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第三巻 80
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読賣

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背中に提灯を挿して保持している。夜の景色である。この原画は「広重人物画稿」のこれ

岡本昆石『吾妻余波あづまのなごり』(明治18年)の「帽子の部」に、右図のような「読売を売る者」の笠がある。この解説によると、女の読売もあったことが分かる。。
左図には唇に紅が差してあるように見える。不思議に感じてわたしはこの絵を何度も見直していたが、この人物が女性ではないかと思い始めた。そして『吾妻余波』を知った。この人物は笠の下に手拭をかぶっており、荷を背負う位置が低い。腰の後で締めた帯の端が黒く描かれ、裾長く着ている。晴風は女性であることをはっきりさせるために唇を赤く染めたのではないか。

晴風『街の姿』(大平書屋1983)の「辻よみうり」は脚に脚絆を着け明らかに男だが、三角の帽子、背に差した提灯など同スタイル。その説明の全文。
辻よみ売瓦版の読売と違ひ、鈴木主水の句解くどき又三荘大夫或ひ、一とセイーなどの文句を駿河半紙に印刷してこれを面白く節付して読ながら売るものを云。(p120)
ニュース三面記事を読むような「瓦版讀賣」とは異なり、「辻読売」は「鈴木主水」など人気浄瑠璃のサワリなどを売った。なお駿河半紙は三椏を原料とした良質の和紙で駿河国で生産されていた。(加筆 2021年6月2日)

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