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第二巻 45
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  四ツ竹

明治前四ツ竹を鳴らし
戸毎の門に立て踊りて
銭を貰ひし乞喰ありし


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第1巻10に「四ッ竹」があった。そこに、注を書いた。
Youtubeに「日本の大道芸」(後編)があり、その初め30秒~1分半ほど、少女が四ッ竹を鳴らしている。これは、沖縄舞踊に取り込まれたものとは違った、大道芸的な四ッ竹のリズムだと思う。

夏目漱石「満韓ところどころ」(39)に四ッ竹が出ていることに気付いた。満州のいずれかの街で任意に入った家の中を次々に見ていくと、音楽をやっている部屋があった。一人の男と三人の女、それに十二三の少女がいて、胡弓と歌声が「一種異様に凄まじい響き」を伝えている。
机の右にいる男が、右の手に筮竹ぜいちくのような物を持って、時々机の上をたたくと同時に左のてのひら八橋やつはしと云う菓子に似た竹のきれを二つ入れて、それをかちかちと打合せながら、歌の調子を取る。趣向はスペインの女の用いるカスタネットに似ているが、その男の顔を見ると、アルハンブラの昔を思い出すどころではない。蒼黒あおぐろ土気つちけづいた色を、一心不乱に少女の頭の上にしかけるようにかざして、はらわたしぼるほど恐ろしい声を出す。(青空文庫より)
なお、「満韓ところどころ」は「朝日新聞」連載で、明治42年(1909)10~12月。

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