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第七巻 29
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ふき矢

昔のふき矢 當れ 種々の
人形なとか出る仕掛にて今に
吹矢の化物の言残りあり其次
ゆて玉子を吹當るといふ
頗る興味のある遊戯なりしも
明治の時代となれ 利益の一
点張ゆへ人形なそ おろか
玉子に當るなとの またるきこと
にて 迚も吹矢を吹く客
なし其處て誰にも出来る
よう大福餅みかん等を
並列して是を吹せる趣向
なれ いかに下手な者にても
一杯(五本)の矢にて一位ひ
當らぬといふことなし されは
只買ふと同様にて外れの気遣ひ
なし併是も警察署にて露店にて
出来ぬ事 止られたれ 大道見せの
吹矢 今に絶たり

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[看板は「一流 ふき矢」。女性は座っていて、的の面は傾斜しているようだ。客は立って吹いたのであろう。「大道見せ(店)の吹矢」。

「今に吹き矢の化け物のいひ残りあり」と読ませるか。第四巻13「最中博奕」に「今に最中のはな張の称残れり」の「称残れり」と同じ使い方。「吹き矢の化け物」という慣用句があったと思える。江戸時代の吹き矢はカラクリ式で、いくつもある的(まと)を狙い、当たると「化け物」などが飛び出した。
それにしても、晴風はずいぶん力を入れて「吹き矢」に書き込んだものだ。

江戸時代の様子を伝える鈴木春信「吹き矢場」を見て下さい。

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