画像をクリックすると、拡大する。

第六巻 75
 【前へ : 目次 : 次へ

ヱキス光線めがね賣

ヱキス光線 皮肉を澄明とふめいして
骨筋血液等を見るめがね
なりといふ先手の平を灯にかざし
此めがねにて見れ 全く皮肉中の
黒き筋判然に見ることを
得るといふ重寳なる物が
わつか三銭にて求られる
といふ此眼かねを製
する 鶏の尾羽根の真を
薄く伸して手の平を見れ
ヱキスの如く皮肉中の黒筋が
明かに見ゆるといふ 如斯無造作
なるものも他人の心付かぬ先に発明せ
意外なる金儲となるなり斯て世の中
抜めなきを要すと或る人のいへり

◆-◆

「尾羽根の真」は「尾羽根の芯」、「如斯」は「かくのごとき」

W.C.レントゲンがX線を発見し、夫人の指輪が付いた左手の透過写真を撮影したのは1896年(明治29年)。そのニュースは瞬く間に全世界に広がった。この絵には年代が記載されていないが明治37年以前と考えてよいから(「清水晴風『世渡風俗図会』とは」の第3節参照)X線発見から6,7年の内に東京街頭で「ヱキス光線めがね」が賣られたことになる。
わたしも子供時代に近くの神社のお祭りで買ったことがあるので、昭和20年代にも売られていたことになる。

それにしても、晴風は字数を費やして熱心に説明している。

◆-◆
 【前へ : 目次 : 次へ
inserted by FC2 system