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第八巻 34
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しるこや
毎晩藝妓家の
ある所又矢場等
をあてこミて
夜の更行
まで此しるこや来る
甘たるき
聲や
夜空のしるこ賣
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「千客萬来 しるこ」
夏目漱石「満韓ところどころ」(十三)に、小石川の寺の二階に下宿していた頃、毎晩やってくる汁粉を食べて盲腸炎になった、と書いている。
入学をした余もすぐ盲腸炎に罹った。これは毎晩寺の門前へ売りに来る汁粉を、規則のごとく毎晩食ったからである。汁粉屋は門前まで来た合図に、きっと団扇をばたばたと鳴らした。そのばたばた云う音を聞くと、どうしても汁粉を食わずにはいられなかった。したがって、余はこの汁粉屋の爺のために盲腸炎にされたと同然である。
(青空文庫)
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