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第六巻 38
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軽氣玉賣

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水に対する「アルキメデスの原理」と同じく大気中で浮力が生じる、ということが理解されるのは歴史的に中々難しかった。熱い空気や水素などが上昇するのは、それらが「軽さを持つガス」あるいは「浮力を持つガス」であると考えて「軽気」と言った。
そこから「軽気玉」や「軽気球」という語ができた。

「ゴム風船」という語の使用は意外に遅く、田山花袋『田舎教師』(明治42年 1909)に「護謨風船」がある。ゴム風船そのものは明治四年1872に売り出されているが、「玉紙鳶だこ」という名前だった(ウィキペディア「風船の歴史」より)。

『新聞集成明治編年史 全15巻』(国会図書館でデジタル公開)を見ていたら、内外新報(慶応四年1868閏四月二〇日)に英人ハルトリー氏が大阪の江戸堀二丁目で「医を以て業とす。かたはら舶来品をあきなひて」商売がうまいという記事の中に、次のような所があった。
ある時「ゴム」の笛を多く仕入れ、これに一種の気を込め口に栓ををなし、すが糸を付てこれを空中にあげ、糸の末を手に持ち繁華の町々を遊歩するに観る者群れをなし、金を出してこれを買はんと望む者多し、故に大に利を得たりと。
「ゴムの笛」というところに腑に落ちない点もあるが、ゴム風船の早い例ではないか。

なお、昭和時代までは水素ガスを入れて風船を浮かすのが普通だった。そのために、引火事故が絶えなかった。今は、ヘリウムガスが手軽に入手できるが、けして安くないですね。

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