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第六巻 62
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蝉うり

明治廿四年の夏頃
此蝉賣の爺父を見
受たり

秋の蝉
子の手に啼て
   あわれなり

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菊池貴一郎『絵本風俗往来』に「きりぎりす売」があるが、上品な江戸の虫売と、近在の百姓が素人細工の籠で売る虫と両方を説明していて面白い。引用は読みやすくしている。
江戸の虫売は、荷の作りも涼し気に虫籠も品良く美しき種々をつるし、虫もすゝむし・まつ虫・くつわむし・かんたん・草しばり・かしが蛍などの種々を商ふ。またきりぎりす売は、近在の者おのれと虫を捕らえて江戸に持ち出でて売り歩く者にて、虫籠等も粗末の出来のみにして、になふ所の籠も極めて粗製なり。虫も種類少なく、きりぎりす及びくつわむし位なり。しかるに、代価は江戸の虫売よりは余程安価なるより、よく売れるなり。虫の出めは六月上旬より七月盆前までは盛んに売れしが、江戸の風俗にて盆には皆飼置きし虫を放つよりて、盆以後売口すくなし。
「草しばり」はクサヒバリの江戸訛。「かしが蛍」は不詳(「かしが・蛍」と切って読むとしても「かしが」が分からない)。

虫売りをまとめておく。巻三-13 蛍売、巻三-40 虫売、巻六-62 蝉売、巻八-11 小虫売、巻八-16 孫太郎虫売、巻八-65 風船虫売

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