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第五巻 28
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さし賣がゑん

    さし賣 火消屋敷のがゑんの
    内職なり殊 櫓下の商店 此さし
    賣に平素従ざれ ふ利益なる事あれ
    毎月一回位ひ 必すさしを求め置もの也

がゑんの差賣の外にさしの押賣をする者あり
さしを買ざれ 悪口暴言を吐きて他人に擯
斤さるゝを以て特意とす

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「さし」は「緡」という難しい字。銭緡に使う麻縄のことである。「がゑん」は「町火消しの鳶の者、ならず者、無頼漢」などの意で、漢字は「臥烟」を宛てる。そのさしを武家の中間ちゅうげんなどが内職に作り、押し売りをした。
図の「がゑん」は袖口・股の後に刺青があって、おそらく背中全面に刺青をしているのだろうと分かるように描かれている。(「擯斤」は「擯斥」、「特意」は「得意」)。

晴風『街の姿』189は、ほとんど同じ図柄で「さしうりのがゑん」であるが、その中に次のようにある。
がゑんの外にぶらいの者、火消屋敷のがゑんに擬して、さしのおし売を為ものあり。若し買ざるか又銭を呉され、悪口などして商家に迷惑をかける者、明治前までありたれど、今は絶て無に至りたり。
明治初期の「がゑん」が「銭サシ」と呼ばれて登場している資料を紹介します(ここ)。

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