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第七巻 60
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かんかち團子

昔し景勝團子といへるもの
ありし其後かんかち團子と
改りし 杵の臼に當る音のカン
カチと聞ゆるに依る
なるへし 又明治にも
此かんかち團子を
賣る者あれとも
これは新に営
業にあらず昔
しとりし杵づかを
忘れかねたる
商売なりとぞ

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正徳年間(1711~16)、両国東詰の松屋三左衛門が「景勝団子」と言って売り出したが、上杉景勝かげかつの名とぶつかるというので、「飛団子」や「越後団子」に改名しさらに「かんかち団子」となったという(『日本菓子宝鑑』大正5年1916 p183)(国会図書館デジタル公開)。

木村荘八『私のこと』のなかに、カンカチ団子屋にいたづらをする話がある。
ある時ぼくがしょざいなさに中の間の窓からぼんやりこのドブ板を見てゐますと、雨がパラパラと来て丁度通りかゝつた、臼を車にのせたカンカチ団子屋が、暫時軒下に雨やどりをしてゐたけれども、なかなかやまないのを見て、荷物を置いたなり、すたすた尻っぱしよりで何処かへ駈けて行きました。得たりと、ぼくはすぐ外へ出て、その置きざりにしたカンカチ団子の臼の中へ、見るとすぐそこに犬の糞があつたからこれを入れて、杵でクタクタとついて、そのまゝ元の窓へ逃げ帰り、どうなることか、そつと覗いてゐました。
この後どうなったかは、青空文庫にあります、「私のこと」。

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