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第四巻 38
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明和頃の物貰

おはる舟とて名高し

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朝倉無声『見世物研究 姉妹編』(平凡社1992)に、「お千代舟」が出ている。舟を使い「舟饅頭」といわれた私娼で人気のあった「お千代」をまねた人形を作った乞食である。
此乞士は年の比三十余り、麁末なる紙糊はりこの苫舟を、ホニホロの如く腰に付け、艫の方には汚な細工のおたふくの人形を立たせ、さて己は船頭の扮装身振にて、艪を漕ぐさまをなし、門々に立ちては声張り上げて
「お千代~、よっていきねへなァ、ぼちゃぼちゃのおちよ~だによ~」
同書p138
おはる舟も同工異曲なのであろう。
「ホニホロ」とは唐人服をきた飴売りのことで、腰に張り子の馬をつけていた。

南方熊楠「女順礼ならびにサンヤレのこと」(1927 全集4巻 p106)に「舟饅頭」が出ている。紀州勝浦では熊楠が逗留した明治34年ごろは
かの辺で舟饅頭をサンヤレと呼んだが、今はどうか知らぬ。船をこぐ懸声にヨーイ、サンヤレ。これはヨイサ、ヤレを長く呼ぶに出たらしい。船饅頭連が泊り船を目懸けてこぎつける時、ひときわ面白くこの懸声を連呼したから、その輩をサンヤレとよんだことと察しおった。
と述べている。

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