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第六巻 92
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万歳

明治前の万歳と其風俗を
異にせり太夫の衣装 羽織
袴にて頭に 引立烏帽子を
冠りつゝみを持又才道は
大黒頭巾を頂き手に
胡弓持て面白節に
合せて調子を取る何故に
斯の如き風俗となりしや
要するに昔し 萬歳 徳川
家始諸侯之御邸内に出入
せか 大紋素袍等の拝領も
ありて立派なる格式なりしも一新の
全廃となりて普通の貰ひ人と成下りたる結果なりと愚考せり

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「才道」は「才蔵」。「出入せかハ」は「出入せしかハ」の脱字。
「面白節」は幕末から明治初期に流行した俗謡で、囃しことばに「この面白や」とある(日本国語大辞典)。

「大紋 だいもん」は大名の礼服、「素袍 すおう」は「服装の格からいうと,直垂や大紋よりは一段低く,江戸時代においては無位無官で将軍御目見以上の平士(へいし)、陪臣の礼装であった 」(世界百科事典)

晴風はだいぶ力を入れて書いている。徳川時代には格式があったのに、「一新の後」には面白節にのってご機嫌伺う「貰い人」に成り下がったのはなぜか、と。だが、成り下がった万歳たちを、あくまでもほほえましく見つめ、描いている。

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