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第五巻 31
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すつとこどつこい

すつとことつこい 弘化年間有名なる乞喰なり此者
小板を手遊の鉄槌にて叩き怒る如く笑ふ如く愚なる
言を罵りて、銭を貰ふ者なり而て此者ハ何事を
喋らすとも必ず終りすつとこどつこいといふ此者一端業を
終れ 銭を与としても客に仕舞なりと云ふて恵を受ず
謝絶すとぞ

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「一端」は「一旦」。「銭を与としても」は、「銭を与へむとしても」。

『世渡風俗図会』を見ていくと、個々人の能力と着想を生かすことで、乞喰世界に様々の「芸」が生まれてきたことを知ることができる。多くはそのまま消滅したのであろうが。
200年ほど経て現在は、「芸」がマスコミ・テレビ業界の重要な商品としてやりとりされる。貴重な資源として才能や着想がもてはやされる。現在の芸人たちの世界の根っこに、江戸時代の非人たちの豊穣な世界が原型として存在していたと考えられる。「河原乞食」という表現はそのことを指している。

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