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第二巻 43
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  宿なし乞喰の類

此群は自ら酒苞の類を集
小屋を造りなどして其内に頭立たる者
ありて諸方へ貰ひに出る又よし原
仲の町森田屋より毎年頭巾を出し
救を例とすといふ

  花咲や乞喰にも
   ある此栄曜


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正しくは「栄耀」。
「仲の町森田屋」と宣伝の入った頭巾をかぶっている。背中の文字は「歓楽」。竹杖をついている男は「つんぼ」と書いた札を下げ、耳を指さしている。

「宿なし乞喰」を厳密に解せば「野非人」であるが(第1巻48「乞喰諸々」に追加した「非人と乞食」参照)、ここでは、江戸のホームレスたちが作っていた乞食集団というところだろう。なかには「抱非人」やその他の食い詰め者も混ざっていたのであろう。

支配者の儒教的世界観からすれば身分・職業・住所が截然としているべきであるが、それは建前であって、実際の江戸の下層社会は流動的で混沌としていた。
日本列島で生じる飢饉・災害のたびに、江戸は世界中の大都市の例に漏れず生活困窮者が大挙して流入したのである。この本質的問題を江戸幕府は解決しえないまま明治維新に突入した。

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