ALPSは14基の処理塔を持っていて、放射性物質の特性に合わせて吸着などして取り除くのだが、そこで取り除かれた放射性物質は、それぞれ異なる特性を持った(少なくとも14の)廃棄物となる。それをどのように最終処理するのか、まだ決まっていない、という記事である。
もちろん、どのようにしても除去できないトリチウムを含む大量の“処理済み汚染水”の処理も決まっていない。

福島民報は、この事故を予見していたような記事を出している。【ALPS試運転1年】汚染水処理 期待外れ 浄化完了不透明 トラブル防止急務(3/17)。この特集シリーズの記事には図表が2つも付いているので、まあ、みて下さい。内容にはそれほど新味は無いが。


3/20-2014

福島第1原発 処理水タンクで濃度920万ベクレル

福島第1原発で汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」1系統で処理した水の放射性物質濃度が十分に下がらず、調査のため3系統すべてを停止させた問題で、東京電力は19日、処理水をためている地上タンクの濃度が1リットル当たり最高920万ベクレルに上がっていたと発表した。今後、タンクの洗浄なども必要になり、復旧のめどは立っていない。

東電によると、3系統で処理した水は一度、地上にあるタンク3基(各1000トン)にためる。18日、3基のタンクの水を採取したところ、ベータ線を出す放射性物質は1リットル当たり920万〜360万ベクレルを検出した。3基からさらに水を移送する21基のタンク群(各1000トン)の1基からは同560万ベクレルを検出。21基は配管で連結され、ほかのタンクも汚染された可能性がある。ALPSで完全に処理されれば、同100〜200ベクレル程度になる。(毎日新聞 3/19)

正常に処理されれば100〜200Bq/L(全ベータ)ぐらいの線量になるなのだが、ALPS故障のため処理後も1000万Bq/Lであった。それが正常処理された水と交ざってしまったために、やっかいごとが新たにふたつ生じてしまった。
ひとつは、処理済みの1万2千トンの水を再度処理し直すことが必要となったこと。もうひとつは、本来は正常処理された水しか通らない個所に高濃度の汚染水が混じり込んだためにその個所(パイプとタンク)の洗滌をし直す必要が出てきたこと、しかし、洗滌を考えて造られていない装置なので、かなりやっかいだと、東電自身が述べている。

あんなにしょっちゅう故障しており試験運転中なのだから、ちゃんと働いているかどうか連日検査しているだろうと思っていたが、なんと3日ごとにしか検査していなかった。こういう東電を信用せよというのは無理だ。

なお、読売新聞はALPSで処理することを“浄化”と言っており、処理済みの水を“きれいな水”と言っている。「浄化終えた水のタンクに汚染水再流入…福島第一」(3/20)の冒頭。
福島第一原子力発電所の浄化装置「ALPS(アルプス)」の不調でほとんど浄化できなかった汚染水が、浄化済みのきれいな水を保管するタンク群に流れ込んでいたことが分かったと、東京電力が19日発表した。
この「浄化済みのきれいな水」というのは、トリチウムは全く取れていない100〜200Bq/Lの全ベータがある水のこと。


トップページの写真を、ニッポンコバネナガカメムシからカメムシ目ツチカメムシ科ミツボシツチカメムシに替えた。

3/21-2014

流出汚染水、地下浸透か=2月の100トン、福島第1−東電

東京電力福島第1原発で、タンクからせき外へ高濃度の放射性物質を含む汚染水約100トンが流出した事故で、東電は19日、タンク近くの観測用井戸で採取した地下水からストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり120ベクレル検出されたと発表した。東電は「流出した汚染水が土の中に浸透した可能性がある」と説明している。

東電によると、この井戸はタンクから東(図では上)に約60メートルの場所にあり、深さは約10メートル。今後、継続的に放射性物質濃度を測定するという。

同原発では2月20日、護岸から約700メートル西側のタンクから汚染水がせきの外へ流出していたことが判明。汚染水にはベータ線を出す放射性物質が同2億4000万ベクレル含まれていた。満水に近い状態だったにもかかわらず、汚染水を受け入れるための弁が開いた状態だったため、外部へ流出。警報が鳴ったが、東電が直接水位の確認作業を行わなかったことも流出量拡大の原因となった。(時事通信3/20)

問題のタンク群と「地下水バイパス」の井戸の位置関係を確認するために、次図を用意した。「東電サイト」から持ってきたものに、黒枠のH4とH6はわたしが書き加えた。図の上部に原発1〜4号機がならんでいるが、その先は太平洋である。


上引の時事通信がいう「2月20日」の約100トンの高濃度のベータ線汚染水が漏洩したのは、H6タンク群。その時のことは本欄の2/21以下で扱った。H4タンク群で水溜まりがみつかったのは昨年8月のことで、8/27-2013以下を参照して欲しい。

地下水バイパスというのは図の1〜12の青丸から地下水をくみ上げて、緑色の矢印に従って海へ放出するという計画である。一見して分かるように、くみ上げる井戸が、漏洩をくり返しているタンク群より下流にあるのである。そして、実際に漏洩した汚染水は地下水へ浸透しているというのが、上の時事通信である。

わたしは、このタンク群とくみ上げ井戸の位置関係からして地下水バイパス計画は破綻していると思う。せめて、タンク群の上流側に井戸を掘り直すしかなかろう。東電は放出する前に「貯溜タンク」で水質検査をして“安全を確認してから放出する”と言っているのだが、それを信用できるだろうか。
福島県漁連は軟化して25日にも容認の結論を出しそうだが、“人為的なミスで放出しちゃいました”ということが起きたら、沿岸漁業にとって致命的である。


3/22-2014

首相 了承なく「推進」 核燃サイクル 与党協議の中

安倍晋三首相が24、25両日にオランダ・ハーグで開かれる第3回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった。核燃料サイクルを「推進する」と明記した政府のエネルギー基本計画案に対しては、与党内で反対論が根強く、まだ閣議決定がされていない。政府・与党の意思決定前に、世界に向けて日本が将来も原発を維持する方針を発信することになる。

プルトニウムは核兵器の材料となるため、利用目的がはっきりしないまま大量に保有していれば、テロや核拡散を招くとして国際社会から疑念を持たれる。日本は長崎に落とされた原爆の5000発以上に相当する44トンものプルトニウムを保有している。

首相は核サミットで「利用目的のないプルトニウムはつくらず、保持しない」との方針を表明。安全が確認された原発は再稼働させて、核燃料サイクルによりプルトニウムを使っていく考えを示す。

ただ、大量のプルトニウムを消費するのに何年かかるかの見通しは立っていない。再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになりかねない。

核燃料サイクルに関しては、取り出したプルトニウムを利用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)はトラブル続きでほとんど動いていない。通常の原発で使用済み核燃料のプルトニウムを使うプルサーマル発電も、通常の核燃料に比べて2倍の高レベル放射性廃棄物が発生するなど問題が多い。(東京新聞3/21)

今のところこの報道は東京新聞のみ。しかし、東京新聞は同時に「自公の批判必至」(3/21)という記事を出している。自民の中で「核燃サイクル維持」に反対論があること、公明は再処理の見直し・もんじゅの廃止を選挙公約していることをあげ、安倍首相の“与党軽視”を批判する自公からの声を指摘している。

日本政府が「核燃サイクル」を放棄できない理由はいくつかあり、ひとつはもし放棄すれば使用済み燃料が単なるゴミになってしまうこと(今は、プルトニウムを取り出せる“資源”の扱い)、ひとつはプルトニウムを取り出す可能性を保持することで“核兵器製造”の可能性をアッピールし続けること。安倍は特に後者を考えているのだろう。
しかし、アメリカは日本に貸与していた兵器級プルトニウム300sの返還を求めるなど、このところかなり日本の核兵器製造への姿勢に神経質となっている。


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3/23-2014

中・浜通り1000カ所程度 農業用ダム・ため池除染

復興庁は21日までに、県内の農業用ダム・ため池の除染を「福島再生加速化交付金」の対象事業に加える方針を固めた。底土の放射性セシウム濃度が高い中通りと浜通りの計1000カ所程度が対象となる見通し。県や市町村が実施主体となり、今秋から本格的に作業に入る。汚染状況に応じて、放射性物質の除去や底土の流出防止措置などを講じる。

復興庁は、一般廃棄物処分場で処理できない1キロ当たり8000ベクレル超の放射性セシウムが底土から検出される箇所の除染を交付金の対象とする方向で検討を進めている。

県と農林水産省は今年度、県内の農業用ダム・ため池3730カ所のうち1940カ所で放射性物質検査を行った。その結果、会津地方を除く中通りと浜通りの558カ所の底土から、1キロ当たり8000ベクレル超の放射性セシウムが検出された。復興庁は未調査箇所も含め、除染の実施対象は1000カ所程度になるとみている。

底土を吸い上げて洗浄し、放射性物質濃度の低い砂だけを水中に戻したり、底土をセメント材で固め、汚染されてない土で覆ったりする作業を想定している。同庁は今月中にも、県や市町村から除染の事業計画受け付けを開始する。

一方、農水省は県内約30カ所のため池で実施している実証事業を基に、除染の工法をまとめたマニュアルを作り、県と市町村に配布する。

農業用ダム・ため池の除染をめぐり、県は「住民帰還後の営農再開や農産物への影響が出かねない」として、再三にわたり国に早期の実施を要望してきた。しかし、除染を所管する環境省は「ダムやため池の水には放射線の遮蔽効果があり、周辺環境に与える影響は小さい」として、除染対象として認めていなかった。
田村市都路町で4月1日、東京電力福島第一原発事故による避難指示が旧警戒区域で初めて解除される。住民帰還が進めば営農再開の動きが活発化すると予想され、復興庁が環境、農水両省との調整を急いでいた。    ◇  ◇  「福島再生加速化交付金」は政府の平成25年度補正予算で創設された。26年度当初予算と合わせて約1600億円を計上している。(福島民報3/22)

ため池の底泥に高濃度の放射能があることの調査は昨年12月に発表された。本欄12/19-2013で扱ったが、高線量ため池の位置を示した地図を掲げてあるので、参照して欲しい。
その段階では「現時点でダムやため池を除染対象に加える予定はない」と環境省は言っていた。

ただし、ため池底泥の“除染”を行ったあとの高濃度放射性物質をどこへ蓄え保存するのかは何も決まっていない。また、“除染”作業では底泥をかき回し移動することになるので、その過程で放射性物質が拡散する怖れがある。雑な作業を行うと逆効果になる。人的ミスの起きないような手厚い方策(作業員への十分な待遇や教育)が必要である。


3/24-2014

トリチウム濃度11倍に=汚染水100トン流出タンク近く―福島第1原発

東京電力は23日、福島第1原発で2月に高濃度の放射性物質を含む汚染水約100トンがせき外へ流出したタンク近くで、22日に採取した地下水の放射性トリチウム濃度が1リットル当たり4600ベクレルに上り、21日の11倍に上昇したと発表した。東電は「汚染水の影響と考えられるが、引き続き状況を見ていく」と話している。

東電によると、採取した場所は汚染水が流出したタンクから東に約60メートルの場所にある。21日に採取した地下水の濃度は同410ベクレルだった。(時事通信3/23)

本欄は3/21に取り上げたが、そのときは19日に採取した地下水のベータ線濃度が120Bq/Lであった。これは下がって32Bq/Lとなった。ところが、トリチウムは急増した。

H4タンクの東側井戸の地下水濃度
(単位は、ベクレル/リットル)
月/日3/193/213/22
トリチウム  140  410  4600
全ベータ  120   54    32

元データは東電のhttp://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1234952_5851.htmlなどからです。

本欄が主張している、“井戸水バイパス作戦”にとって致命的であるということはますます確からしくなってきている。少なくとも県漁連は安易に東電を信用して、妥協すべきではない。


3/25-2014

福島原発の地下水放出を容認 漁協、検査や風評対策求める

東京電力福島第1原発事故の汚染水対策として、原子炉建屋に入る前の地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス」計画について、福島県北部の相馬双葉漁業協同組合(相馬市)は24日、相馬市内で会議を開き、実施を認める方針を決めた。県南部のいわき地区の漁協も同様に受け入れを決めており、県内の漁協の方針が一致した。

県漁業協同組合連合会(県漁連)は25日に開く組合長会議で、国と東電に対し、海に流す水の検査や風評被害対策を求める要望書を手渡し、容認の考えを伝える見通し。

東電は県漁連からの要望を受け、地下水バイパスの具体的な手順づくりを急ぐ方針。(東京新聞3/24)

本日開かれる予定の福島県漁連の組合長会議で“地下水放出の容認”を国と東電に伝える。

ある組合長は「溜まり続ける汚染水を見て見ぬふりはできない」と述べている(NHK3/24)。わたしは、県漁連幹部は“物分かりが良すぎる”と思う。国と東電は都合の悪い情報は隠し、歪めて発表するということを長年やって来た。311事故後もそれをくり返しやって来たことは、周知のことだ。
少なくとも、くみ上げ井戸の上流側で線量が増加しつつあるときに容認論を持ち出すべきではない。とことん国と東電を追い詰めるべきだ。今度の地下水の線量増加も、ずさんなタンク造成と雑な管理運用による人災が原因なのだ。
国の官僚と東電幹部は、県漁連が「見て見ぬふりはできない」として決断したことに“恩義を感じる”ような甘いところはまったくないはずだ。彼らは“県漁連がやっと落ちましたね”とほくそ笑んでいるに違いないのだ。


3/26-2014

福島第1原発事故 被ばく線量、公表せず 想定外、数値高く 福島の3カ所−−内閣府

東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除予定地域で昨年実施された個人線量計による被ばく線量調査について、内閣府原子力被災者生活支援チームが当初予定していた結果の公表を見送っていたことが24日、分かった。関係者によると、当初の想定より高い数値が出たため、住民の帰還を妨げかねないとの意見が強まったという。調査結果は、住民が通常屋外にいる時間を短く見積もることなどで線量を低く推計し直され、近く福島県の関係自治体に示す見込み。調査結果を隠したうえ、操作した疑いがあり、住民帰還を強引に促す手法が批判を集めそうだ。

毎日新聞は支援チームが昨年11月に作成した公表用資料(現在も未公表)などを入手した。これらによると、新型の個人線量計による測定調査は、支援チームの要請を受けた日本原子力研究開発機構(原子力機構)と放射線医学総合研究所(放医研)が昨年9月、田村市都路(みやこじ)地区▽川内村▽飯舘村の3カ所(いずれも福島県内)で実施した。

それぞれ数日間にわたって、学校や民家など建物の内外のほか、農地や山林などでアクリル板の箱に個人線量計を設置するなどして線量を測定。データは昨年10月半ば、支援チームに提出された。一般的に被ばく線量は航空機モニタリングで測定する空間線量からの推計値が使われており、支援チームはこれと比較するため、生活パターンを屋外8時間・屋内16時間とするなどの条件を合わせ、農業や林業など職業別に年間被ばく線量を推計した

関係者によると、支援チームは当初、福島県内の自治体が住民に配布した従来型の個人線量計の数値が、航空機モニタリングに比べて大幅に低かったことに着目。関係省庁の担当者のほか、有識者や福島の地元関係者らが参加する原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」が昨年9〜11月に開いた会合で調査結果を公表し、被ばく線量の低さを強調する方針だった。

しかし、特に大半が1ミリシーベルト台になると想定していた川内村の推計値が2・6〜6・6ミリシーベルトと高かったため、関係者間で「インパクトが大きい」「自治体への十分な説明が必要」などの意見が交わされ、検討チームでの公表を見送ったという。

その後、原子力機構と放医研は支援チームの再要請を受けて、屋外8時間・屋内16時間の条件を変え、NHKの「2010年国民生活時間調査」に基づいて屋外時間を農業や林業なら1日約6時間に短縮するなどして推計をやり直し、被ばく推計値を低く抑えた最終報告書を作成、支援チームに今月提出した。支援チームは近く3市村に示す予定だという。

支援チームの田村厚雄・担当参事官は、検討チームで公表するための文書を作成したことや、推計をやり直したことを認めた上で、「推計値が高かったから公表しなかったのではなく、生活パターンの条件が実態に合っているか精査が必要だったからだ」と調査結果隠しを否定している。

これに対し、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「屋外8時間・屋内16時間の条件は一般的なもので、それを変えること自体がおかしい。自分たちの都合に合わせた数字いじりとしか思えない」と指摘する。
田村市都路地区や川内村東部は避難指示解除準備区域で、政府は4月1日に田村市都路地区の避難指示を解除する。また川内村東部も来年度中の解除が見込まれている。
原子力被災者生活支援チーム   福島第1原発事故直後、政府が避難者支援や被ばく医療の強化のため各省職員を集めて設置した緊急対応用の組織。チーム長は経済産業相と環境相で、事務方トップは経産省の菅原郁郎経済産業政策局長と日下部聡官房長が兼ねる。現在の事務局員は約30人でほぼ全員が経産省職員。避難指示の解除に向けた住民や自治体との交渉が主な業務になっている。
(毎日新聞3/25)

最も悪質なのが(劣化が激しいのが)、経産省職員がやっている「生活支援チーム」だ。この官僚どもは何が何でも“住民帰還”をさせようと考えていて、自分らがすべてを操作できて不可能なことは存在しないと考えている。自分らに都合の悪い数字が出たら秘密扱いして、屁理屈によって操作した数字を公表する。

官僚制がこり固まって“自働機械”の段階に至っている。何のための“住民帰還”か、などと考えることができなくなっている。


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3/27-2014

原発輸出 意欲衰えず 首相のセールス、福島事故も利用

安倍晋三首相は24、25両日にオランダのハーグで開かれた核安全保障サミットで、原発セールスを展開した。カザフスタンには技術協力を持ちかけ、フランスとは輸出での連携を確認した。首相は就任後、経済の成長戦略の一環として原発を熱心に売り込んできたが、東京電力福島第一原発事故の原因究明や処理が終わっておらず、日本の原発は安全だとの主張には疑問が残る。

安倍首相はカザフスタンのナザルバエフ大統領との会談で「原発事故の経験を踏まえた安全性の高い技術の提供など、支援できる可能性がある」と表明。大統領は高い関心を示した。

使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」で協力しているフランスのオランド大統領との会談では「原子力やハイテク分野での産業協力を進展させたい」と提案。大統領からは「日仏の原子炉の第三国への輸出を進展させたい」と賛同を得た。

日仏では、三菱重工業とアレバ(フランス)の企業連合体がトルコで新規の原発建設を受注。今後も両国が技術開発で協力し、アジアや中東諸国への原発輸出拡大を目指す。

安倍首相は就任以来、外遊の際に「日本は世界一安全な原子力発電の技術を提供できる」と強調。輸出に向けたトップセールスを続けてきた。昨年1月に初外遊したベトナムでは、ベトナム国内での原発建設に協力する方針を表明。5月にはアラブ首長国連邦(UAE)とトルコと原発輸出の前提となる原子力協定に署名した。

原発1基の事業費は4000億から5000億円。安倍政権は、原発輸出を経済の成長戦略の柱に据える。政府は、2030年までに世界で最大370基の原発が新設されると見込んでいる。

だが、原発事故が収束しない中、日本国内の世論は原発輸出に強く反対している。

安倍首相は「原発事故の経験と教訓を共有することで、世界の原発の安全を図ることは日本の責務だ」と訴えるが、被災者らの理解は得られていない。(下表も 東京新聞3/26)

海外での安倍首相の主な原発セールス
事柄
201212月第2次安倍政権発足
20131月初の外遊先のベトナムで同国の原発建設に協力を表明
4月サウジアラビアと原子力協定の締結に向けた事前協議開始で一致
5月UAE、トルコと原子力協定に署名
インドと原子力協定の締結に向けた交渉開始で合意
6月ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの東欧4ヶ国に原子力分野の協力強化を表明
10月トルコで原発を受注
20143月カザフスタンに売り込み

日本の“ナショナルな”倫理性がまったく地に落ちたことを、強く思う。外から見ると「日本人の倫理性は地に堕ちた」という風に見えるのだろう。時に“サムライ・ジャパン”という語に接すると、無性に恥ずかしい。

日本の高度成長期に“エコノミック・アニマル”という語があったが、あれにはやや自嘲のニュアンスがこめられていた。しかし、安倍の商売根性は“くそ真面目”で一生懸命だ。彼の常套語では“しっかりと!”商売している。


3/28-2014

ALPS 1系統を停止 処理水に異常

東京電力は27日、福島第1原発で汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の3系統のうち1系統のポンプから白濁した水が見つかり、処理を停止したと発表した。原因を調べている。

東電によると、27日午前10時半ごろ、試験運転中だった2系統のうち、1系統のポンプの出口から白く濁った水が出ているのを作業員が発見した。ポンプにはフィルターを通した水が流れているため、本来は無色の水が出る。

アルプスは18日に1系統でフィルターの不具合によりストロンチウムを含む不純物が流れ、浄化水を入れるタンク21基が汚染された。点検のため同日から全3系統を停止し、24日に2系統の運転を再開した。その後も水漏れなどで不安定な状態が続き、27日に停止した系統は25日に運転を再開したばかりだった。(毎日新聞3/27)

きりがないね。次々に新たなトラブルが生じる。大仕掛けなALPS装置を造った意味が本当にあるのか。たんに、金食い虫を造っただけじゃないのか。
システムとして十分な熟成を経ずに、大仕掛けな・見ばえのいいものを造ったが、システムの脆弱性を放置したままなので、不特定の個所でトラブルが次々に生じる。

◇+◇

ウクライナ問題についての「田中龍作ジャーナル」の最新記事「極右幹部 革命の功労者はなぜ殺されたのか」(3/28)は必見である。ヤヌコビッチ前政権を倒した過激なデモを指導したアレクサンダー・ムズイチコ(通称:サチコ・ビリー=1964年ロシア生まれ)が治安警察に射殺された(3/24)。このサチコは実はロシア諜報機関に雇われていてロシア兵やロシア系住民を殺害して争乱状態を創り出した。それを収拾して新政権を生みだす演出をしたのが米国である、という。
現在のウクライナ新政権の基盤はじつに危ういもので、安倍が約束した「ウクライナ支援1500億円」もその大半は新政権幹部のふところに消えるだろうと、田中龍作は述べている(3/27)。


3/29-2014

四国電・伊方1号機、廃炉の可能性=中国電・島根1号機も−原発の選別本格化へ

四国電力の千葉昭社長は28日の記者会見で、伊方原発1号機(愛媛県伊方町)について「あらゆる可能性を捨てずに検討していく」と述べ、廃炉もあり得るとの考えを示した。伊方1号機は1977年9月の運転開始から37年目を迎えている。千葉社長の発言は、国が原発の運転期間を原則40年と定めていることを踏まえたものだ。

中国電力も、29日に運転開始から40年となる島根原発1号機(松江市)について、廃炉も視野に今後の対応の検討に着手した。苅田知英社長は27日の記者会見で「設備対応には投資もかかる。廃炉にする選択肢もある」と述べた。
他の電力会社でも今後、再稼働を目指す原発とそれ以外を選別する動きが本格化すると予想される。(時事通信3/28)

今後、廃炉を決める原発が増えるであろう。
廃炉過程の会計処理の概要など、素人に分かりやすい解説が欲しい。

◇+◇

ウクライナ情勢は新展開している。極右「ライトセクター」と支持者らが国会封鎖を行った。「ライトセクター」幹部サチコを殺害したことへの「報復」であるという(田中龍作ジャーナル3/29)。


3/30-2014

一握りびとの罪/沢田研二


昔海辺の小さな寂れかけてた村に
東電が来て原発早く造りたいと

国の肝入り工事は直ぐに道路を通し
海岸や丘削って反対意見は軽んじ機動隊投入

東電側も信じた
受け入れ側も信じた
安全神話鵜呑みに
一握り人の罪

海が命の漁師は海が死ぬのを怖れた
村はいびつに裂かれた
一握り人の罪
嗚呼無情


いつか原発廃炉に除染は何年先
東電は未来型エネルギーに無関心か

国もただこまぬくだけ被災地に僕たちに
復興遅々と進まず国は荒むよ
僕らに返して
国を


原発に壊れた町
原発に疲れた町
神話流布したのは誰
一握り人の罪

原発に怯える町
原発に狂った未来
繰り返すまい明日に
一握り人の罪
嗚呼無情

作詞/沢田研二
作曲/大山泰輝



〜〜長い空白の後 児童コーラス 〜〜

はいろはいろ輪の中はいろ
はいろはいろ皆はいろ

ふくちゃん げんちゃん はまちゃん はいろ
(福島、玄海、浜岡)

い−ちゃん かんちゃん みいちゃん つるちゃん もんちゃん おなちゃん はいろ
(伊方、柏崎刈羽、美浜、敦賀、もんじゅ、女川)

はいろはいろ輪の中はいろ
はいろはいろ皆はいろ

せんちゃん しいちゃん しまちゃん はいろ
(川内、志賀、島根)

た−ちゃん おおちゃん とうちゃん とまちゃん ひがちゃん おおちゃん はいろ
(高浜、大間、東海、泊、東通、大飯)

はいろはいろ輪の中はいろ
はいろはいろ皆はいろ
皆はいろ

かみちゃん はいろ 輪の中はいろ
(上関)

はいろはいろ皆はいろ
皆はいろ


30年経ったら皆廃炉

作詞作曲/沢田研二


歌はYouTubeに一握り人の罪。歌詞だけ読むと、ほんとうにこんな佶屈露骨の歌詞をジェリーが唄えるのだろうか、と思ってしまうほどだ。

子供コーラスは、鬼気迫るようなところが感じられて、秀逸。全体として「311原発事故物語」になっていると思いました。

【加筆訂正】YouTubeのコメント欄を知らずに上記を書いておりました。子供コーラスには各地の原発名が読み込まれているということをコメントに教えていただきました。上記のように加筆訂正しました。
「××ちゃん」のところ努力しているのですが、原発名を老人の耳にはなかなか聴き取れません。ある程度判明したら、書き加えます。

◇+◇

【加筆訂正 3/31】わたしの耳では、初めの3つ(ふくちゃん、げんちゃん、はまちゃん)ぐらいで精一杯、困っていたら、ブログ「昔の名前で出てました」のいざという時の為の 「♪みんな入ろ」 復習 (3/15)に原発写真つきの正解が出ていたので、それを使わせていただくことにいたしました。
このブログは沢田研二の大ファンの方が書いておられるようで、わたしなどはまるで知らない世界なのですが、「♪みんな入ろ」については、
沢田研二:作詞/作曲 歌唱:児童合唱団な・・・
と紹介してあります。ということは、「♪みんな入ろ」はすこし前に出来ていたということになりますね。わたしには確認できないのですが、「一握り人の罪」のリリースは今年の3月11日らしい。

3/31-2014

「莫大な費用」を理由に東電が原状回復拒否

福島県などの住民約2600人が、原子力発電所事故による放射能汚染からの原状回復や損害賠償を求めた裁判で、被告の東京電力が「莫大な費用がかかると予想されること」などを理由に拒否する姿勢を示した

3月25日に福島地方裁判所で開かれた民事訴訟で、東京電力は反論のための準備書面を提出。その中で、住民が求める原発事故前の生活環境に戻すことは「金銭的にも実現は困難」と述べた。

■ 膨れ上がる除染費用は5.13兆円

東電の準備書面いわく、「産業総合技術研究所の報告では、年間追加被曝線量1ミリシーベルト以上の地域について面的除染を行っただけでも、除染費用として5.13兆円を要するなどと算定されている」。ましてや、「事故前の毎時0.04マイクロシーベルトの空間線量率を実現するためには、「これを超える莫大な費用を要し、原告らの居住地のみにおいて当該空間線量率を実現させるとしても相当な金額に上ることは明らかである」。

東電は政府の「低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループ」報告書に基づいた内閣官房のパンフレットなどを引用する形で、国が避難指示の基準として定めている年間20ミリシーベルトの放射線を浴びることによってがんになるリスクについて、「喫煙や肥満、野菜不足などと比べて十分に低い水準」と主張。今回の原発事故による原告の被曝線量についても「年間20ミリシーベルトを大きく下回るものと考えられる」としたうえで、「違法に法的権利が侵害されたと評価することは困難というべき」と述べている。

原発事故の後、1年以上にわたって、福島市や郡山市など避難指示区域以外の地域からも子どもを持つ家庭などの「自主避難」が相次いだ。残った住民も放射線被曝の不安を抱きながらの生活を余儀なくされている。

これまで東電は、福島県の中通り地方など避難指示区域以外の住民に対しても、「日常生活の阻害に起因する精神的苦痛と生活費の増加分の一括賠償」として、大人1人当たり8万円、妊婦および18歳以下の子どもに60万円を支払っている。

避難指示区域に住んでいた住民への賠償と比べて著しく低い金額であるものの、すでにこうした支払い実績があることを理由に新たに賠償を支払う必要はないと東電は強調。原状回復のための放射性物質の除染についても、住民が求める事故以前の水準の達成は「直ちに達成することは著しく困難」として、請求の却下を裁判所に求めている。

■ 原告側の怒り爆発

これまで、原発事故被害を理由に東電を相手取った訴訟は全国13カ所で6000人強の原告によって起こされているが、このように東電が理由を含めて主張の内容を明らかにしたのは初めてと見られる。だが、原状回復が「技術的に困難」というだけでなく、「莫大な費用」を理由に拒否したことに対し住民の怒りが爆発。中島孝原告団長は「加害者として甚大な被害を引き起こしたことへの反省も、被災者救済の責任の自覚もないことがわかった」と法廷での意見陳述で憤りをあらわにした。

東電は福島での被災者の訴えを退けるよう裁判所に求めている一方、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働のための新規制基準に関する技術審査を原子力規制委員会に申し立てている。そうしたさなかだけに、「重大事故を起こした際の東電の賠償方針が明らかになった意義は大きい」と原告弁護団の馬奈木厳太郎弁護士は指摘する。

煎じ詰めると、「事故を起こしたとしても、年間20ミリシーベルト以下の住民の被曝については責任を負わない。放射能で汚染させても、元の環境に戻す義務はない」という考えにほかならない。電力会社はこうした姿勢で原発を運営しているのである。原発再稼働の議論の際に、その事実を念頭に置く必要があるだろう。 (東洋経済オンライン3/28)

被告が“あまりにも甚大な被害を作り出し、経済的にも償えません”というのなら、責任者はがん首揃えて刑に服する、というしかないだろう。東電は破産もせずあいかわらず電力独占の体制の上にあぐらをかいている。

国と一体化した大企業でも償えないような災害を引きおこす原発は、エネルギー源として失格である、と考えるべきだ。再稼働など論外だ。


トップページの写真を、アシブトコバチの一種からカメムシ目ナガカメムシ科ヒメナガカメムシに替えた。



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