画像をクリックすると、拡大する。

第四巻 34
 【前へ : 目次 : 次へ

いざり

御通りの御大家さま
右や左りのかなひま
せぬめくらや
いざりが助ります
どうぞ一文くださり
まし頂て助ります
慈悲や御なさけで
御座ります旦那さま
御新造さまかような
いざりが助ります
  一文やってくださいまし

◆-◆

初めのところ分かりにくいが、左右の分からないメクラや左右に動けないイザリでございます、色々のかたわが並んでいて、代表してイザリが通行人に慈悲を乞うているという情景だろう。
些細であっても芸を売るというのではなく、唯ひたすら施しを求めている乞食を描くのは、晴風は珍しい。

「一文やってくださいまし」は、「一文ください」という生な関係ではなく、施されるいざりが施す側の立場を取り込んで「一文やって」「くださいまし」と包接的である。ほどこす側は優越の位置にいることを無理矢理肯定させられ、いざりは強引にへりくだっている。

晴風は、このようないざりのセリフを聞いて、メモを採ったのであろう。想像では書けない。乞食をほほ笑んだ顔で表現したところが、すごい。おそらく、実際にそうだったのだろう。

「街頭生活者絵巻」の「いざり

◆-◆
 【前へ : 目次 : 次へ
inserted by FC2 system