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第五巻 03
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一人角力
    一人にて巧に取組のさまを
    なして衆人に銭を乞ふ者也

角力取一人
つられの
銭かなし

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菊池貴一郎『絵本風俗往来』(青蛙房1975)には、呼び出しから両力士が土俵に上がるまでの、水を飲み、鼻をかむ所作を、力士のくせを表して面白く演じることを詳しく書いている。以下勝負の伯仲したところ。
手に汗を握らしめけるまゝ、「荒馬」と呼び「小柳」と叫ぶ声いよいよさはがしく、時に双方取組て離れず敵味方とも息切って付入る隙をうかがふ様子なりしか、一人相撲の男顔を上げて見物の方を見廻し「サア/\、皆さん銭を投げたり。荒馬が多ければ荒馬を勝たせ、小柳が多ければ小柳関が勝つ。早ふ銭を投んかイ」といふや銭は「小柳!」といひ「荒馬!」と呼びつゝばら/\と投る。投げ止まりしまで手を組みて離さず。いよ/\銭の多き方は美事の勝となり少なきは甚だしき負けとなる。この時見物の笑声はしばしがうちは止まず。もし銭を投ぐること多少なく双方同じき時は、引き分けで勝負なしなり。(p418)
「街頭生活者絵巻」(作者不詳)の一人相撲

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