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第五巻 42
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安政の頃
  藁細工の乞喰芝居

都て藁細工にて其手際妙なり
就中お輪に扮するを
得意とす

髷細のなまこ絞りも
藁細工解てお輪の
すゝる水ぱな

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「髷細」という語、不確か。粗末な髷の意味か。

藁細工で着飾って大道で芝居をする女乞喰、評判だったらしい。「お三輪」は『妹背山婦女庭訓いもせやまおんなていきん』の5段目にある「道行恋苧環おだまき」に登場する町娘。赤い苧環をもつお姫さま・橘姫に対抗して、同じ男を恋するお三輪は白い苧環を持つという設定のお芝居。
左図はそういう情景のお三輪を表しているのだろう。

菊池寛一郎『江戸府内 絵本風俗往来』の下巻には「繩衣装の乞食芝居」というのがあるが、同一か。一部引用する。
さて、繩衣装鬘の細工は自身手製なりと聞く。その細工、太繩・細繩・米藁の三種のほか他物を総て雑用せず。手際美事に作りたれども、元来柔らかならざる米藁繩なれば、裃の如き張りある衣装には適当すれども薄く柔らかなるものに至りては、殆ど見苦しくして味なし。
この女乞食は演技の技量にすぐれ、声もよく、「女役者に恥じずまったく路上に演ぜしめるの惜しきを嘆ぜしむ」云々と述べている(引用は、読みやすさのために漢字や送り仮名などを変えた)。

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