き坊の近況 (2019年3月) |
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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。 |
3/2-2019 | 東海村の東海第二原発を運営する日本原子力発電(原電)の村松衛社長が28日、再稼働の際に協定で事前同意を必要とする6市村に再稼働方針を説明した。会合は非公開で、出席した山田修村長によると、首長からは原電が自治体に事前説明もなく再稼働を表明したことに不信感を募らせたという。山田村長は「自治体と原電の間で信頼関係はできていない」と指摘した。 会合後、取材に応じた(東海村の)山田村長は「再稼働表明は唐突感がある。不意打ちを食らった感じがする。原電が一方的に進んでいるイメージが強い」と述べた。 方針伝達のほか、会合では事故対策工事に関する話題も出た。「大規模な工事を住民の理解が得られないまま進めるのはどうなのか」という声もあったという。しかし、原電側は工事の内容などは明らかにしなかった。 こうした現状も踏まえ、首長側は、6市村と原電の7者の事務レベルでの連絡会を設置し、工事の進捗などを確認していくことを決めた。 村松社長は、自治体との信頼関係について、対応が不十分だったことを認め、「些細(ささい)なことでもわれわれから情報開示、公開するよう努める。ひとつひとつの積み重ねがつながると思っている」と話した。 原電は4月以降、再稼働方針に関して30キロ圏の14市町村と小美玉市で住民向けに説明会を開催するとしている。村松社長は「自治体や住民の理解を得ながら進めていきたい」と話した。(東京新聞3/1) 首都圏で唯一の原発・東海第二は人口密集地で、まともな避難計画を立てることが不可能ではないかとされている。避難計画を任されている自治体が再稼働を容認するかどうかは、原発再稼働にとって重要なハードルである。本欄は何度もこの問題を扱っているが、例えばこの1月は1月15日、1月22日。 住民および自治体にとっては極めて敏感にならざるを得ない、神経質な問題であるにもかかわらず、日本原電は突然6市村に対して「再稼働方針」を説明したのである。信頼関係を作っていくという姿勢がまったくない強引なやり方であることを、6市村側が憤慨している。 | Top |
3/3-2019 | 東京電力福島第1原発事故から8年になるのを前に、福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者が2日までに共同通信のインタビューに応じた。廃炉の最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しについて「特に硬いデブリがうまく取れるかが鍵になる。全量取ることを前提に準備することが大事で、現時点で諦める必要は全くない」と述べた。 東電は2月に実施した2号機の調査で、原子炉格納容器内のデブリとみられる小石状の堆積物は取り出せることを確認。しかし溶岩状で硬くて動かないものも見つかり、取り出すための新たな技術開発も迫られる。(中日新聞3/2) この問題は、デブリらしいものに初めて触ってみることができた時から良く分かっていたことだ(本欄2月14日-2019)。従来「粘土状」に見えると表現されていたものが、実は堅く広がっているものらしいことが分かった。それを、取り除くことが出来るかどうかは、まったく不明である。 全部取り除くことが出来ないと、強い放射線源が残っている状態のままであるということになり、「廃炉は完了しない」。通常の廃炉の完了は、原子炉をすべて撤去して更地にするのである。 小野明・廃炉推進カンパニー代表は記者会見で、どういう状態になったら「廃炉完了か」という質問に困惑して、次のように述べていた。 普通の原発で行われる廃炉は原子炉建屋などを解体してさら地にすることになっているものの、福島第一原発は状況が違うと説明しました。 そして、「福島第一原発の最後の姿は振れ幅が大きすぎて、今の段階で思い描くことが非常に難しい」と述べ、廃炉作業をさら地にするまで行うかについては、東京電力だけでは決められないとの考えを示しました。 (NHK3/1)小野明はごまかして軟らかい表現をしているが、要するに「デブリのなかには非常に取り出しにくいものがあり、それをすべて取り出すことは難しい」というのが本音なのである。永久に「廃炉は完成しない」という可能性がある、チェルノブイリのように。 しかも、ここで語られているのは2号機のことだ。1号機や3号機もある。 | Top |
3/4-2019 | 原発専業会社の日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発(茨城県)をめぐり、電力各社による資金支援の計画案が明らかになった。安全対策工事費が従来想定の2倍近い約3千億円に膨らむとし、東海第二から電気を受け取る東京電力ホールディングス(HD)が3分の2に当たる約1900億円を支援する。これに東北電力のほか、中部電力、関西電力、北陸電力の3社も支援することが柱だ。 再稼働時期は2023年1月を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどは立っていない。自治体の同意を得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。福島第一原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化された。にもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至だ。(朝日新聞3/2) 東電は、ADR(和解仲介手続き)についてさえ拒否を繰り返していて、住民側から「ADRの仕組みが崩壊する」と非難されているほどである(本欄1月24日)。それなのに、人口密集地の中で原発稼働は非常識だと住民からの反対意見が多い東海第二の再稼働のために資金支援するというのである。 税金から支援してもらってやっと立っているようなゾンビ状態の東電が、どうして他社の再稼働の支援をすることが許されるのか。 | Top |
3/5-2019 | 「河北新報」月初に、前月にあった原発関係のニュースをまとめて<福島廃炉への道>という記事にしているが、「2号機建屋最上階の汚染調査」を発表した。その部分だけ抜き出す。 (2月)1日 東京電力は2号機の使用済み核燃料の取り出しに向け、燃料プール上部につながる原子炉建屋最上階で進めていた空間放射線量などの調査を終えた。 ◎汚染密度の分布分かる Q 2号機原子炉建屋最上階の調査が2月1日に終了した。調査の目的は。 A 2号機の燃料プールから使用済み核燃料など615体を取り出すには、原子炉建屋上部を解体してからクレーンなどを設置する必要がある。調査で現場の汚染状況を把握し、解体計画に反映させる。 Q 具体的な調査内容は。 A 昨年11月14日から遠隔操作の重機やロボットを使い、空間放射線量は高さを変えて計157カ所、壁や床の表面線量は計145カ所で計測した。さらに放射性物質を含むちりの量を測ったりガンマ線カメラで室内を撮影したりした。 Q 分かったことは。 A 図のように汚染密度の分布状況が判明した。原子炉格納容器の真上のふた「ウェルプラグ」付近がオレンジ色で示した1平方センチ当たり1000万ベクレル以上で、特に汚染されていた。原発事故当時、ふたにはシートがかぶせられていた。放射性物質を含む蒸気がふたとシートの間にたまったと考えられる。 壁より柱部分の汚染度が高く、建屋に浸入した雨水などの流れが影響した可能性がある。燃料プール(SFP)の南側にも高汚染のエリアがあると判明した。 Q 過去の調査結果と違いはあるか。 A 床面からの高さ1.5メートル地点の空間線量の最大値はふたの上で毎時148ミリシーベルト。2012年調査の最大値は毎時880ミリシーベルト(高さ1.1メートル)だった。今回の測定値は11、12年の調査と比べて平均78.5%低かった。 東電は線量が低くなった要因の内訳を、約6割が自然減により、約1割が調査前のフェンス片付けなどによると分析した。(図も 河北新報3/5) SFP は 使用済み燃料プール | Top |
3/6-2019 | 4日午後、浪江町の帰還困難区域内の国道で、除染で出た土を運搬していた大型トラックがガードレールに衝突して、のり面に転落する事故がありました。 警察によりますと、事故のはずみで土を入れた袋が荷台から投げ出されたということですが、いまのところ外部への流出は確認されていないということです。 4日午後1時ごろ、浪江町赤宇木の国道114号線で、福島市から大熊町の中間貯蔵施設に向けて、除染で出た土を運搬していた大型トラックが道路の左側のガードレールに衝突したあと、のり面に転落しました。 この事故で、トラックはのり面を3メートルほど転落しましたが、トラックを運転していた67歳の男性にけがはありませんでした。警察と環境省によりますと、このトラックには除染で出た土が入った袋が5つ、あわせておよそ8トン分が積まれていて、事故のはずみで荷台から袋が投げ出されたということです。 土の放射性物質の濃度は1キロあたり741ベクレルから5200ベクレルの間で、袋は破けておらず、いまのところ外部への流出は確認されていないということです。現場は、帰還困難区域内のセンターラインがない片側1車線の直線道路で、警察は運転手の男性に話を聞くなどして、事故の詳しい原因を調べています。 環境省によりますと、除染で出た土などの廃棄物を中間貯蔵施設に運ぶトラックが搬送中に事故を起こし、廃棄物の入った袋が外に投げ出されたのは、今回が初めてだということです。 環境省によりますと、投げ出された袋は、4日夜から5日にかけて、クレーン車でつり上げて別のトラックに積み替え、中間貯蔵施設に運ぶことにしています。(写真も NHK3/4) 大熊町の中間貯蔵施設を建設する計画に対して、地元民から様々の反対意見が出されたが、そのうちの有力意見で説得力を持つものが、輸送トラックの事故だった。 今回のトラック事故はまさに恐れていた汚染土運搬のトラックが転落する事故で、汚染土の袋が抛り出された。袋が破れなかったというのは奇跡的だが、まったく幸運だった。今後もこういう事故の恐れがあるので、地元の人々の心配は絶えない。 中間貯蔵施設へ汚染土を運ぶトラックから「水漏れ」があったという事故は本欄2017年8月31日で取りあげている。汚染煤塵や、タイヤが持ち運びかねない放射性汚染土壌など、長期間・大量のトラック輸送が行われているので、決して安心できない。 | Top |
3/7-2019 | 東京電力福島第一原発の事故に伴う除染で出た土などは、福島県内では事故から8年がたつ今も、10万か所を超える住民に身近な場所に置かれたままになっています。保管の長期化に、住民からはいち早い撤去を求める声があがっています。 福島県内の除染で出た土や草木などは住宅の庭や駐車場など住民に身近な場所に保管されたあと、農地などの仮置き場に集められて、福島県双葉町と大熊町に整備中の中間貯蔵施設に運び込まれます。 施設への搬入は4年前に始まりましたが、施設は一部しか完成しておらず、これまでに運び込まれた量は搬入の予定量の17%にとどまっています。 環境省などによりますと、福島県内では原発事故から8年となる今も、土などが住宅の庭や駐車場など10万4938か所と仮置き場933か所に置かれたままになっています。 環境省は中間貯蔵施設の整備が進んでいるとして、新年度は、今年度の倍以上の量を施設に運び込む計画で、帰還困難区域を除く地域で保管されている土などについて、2022年3月までに搬入をおおむね終えることを目指すとしています。 こうした対応に住民からは「身近な場所からできるだけ早く撤去してほしい」、「対応が遅すぎる」などという声があがっています。 環境省は「安全を最優先にして中間貯蔵施設への搬入を速やかに進め、住民の生活圏からいち早くなくしたい」としています。(図も NHK3/7) 昨日の本欄と関連する内容だ。身近な場所に除染で出た土・植物などが8年前と変わらず置きっ放しになっている。その周辺で日常生活をせざるを得ない。そういう場所に「早く帰還せよ」とばかりに避難者への援助が無慈悲に打ち切られている。 より深刻で大きな問題は、広大な山林には除染の手さへ入っていないことだ。広大な山林を除染することがほとんど不可能だからだ。「除染して帰還させる」という国の方針はそもそも誤っていたのではないか。この方針で利益を得たのは、土木関係の会社とゼネコンだけだ。その権益を左右できる国の官僚は権力を膨らませるばかりだ。 | Top |
3/9-2019 | 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た双葉、浪江、富岡3町で、40代以下の住民の半数以上が帰還しない意向を示していることが復興庁などの調査で9日、分かった。働き盛りの世代が戻らなければ地域の復興に大きな影響が出るとみられ、各町は生活環境の整備を進めている。だが、避難先で生活基盤を固めた世帯も多く、呼び戻すのは容易ではなさそうだ。 2017年に避難指示が一部解除された富岡町、浪江町は傾向が似ており、20代以下、30代では「帰還しない」が60%を超えた。第1原発が立地し全域避難が続く双葉町では年代を問わず「帰還しない」が多く、全体で61・5%だった。(写真も 共同通信3/9)
原発事故から8年経過したこの現実を、わたしたちはかみしめる必要がある。 | Top |
3/11-2019 | 東京電力福島第1原発で進む廃炉をめぐっては、事故から8年がたつ現在も「廃炉の定義」が定まっていない。通常、廃炉は更地に戻すことを指し、地元自治体も完全撤去を望んでいる。ただ、作業は困難を極めるとみられ、東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は「(福島第1は)普通の原発と違う」と広範な議論を求めている。ゴールが見えないまま廃炉は進んでいく。 東電は廃炉工程表で、当初から最終工程を「原子炉施設の解体等」と明記し、事故から30~40年後の作業完了を目指している。しかし、想定する廃炉の最後の姿について、小野氏は「今の段階では考えの振れ幅が大きすぎて決められない。10人に言わせると、10人が違う答えを言う状況」とし、「未定」を強調した。 廃炉で最大の難関とされるのが、溶融核燃料(デブリ)の取り出しで、1~3号機にはデブリが原子炉内外に計880トンあると推測される。さらに2号機で2月に行われたデブリの接触調査からは、新たな機器開発の必要性が出てくるなど、東電が目指す全量取り出しの道のりは険しい。 海外の事例でも、廃炉の姿や工程は異なる。1957年に火災事故を起こし、放射能汚染をもたらした英国のウィンズケール(現セラフィールド)原子力施設は、作業がしやすいよう放射能が半減するまで100年以上待ってから施設を解体する予定だ。86年に炉心溶融で大量のデブリが発生した旧ソ連のチェルノブイリ原発では、デブリの取り出しを断念し、「石棺」と呼ばれるコンクリートの構造物で覆い、長期保存することになった。 福島第1の場合、デブリに加えて、1~3号機に残る使用済み燃料の取り出しや、汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水が敷地内で増え続けていることなど、後回しにできない課題が山積している。だが、使用済み燃料取り出しは相次ぐトラブルで、処理水は処分方法の検討が長期化しており、作業が停滞気味だ。 福島県など関係自治体は速やかに国の責任で更地にすることを望んでおり、県の担当者は「汚染されたものを全て残らないようにすることが廃炉の完了だ」と話す。しかし、原子力規制委員会の更田豊志(ふけた・とよし)委員長は現状について「廃炉の完了という視点では、勝負どころはまだまだ先」と指摘する。最後の姿どころか、道筋も霧の中だ。(産経新聞3/11) 先行する事故の例を十分に検討して、どのような事故処理の仕方がもっとも合理的で福島県民のみならず日本国民の利益になるか、というようなオープンな議論はまったくなされなかった。日本政府が行ったのは、原発事故を出来るだけ小さく見せること、放射能の影響はたいしたことないのだと学者とマスコミを動員して大宣伝を行うこと、早く住民を旧住所へ呼び返すことが最も大切といわんばかりの政策が行われている。 「廃炉の姿」について、「更地」にするのが当然であると考えている日本国民が最も多いのではなかろうか。しかし、炉心溶融した3炉のデブリを全部完璧に取り除くのは非常に困難であり、仮にそれが可能だとしても、何世代もかかるであろう。 それに注ぎ込まれる莫大な税金を考えると、本当にそれが賢い原発事故処理であるのか、疑問に思わざるを得ない。朝日新聞3/9は福島第一の事故対応に最大81兆円かかるというシンクタンクの試算がでたことを報じている。 81兆円の内訳は、廃炉・汚染水処理で51兆円(経産省試算は8兆円)、賠償で10兆円(同8兆円)、除染で20兆円(同6兆円)。この試算では、廃炉の最終形態を「石棺方式」にすると、総額が35兆円となるという。石棺方式は「復興を放棄したり、帰還をあきらめることにつながる」という否定論があるが、現在のように「更地」を建前にしていても「40代以下の住民の半数以上が帰還しない意向」(共同通信3/9 9日の本欄)という現実があることから目をそらしてはならない。石棺方式を採用して何十兆円のお金を避難民たちの生活支援に使うことで、新たな復興の形が生まれてくる可能性があるのではないか。 | Top |
3/13-2019 | 東京電力・福島第一原子力発電所の事故から8年。事故では大量の放射性セシウムが放出され、その多くは森林に積もったとみられていますが、大半が地中にとどまっていることが研究機関の調査でわかりました。 日本原子力研究開発機構によりますと、福島第一原発の事故では大量に放出されたセシウムのうち、およそ70%は森林に積もったとみられ、除染が進んでいないことから、周辺の住宅や農地などに影響が出ないか懸念されています。 原子力機構では、平成28年までの4年間、福島県川俣町と川内村の森林で土壌などに残るセシウムについて調査しました。その結果、セシウムは土壌の表面から10センチ以内の深さに90%以上が残り、森林から周辺に流出する量は年間で0.1%程度とごくわずかで、大半が地中にとどまっていることがわかりました。 一方、周辺の河川の水に含まれるセシウムの濃度は、1リットル当たり1ベクレル未満で、飲料水の基準の10ベクレルと比べると大幅に下回っていました。ただ、淡水魚のヤマメからは、食品の基準となる1キログラム当たり、100ベクレルを超える比較的高い濃度のセシウムが検出されることがあり、原子力機構は詳しく調査する必要があるとしています。 原子力機構では「福島県内の農林水産業の再開や、帰還したいという住民の不安に応えられるよう、調査を続けていきたい」としています。(NHK3/13) このニュースは、1年ほど前のNHKスペシャルで放映された内容を改めて報道したもの。 上図はNHKスペシャル「被曝の森2018 見えてきた~汚染循環~」(NHK2018-3/6)の24分あたりの映像。チェルノブイリで調査してきたヴァシル・ヨシェンコ(福島大・特任教授)が福島の森で調査した結果である。 森に降った放射性セシウムは90%以上が土壌中に有り、落葉などに4.5%、樹木には4.0%しか含まれていなかった。つまり、山林の除染で落葉掻きや樹木伐採をやってもセシウムは1割足らずしか除去されず、9割以上は土壌中にとどまっている。山林から土壌を取り去ることは不可能だから、この調査結果は山林除染はまず不可能であるということを意味している。言い換えれば、被曝した森はセシウム137の半減期(約30年)に従って線量が減衰するのを待つしか方法がないということを意味する。林業に従事してきた男たちがこの研究結果を聴く悲痛な面持ちがつらい。 このNHKスペシャル「見えてきた~汚染循環~」の少し初めの方(9分~12分)では放射性セシウムが土壌中から地下水によって谷川へ流れ出すことはほとんど無いと考えるべきだという重大な研究も示されている。 私はこの動画(50分)はdailymotion ここで視聴した。 | Top |
3/15-2019 | 東京電力福島第一原発事故の賠償にかかる巨額の費用を、大手電力以外の電気料金に上乗せする国の方針はおかしい――。九州や中国地方などの生協でつくる新電力「グリーン・市民電力」(事務局・福岡市)が世耕弘成・経済産業相にこんな陳情書を出し、7日、発表した。 原発事故の賠償は、沖縄電力を除く大手電力9社などの原子力事業者が資金を出している。その元手の一部は、大手電力の電気料金だ。(朝日新聞3/7) 「グリーン・市民電力」のサイトに、「報道機関のみなさまへ」という文章が発表されている(ここ)。その一部。 私たちは、原発事故の賠償費用は事故を起こした事業者が負担し、原発の廃炉費用は原発を用いて事業を営んでいる事業者が負担するのが当たり前のことなのに、原発に頼らない電気をつくり、それを使いたいとする新電力事業者やその利用者が負担するのはおかしいと考え、その意見を届けました。その通りだと思う。 「識者の委員会」なるところでよく分からないうちに次々に改悪される「上乗せ方式」は、極めて悪質である。官僚どものやりたい放題になってしまっている。 | Top |
3/16-2019 | 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を禁止するよう、50キロ圏内に住む山口県東部の3つの島の住民3人が求めた仮処分で、山口地裁岩国支部(小野瀬昭裁判長)は15日、申し立てを却下する決定を出した。 主な争点は、伊方3号機から約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクや、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)に関する原子力規制委員会や四国電の規定や評価が妥当かどうか。 決定で小野瀬裁判長は現在の火山学の知見や調査などを踏まえ「原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は小さい」と判断。さらに、噴火の規模の予測は難しく、過去の事例を踏まえた四国電の火山対策は過小とは言えないとした。 地震対策は、付近の断層を考慮しており「基準地震動に関する四国電の評価は合理的だ」と指摘。規制委が策定した新規制基準も妥当とした。 また、住民らの居住地に避難計画が策定されていないことについて「放射性物質が周辺に放出される具体的危険はない」とし、住民側の人格権侵害を認めなかった。 住民側は「伊方原発周辺は中央構造線断層帯が通っており、南海トラフ巨大地震で甚大な被害を受けるリスクが高い」と主張。阿蘇カルデラの破局的噴火による火砕流到達の危険性も訴えた。四国電側は、地質調査や過去の噴火状況などを検討した対策を取り「安全性は十分に確保している」と反論していた。 伊方3号機を巡っては広島高裁が2017年12月の仮処分決定で、阿蘇カルデラの破局的噴火のリスクを指摘し、運転禁止を命令。しかし18年9月の異議審で同高裁が覆して再稼働を認め、同年10月から運転を再開した。同様の仮処分は他にも松山地裁や大分地裁などで申し立てられたが、運転を容認する決定が出ている。 <伊方原発> 四国電力が愛媛県伊方町に持つ計3基の加圧水型軽水炉。1977年に運転を始めた1号機、82年開始の2号機(いずれも出力56万6000キロワット)は、巨額の安全対策投資に採算が合わないとして廃炉が決まった。3号機(出力89万キロワット)は94年に運転を始め、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電を行う。2017年12月の広島高裁仮処分決定で運転差し止めを命じられたが、18年9月の異議審決定で再稼働が認められ、同年10月から運転を再開した。(図も 東京新聞3/15) 山口地裁岩国支部(小野瀬昭裁判長)の判断は、原告の主張をことごとく否定したものだった。ことに、細長い半島の付け根に位置する伊方原発は、避難計画の作成がほとんど不可能であると指摘されていた。離島が多く散在し悪天候・夜間などの場合非難が困難であることなどが明らかであった。ところが判決は 住民らの居住地に避難計画が策定されていないことについて「放射性物質が周辺に放出される具体的危険はない」という目を疑うような理由を挙げて、避難計画は必要ないとした。この理由が正当であるなら、原子力規制委が承認したすべての原発には避難計画は不必要ということになる。 この判決は、フクイチ事故以前の、日本の原発に対する安全神話に戻ってしまっている。 | Top |
3/20-2019 | 東京電力福島第1原発事故後、政府が福島県内で実施した除染で生じた約1400万立方メートルの土のうち、約80%が現時点で土木工事などに再利用可能とする試算を環境省が19日、有識者検討会に報告した。同県内では再利用への抵抗感が根強く、政府の思惑通り進むかどうかは不透明だ。 福島県内の除染土について、政府は第1原発に隣接した「中間貯蔵施設」で30年間保管後、県外で最終処分する方針。しかし除染土の量は膨大で、環境省は放射性物質が1キロ当たり8000ベクレル以下の土について、道路の盛り土に利用したり、農地の地下深くに埋めたりして処分量を減らす方針を示している。 環境省によると、昨年10月までに中間貯蔵施設に搬入した除染土約150万立方メートルの放射性物質を測定したところ、約80%が現時点で1キロ当たり8000ベクレル以下だった。今後、時間がたてば放射性物質の濃度はさらに下がり、30年後には99%が8000ベクレル以下になるという。 環境省は除染土の再利用に向けた実証事業を2017年以降、福島県南相馬市の除染土仮置き場と飯舘村の帰還困難区域で進めている。しかし二本松市の市道や南相馬市の常磐自動車道工事に使う計画は住民の反対で実施の見通しが立っていない。(毎日新聞3/19) 環境省が8000Bq/kg以下の除染土は「処分してよい」と科学的根拠をなにも示さずに突然言いだしたのは2016年3月のこと。2011年3月のフクイチ事故以前は100Bq/kgを「クリアランス基準」と言って、「廃棄物を再利用してよい」基準であった。それを超える放射性廃棄物はすべて黄色いドラム缶に封じ、厳重管理されていることはよく知られている(この原子炉等規制法は、今も生きている)。 環境省は100Bq/kgは「廃棄物を安全に再利用できる基準」であり、8000Bq/kgは「廃棄物を安全に処理するための基準」であると突然言いだしたのである。日本の官僚は屁理屈をこねるためにだけムダに頭が良い連中だから、まともに相手にしても仕方がない。要するに、8000Bq/kg以下の廃棄物を全国どこへ持って行っても(「安全に処理する」こと)かまわないというのである。 要するに、除染土壌のうち比較的線量の低い物を日本国中に散らばらせてしまおう、という計画である。これは「除染」という考え方と矛盾するし、それと真逆なことを強行しようとするものである。フクイチ事故以前の100Bq/kgの「クリアランス基準」に戻る以外は、国民は納得することは出来ない。道路の盛土や農地造成の際に除染土を埋め込む工事に住民が反対するのは当然である。 国がこういうでたらめをやるから、「風評」がけして無くならないのである。 久しぶりに、昆虫写真の更新をした。新しい写真を撮るためには、カメラを用意し,外に出て、対象となる虫を探すという行動が必要である。 更には、ある程度の質の写真であるかどうか綿密にチェックする必要があるが、大抵の場合、一番大変で(精神的)力を要するのは種名の確定である。わたしのサイトは虫のマニアからすれば「ど素人」の趣味のサイトとしか見られていないから、“適当”で良いのだが、出鱈目ではまずい。ある程度の「近似値」までには達していないといけない。いつも、そう考えてネット上の信頼できるサイトを巡って確かめている。その作業が近頃はなかなか労力を要するものになっている。 昨秋から腰痛に悩んでいて、虫が減ってくる冬の間は外に出ないようにしていた。しかし、このところ,少しずつ暖かくなってきたので、カメラを提げて少しずつ歩きはじめている。 | Top |
3/22-2019 | 県は津波の浸水想定区域を12年ぶりに見直し、20日に公表した。福島県周辺海域で東日本大震災と同じマグニチュード(M)9クラスの地震が発生し高潮などの条件が重なった場合、津波は相馬市で最大22・4メートルを記録し、沿岸10市町の浸水面積は1万4219ヘクタールとなる。震災時の被災面積約1万1200ヘクタールを約3割上回る。県は各市町に通知し、住民の安全な避難誘導に向けた津波ハザードマップなどの策定を促す。 県の浸水想定区域は三陸沖を震源とする震災級(M9・0)の地震と、房総沖が震源の地震(M8・4)が起きた場合に分けて試算した。房総沖地震では4051ヘクタールが浸水する。二つの地震による津波浸水区域を重ね合わせると、被災範囲は最大で1万4296ヘクタールに上る。最大のケースの浸水想定区域は【下図】の通り。 震災級の地震発生時、東京電力福島第一原発の敷地内は津波に伴う水深が5メートル以上10メートル未満となる。津波の高さは相馬市の相馬海岸が最大となり、南相馬市の鹿島海岸で22・1メートル、大熊町の大熊海岸で21・8メートルを記録する。房総沖地震でも、いわき市の磐城海岸で14・9メートルとなり、いずれの地震でも大規模な津波が起きると試算している。 県は2007(平成19)年に初めてまとめた浸水想定区域では、岩手県沖で発生する明治三陸タイプ地震(M8・6)など3つのケースを想定していた。だが、2011年3月に想定を上回る巨大地震が起き、津波と東京電力福島第一原発事故により甚大な被害が生じた。 今回の見直しは、海岸堤防や防災緑地による減災対策が進んでいる現状を踏まえた。ただ、潮位が震災時より約1・2メートル高く、沿岸部の地盤が50センチ超沈下したとの前提で試算しているため、震災の被災面積を超える結果となった。 政府は2011年12月、震災を教訓に津波対策を強化するため津波防災地域づくり法を施行した。国土交通省によると、同法に基づき浸水想定をまとめたのは福島県を含め36道府県となった。(福島民報3/21) 福島県河川計画課ここ には「津波浸水想定区域図」が幾つも示されており、説明も丁寧である。そのうち下図は「全体図」である。 今度発表された津波予想図は、住民避難を主目的とした「レベル2」(L2)というものであることが、「津波浸水想定【解説】」に出ている。実はもう一つ別の津波予想図もあり、それは海岸堤防などの建設を主目的とした津波の予想で「レベル1」(L1)と呼ぶのだそうであるが、おそらく今後発表されるのであろう。 図の細部は分かりにくいが、上でリンクを示している福島県河川計画課のPDFファイルをご覧になって下さい。 | Top |
3/24-2019 | 経済産業省が、原発で発電する電力会社に対する補助制度の創設を検討していることが分かった。温室効果ガス対策を名目に、原発でつくった電気を買う電力小売事業者に費用を負担させる仕組みを想定しており、実現すれば消費者や企業が払う電気料金に原発を支える費用が上乗せされることになる。2020年度末までの創設をめざすが、世論の反発を浴びそうだ。 経産省の内部資料や複数の関係者によると、省内で検討されている仕組みは、原発については、発電事業者と電力小売事業者との間で取引する際の市場価格に一定の価格を上乗せすることを認めるものだ。原発を温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」と位置づけ、環境への貢献で付加価値をもたらしている、との理屈だ。 発電事業者は原発の電気をより高い価格で買ってもらえるため収入が増える。これが事実上の補助金になるという想定だ。 モデルにするのは、米国のニューヨーク州が導入する「ゼロ・エミッション・クレジット(ZEC)」という制度で、原発の電気について市場価格への上乗せを認める。直近では、原発の発電量1キロワット時あたり約1・9円を価格に上乗せして売ることができる。日本の電力業界関係者は「赤字の原発が黒字になるくらいのインパクトがある」と分析する。 経産省は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を見直す20年度末にあわせて、原発の補助制度の導入をめざしている。(以下有料記事 朝日新聞3/23) 「原発が作る電気は最も安い」と宣伝してきた経産省が、補助金がないと原発は維持できないと自ら認めたことになる。原発は経済合理性のない過去の技術に成り下がってしまっている、ということなのである。 そもそも「原発は温室効果ガスを出さない」(ゼロエミッション)という話が、ウソなのだ。 原発が発電している最中に温室効果ガスを出さないというのは本当だが、原発が発電するためには重大な前処理と後処理がどうしても必要だ。前処理とはウランを採掘して精製して原発燃料にまでする工程であるが、これがもの凄く温室効果ガスを出し、低濃度放射性廃棄物の膨大な山を作り出す。代表的な公害産業だ(日本ではウランを濠洲・米国などから輸入していて、その公害を骨身にしみて感じていない。人形峠の小規模ウラン発掘でこりているぐらい。地球に対するダメージはどの大陸で発生している温室効果ガスであるかによらない)。後処理は、いうまでもなく廃炉の工程である。まず、使用済み燃料の処理と最終処分に途方もないエネルギーと費用がいる。数万年の保存をする場所・費用は未来の人々への大きな負荷となる(未来の人々には何の利益ももたらさない負荷だ)。原子炉そのものを解体し細分化して数万年の保存をする必要がある。 これらの前処理・後処理に必要な膨大な石油資源に想到すれば、「原発は温室効果ガスを出さない」などとは到底言えない。 経産省のこのような馬鹿げた計画は、どうしてもつぶす必要がある。 | Top |
3/29-2019 | 1979年3月28日にスリーマイル島(TMI原発2号機)で原発事故が起こった。ちょうど40年前のことなので、特集で扱った報道がいくつかあった。 東京電力福島第一原発(フクイチ1~4号機)の事故はは史上最悪のレベル7であったが、TMI事故はレベル5であった。フクイチでは1~3号機で炉心溶融が起きデブリ総量は約880トンと推定されている(4号機は爆発したが炉心溶融はなかった)。それに対してTMIでは2号機のみの炉心溶融で、デブリの総量は約130トンで、1990年までに取り切れなかった1トンを残して130トンを取って処理保存が完了している。 東京新聞の特集記事の一部を引用する。 1979年のTMI事故で炉心溶融が起きたのは2号機の1基で、燃料の半分近くが溶融した。カメラによる内部調査などを経て、デブリ取り出し開始は事故6年後の85年。大きな損傷は免れた原子炉圧力容器を水で満たして放射線を遮り、水中でデブリを砕く作業を繰り返した。デブリは極めて硬く、場所により硬さや形状も異なるため、同時並行で工具を開発。先端部に人工ダイヤモンドを含む掘削用ボーリング機器などが使われた。 TMI原発2号機、右の円筒形建物が原子炉建屋(3/14) 格納容器が破損しなかったTMIでは、水で充たした状態で作業することが可能であった。水は放射線遮蔽の効果にすぐれており、デブリ取り出しなどの作業がより有利に運べる。しかし、それでも最後の1トンほどのデブリは取りきれず残したままになっている、という(1号機の運転終了後の解体作業のときに、2号機のデブリ取り出しと解体をも行う予定)。 フクイチでは(1)1~3号機が同時に炉心溶融を起こし,デブリ量が7倍近く有ること、(2)格納容器が破損しており、水中作業でデブリを取り出すのは難しいと考えられている、(3)冷却水を注ぎ続けておりそれが格納容器の外へ流出しており、しかも、地下水の豊富な所であって、汚染水は限り無く増加している。(4)事故当時未成年であった人たちの甲状腺がん患者数がはっきりと急増したことは調査によって確認されているが、原発事故の被害について隠蔽をこととする政府は、成年層に調査・治療を広げること、福島に限らず調査地域を広げることなどをしようとしていない。甲状腺がんは放射物質による発症の1例にすぎず、極めて広範囲の健康障害が出ることがチェルノブイリ事故後の調査などで確認されている。 ・・・・・等々により、極めて困難な長期に渡る作業が想像される。 「米スリーマイル島原発事故から40年、現地で増える甲状腺がん患者」(3/18)というレポートが「RIEF」に出ている。チェルノブイリ事故でも20年、30年後に発症数が増加することが知られている。フクイチ事故が例外であるはずがない。 日本政府は隠蔽をこととするどころでなく、原発再稼働を強くがむしゃらに進めようとしている。国民ははっきりと《原発 NO!!》を示さないといけない。 | Top |
3/31-2019 | 東京電力が、廃炉作業が進む福島第1原発で昨年秋、社員を除く全作業員約5千人を対象に実施したアンケートで、4割が第1原発で働くことに「不安を感じている」と回答した。理由として、このうち45%が「先の工事量が見えないため、いつまで働けるか分からない」を挙げ、「被ばくによる健康への影響」が40%、「安定的な収入が保証されない」が36%と続いた。 アンケートは事故があった2011年以降、作業環境の改善を目的に毎年実施。今回は18年9月に行い、対象者の94%に当たる5031人から結果を回収した。年代別では、40代が最も多く29%で、10代も8人いた。(共同通信3/30) 現在フクイチ作業員は5000人余あり、その実態があまり外に知られていない。このアンケートは第9回目(2018年度)で、ネット上に公開されているのは第8回目「労働環境の改善に向けたアンケート」というもののようだ(ここ)。長文で、内容を把握しにくい。 フクイチ作業員の年齢・出身地・国籍・事業所名などのデータが欲しいが、見付けられない。 先月の朝日新聞(2/16)の記事だが「東電の「横柄さ」改善? 作業員調査「無理多い」の声も」が興味深かった。 | Top |
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