画像をクリックすると、拡大する。

第六巻 19
 【前へ : 目次 : 次へ

     せりや

サア いくら。十銭。それから
いくら十弐銭。五厘。椎の實
いけない。こんな丈夫なシャツ
斯仕ませふ。最ふ一聲で
一枚丈賣升せふ サア 一聲
十五銭。小便だ。勝手に
しろ。最たった一聲。
十六銭。しどいなあ・・・・
負ませふ。安ひなあ――

◆-◆

“ウ冠に取”の異字体の「最」を使っている(?)。「最ふ」は、「もう」。

「小便だ」は語呂合わせで、「買わずに逃げる」の意。西澤仙湖『仙湖遺稿集』(非売品 大正9年1920 国会図書館がデジタル公開)に、「仙湖漫録」がある。その項目に「せうべん」がある。
せうべん 品物を買ふ約束をして中途にてやめるをセウベンといふ。是れはかわずは逃げる時必ず小便をするもの故、蛙のかわず買わずと國音相通ずるより言ひそめしなるべし。
西澤仙湖は「大供おおども会」の主宰者で、晴風もこの会に参加している。『仙湖遺稿集』には「人形雑考」と言う文章があり、その中に晴風は「清水晴風翁」として敬意をこめて引用されている。仙湖は晴風の13歳年下。

「椎の実」は分からないが、「シー として」声がない、の意か。

このせり屋は小型な照明を4台も使っている。このランプの実物(写真)を見たいものだと思って探しているが、不明。巻八-40「傘のせり賣」にまとめておいた。

◆-◆
 【前へ : 目次 : 次へ
inserted by FC2 system