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第四巻 12
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木拾ひ

木拾ひ 洗湯風呂屋にて
常に是を雇置毎日諸方
の裏長屋あら路しなとに入て
他見を忍びとぶ板を持去り
其他焚物となる極きものは
手當り次第に持去る故木
拾ひ 世間にて嫌ふ者多く
路しの入口などに紙屑拾ひ
木拾ひ入べからずと張置
るゝに到る此類の木拾ひ今
絶てなし

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【木拾い きひろい】(日本国語大辞典)

「洗湯」は銭湯、「あら路し」は荒路地か、「極きもの」は如きもの。裏長屋にも「木拾ひ入べからず」の張り紙があったことの貴重な証言。

東京日日新聞(明治11年(1878)2月26日)に、「湯屋木拾ひ」への禁制が出たとある。原文は漢字カナ書き。
乙第八号。[区長・戸長へ]湯屋木拾ひと称ふる者、猥りに他人構内又は路次に立入、竹木を採拾しままよろしからざる所為有之趣これあるおもむきにつき、以来がい地主家主等の承諾を得ず、市街人家に接したる場所にて、竹木を拾ひ取候儀不相成候あいならずそうろう條、此旨該営業人へ可相達事あいたっすべきこと
 明治十一年二月廿五日  大警視川路利良
「市街人家に接したる場所にて」竹木を勝手に拾うな、という言い回しが苦心のところ。

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