き坊の近況 (2017年7月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

7/1-2017
<原子力機構>初の核燃再処理工場廃止を申請(東京新聞)

日本原子力研究開発機構は30日、原子力規制委員会に対し、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す国内初の再処理工場「東海再処理施設」(茨城県東海村)の廃止措置計画を認可申請した。作業終了までの約70年間で総費用が約1兆円に上ると初めて公表。当初試算の約8千億円より2千億円余り膨らんだ。国費で賄われる。

東海施設は1977年に再処理を開始、老朽化などのため2014年に廃止が決まった。

高レベル放射性廃液や廃液をガラスと混ぜた固化体約270本を保管中。廃止により、低レベル放射性廃棄物も発生すると推定されるが、いずれも処分先は決まっていない。(写真も 東京新聞6/30)


日本原子力研究開発機構の東海再処理施設=1997年茨城県東海村

東海再処理工場がやってきた使用済み燃料からプルトニウムを取り出すという危険な作業が、いかに無駄なものであったかは、今述べない。その工場が老朽化して廃止処理するのがどれほど大変なことか、想像の外だ。現在の予定で70年間を要し、費用は約1兆円だという。当初予算が8000億円で2000億円膨らんだという。今後、どれだけ期間が延び、費用が膨らむか、関係者は考えたくもないと思っているだろう。(この計画の詳細はここ、PDF)

上のPDFファイル(2016年9月作製)にある「ロードマップ」を見ると、例えば「高レベル放射性廃棄物の処理施設」という項目では、「約30年後」までに「固化体搬出」となっている。この搬出先が決まっていないのである。
このロードマップの中では、「廃棄体の施設整備」を10年後~30年後の間に開始するようにしてあるが、それの申し開きのために、つぎのような苦しい弁解が書いてある。
廃棄体に求められる要件の検討に処分場の情報が必要なことから、処分時期の見通しを踏まえて廃棄体化施設の設備整備をこの時期(10~30年後)とした。
普通の言葉で言えば、「処分場ができるのかどうか分からないので、廃棄体を造る設備は10~30年後に先延ばして計画しています」ということ。
これらすべては、国費を使って行うのである。我が国が誤った原子力政策のために被っている被害が総体ではどれほどのものになるか(金額だけでなく、国土や人的被害、才能の無駄遣い)、計り知れない。

7/2-2017
「15メートル津波08年に認識」検察役 「長期予測信頼性ない」弁護側 福島事故 東電元会長ら無罪主張(東京新聞)

2011年の東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣の3被告の初公判は30日午後も東京地裁(永渕健一裁判長)で続いた。検察官役の指定弁護士は「事故の3年前、長期予測に基づき、東電は高さ15・7メートルの津波の試算を得ながら対策をしなかった」と主張。弁護側は「予測に信頼性はない」とし、津波は予測できなかったと反論した。

永渕裁判長は「事案の専門性や複雑性から、全体の審理計画を策定するには時間を要する」と述べ、公判は長期化する見通し。

指定弁護士は冒頭陳述で、東電は2008年3月、国の地震調査研究推進本部(推本)の長期予測に基づき、福島第一に最大で高さ15・7メートルの津波が押し寄せるとの試算結果を得て、敷地東側全面を囲う海抜20メートルの防潮堤や、沖合の防潮堤の建設を検討していたことを明らかにした。
さらに、3人が出席した09年の会議で、当時原子力設備管理部長だった吉田昌郎(まさお)・元福島第一原発所長=13年死去=が「14メートル程度の津波が来ると言っている人がいる」と発言したことも示し、遅くともこれ以降は津波対策を取るべきだったと指摘。「3人が費用と労力を惜しまず、義務と責任を果たしていれば事故は起きなかった」と結論付けた。

一方、弁護側は冒頭陳述で「(14メートルは)疑問視される意見として述べられていた。発言を聞いたからといって津波を予見できたとは言えない」と反論。また1966年に福島第一が設置許可されて以降、国の安全設計指針に基づき「安全性は確保されていると評価されてきた」と反論した。
他の被告は、武黒一郎(71)、武藤栄(67)の両元副社長。福島原発告訴団が12年、勝俣元会長らを告訴・告発。東京地検は2度、不起訴処分としたが、検察審査会が3人を起訴すべきだと議決し、16年、指定弁護士が強制起訴した。次回期日は未定。

◆「想定外」繰り返さぬ機会 原発取材班キャップ・山川剛史

福島原発事故の発生当初から取材を担当する中で、久しぶりに東京電力の元経営陣たちが「予測できなかった」「想定外」のせりふを繰り返すのを聞いた。
だが、東電は何度も自らの原発で、非常用発電機や分電盤などがある建屋地下への浸水事故を起こしている。安全対策の担当幹部だった故・吉田昌郎元福島第一所長は「あれでものすごく水の怖さが分かった」と語っているが、東電は具体的な対策を講じていない。

傍聴しながら、その事実を思い出した。もし東電が原発の巨大リスクを十分認識し、電源設備の移設、防水、多重化のいずれかの対策を講じていれば、たとえ「想定外」の大津波に襲われようと、福島の原発事故は起きなかったか、事故の規模が違ったはずだ。

政府や国会の事故調査委員会は、事故原因を解明しないまま活動を終了。福島第一事故は収束にはいまだ遠く、数多くの被害住民は生活を取り戻せないでいる。政府や電力各社は、住民避難や核のごみの問題を解決せずに、各地で原発再稼働に突き進んでいる。
 そんな今、東電公判は、単に元幹部三人が有罪かどうかを争うだけでなく、大きな自然リスクにさらされる日本で二度と「想定外」を繰り返さない重要な機会となる。(東京新聞7/1)

山川剛史氏のコメントは、わたしも同感だ。巨大津波を予想する学者がいたことは否定しようがないし、明治三陸大地震で大津波の災害があったことも歴史的事実だ。15m余の津波を防ぐ堤防を築くのは先延ばししたとしても、地下にある非常用電源を高台へ移設すること、電源の防水をはかること、電源を多重化することなどを実現するのは困難でなかったはずだ。

本欄が元東電社員・木村俊雄氏を最初に取りあげたのは2011年11月30日である。氏は1991年にフクイチ1号機のディーゼル発電機室に浸水事故があり、発電機がダウンしたとき、現場にいた。氏は上司に「この事故は、原発は津波対策をする必要があることを意味している」と意見を述べたという。そのあと退職してからスマトラ沖地震(2004年12月)を機会に、ミニコミ誌(05年1月)に「原発では津波が炉心溶融を導く」ことを述べる投稿をしている。(本欄がそこに掲げている YouTube はリンク切れなので、こちら東京電力を辞めたワケ(1)の11分過ぎから。同(2)に続いている。)

311大震災の前、東電が原発の安全対策に怠慢であったことは罰せられてしかるべきである。


7/4-2017
ガス発生確認、被ばく事故で実験 日本原子力研究開発機構(東京新聞)

日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)の作業員被ばく事故で、機構は3日、放射性物質と、接着剤として使われる「エポキシ樹脂」を交ぜる再現実験をした結果、ガスが発生した一方、樹脂が放射線で分解されて量が減ったことが確認されたと文部科学省に報告した。事故では放射性物質を包んだビニールバッグが膨らんで破裂し、中の放射性物質が飛散した。

機構の児玉敏雄理事長が同日、文科省に「事故の有力な要因だ」と報告。機構は既に、事故でも粉末試料がエポキシ樹脂で固められ、ガスが発生した可能性があると同省に報告しており、再現実験をしていた。(東京新聞7/3)

「エポキシ樹脂」が放射線で分解しガスが発生した、ということが確かめられた。ビニール袋の劣化などの原因も考えられるので更に検証実験を行うという(毎日新聞7/4)。

内部被曝をした5人の作業員の内3人が再入院したというニュースがあった。
被ばく作業員3人、3回目の入院 茨城県大洗町・原子力機構

茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」の被ばく事故で、量子科学技術研究開発機構は3日、内部被ばくした作業員5人のうち3人が千葉市内の医療施設に3回目の入院をしたと発表した。全員容体に大きな変化はないという。

量子研によると、5人はこれまで2回入院し、放射性物質の体外への排出を促す薬剤を投与した。このうち3人はさらに継続的な治療が必要と判断し、入院して薬剤の投与をする。残り2人は尿などから検出される放射性物質が非常に少なくなっており、入院と薬剤投与は不要と判断した。尿などの検査は続ける。
(福島民友7/3)
「放射性物質が非常に少なくなっており」というのはどの程度のことを指しているのか、数値がまったく示されていないのは困ったものだ。入院した3人はどうだったのか、も気になる。そもそも、この5人の最初の入院の時のニュースでも、「尿から微量のプルトニウムを検出」(朝日新聞6/19)などという報道の仕方で、数値を示していなかった。
もともと尿中のプルトニウムは「微量」であるのだが、それが長期間続くことが問題なのである。本欄 6月14日に記しておいたが、尿中の放射性セシウム6ベクレル/リットルが15年間続くと、膀胱がんになるという。


トップページの写真を、ハリサシガメ幼虫からチョウ目ドクガ科チャドクガに替えた。


7/5-2017
福島第1 「冠水させず」柱に…溶融燃料取り出し工法(毎日新聞)

東京電力福島第1原発1~3号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し技術を検討している原子力損害賠償・廃炉等支援機構が、3基とも原子炉格納容器を水で満たさない「気中工法」を柱に取り出しを進める方針を固めたことが、関係者への取材で分かった。近く公表する「戦略プラン」に盛り込み、政府・東電はこれを基に取り出し方針を決め、今夏にも廃炉工程表の改定も検討する。

これまで同機構は格納容器を水で満たす「冠水工法」も並行して検討してきた。冠水工法には、水によって燃料デブリなどから出る放射線が遮られ、作業員の被ばくを減らせるメリットがある。しかし同機構は、格納容器の損傷部をすべて補修して格納容器の上部まで水を満たすのは難しいと判断。当面は気中工法を軸に、格納容器内にロボットアームを入れてデブリを取り出す方法を優先させることにした

ある機構関係者は「冠水の選択肢は捨てたわけではないが、技術開発のリソース(資源)を重点的に配分する必要がある」と話す。気中工法では、取り出しの際に細かな放射性物質が舞い上がらない対策が必要となる。このため、水を掛け流しながらロボットアームでデブリを切り取って回収する方法を検討している。

1~3号機はそれぞれ事故による破損状況が異なる。また、東電による原子炉内部の調査でもデブリは直接観察されておらず、デブリの形状や分布状況はよく分かっていないため、号機ごとに具体的な取り出し方法を今後検討する。1号機では、溶け落ちた核燃料の多くが圧力容器を抜けて格納容器底部に落ちているとみられており、格納容器の横からロボットアームを入れて取り出す方法を中心に検討している。(図も 毎日新聞7/5)

「格納容器の損傷部をすべて補修すること」をあきらめた、ということのようだ。そのことで、格納容器がどのように損傷を受けたのかが十分に解明されないままに終わってしまうことを危具する。それはフクイチ事故の原因を明らかにすること結びつくからだ。地震による損傷、水素爆発による損傷、その他の損傷。

気中工法は(ロボットでも)視野が効き作業がしやすくなるが、水に遮られないので燃料デブリからの強烈な放射線を直接に(ロボットが)受けながらの作業となる。外部で操作する作業員の被曝も大きくなる。

上の記事中でも触れられているが、気中工法は細かい粉塵が舞い上がり、冠水工法に比べて外部へ漏洩する可能性が大きくなる。長期間にわたる工程であり、そういう点の行き届いた手当てが大切になる。


7/6-2017
使用済み核燃料の再処理事業費13.9兆円 安全対策費膨らむ (日本経済新聞)

原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理について、青森県六ケ所村で進める総事業費が現在の見込みより1.3兆円膨らみ、13.9兆円に上る見通しとなった。新規制基準に適合させるための安全対策工事が増えることが主な理由。国が掲げる核燃料サイクルの費用が、さらに膨らむことになる。

認可法人・使用済燃料再処理機構(青森市)が明らかにした。1.3兆円のうち、耐震工事や緊急時対策所、貯水槽の新設など新規制基準に適合させる安全対策工事が7000億円増える見通し。同工事費は2015年度までに540億円を支出済みだが、総額は約7500億円に増えることになる。また、このほかの安全対策工事などで1.1兆円増える。一方、経営効率化で5000億円を削減し、差し引き総事業は1.3兆円増えるとした。

再処理工場は当初、1997年の完成予定で、建設費は7600億円を見込んでいた。だが、その後、技術的な課題の解決に時間がかかり、完成時期を20回以上延期してきた。それに伴い、建設費は2兆1900億円に膨らんでいた。技術的な問題はほぼクリアしたものの、2011年の東日本大震災と原発事故を受けた新規制基準への対応で今回さらに膨らみ、建設費は3兆円を超える可能性もある

同機構から再処理の委託を受けている日本原燃(青森県六ケ所村)は再処理工場の新規制基準に基づく安全審査を14年に原子力規制委員会に申請した。現時点の完成時期は2018年度上期を見込んでいるが、安全審査が長引いており、厳しい状況になっている。

また、六ケ所村で建設中のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の建設費も当初の1.2兆円から2.3兆円に膨らむ見通しも発表した。今回、具体的な設計が固まり、改めて工事費を精査した。

使用済燃料再処理機構は核燃料サイクル事業の主体を見直し、国の関与を強める「再処理等拠出金法」の施行に伴い、従来の日本原燃に代わる事業主体として16年に設立された。実際の再処理業務は日本原燃に委託する。

核燃料サイクルを巡っては6月末、日本原子力研究開発機構が東海再処理施設(茨城県)の廃止に計約1兆円かかるとの試算をまとめており、巨額の費用を要することが明らかになっている。(図表は東奥日報 日本経済新聞7/4)

今朝のNHKは、アレバ社が製造した関西電力向けのMOX燃料を積んだ専用船が、フランスのシェルブール港を出たと報じている。機密保持のため日本へのルートは2週間後に発表するという。日本までは2~3ヶ月かかる。このMOX燃料は5月に再稼働したばかりの高浜原発4号機で使用される。
福島第一原発の事故のあと、各国で原発の安全対策の強化が求められて原発の新規建設が難しくなるなか、アレバは厳しい経営状況が続いていて、広報担当者は「われわれは今後も日本にMOX燃料を提供し続けられると期待している」と話しています。(NHK7/6)
世界的に原子力産業が退潮するなかで苦しい経営状態となっているアレバ社にとって、日本が原発再稼働を行うことで“ありがたいお客さん”となっている、というわけである。
これらすべての原資が、われわれの税金と電気料金であることを忘れないようにしよう。


トップページの写真を、チャドクガから甲虫目ゴミムシダマシ科コスナゴミムシダマシに替えた

7/7-2017
原子力機構被ばく事故1カ月 核物質4500点を不適切管理(東京新聞)

日本原子力研究開発機構が長期間、核物質の容器4500個超を不適切に管理していたことが、原子力規制庁への取材で分かった。機構の被ばく事故は6日で発生から1カ月。こうしたいいかげんな管理体制が事故の背景となった。高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉作業も担うことになっている機構。信頼される組織となる道は遠い。

子どもが使ったおもちゃを出しっぱなしにしているのと同じ。原子力の専門家集団としてほかの事業者の模範となるべきなのに、極めてずさんだ」。規制庁の担当者は機構を批判する。

核物質を入れた容器は本来、放射線対策や臨界防止対策が整った、建屋内の専用の貯蔵場所で保管する必要がある。しかし機構は、事故のあった「大洗研究開発センター」(茨城県)など4カ所で「長いもので35年以上」(規制庁)も貯蔵場所の外に放置していたという。

ずさんな管理が行われていたのは、同センターと核燃料サイクル工学研究所(茨城県)、原子力科学研究所(同)、人形峠環境技術センター(岡山県)。不適切管理の核物質容器は計4571個に及んだ。

規制庁による昨年12月までの保安検査で指摘を受け、改善対策が大洗の施設でスタート。対策を進めていた今年6月、今回の事故が起きた。規制庁の立ち入り検査で、被ばくした作業員の体表面を洗い流す除染シャワーが故障、除染に時間がかかった可能性も出ている。

機構は今後、数十年かかるとみられているもんじゅの廃炉作業も担う予定。原子力資料情報室の伴(ばん)英幸共同代表は「安全に廃炉作業を行えるとはとても言えない組織。極めて不安だ」と指摘した。(東京新聞7/6)

5日に開かれた規制委員会の会合では、核燃料物質が入った袋が破裂する可能性が検討されていなかったことや、長期間、核燃料物質が入った容器の内部を確認していなかったにもかかわらず、経験のない作業を行う際に必要な計画書が作成されていなかったことなどが報告された。作業の管理体制を定める保安規定に違反している可能性がある。
これについて、田中俊一委員長は「プルトニウムを扱う際には、慣れや根拠のない判断があってはならず、安全確保のための知識や心構えができていない」と指摘した(NHK7/5より)。

本欄の「国内最悪の内部被曝事故、またもずさん管理」(朝日新聞6/8)など、事故直後に指摘されていたことが、次々に確認されているということだ。


7/9-2017
ヒアリさらに100匹超 東京港、同じコンテナから(東京新聞)

環境省は7日、東京港の大井ふ頭で南米原産の強毒のヒアリ1匹が見つかったコンテナ内で、さらに100匹超が見つかったと明らかにした。いずれも働きアリとみられ、その場で殺虫剤をかけて駆除した。

環境省によると、東京港のヒアリはコンテナ内のベニヤ板で見つかった。板のすきまにほかにも潜んでいる可能性が高いとして、毒入りのえさをコンテナ内に置くなどの対応を取った。

このコンテナは中国と香港を経由し、6月27日に大井ふ頭で陸揚げされた。30日には千葉県君津市に陸送され、中身が取り出された。コンテナが大井ふ頭に返却された後の7月3日、内部を点検していた業者がヒアリ1匹を見つけていた。環境省は千葉県や君津市、運送業者などと協力し、君津市でも調査する。

東京都や環境省によると、大井ふ頭の外周部や緑地帯も調査したが、ヒアリは見つからなかった。周辺2キロにわなを設置するなどして警戒を強める。(東京新聞7/8)

兵庫・尼崎でヒアリが発見されたのは5月20日。これが国内で初認だった。そのあと神戸港、名古屋港、大阪港でみつかり、東京の大井埠頭で7月4日1匹が発見された。上のニュースはその続報。いずれの場合も中国からの貨物船のコンテナ内、またはその付近で見つかっており、中国からヒアリが侵入しようとしている状況であることは間違いない。

ヒアリは南米原産であるが、今は米国南部で高い濃度で繁殖している(米国南部への侵入は1942年とされる)。台湾が2004年、中国南部が2005年に侵入されている。ウィキペディアの地図「ヒアリの分布」を拝借しました。
ヒアリは2~6㎜とかなり小さい赤アリで、尻に毒針を持ち刺す。ただし針は通常は見えない。
日本で普通に見かける赤アリたちはほぼ同サイズで、ときに刺すものもあるが、ヒアリに比べれば問題にならない。ヒアリのような外来生物の侵入に対して抵抗するのは、同じような環境で生活している虫たちなので、在来種をむやみに殺さないことは、とても重要

環境省のパンフレットPDF「ストップ・ザ・ヒアリ」はお勧めです。ブログ類では「クマムシ博士のむしブロ」の『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る(7/4)が本格的です。
Twitterで「ヒアリ警察 (@_Solenopsis)」が面白いですね(ここ)。アリの専門家がやっていると思いますが、おふざけにも軽く応えていて、つい、読んでしまう。


7/11-2017
原子力規制委 「東電の主体性見えず」新社長ら聴取(毎日新聞)

原子力規制委員会は10日、先月就任した東京電力の川村隆会長と小早川智明社長を臨時会合に呼び、事故を起こした福島第1原発の廃炉や、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機の安全対策に取り組む姿勢をただした。廃炉作業について小早川社長は「福島の責任を全うすることが原点」と述べたが、規制委の田中俊一委員長は「東電の主体性がさっぱり見えない」と厳しく批判した。

柏崎刈羽原発6、7号機の審査は終盤を迎えているが、規制委は東電が重大事故を起こしたことを重視し、経営陣から安全に対する考えを聞く異例の場を設けた。田中委員長は、福島第1原発で放射性物質のトリチウムが残った処理水がたまり続けていることなどを挙げ「福島県民と向き合っていない」「福島の廃炉をやりきらなければ、柏崎刈羽原発を運転する資格はない」と批判した。

小早川社長は就任後、あいさつのために福島県内の各自治体を訪問したことなどを説明し、「地元に寄り添って仕事を続ける」と話したが、田中委員長は「口先だけにしか聞こえない」として、改めて福島第1原発の廃炉に対する基本的な考えを文書で示すように求めた。(毎日新聞7/10)

「口先だけにしか聞こえない」って、原子力規制委はどうなんだよ。

東電は(日本の電力会社は)半分国策会社で、電気料金の中に原発維持費を潜り込ませている。東電のフクイチ廃炉には膨大な税金が使われる。彼らは一種の社会主義の会社であって、資本主義的な自立性を知らないのだ。自立性とは“自分の足で立つ”ということだ。言い換えれば、東電の経営者は一種の国家官僚のようなものなのさ。「口先だけ」でいいんだよね。

ところで、肝心の日本政府の腐敗ぶりは末期的だ。政権の私物化だよね。それを「記憶にありません」、「書類は破棄しました」で済ませようとしている。前川・前文科省事務次官の分かりやすい平明な物言いが光ってしまっていた。国民はだれが本当のことを語っているか分かっている。


7/12-2017
フランス・ユロ環境相、2025年までに17基の原発を廃炉にすると宣言。「原発比率75%⇒50%」目標を着実に実現。フランスの原発政策の大転換に(RIEF)

フランスのニコラス・ユロ環境相は、2025年までに国内の原発を17基廃炉にすることを言明した。フランスの電力の75%は原発の電力で供給されているが、オラント前政権が安全性の理由から、比率を50%に下げる方針を示していた。ユロ環境相は「(50%)目標を実現するには多くの原発を停止しなければならない」と述べた。

ユロ環境相はRTLラジオで発言した。同氏は、エドゥアール・フィリップ 首相の決断として、前政権の公約の具体化に言及した。環境相個人の意向ではなく、内閣の判断であることを強調した。「目標達成のためには、17基前後の原発を停止することになる」と見通した

 フランスは現在、58基の原発が稼動している平均稼動期間は30年を超えている。このうち15基は35年を超えているという。この中には、ドイツとの国境沿いに設置され、安全性の観点からドイツがこれまで廃炉を要求してきたフランス最古(1977年設立)のフェッセンハイム(Fessenheim)原発も含まれる。

フランスは原発について「40年稼動」を原則としていることから、このままでも、2025年までにはこれら15基は廃炉対象となる。それに数基を加えることになる。ただ、前政権の環境相だったセゴレーヌ・ロワイヤル氏は、稼動期間に達した原発の「10年延長」を宣言していた。

フランスは1973年の石油危機でエネルギー不足に見舞われたことから、エネルギー自給を目指して原発中心の政策を展開してきた。これまでに投じた原発の建設費だけで3300億㌦(36兆6300億円)にのぼる。同国の原発産業は20万人以上の労働者を抱えている。

仮に原発を全廃して再生エネルギー発電に切り替える場合、電力網の改善費用を含めて、2170億ユーロ、さらに廃炉費用が850億ユーロかかると試算されている。一方で、原発政策を継続する場合も稼動期間の延長費用に1000億ユーロ、廃炉原発を新規原発に置き換える費用はさらに2500億~3000億ユーロが必要とされる。どちらにしても膨大なエネルギー転換費用がかかることになる。(環境金融研究機構RIEF7/11)

農業国フランスは、エネルギーの分野でも「自給」を旗印にしている。石油危機のあと原発大国の路線を歩んできたが、ここにきて大きく舵を切り直そうとしている。

フクイチ事故(2011年3月11日)のあと4ヶ月後に、ドイツは「原発を2022年までに全廃する」とし、脱原発路線を法制化した。

フランス・ドイツのEUを代表する2大国が脱原発に踏み切ることの意味を、日本はどのように受け止めているのか。日本は、ただ「官僚的惰性」で原発再稼働に熱心であるように見える。放射性廃棄物の捨て所もない地震大国の島国であるのに。


トップページの写真を、コスナゴミムシダマシからハチ目ヒメバチ科ムラサキウスアメバチに替えた。

7/13-2017
【社説】 核のごみ 増やさないのが大前提(東京新聞)

核のごみの最終処分。政府は“有望地”すら示せない。福島の事故を起こして省みず、この上ごみを増やしてしまう再稼働にはひた走る。そんな日本の「原子力」への強い不信が根にあるからだ。

原発再稼働が“なし崩し”に進んでいると、不安の声が上がっている。広域避難計画、立地地域以外の地元同意、そして核のごみ問題の“三点セット”を置き去りに、安全よりも電力会社の収益改善最優先で、事が進んでいるかのようにも映ってしまう。

中でも核のごみ、とりわけ、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しては、この10年、ほとんど進展が見られない。高レベル放射性廃棄物とは、使用済み核燃料を再処理、つまりリサイクルしたあとに出る、極めて危険な廃液のことである。

原発を持つ電力会社でつくる原子力発電環境整備機構(NUMO)という事業主体、安全な容器に封じ込め、地盤の安定した地中に埋設――という処分方法は決まっている。

だが、肝心の処分地を決められない。長年公募を続けていても、受け入れを申し出る自治体は現れない。そこで政府が前面に出て、「科学的有望地」を示すマップを提示した上で、処分地選定を主導する方針に切り替えた。
しかし、いまだマップは示せていない。「有望地」という表現では、そこに住む人たちの強い反発を招くだろうからと、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」に名称も改めた。

政府は5月から6月にかけ、新たな処分地選定方針の説明会を全国の主要都市で開催した。予想どおり、会場からは、地下水や地震の影響、政府による一方的な押しつけを懸念する声が相次いだ。
学識者がいくら安全を強調しても、不安は次々わいて出る。

福島の事故を「想定外」と決めつけ、事故処理や被害の補償もままならない。その上、動かせば核のごみがまた増えることを分かっていながら、再稼働には前のめりな日本の原子力行政と、それを支えた“科学”に対する不信はまったく拭えていない。

処理困難なごみは出さない――。発生抑制こそ、ごみ問題の基本である。核のごみも同じこと。

再稼働をいったん棚上げし、核のごみを増やさない状態にした上で、地震国日本における原子力のあり方そのものを、国民と徹底的に話し合う――。そんな覚悟がない限り、応募者は現れない。(東京新聞7/12)

「再稼働をいったん棚上げし、核のごみを増やさない状態にした上で、地震国日本における原子力のあり方そのものを、国民と徹底的に話し合う」というこの「社説」は、考えられる唯一の正解だろうと思う。

その上で、わたしは問題点を二つ挙げておきたい。
第1は、使用済み核燃料の再処理(核燃サイクル)は止めるべきであるということ。もんじゅが廃炉となったこと、ガラス固化体製造工場はいつまでも完成せず運転できていない事実。やがて、これら諸施設の廃炉・廃棄のために何十兆円という先の見えない税金をつぎこまなければならない。数十年先にわれわれの子や孫の時代やさらにその先になって、“資金が続かないから放置しよう”という廃炉処理なかばの原子力施設が国内に幾つもできてしまうのではないか。我が国が人口減少期に入っていることを忘れてはいけない。(旧ソ連の核施設がロシア各地に放置されていることを想起する。)

第2は、地層処分という方式自体の安全性は、だれも保証し得ないことだ。日本列島は世界的な地震多発地帯であり、地下水が豊富で急峻な山がちのところだ。地層処分は数万年間の安全な管理が必要である。その間にもし高濃度の放射性物質が流れ出し地下水を汚染することになれば、日本列島の地下水汚染という恐るべき事態となる可能性がある。地下水脈はだれも把握できていない(福島第一原発の地下数十mの地下水の振る舞いさえ、把握できていない。地層処分する数百mの地下で、放射能汚染された地下水がどのような振る舞いをするのか、誰にも分からない)。
それ故、地層処分をやめて地表近くで保管して、いつでもアクセス可能にすべきだという代案が提案されている(日本学術会議9/11-2016)。


7/15-2017
東電、トリチウム水は海に放出へ 川村会長が明言、漁業者ら反対(東京新聞)

東京電力福島第1原発で高濃度汚染水を浄化した後に残る放射性物質を含んだ処理水を巡り、同社の川村隆会長が13日までに報道各社のインタビューで「(東電として)判断はもうしている」と述べ、海に放出する方針を明言した。処理水はトリチウムを含み、第1原発敷地内のタンクに大量に保管されているが、風評被害を懸念する地元の漁業関係者らが海への放出に反対している。

東電の経営トップが公式の場で海洋放出に言及するのは初めて。トリチウム水については、有識者による政府の小委員会が現在、海洋放出を含めた処分方法を絞り込む議論を続けており、川村氏の発言は波紋を広げそうだ。(東京新聞7/14)

東電首脳部の新体制は6月に発足したが、まず小早川智明社長の大失言が6月27日、福島訪問中に起こった。
「(双葉町では)一部避難が解除された地域があるので、そちらに帰還してもらえるようしっかり取り組みたい(福島民報6/28)
記者からすぐ「双葉町で帰還できている人は誰もいませんよ」と指摘された。双葉町は全面積の96%が帰還困難区域で、沿岸部北側の避難指示解除準備区域を含め全域で避難指示が続いている。“予習”もちゃんと出来ていなくて、大恥をかいた。そのあと、挨拶回りが「失言お詫び廻り」になった。

それに続く川村新会長の、突然の「海へ放出」発言である。東電としては放出方針をすでに判断している、と言ってしまったものだから、地元は爆弾をくらったのと同じで、大騒ぎとなった。
その後、躍起になって火消しにつとめているようだが、要するに原子力規制委の田中委員長が「トリチウム水は海に放出するしかない」と何度も言明しているので、川村会長はその尻馬に乗って「東電としての判断はもうしている」と簡単に言ってしまったもののようだ。この人は問題の難しさをまったく理解できていないまま会長になってしまったのである。

福島県漁連はさっそく発言の撤回を求める抗議文を送った(NHK7/14)。東電は「会社として決めたことはない」と発言内容を否定しているが、川村会長の記者会見の予定はないという。
トリチウム水の海洋放出を巡り、吉野正芳復興相(衆院福島5区)は14日「福島県の漁業者をこれ以上追い詰めないでほしい」と述べ、全面的に反対する考えを明らかにした(河北新報7/15)。

東電首脳のお粗末さ、東京にいて現地を見下ろしているにすぎない“官僚型”の首脳部であることがバレバレである。

なお、トリチウム水の海洋放出に関しては、(1) トリチウムのような低濃度放射性物質を日常的に長期間体内に取り込むことのリスク、(2) 汚染水を処理した「処理水」には、トリチウムの他に処理しきれなかった低濃度の多様な放射性物質が残留していることも大いに問題である。
原子力規制委が「海洋放出には何の問題もない、世界中の原発でやっていることだ」と言っているのは、彼らが原発推進のための機関であるから、当然なのである。(1)、(2)のような疑問を持ち始めたら、原発の運転を止めるしか解決法がないことに気付くのである。


トップページの写真を、ムラサキウスアメバチからハエ目ハナアブ科アズチグモとナガヒラタアブに替えた。

7/17-2017
大間原発「建設諦めろ」と集会 函館市民も参加(四国新聞)


大間原発の建設反対を訴えてデモ行進
する参加者=16日午後、青森県大間町

電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発に反対する集会が16日、同町で開かれ、雨が降る中、県内や北海道の市民ら約400人(主催者発表)が「建設を諦めろ」などと訴えた。

集会は2008年から毎年開催し10回目。大間原発から約23キロにある北海道函館市の市民団体「大間原発訴訟の会」が工事差し止めを求めた訴訟は、函館地裁で6月に結審した。会の竹田とし子代表(68)は「子どもたちに危険なものを残さない一心で反対してきた。何としても止めなければいけない」と声を上げた。(四国新聞7/16)

このニュースは共同通信が配信しているもの。全国の多数の地方紙がこのニュースを掲げている。そう大きなニュースとは言えないが、地方紙のレベルで伝わっていることを、雨中デモに参加した皆さんも知って欲しい。
「四国新聞」は香川県の「県紙」といえるような歴史のある新聞。創刊から120年以上経ているそうだ。今朝わたしがこの新聞を選んだのは、写真のダウンロードを許しているから。近頃は写真だけでなく、記事のコピーさえ許さないWeb上の新聞も増えてきている。困ったことだ。

本欄は6月3日に「北海道新聞」を取りあげている。函館市のふるさと納税で「原発訴訟」の指定が増えているというニュース。その後の情報としては、「(6月)9日までに訴訟費用目的だけで488件1209万6000円」(日刊スポーツ6/12)。
大間原発建設反対に関心を持つ人が多いこと、ことに函館市が工事差し止めを求めて訴訟を起こしたことへの支持が増えていることがうかがえる。


7/18-2017
福島で「サルの被ばく」状況報告 霊長類学会大会で研究結果(福島民友)

国内の研究者が参加し、福島市で開かれている第33回日本霊長類学会大会第2日は16日、震災被災地のニホンザルの放射線被ばくによる健康影響や生態変化に関する研究結果が発表された。

日本獣医生命科学大の羽山伸一氏らでつくる研究グループは、福島市の野生ニホンザルの被ばく状況を調査した結果を報告。青森県に生息するサルと比べて白血球や赤血球の数が少なく、一つの可能性として放射線の影響が考えられるとした

東北野生動物保護管理センターの宇野壮春氏は相双地方に生息するサルの生態変化を報告した。福島第1原発事故後、民家脇の柿などを求めて群れが山から人家近くまで移動したようだが、群れの頭数が急激に増えたという状況は確認できないとした。

最終日の17日は、福島市のコラッセふくしまで人類学関連学会協議会との合同シンポジウムなどが行われる。(福島民友7/17)

今のところ、この記事しか報道がない。もう少し詳しい記事が出るのを待ちます。

なお、2013年3月30日に東京大学で行われた「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)の東京経済オンライン記事がWeb上に残っているので、そのときの羽山伸一氏の講演「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」の要約記事を読むことができます(ここの4,5頁)。その一部
特に気になったのが2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)。汚染レベルと相関するように白血球の数が減っている。造血機能への影響が出ているのではないかと思われる。(羽山教授)


7/19-2017
21年前に袋膨張や容器破損の異常 原子力機構被曝事故(朝日新聞)

茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで作業員5人が被曝した事故で、原子力機構は18日、ビニール袋が破裂して放射性物質が飛散した保管容器について、21年前にも袋の膨張などの異常が確認されていたと発表した。原子力機構は当時、袋の交換は行ったが、同様の状況で保管を続けたという。こうしたことが、今回の事故につながったとみられる。

原子力機構は事故が起きた保管容器について、1991年に放射性物質を入れてから26年間、中は点検していないと説明していた。だが、事故の原因究明のために保管履歴を調べたところ、新たに21年前の点検記録が見つかった。それによると、袋の膨張のほか、放射性物質を入れていたポリ容器の破損も確認されていた

点検は事故が起きたものを含む63個の保管容器を対象に、96年に行われた。そのうち、23個で袋の膨張や変色、ポリ容器の変色などの異常が確認された。いずれも新しいものに交換し、保管を続けたという。

原子力機構は「当時、原因分析がされたり、再発防止策がとられたりしたかどうか今のところ確認できていない」としている。(朝日新聞7/18)

原子力機構の「プルトニウム内部被曝」事故は、次々と機構の不手際が明らかになってくる。事故が起こったのは6月6日のこと、被曝者が5人出た(本欄6/7)。ところが7日の昼に、一人の肺から22000ベクレルのプルトニウム239が検出されたというニュースが流れた。異常なほどの深刻な内部被曝である。
ビニール袋が破裂した事故であったことが分かってきた。機構は「破裂は想定外」だと発表した。粉末状のプルトニウムを扱うのに密閉型の箱(グローブボックス)を使用しておらず、床に粉末が散乱している状態の室内で5人は数時間も待機していた、という。

5人が搬送された放射線医学総合研究所(千葉市)での再測定によると、体内のプルトニウムは検出されなかった、別のアメリシウムが検出された人があった、など当初の被曝調査と異なる結果が発表された(6/12)。当初の測定の際に、体表面の放射性物質をぬぐい取る処置が不十分だったのではないか、との推測が示された。

事故から一週間近く経過して、過去に原子力機構の別の施設で「袋が膨れている」ことなどが見つかっていたことなどが分かってきた(NHK6/13)。どうやら、機構が当初述べた「想定外」の事故というのは、根拠のない責任逃れの言葉だったのではないかという疑いが出てきた。

内部被曝が心配される5人は6月26日までに全員が退院した。急性の深刻な問題が生じなかったということは幸いであったが、こんご長期にわたる観察や薬剤投与などが必要だろうという。
一方、原子力機構の全国8カ所の施設で、今回の事故を起こした「大洗研究開発センター」と同様の、極めてずさんな放射性物質の管理実態が明らかになってきた。プルトニウムを実験などで使用した「後始末」ができていない。子供がおもちゃで遊んだ後、出しっ放しで次の遊びに行ってしまうのと同じだ。正式の保管場所に戻し、記録を残す、というような規定が守られていない。「不適切な管理状態であった貯蔵容器が合計4571個にのぼる」と(NHK6/26)。

今度7月18日に報道された上記内容によって、原子力機構のこれまでの説明がデタラメで、きちんとした調査もせずに自分たちに都合の良い(責任を取らなくて済むという意味だ)ことをでまかせに述べていたことが判明したことになる。


7/20-2017
3号機内部の損傷確認=水中ロボが撮影-福島第1(時事通信)

東京電力は19日朝、福島第1原発3号機の格納容器内に水中ロボットを初めて投入し、調査を始めた。ロボットが撮影した画像からは、複数の構造物の損傷が確認できた。東電は画像を基に、21日に実施する2回目の調査の計画を検討する。

調査は炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)を探すのが目的。ロボットは幅13センチ、長さ30センチで、観測機器を取り付ける穴から格納容器内に投入された。
3号機の格納容器内には深さ6.4メートルの水がたまっている。ロボットは水中を移動し、核燃料を納めた圧力容器を支える土台の開口部付近に到達。圧力容器の真下の様子を撮影した。複数の構造物が損傷していたほか、「制御棒駆動機構(CRD)ハウジング」の支持金具で一部脱落などが確認できた。


ロボットが撮影した東京電力福島第1原発3号機の原子炉格納容器
内部のCRDハウジング下部=19日(国際廃炉研究開発機構提供)

ロボットが接近すると堆積物が巻き上げられ、水が濁った。東電は2回目の調査では、開口部から内部に進入できるよう計画を検討する。

東電はデブリの取り出しに必要な情報を収集するため、2月に2号機、3月に1号機にロボットを投入したが、調査は難航。これまでに明確にデブリと判断できる物体は撮影できていない。(時事通信7/19)

作業用の足場(グレーチング)が見当たらず、おそらく高温のデブリと共に落下したとみられている。21日の調査では、さらに下方にロボットを送り込む、としている。

デブリそのものの撮影に、1,2,3号機のいずれも成功していない。
しかし、原子力規制委の田中委員長は、破壊された炉内を調べてデブリの在りかを確かめるのは必要なことだが、「デブリの取り出しは、まだまだ遠い先の話だ」という意味の発言をした。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日、東京電力福島第1原発3号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の確認に向け、原子炉格納容器内を調査する水中ロボットが投入されたことについて「炉内の状況を把握することに異存はない」と述べた。一方で「デブリの取り出し方法を確定するにはほど遠い」と訴えた。田中委員長は定例記者会見で、炉内を確認することと「デブリのような形の分からないものをどう取り出すかというのは違う話だ」と指摘した。(福島民報6/19)
このところ、田中委員長は東電に対して、点が辛いね。委員長の任期切れが近いことを意識しているのかな(次は更田氏に内定)。


7/21-2017
【社説】 変わらぬ東電体質 「福島」から何を学んだか(福井新聞)

「加害者としての責任の重さは分かっている」「福島事故の責任を全うすることが新体制の原点だ」と決意を示し、東京電力のトップの座に就いた川村隆会長。基本はひたすら「稼ぐ」ことにあるらしい。

福島第1原発の廃炉作業が困難を極め収束の道筋が見えない中で、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を目指し、原発の新増設の必要性にも言及している。こうした姿勢に原子力規制委員会から批判が続出。本当に事故責任を自覚しているのか、覚悟が見えない。
巨額赤字に転落した日立製作所をV字回復させた川村氏だ。東電再生へ期待は大きいが、現実は厳しい。

再建計画の「新々・総合特別事業計画」は2019年までに再建の方向付けを目指す。廃炉・賠償費用は約22兆円が必要で、毎年平均約5千億円を確保すると定める。費用は14年1月に11兆円と見込んだ前計画に比べ2倍に膨らんだ。
頼みの柏崎刈羽原発(全7基)は1基も再稼働できず、再建計画では遅くとも21年度以降に6基を順次再稼働させることで2400億円強(27年3月期)の経常利益を見込む。だが、先行きは不透明である。

経営改善への道筋をつけるためには、まず「稼ぐ」以前に「安全文化」を再構築し、信頼回復を図ることが先決のはずだ。その意識が見えず、規制委から「安全意識に変化がない」と批判され続けている。
柏崎刈羽の免震重要棟の耐震不足を示す試算を約3年前に把握しながら報告しなかったほか、防潮堤の不備を指摘されても認めようとしなかったことも厳しく指摘されてきた。事故当時、社長が炉心溶融(メルトダウン)を公表しないよう社内に指示していた問題も発覚。これでは「隠蔽体質が変わっていない」と非難されても仕方がない。

規制委は今月10日、新経営陣を呼び、廃炉や再稼働に関して聴取した。川村氏は原発事業について「新しいタイプの原発が動かせることを見せる責任がある」「事故当事者がきちんと動かせたことが国民に分かれば原子力にとって大きい」と述べたという。
田中俊一委員長が「(事故責任は)口先だけにしか聞こえない」とあきれ「廃炉を主体的にやりきる覚悟がなければ柏崎刈羽の運転は認められない」とくぎを刺したのも当然だ。

まだある。たまり続ける汚染水は計100万トンを超える。放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分を国が検討している段階なのに、川村氏は報道各社のインタビューで「判断はもうしている」と発言した。
トリチウムは半減期が12・3年と比較的短く、規制委も海洋放出を求める。とはいえ、漁業者らは風評被害を懸念し、地元選出の吉野正芳復興相は濃度に関係なく反対の意向を示した。

川村氏は東電を「普通の会社にしたい」と強調したが、福島の痛みを理解しようとしない大企業の経営論理は決して「普通」ではない。原発依存体質が企業をかくも劣化させている。(福井新聞7/19)

福井新聞が東京電力の川村新会長を正面から批判している。ここまで書いている社説(福井新聞は「論説」と言っているが)は他にないので、取りあげた。

海洋放出について「判断はもうしている」と発言したことについて、19日に全漁連・県漁連が川村会長を全漁連事務所に呼んで強く抗議し、発言の撤回を求めた。
川村氏は「真意が伝わらなかった。会社としても個人としても判断した事実はない」と釈明した上で、処理水を安易に放出することはないことを確約した。

抗議に対し、川村氏は「結果として漁業関係者に大変な不安と迷惑を掛けた」と陳謝したが「(東電が判断したという趣旨で)発言した事実はない」として撤回はしなかった。
川村氏は、会談後の取材に対し、報道陣から「インタビューで放出の判断について『もうしている』と言った記憶はあるか」と聞かれると「ある」と答えた。しかし、その内容は「科学的な安全性に関しては、東電は国の基準通り行えば安全であると判断している」「社会的な問題については風評の問題もあるので東電が主体的に安全性だけで決めることはできない」との二つの側面から発言したと説明した。
(福島民友7/20)
川村会長は「判断はもうしている」という発言をしたことを認めたが、「会社としても個人としても判断した事実はない」と主張し発言の撤回はしなかった

「判断はもうしている」という発言は浅はかだったと反省の弁と共に撤回すべきであることは明らかだが、川村会長はそうしないで全漁連・県漁連を押し切った。うまくやったつもりだろうが、“国会答弁”じゃないのだ。このことによって東電会長に対するけして消えることのない不信感を広範にまき散らした。


7/22-2017
伊方3号機停止認めず 車ない住民「死を待つしか」(毎日新聞)

稼働中の四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、松山地裁は21日、同県の住民11人が運転差し止めを求めた仮処分の申し立てを却下した。

「裁判官には人の命を守る判断をしてもらいたかった」

伊方原発から西に約20キロ、伊予灘を望む愛媛県伊方町松に住む山下長松さん(86)、トメ子さん(86)夫妻は、原発運転差し止めの申し立てを却下した松山地裁の決定を伝えるテレビ画面を見つめ、静かに語った。
県の避難計画では、伊方原発で重大事故が起きた際、原発以西の住人は状況に応じて船で愛媛県内外に避難すると想定。山下夫妻の自宅から港までは、峠を越えて車で約20分かかるが、自家用車はなく、「事故が起きればここで死を待つしかない」。

避難計画に関連し、久保井恵子裁判長は決定の中で、継続した訓練の必要性や課題が見つかった際の見直しを求めた。伊方町の高門清彦町長は「司法判断を厳粛に受け止める」とした上で、避難行動計画は「訓練によって検証、反省し、より良いものに改善する努力を続けたい」とした。

申立人や弁護団からは、広島地裁などに続き申し立てが繰り返し退けられたことに怒りの声が上がった。
大分地裁に仮処分申請中の中山田さつきさん(63)=大分県杵築市=は地裁前で「不当決定」の垂れ幕を見て、「本当に残念。司法は『福島』を忘れたのか。事故をなぜ教訓にしないのか」と肩を落とした。

各地の原発訴訟に関わってきた河合弘之弁護士は「新規制基準は世界最高水準という論理で、四電の主張をそのまま認めた」と批判。申立人の松浦秀人さん(71)は「電力会社に『忖度(そんたく)』した決定だった」と皮肉った。
一方、町内で食堂を経営する高齢男性は「原発の運転が停止すれば、町の経済も止まるので、停止せずに良かった」と話した。(毎日新聞7/21)

伊方原発は細長い半島の付け根に位置しており、そもそも原発の設置場所として不適当である。あの場所で深刻な原発事故が起これば、完璧な避難を実現するのは不可能である。津波や山崩れをともなう強い地震に際して原発事故が発生する蓋然性があり、そういう問題について司法がきちんと目を光らせることが大事である。

司法が電力会社の言い分をそのまま認めて、周辺住民の犠牲をやむなしとするような判断をするのは、まったくおかしい。裁判長が「継続した避難訓練の必要性」などに言及するのは、見せかけだけのゴマカシだ。そもそも住民が避難訓練に努力を強いられるような発電設備が妥当なのかどうか判断するのが司法のはずだ。三権分立が形だけの三流国であると言わざるを得ない。


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7/23-2017
溶けた核燃料か 黒い塊 福島3号機 圧力容器の下部(東京新聞)

 
福島第一原発3号機の圧力容器下部で、水中ロボットが撮影した映像。溶けて固まった
物質は「デブリの可能性が高い」(東電担当者)という=国際廃炉研究開発機構提供

東京電力福島第一原発3号機の格納容器内の水中ロボット調査で、東電は21日、圧力容器下部で溶けて固まった核燃料(デブリ)とみられる黒い物質が複数確認されたと発表した。高熱を発したデブリの痕跡は2号機で確認されているが、デブリとみられる物質が撮影により確認されたのは初めて。

この日は早朝から、カメラ付きの水中ロボットを、圧力容器を支えるコンクリート製の土台の開口部から挿入し、圧力容器の直下まで移動させた。見上げる形で圧力容器下部を撮影したところ、制御棒や駆動装置がある辺りで岩石のように固まった黒い塊があった。

東電担当者は同日夜の記者会見で「溶融して固化したもので、デブリである可能性が高い」と話した。

事故発生当初、冷却が止まった核燃料は2500度前後まで過熱。溶けて圧力容器の底を貫通して流れだし、大半が格納容器の底にたまったとみられている。撮影された黒い物質は、冷却水で固まったデブリの一部の可能性がある。(中略

収束の道筋 なお見えず
<解説> 原子炉の底に溶け落ちたデブリとみられる物質の姿を初めて撮影できたことは、福島第一原発の事故収束に向けた重要な一歩であることは間違いない。ただし、内部の放射線量は半導体も短時間で破壊されるほど強烈で、人間は到底近寄れない。依然として、デブリを取り出す道筋は見えない。
今回デブリの状況が垣間見えたのは、メルトダウンが起きた1~3号機の3基のうちの1基にすぎない。デブリは格納容器の底、上方の圧力容器や中間の構造物にもあるとみられる。状況が詳しく分かって初めて取り出しの具体策を練ることができる。

難問はまだまだある。デブリを水漬けにして放射線を緩和した中で作業することが望ましいが、現状では冷却水は格納容器のどこかから流れ出て建屋地下に漏れている。水の遮へいなしに実施する工法も検討されているが、技術は確立されていない。作業員が被ばくしたり放射性物質が拡散したりするリスクもあり、線量が十分低下するのを待つべきだとの意見もある。

いずれにしても、壊れた原子炉からデブリを取り出した前例はない。米スリーマイル島原発事故の場合は圧力容器はほぼ損傷しておらず、福島第一の収束作業は未知の作業ばかりだ。(写真も 東京新聞7/22)(図は中日新聞7/23より)

線量がどの程度なのか、水温は場所によって異なっているのか。そういう数値データを少しでも示して欲しい。
この)ロボットは放射線量約200シーベルトまで耐えられるが、初日(19日)に受けたのは想定より低い2シーベルトほどだった。(福島民報7/21)
という報道があった。

格納容器の底から高さ1~2mまで溶け落ちたらしい物体が積もっていた。それがデブリの一部であろうという。しかし、格納容器の底が抜けているのかどうかは、不明である。

デブリの取り出しは、完全に取り出してしまわなければ意味が無い。強い線源がいつまでも残っていることになるから。作業しやすいように上部の構造物を取り払ったりの準備作業の後、少しずつ切り取っていくような手法になるのだろう。何十年かかるか分からない工程である。


トップページの写真を、イワタギングチバチから甲虫目カミキリムシ科ヨツスジトラカミキリに替えた。

7/25-2017
福島3号機制御棒付近から漏出か 溶融核燃料、新映像を公開(中日新聞)

東京電力は24日、福島第1原発3号機の原子炉格納容器内の水中ロボット調査に関する記者会見を開き、原子炉圧力容器下部の制御棒駆動装置付近に溶けた核燃料(デブリ)の可能性が高い物体が付着している新たな映像を公開した。核燃料は構造的に弱い部分から漏れ出した可能性があると明らかにした。

東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は「厚さ約14センチの圧力容器が全部溶けて燃料がごっそりと落ちるよりは(圧力容器下部から内側に制御棒を通す)穴から噴き出して垂れたと想定できる」と説明した。

この日は計約4分間の映像を公開。映像にはデブリとみられる物体が広範囲に広がっていた。(写真も 中日新聞7/24)

 
福島第1原発3号機の原子炉圧力容器下部にある制御棒駆動
装置。中央奥が水面=21日(国際廃炉研究開発機構提供)

写真は、圧力容器の真下から、真上を写したカメラ映像。水面が光っている。円柱形のものがいくつもぶらさがっているのを下から見上げているのだが、それが「制御棒の駆動装置」。この駆動装置は圧力容器の底を貫通して取り付けられている多数の円柱状のもので、それらが今もぶら下がっていることは、圧力容器の底が溶融燃料によって「ごっそり溶け落ちる」ことはなかったことを意味している。

したがって、デブリが格納容器の底に溜まっているらしいのだから、溶けた燃料は制御棒を取り付けるために圧力容器の底にある穴から「噴き出した」のだろう、という説明になる。

事故から6年経って、デブリらしいものの映像がやっと撮れた。それが本当にデブリであるのかどうかは、サンプルを採ってこないと分からない。デブリの分布状態を正確に把握するのは極めて困難であるが、それができなければデブリの取り出しはできない。まだまだ、先の長い話だ。
炉心溶融に至った原発の廃炉がいかに困難であるか、京都新聞の社説「溶融核燃料  廃炉計画見直しが急務(7/24)」は良かった。


7/27-2017
泊原発維持費16年度は738億円 5年で3号機建設費超す(北海道新聞)

北海道電力が泊原発(後志管内泊村)の維持費として、2016年度に738億1800万円を支出したことが、同社の有価証券報告書で分かった。減価償却費が減るなどして前年度より43億円減ったものの、泊原発全3基が停止した12年度から5年間の総支出は約3826億円に上る。維持費は電気料金として一般家庭や企業が負担しており、動かない原発が道民の重荷となっている格好だ。

■家庭や企業の負担に
原発維持費として最も多かったのは、原発の建設費や安全対策に必要な設備投資費などを分割して費用計上している減価償却費。維持費の3分の1を占め、16年度は231億8100万円と前年度より40億5300万円減った。建物の警備などで協力企業に支払う委託費も4300万円減の159億900万円だった。

12年度から5年間の原発維持費の総額は泊3号機の建設費にかかった約2900億円を大きく上回る。原発維持費は一般家庭や企業などが支払う電気料金から捻出される。(北海道新聞7/25)

泊原発には1~3号機があるが、2011年3月の東日本大震災で福島第一原発事故が発生した後、1号機:11年4月、2号機:8月、3号機:12年5月がそれぞれ定期点検に入り、再稼働できないまま今日に至っている。北電は13年9月および14年11月に電気料金の値上げをしている。

近頃話題になったことでは、泊原発が立地する積丹半島の地形が地震性隆起であるかどうか論議になり、北電は「波による浸食」説を主張していたが、17年3月に原子力規制委が「地震性隆起であることを否定できない」と指摘した(本欄 3月11日)。

大間原発建設反対をめざす函館市の訴訟に見られるように、道民の反原発意識は根強く、再稼働は簡単ではないであろう。


7/28-2017
東電 2号機 格納容器の放射線量を大幅訂正(NHK)

福島第一原子力発電所2号機でことし1月から2月にかけて行われた調査で東京電力は、格納容器の内部で1時間あたり最大でおよそ650シーベルトと極めて高い放射線量が推定されると公表していましたが27日夜、計測する設定が誤っていたとして最大でおよそ80シーベルトだったと訂正しました。
東京電力は福島第一原発2号機でことし1月から2月にかけて、ロボットなどで格納容器の内部の調査を行い、映像の撮影や放射線量を測定しました。

このうち、金属製のレールの上などで撮影した映像の4か所で放射線による画像の乱れを分析し1時間あたり最大でおよそ650シーベルトと極めて高い放射線量が推定されると公表していました。しかし、4年前に測定した放射線量の推定値と比べて高かったことから、評価方法などを調べたところ、映像の乱れを計測する設定が誤っていたとして昨夜、1時間あたり最大でおよそ80シーベルトだったと訂正しました。また、同じレールの上でロボットが線量計で計測した値も1時間あたりおよそ210シーベルトと公表していましたが4つの線量計のうち1つが高い値を示す傾向があったことがわかり評価し直したところおよそ70シーベルトだったと訂正しました。

ただ、1時間当たり70シーベルトから80シーベルトも極めて高い放射線量で10分足らずとどまると死に至るレベルとされています。

東京電力廃炉推進カンパニーの増田尚宏代表は「格納容器の内部なので外部の環境に影響を与えるものではないが、放射線量のような関心の高いデータはしっかり伝える必要があり訂正することになって大変申し訳ない」と陳謝しました。(NHK7/28)

2号機調査で、「掃除ロボ」のカメラのノイズから650Sv/hを推定したという報道は本欄2月10日、それ以前に、棒の先にカメラを付けて2号機を調査して530Sv/hという推定値を得ている、本欄2月3日
その一方で,レール付近では50Sv/hなどの数値が得られており、時事通信2/3は「数値にばらつきがあった」と指摘していた。その「数値のばらつき」は、デブリが分散して存在しているため,と考えられていたが、そうではないことがはっきりした。

訂正量がきわめて大きい。炉内にデブリがどのように分散していると考えるのか、基本的なことに影響のある大きなミスである。

一般に測定には誤差が避けられないが、この場合は「設定が誤っていた」とか「一つの線量計が高い値を示した」というような、事前準備の段階で防ぎうるミスであった。じつにお粗末だと言わざるを得ない。


7/29-2017
核ごみ処分65%「適地」 経産省がHPで分類地図公開(中日新聞)

原発で使い終わった核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」をめぐり経済産業省は28日、最終処分場を建設できそうな地域を色分けして示す地図「科学的特性マップ」をホームページ上で公開した。火山からの距離など自然条件を基に全国を四分類した結果、国土のうち沿岸部の約30%は「輸送面でも好ましい」とし、適性が高い地域に分類。これらを含む約65%を建設できそうな地域と判断した。

 経産省は秋から全国で対話集会を開いて説明し、処分場の調査受け入れを複数の自治体に打診する方針だ。世耕弘成経済産業相は地図は処分場建設に向けた「重要な一歩」だと強調した。

処分場は地下300メートルより深い地中に建設。核のごみを数万年にわたり閉じ込める「地層処分」という手法を採る。自然環境に照らして設けた7つの基準に抵触する地域などを「好ましくない」などと実質的に除外した。

調査のため処分場着工までに20年程度をかける。福島県は東京電力福島第一原発事故からの復興途上にあり、政府から積極的な働きかけはしない。青森県は六ケ所村が再処理工場を受け入れた経緯があり、政府と最終処分場を建設しない約束を結んでいる。(中日新聞7/29)


どこかの民放TVで、感想を求められた男性が「こんなおおざっぱな地図でいいなら、オレだって描けるよ」といって笑っていた。多くの人がそれに類する様な感想を持ったのじゃないだろうか。
上の地図はNHKによる(ここ)。あまり大きく扱わない報道が大部分であった中で、NHKはネット上に大きな地図と拡大図などをふんだんにアップしている(ダウンロードも自由にできる)。政権の広報機関だね。なお、さらに詳細な情報が欲しければNUMOの「科学的特性マップ」に行くのがいいです。

海岸線から20km以内の地帯は輸送に便利だというので「濃緑色」にしてある、という。ずいぶん身勝手な話だ。同じ地帯は巨大津波が心配じゃないだろうか。まじめに「科学的」特性を勘案したとはとうてい思えない。
これで自治体が検討して手を挙げることはできるはずがない。経産省は、「最終処分場にむけて検討している」というポーズがとれれば良い、としか考えていない。

たかだか半世紀余の間運転しただけの原子力発電の後始末で、この狭い島国で10万年先までの心配をしなければならない。何兆円を要するのか知らないが、「原子力発電は安い」という計算にはこういう後始末の代金はまったく含まれないのである。
「いいところが少しも無い原子力発電を止めるので、最終処分場を作らせて下さい」というのならまだ話が分かるが、前のめりになって再稼働をしようとしているのだから、とうてい納得できない。



7/30-2017
核ごみ「最適地」3割 政府が処分場候補地図(東京新聞)

原発で使い終わった核燃料から出る「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」をめぐり経済産業省は28日、最終処分場を建設できそうな地域を色分けして示す地図「科学的特性マップ」をホームページ上で公開した。火山からの距離など自然条件を基に全国を4分類した結果、国土のうち沿岸部の約30%は「輸送面でも好ましい」とし適性が高い地域に分類。これらを含む約65%を建設できそうな地域と判断した。

経産省は秋から全国で対話集会を開いて説明し、処分場の調査受け入れを複数の自治体に打診する方針。世耕弘成経済産業相は地図は処分場建設に向けた「重要な一歩」だと強調した。

処分場は地下300メートルより深い地中に建設。核のごみを数万年にわたり閉じ込める「地層処分」という手法を採る。自然環境に照らして設けた7つの基準に抵触する地域などを「好ましくない」などと実質的に除外した。

調査のため処分場着工までに20年程度をかける。福島県は東京電力福島第一原発事故からの復興途上にあり、政府から積極的な働きかけはしない。青森県は六ケ所村が再処理工場を受け入れた経緯があり、政府と最終処分場を建設しない約束を結んでいる。

◆国民の理解 置き去り
核のごみの行き場は決まっておらず、経済産業省は「現世代の責任」と強調する。しかし、現状でも原発を動かしてごみを出し続けている経産省自身の無責任な姿勢は相変わらず。国民からは批判が絶えず、「国民の理解」は置き去りにされたままだ。

通常の工場は産業廃棄物の処分場が確保できていないと動かせないが、政府は原発を特別扱いしてきた。今年3月末時点で国内の使用済み核燃料は1万7830トン。既に保管できる容量の7割を超えた。中にはあと3年程度でためておけなくなる原発もある。

それでも政府は原発を動かす方針を崩さない。経産省が地図づくりの途中で行った意見公募では、無責任な政策に国民から批判が多く寄せられた。耳を傾けない政府の姿勢が改まらなければ、国民の間に政府に協力しようという機運は生まれない。(東京新聞7/29)

使用済み核燃料を解体して、超高濃度の放射性物質を「ガラス固化体」として閉じ込めて、それを地下300m以上のところで長期保存する。それがいま経産省がいう最終処分の方法である。その方法が本当に合理的であるのかどうか、倫理にもとらない方式であるのか、十分なオープンな議論がなされてきてはいない。

最終処分場が出来ているのはフィンラントとスウェーデンの2国だけだが、この2国ともガラス固化体にせず使用済み核燃料をそのまま最終処分場に保存するという方式である。ガラス固化体を作るのを再処理というが、再処理工場では、使用済み核燃料を解体してプルトニウムを取り出し残りの超高濃度の放射性物質をガラスに閉じ込めるという難しい工程を行う。日本では青森県六ヶ所村に再処理工場が建設中だが、満足に動く見込みはなく、フランスに頼んでいる。
取り出したプルトニウムは「高速増殖炉もんじゅ」で使用して、使用した以上の核燃料を生産するという“夢のような話”であったが、もんじゅが廃炉となりプルトニウムは使い道がなくなった(原爆を造るしかない)。つまり、「核燃料サイクル」をあきらめて、使用済み核燃料のまま長期保存を計るのが、より現実的な方式なのである。

経産省がいう「最終処分場」は「核燃料サイクル」と一体になった問題であり、長年国策として推進してきた「核燃料サイクル」そのものを止める決断をするかどうかという根本問題を正面からとりあげるべきなのである。

この先数万年間もの長期間、危険性のある使用済み核燃料を地層処分する決断が、《ある自治体》にできるものだろうか。そこに住むはずの未来世代に対して、申し開きができるものだろうか。「検討してもいい」と手を挙げるだけで20億円補助金が出る(更にステージが進めば、もっと高額になる)、とか言う話だが、どれだけ高額の補助金を積まれても、いや高額であればあるほど未来世代からの糾弾は厳しくなるのではなかろうか。

「核のごみ」を作り出したことこそが「現世代の責任」としてまず挙げられるべきだ。我が国のような火山列島で理論的にも不確かな「地層処分」という方式に決めてしまわずに、アクセス可能な「浅いシェルター」方式で使用済み核燃料を保管し続けるのがより良識ある方式だと思う(日本学術会議の方式)。いうまでもなく、原発を一刻も早く廃止して「核のごみ」を今以上に増やさないようにすることこそが第一に果たすべき「現世代の責任」である。


7/31-2017
<日米原子力協定>満期まで1年 再処理工場遠い完成、焦る原燃(河北新報)

核兵器に転用可能なプルトニウムの利用を日本に認めた日米原子力協定が来年7月の満期まで1年を切った。日本原燃(青森県六ケ所村)の使用済み核燃料再処理工場は完成延期を繰り返しており、日本は商用化の「権利」を行使できないまま、期限を迎える。政府は自動延長を軸に交渉を進める方針とみられるが、目標とする「2018年度上期」の完成は厳しく、原燃に焦りの色がにじみ出ている。

再処理工場は核燃料サイクル政策の要となる重要施設。当初計画は1997年12月完成だったが、15年までの25年間に23回、延期を重ねた。これ以上先送りすれば、組織の存在意義が根本から問われる崖っぷちに追い込まれかねない。

原燃が現在の完成目標を掲げたのは15年11月。原子力規制委員会による新規制基準による審査に16年度に合格し、17年度に設計・工事の認可、18年度上期までに安全対策工事などを終えるという皮算用だった。
原燃の工藤健二社長は27日の定例記者会見で「引き続き2018年上期の完成を目指すことは変わらない」と改めて強調したが、現実は原燃の思惑通りに進んでいない。

再処理工場を巡る新規制基準適合性審査で規制委は5月、原燃の重大事故対策に不十分な点があると指摘し、補正書最終版の出し直しを求めた。原燃は当初、最終版を6月中に示す予定だったが、今月27日になって「8月中」に変更した。
「現状では目標通りの完成はかなり厳しい」(規制庁担当者)にもかかわらず、工藤社長は強気な態度を崩さない。昨年末には適合性審査を巡り、「あと1回で説明を終えたい」と見通しのないまま公言し、原子力規制庁から「実態を踏まえてほしい」とくぎを刺される場面もあった。

目標時期にすがるような原燃の姿勢について、大手電力各社でつくる電気事業連合会の関係者は「日米原子力協定を更新するには、再処理事業の実効性や計画性を示さなければならないのでは」と推し量る。

協定は、日米のいずれかが文書で通告すれば期限切れで失効するが、自動延長もあり得る。一方、再処理で抽出したプルトニウムを利用する高速増殖炉計画が頓挫した上、再処理工場の完成見通しが立たない状況は、国際社会の批判を招きかねない。
原子力政策に詳しい長谷川公一東北大大学院教授(環境社会学)は「再処理事業撤退論が政府や政権与党から浮上するのを原燃は恐れているはず。トランプ政権の出方は分からない。撤退論を押さえ込むためにも、原燃は完成時期にこだわっているのだろう」と説明する。
日米原子力協定 核燃料の調達や再処理、原子力技術の導入などに関する日米間の取り決め。非核保有国の中で唯一、日本に再処理事業を認めた。濃縮ウランを提供する米国が日本を規制できる仕組みになっている。1955年に締結し、日本に再処理の権利を認めた現協定は88年に結ばれた。有効期限は30年。2018年に更新期を迎える。
(図表も 河北新報7/30)

「日米原子力協定」が2018年7月17日に満期となる。この協定は「有効期限の6か月前から文書で通告することによって協定を終了させることができるが、この事前通告がなされない限り協定の効力は継続する」(ウィキペディア)。
18年夏に期限が来ることはもともとはっきりしていることだったが、日本ではほとんど話題に上らなかった。1年前に河北新報が真っ向からとりあげたことは高く評価したい。

「核燃料サイクル」の急所のひとつ「再処理工場」がいつまで経ってもできない。原燃は「延期」を何度も何度も繰り返している。原子力マネーが落ちてくればそれでいいとする関係者たちばかりが群がっている。腐っている。

「核燃料サイクル」のもうひとつの急所、もんじゅ廃炉を決めたのをチャンスに、「核燃料サイクル」事業全体を見直す機運が生まれるのかと様子を見てきたが、経産省など原子力推進派は相変わらずの前のめりを続けている。フクイチ事故処理や廃炉や最終処分場などへ膨大な国費がついやされるのを国民は容認しているのだろうか。それらは何かを生み出す事業ではなく、なんとかしてマイナスを埋めて元に戻したいという事業ばかりである。

来年の夏に「日米原子力協定」の期限がくるのを好機として、「核燃料サイクル」をやめるための議論を巻き起こすべきだ。決断が遅れれば遅れるほど傷が大きくなる。




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