き坊の近況 (2017年11月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

11/1-2017
浜岡原発で浸水、調査漏れが判明=台風で雨水、ダクトに流入(時事通信)

中部電力は31日、浜岡原発4号機(静岡県御前崎市)で、浸水対策調査が行われていなかった箇所が8カ所あったと発表した。台風22号が29日に静岡県沖などを通過した際、4号機の原子炉建屋と海水熱交換器建屋を地下で結ぶダクトに雨水約600リットルが流入し、発覚した。

中部電によると、雨水は工事のためシートで覆っていた作業スペースの入り口から地下の同スペースに流れ込み、ダクトには、同スペースとの間に設けられた壁にある電源ケーブル用の穴2カ所から入った。周辺6カ所も調査対象から漏れていたという。(時事通信10/31)

中部電力浜岡原発のサイトに、この「雨水侵入」に関する「レポートPDF10/31」が置いてある(ここ)。

すべての貫通部が調査され防水処置が行われている必要があるが、入り組んだ場所の貫通部などに見落としがあった、ということらしい。原子力規制委からの指摘がありそれに従って調査して、少なくとも2回報告している(2017-3/8、2016-12/26 いずれも同サイトに報告書PDFあり)。それにもかかわらず、今回の台風22号で浸水被害が実際にあって、見落としがあったことに気付いたというお粗末。ずいぶん、のほほんとやっている、という感じがする。

上図は、上で示した中部電力PDF10/31より。


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11/2-2017
東海第2原発、運転延長申請へ 日本原電、沸騰水型で初(共同通信)


茨城県東海村・東海
第2原発
日本原子力発電が、来年11月で運転開始から40年となる東海第2原発(茨城県)に関し、運転期間の延長を原子力規制委員会に申請する方針を固めたことが1日、分かった。他の保有原発の再稼働は見通せず、経営上、延長が不可欠となっていた。東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型」原子炉での延長申請は初めてとなる。

原発の運転は原則40年だが、規制委が認めれば1回に限り最長20年延長できる。原電は東海第2で、運転延長の申請に必要な特別点検を既に終えている。申請の期限は11月28日で、点検結果を精査した上で正式に決める方針だ。(図も 共同通信11/1)

311大震災の際は、原子炉は自動停止したが外部電源が途絶え、非常用ディーゼル発電機3台を起動した。が、津波による浸水で1台は停止た。綱渡り的状況を経て、3月15日に冷温停止状態にこぎつけた。それ以来、止まっている。
なお、東海第2原発で発電した電気はすべて、東京電力と東北電力に売電されていた(2010年で東電に8割、東北電に2割だった)。

周辺自治体(東海村、水戸市など)からは、再稼働に対する反対意見が強い。
水戸市や東海村などの周辺自治体が、原電に対し、延長申請する前に、安全協定を改定するよう求めてきたことから、強い反発も予想される。(東京新聞11/1)


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11/3-2017
(福島)県議長「第二原発廃炉、工程提示を」 東電に要請(朝日新聞)

福島)県議会の吉田栄光議長(自民、双葉郡)は1日、東京電力ホールディングスの小早川智明社長に対し、福島第二原発の全基廃炉を進めるための工程を議会に示すよう求めた。県議会はこれまでも廃炉を求めてきたが、より踏み込んだ形となった。小早川氏は「社に持ってかえって検討したい」と述べた。

吉田議長は「廃炉を前提に、どのような形にしていくのか、スケジュールをそろそろ示して頂く場面になってきている」と東電の見解を求めた。県議会は、昨年12月に第二原発の廃炉を求める意見書を全会一致で採択しており、吉田氏は「県民の総意として鑑みて頂きたい」と語った。

第二原発は東日本大震災で自動停止して以降は動いておらず、東電は判断を示していない。小早川氏は面談後、報道陣の取材に応じ、「エネルギーの需給、国のエネルギー安全保障、CO2の課題など多角的な検討の中で答えを出していく必要がある」と述べ、廃炉の是非や判断時期については明言を避けた。

柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働するまで廃炉を判断しないのではないかという指摘については、「それは関係ない」と否定した。(朝日新聞11/2)

「福島第2原発はとうぜん廃炉に」というのが福島県議会の全会一致した意見である。それに対して東電はあいまいな事しか言わず、何の約束もしていない。
たとえば、今年6月に東電の川村会長はつぎのように発言していた。
東京電力ホールディングスの川村隆会長は(6月)26日、訪問先の福島県庁で記者団に対し、地元自治体が要請している福島第2原子力発電所の廃炉について「なるべく早く結論を出したいが、期限の約束はできない」と述べた。その上で、地球温暖化対策や電力自由化などに言及し「変数がたくさんあり(廃炉は)経営判断として非常に難しい」とも述べた。 (日本経済新聞 2017/6/26)
煮え切らない東電の姿勢に対し、福島県会議長が“さっさと、廃炉の工程表を出せよ”と迫った、という形。これに対して東電社長は「持ち帰って検討する」とだけで、言質を与えなかったが、記者団から「柏崎刈羽原発が再稼働するまで廃炉を判断しないのではないか」との質問が出て、「特に関係ない」と答えた(福島民報11/2)ということ。


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11/4-2017
凍土壁、地中の温度0度以下に (毎日新聞)

東京電力は3日までに、福島第1原発1~4号機の周囲約1.5キロの地中に氷の壁を築く汚染水対策「凍土遮水壁」について、8月下旬に冷却を始めた建屋西側の7メートルの区間を含めて、地中の温度がおおむね0度以下に下がったと発表した。今後数カ月かけて、地下水位のデータなどを分析し、地下水をせき止める効果が出ているかどうかを見極め、凍土壁が完成したかを判断する。

第1原発では炉心溶融が起きた原子炉建屋などに地下水が流れ込み、たまっている高濃度汚染水と混ざって汚染水が増加。凍土壁は、1~4号機を取り囲むように埋めた深さ30メートルの配管に冷却材を循環させることで、地盤を凍らせて地下水流入を抑える狙い。

凍土壁の建設には国費約350億円が投入され、昨年3月末に凍結を開始。凍土壁が地下水位を下げすぎて建屋から汚染水が地中に漏れ出す懸念があったため、凍結は段階的に進められ、8月に残りの未凍結区間の凍結を始めた。(毎日新聞11/3)

凍土壁の効果があるかどうか数ヶ月掛けて調べるというのも、良く分からない話だが、地下水を凍土壁だけで食い止めているわけではなく、多数の井戸によって地下水を汲み上げ続けている。それら複数の対策のひとつが凍土壁なのである。凍土壁の効果が本当にあるのかどうか、疑う意見もある。

建屋の上流側で汚染される前の地下水をくみ上げて水質検査して海に排水する「地下水バイパス」、建屋周辺の「サブドレン」、海へ流れ込む汚染水を減量するために「地下水ドレン」も設けている。「サブドレン」と「地下水ドレン」から汲み上げた地下水は浄化装置で処理するがトリチウムは除去できない。タンクに溜めている。


東電サイト(ここ)にある説明図です。


トップページの写真を、ヤサイゾウムシから甲虫目テントウムシ科ムーアシロホシテントウに替えた。

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11/7-2017
もんじゅ廃炉で「勝利宣言」市民団体が集会で歓喜(福井新聞)

日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を求めてきた六つの市民団体が5日、福井市の県国際交流会館で「もんじゅ廃炉!核燃サイクルを止める全国集会」を開いた。政府が昨年12月に廃炉を正式決定したことを踏まえ、参加者が「勝利宣言」。活動に一つの区切りを付けるとともに、廃炉の速やかな実施や核燃料サイクル政策の中止に向け今後も取り組むことを確認した。

全国集会は、1995年にもんじゅのナトリウム漏れ事故発生を受け、原発反対県民会議などが翌年から毎年開いている。22回目の今回は、県内外から約400人が参加した。

主催者代表で同会議代表委員の中嶌哲演さんがあいさつし、もんじゅの廃炉決定を歓迎する一方で「手放しで喜んでいられない。廃炉がどう進められるか監視しないといけない」と引き続きの活動を呼び掛けた。

原子力資料情報室共同代表の伴英幸さんは「ナトリウムがいまだ配管内を循環しており、ナトリウム火災が再度起きる可能性もある」と廃炉を早急に進める必要性を指摘。「県などに要請して廃炉への筋道をつくり、その上で監視していきたい」とし、6日に県と県議会、敦賀市、同市議会に対し、機構の廃炉計画申請に速やかに同意するよう6団体共同で申し入れると報告した。

この後に参加者全員で「勝利宣言」。「やったぞー、もんじゅ廃炉」などと声を上げ、長年の活動が実を結んだことをあらためて喜んだ。
続いてのシンポジウムでは、もんじゅの訴訟に携わる弁護士の海渡雄一さんらが、核燃料サイクル政策の問題点について触れ「日本全体からプルトニウムの利用をなくすようにしないといけない」などと訴えた。(福井新聞11/6)

もんじゅの廃炉は決定したが、廃炉の具体的な工程は決まっていない。もんじゅは通常の原発とは比べものにならない複雑さで、大量のナトリウムを安全に抜くだけでも容易なことではない。燃料の取り出し、放射性廃棄物の始末、複雑な構造物の解体。いったい何十年掛かることになるのだろう。
士気の落ちている原研(日本原子力研究開発機構)がまた何か事故を起こさないものでもない。

国策として推進してきた「核燃料サイクルを止める」ことが本質的な課題である。


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11/8-2017
1号機の使用済み燃料搬出開始 見通しに甘さ(河北新報)


防風フェンスの設置工事が始まった1号機の原子炉建屋
(東京電力提供)
 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋で防風フェンスの設置工事が始まった。
 水素爆発した1号機は2011年10月に建屋を覆うカバーが取り付けられた。使用済み燃料の取り出しに向けて進められてきたカバーの撤去工事が今年10月に完了。鋼板製の防風フェンスを新たに設置し、がれき撤去に入る予定だ。

 1号機の使用済み燃料の搬出開始時期は、9月に改定された中長期ロードマップ(工程表)で再び先送りされた。前回改定で「20年度中」だった目標が、2号機と同様「23年度をめど」にずれ込んでいる。
 原子炉格納容器の真上にあるコンクリート製の3重のふた「ウェルプラグ」が爆発の影響でずれていることなどが新たに判明したためだ。放射線の遮蔽機能が損なわれており、作業員の被ばくを防ぐための新たな対策を取る必要がある。

 総重量が500トンもあるウェルプラグを遠隔操作でどうやって補修するか、具体的な工法は決まっていない。「23年度」の開始目標がさらに遅れる可能性はないか。
 専門家の間に東電の見通しの甘さを指摘する声がある。水素爆発を免れた2号機も建屋内の線量が極めて高く、取り出しに必要な建屋上部の解体工事は難航が予想される。工程通りに搬出が進むかは不透明だ。(写真も 河北新報11/7)

水素爆発のために1号機の「ウェルプラグ」がずれていたという記事は本欄 4/22-2017 にあり、そこに様子の分かる模式図があります。

原子炉全体(圧力容器)を収めておく格納容器の上蓋がウェルプラグで、それがズレたために隙間から強い放射線が漏れ出ているという。そのために屋上で作業が出来ない。500トンもあるものの修理を遠隔操作で行うことができるのか。それのための準備が大変なのではないか、23年度から「使用済み燃料の搬出開始」を行うという工程表は、またまた、延びるのではないか。

2号機は、建屋はほとんど壊れていないが内部の線量がきわめて高く、屋上階での作業が困難な点は1号機と同じである。2号機も23年度から搬出開始を予定しており、やはり、東電の見通しが甘いのではないかとの指摘が出ている。


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11/9-2017
福井)県専門委、再稼働へ了承 大飯3、4号機(中日新聞)

関西電力が年明けの再稼働を目指す大飯原発3、4号機(おおい町)について、有識者でつくる県原子力安全専門委員会は8日、県庁で開いた会合で「ハード、ソフト両面で改善が図られており、必要な対策は確保できている」とする報告書案を大筋で了承した。欠席した委員らの意見を聞いた上で中川英之委員長(福井大名誉教授)が最終的に取りまとめ、西川一誠知事に提出する。

中川委員長は会合後、記者団に個人的な見解と断った上で「(事故を制圧する)工学的安全性は確保されていると思っている」と述べた。詰めの調整があるため知事への提出時期は未定としているが、専門委が関電の対策に事実上のお墨付きを与えたことで、再稼働へのハードルは西川知事の同意だけとなった。

専門委は大飯3、4号機が新規制基準への適合を認められた今年5月以降、四回の会合と現場確認を実施。
福島第一原発事故を踏まえた新規制基準での要求事項に加え、独自に求めた核燃料を冷やすのに必要な電源設備や事故時に備えた通信設備の多重化、訓練の充実化などを求め、取り組み状況を確認した。

大飯原発を巡っては、原子力規制委員会の(島崎邦彦)元委員から地震の揺れの想定が過小と指摘されているが、専門委は規制委の判断を追認。
独自の検証を求めていた田島俊彦委員(県立大名誉教授)はこの日も「(島崎氏の)指摘をもっと真摯に受け止め、見直しを検討すべきだったと思う」と苦言を呈した。

傍聴席、疑問の声

県原子力安全専門委員会を傍聴した市民からは「地震想定や住民避難の議論は不十分だ。予定調和の結論」と批判する声が聞かれた。

「地震想定は前原子力規制委員長代理の島崎邦彦氏を呼んで、一緒に議論すべきだった」。会合後、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会代表の小山英之さん(77)=大阪市=は憤った。
島崎氏は昨年、大飯3、4号機を襲うと想定される地震の最大の揺れ「856ガル」を「過小評価」と指摘。専門委でも触れてきたものの、規制委が出した「合理性がなく、見直す必要はない」との判断を確認する作業にとどまった。住民避難計画についても、専門委は「工学的な安全性を検証する」(中川英之委員長)とのスタンスを理由にほとんど議論しなかった。
小山さんは「福井県、滋賀県の各避難計画をみると、それぞれ同じ道路を使って逃げる箇所もある」と原発事故時の混乱を心配した。福井市の女性(61)は「議論しないといけない問題を置き去りにして再稼働に進んでいく」と表情を曇らせていた。この日の傍聴者は十一人だった。(中日新聞 11/9)

「県専門委」の顔ぶれの選定が問題だったのではないか。
近頃の日本では、最終決定の前の「専門委」のような複数名による検討を経て、その委員会の「答申」や「結論」を追認するというやり方をすることが多い。そのことによって、個人が露出せず、決定したのは「委員会」の名前が書かれた書類だということになる。
「専門委」の顔ぶれの選定は事務方が準備することになり、その段階で官僚の思惑が働くことになる。

県でも国でも官僚は生涯その職に就いており、その分野の人脈にもっとも精通することになりがちである。しかも、彼らは抜け目なく揚げ足を取られないような「人選の基準」などを作っていて、部外者が口を挟む余地の無いようにしているのが普通である。これが、わが国にはびこっている「官僚独裁」というシステムである。
このシステムは、長い間、この国の保守政治のために効果的に働いている。


トップページの写真を、ムーアシロホシテントウから甲虫目ハムシ科カサハラハムシに替えた。

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11/10-2017
<島根原発廃炉ルポ>廃棄物の行方地元懸念 経済効果も未知数(河北新報)


東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年と定められ、今後、全国各地の原発で廃炉が増えるとみられる。電力各社は拡大する廃炉ビジネスの経済効果を強調するが、地元への波及は読めない上、定まらない放射性廃棄物の行方を懸念する見方は根強い。廃炉作業が7月に始まった中国電力島根原発1号機(松江市)を訪ね、廃炉の今と地域の思いを探った。

建屋内の燃料プールで、核燃料を回収する準備が進む。運転状況を示すボードには「運転終了」の紙が張られていた。「まだ作業員の被ばくを抑える放射能汚染マップを作製している段階。30年かかる廃炉作業が始まったばかりです」。中国電の担当者が説明する。

島根1号機は1974年に運転開始した沸騰水型軽水炉(BWR)。2010年に発覚した点検不備で停止したままだった。原発事故後に規定された「40年ルール」を延長するには安全対策に膨大な費用が見込まれ、廃炉が決まった。

廃炉作業の施設解体で生じる原子炉内の構造物や圧力容器などの「低レベル放射性廃棄物」は、各電力会社が埋設処分地を見つけなければならない。島根1号機の場合、廃炉作業で生じる廃棄物計18万トンのうち、低レベル放射性廃棄物は約6000トン。中国電は「他の電力会社と連携して廃棄したい」との方針を示す。ただ処分地探しは難航必至で、廃炉工程が遅れる事態も危惧される
原発から2.8キロに自宅があり、脱原発の市民運動に携わる農業安達進さん(64)は「廃炉は歓迎だが、核燃料や汚染廃棄物がいつまで留め置かれるのだろうか」と懸念する。

計画によると、使用済み核燃料の搬出や除染、原子炉や建屋の解体は2045年度までかかる見通し。費用は381億円を見込む。
廃炉ビジネスは3兆円規模と言われる。大手メーカー以外、地元企業がどれほど関われるかは未知数だ。
松江市によると、中国電が建設工事中の3号機の場合、島根県内の企業の工事受注額は全体の14%を占めた。一方、1号機の廃炉作業を巡り、地元経済界から受注を求める要望はない

市の担当者は「廃炉は汚染に関わる作業。企業も社員も不安を感じているのだろう」と推し量る。
保母武彦島根大名誉教授は「原発も廃炉ビジネスも、自立した地域経済が育つものではない」と懐疑的な見方を示す。

中国電力島根原発]松江市の日本海沿いに3基あり、国内で唯一、県庁所在地に立地する。1号機(46万キロワット)は7月に廃炉作業に着手し、2号機(82万キロワット)は再稼働に向けて国が審査中。3号機(137万3000キロワット)は建設工事中。原発事故を想定した避難計画策定が義務付けられている原発30キロ圏内に島根、鳥取両県の6市がある。(図も 河北新報11/10)

島根原発はあまり話題にならないので、河北新報がルポしてくれたのはありがたい。
廃炉作業に入った1号機について「地元経済界から受注を求める要望はない」、「廃炉は汚染に関わる作業。企業も社員も不安を感じている」という現状をはじめて知った。廃炉作業は士気が上がらないのは、本当なんだ。もちろん本質的問題は、放射性廃棄物の処分場が見つけられないということである。

2号機は82.0万kWで、再稼働をめざして国の審査が行われている。

3号機は137.3万kWで建設中。運転開始予定は当初2012年度とされていたが、今は「未定」としている。2013年度で建設進捗率93.6%と発表されている。


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11/12-2017
泊に活断層なし、根拠示せず 北電 規制委は再調査要求 再稼働審査さらに長期化(北海道新聞)

北海道電力は10日に開かれた原子力規制委員会の審査会合で、泊原発(後志管内泊村)敷地内に存在し、従来は約30万年以上前のもので今後活動する可能性はないと主張してきた断層について、根拠となる「明瞭な火山灰層」が現地調査で見つからないことを報告した。北電は今月下旬、調査結果をまとめる方針だが、規制委はより詳細に調べるよう求めており、再稼働審査の長期化は必至だ。

規制委は、12万~13万年前以降に活動した断層を「活断層」と定義し、想定される地震の揺れを検討するよう原発事業者に求めている。特に敷地内の断層は設備へ影響が大きく、再稼働の是非を評価する上で重要な判断材料となっている。(図も 北海道新聞11/11)

10日に行われた原子力規制委の審査会合のビデオは、YouTubeで見ることができる(ここ 全3:52)。このうち、泊原発の審査は3:17辺りから。資料はこれです。

問題の断層に活動性がないという根拠のために、火山灰層を掘って、火山灰中のガラス質に対してフィッション・トラック法を適用して年代を測定するというのが北海道電力の手法なのだが、1,2号機建造の際に敷地内の火山灰層を大部分はぎ取ってしまっていて、資料となる火山灰層が見当たらない。隣接する敷地外を探索したりしている。
北電は次回の11月下旬の会合で詳しく説明すると約束しているが、約束を果たせるか規制委の方が心配顔で盛んに念押ししている。。


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11/13-2017
燃料取扱機、3号機に設置=プールから搬出、18年度開始-福島第1原発(時事通信)


東京電力福島第1原発3号機
の原子炉建屋上部につり上げ
られる燃料取扱機=12日午
前、福島県大熊町(代表撮影)
東京電力は12日、福島第1原発3号機の使用済み燃料プールから核燃料を取り出すため、原子炉建屋上部で燃料取扱機の設置を始めた。取扱機は重さ72トンで、大型クレーン2機を使ってプールがある地上36メートルの建屋上部までつり上げた。東電は2018年度半ばに取り出しを始める方針。

3号機のプールには、未使用を含め566体の核燃料が保管されている。取り出し作業では強い放射線を遮るため、水が入ったプール内で取扱機を使って核燃料を頑丈な容器に移し密封。建屋上部に設置したクレーンで容器を地上に降ろし、原子炉から離れた別のプールに運んで保管する。

3号機の原子炉建屋は、11年3月の水素爆発で大破した。東電は上部のがれきなどを撤去。装置を風雨から守り、放射性物質の飛散を防ぐかまぼこ型のカバーの設置を今年7月末から進めている。今月20日には核燃料を地上に降ろすクレーンをつり上げる計画だ。(時事通信11/12)

3号機は建屋屋上の片付けができて、使用済み核燃料の取り出しの段取りとなってきたのだが、何せ、極めて線量が高いために人が近寄れず、すべてを遠隔操作する必要がある。幾種類もの大型機械を設置する作業にやっと取り掛かった。

1,2号機では別個の困難な課題があり、使用済み燃料の搬出開始の予定が2023年からに延びたというニュースを 11月8日 に扱った。


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11/15-2017
核ごみ住民会合に学生動員 委託会社が謝礼持ち掛け(中日新聞)

原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場候補地絞り込みに向け、経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)が住民向けに5都府県で開いた意見交換会で、広報業務を委託された会社が学生39人に日当や謝礼を持ち掛け、参加させていたことが14日分かった。NUMOが記者会見で明らかにした。

このうち6日にさいたま市で開かれた会には、1人1万円の日当を約束した上で学生12人を動員。10月から11月上旬にかけてあった東京、愛知、大阪、兵庫の会では、学生サークル向けに活動場所や印刷物の提供など1人5千円相当の謝礼を約束し27人を動員していた。(中日新聞11/15)


6日に、経済産業省とNUMOが、さい
たま市で開いた住民向けの意見交換会

この事件は、今月6日に開かれた埼玉での説明会(上の写真)で、学生の1人が「参加すると謝礼をもらえると聞いた」と発言したことから発覚したという。

NUMOなどのHPに「科学的特性マップ」が発表されたのは今年7月28日だった(NUMO科学的特性マップ)。それの理解を深めるための住民向け意見交換会で、謝礼を払って学生を動員していた。かつて九州電力が行ったやらせシンポジウム事件の再現である。

九州電力のやらせ事件は2回あった。Ⅰつ目は、2005年~07年にかけて、玄海原発など3つの原発の地元で、「プルサーマル」に関するシンポジウムで、国の担当者が電力会社に対し、動員を求めたり、質問や意見を述べるよう要請する「やらせ」を働きかけたりしていた。2つ目は、2011年の「やらせメール事件」で、玄海原発2,3号機の運転再開に関する佐賀県民向け説明会の際、九電が関連会社の社員らに再稼働を支持する内容のメールを投稿するように指示していた事件。

意見交換会の開催を委託されていた会社は、前から学生動員をしていたと、NHKが報じている。
NUMOから開催広報を委託されていた)2次下請けの会社は平成25年度以降、同じような「核のごみ」の処分についての説明会に関する委託を受けて、学生にサークル活動への支援を約束し、説明会への参加を依頼していたということですが、NUMOは記録が残っていないとして過去の業務について調査はしない方針を示しました。 (NHK11/15)


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11/16-2017
福島原発汚染水タンクに神鋼部品 敷地内の850基の大半(共同通信)


福島第1原発の敷地内に立ち並ぶ汚染水タンク=9月

神戸製鋼所の製品データ改ざん問題で、東京電力福島第1原発事故に伴い増え続ける汚染水を敷地内で貯蔵しているタンク約850基の大半に神戸製鋼が製造した部品が使われていることが14日、原子力規制委員会への取材で分かった。

東電は「不正が行われた工場で作られた部品はなく、品質に影響はない」としているが、神戸製鋼の調査は過去1年分のみ。それ以前に製造した部品に不正があれば、耐久性に問題が出る可能性があり、規制委は東電に詳細な調査を指示した。

規制委によると、約850基のうち、神戸製鋼の部品が使用されていたのは約730基ある「溶接型」タンク。(写真も 共同通信11/14)

トップページの写真を、カサハラハムシからカメムシ目カメムシ科ナカボシカメムシに替えた。

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11/17-2017
福島第1、台風で汚染水1万トン 地下水流入(福島民友)

東京電力福島第1原発1~4号機の建屋地下に流入する地下水の量が、10月の台風に伴う降雨の影響により、同月の1カ月間で推定約1万トン近くに上ったことが16日、分かった。流入した地下水は建屋地下にたまっている汚染水と混ざり新たな汚染水になったとみられる。東電は「一時的な増加で、汚染水を保管するタンクの容量がただちに不足することはない」と説明している。

福島市で同日開かれた経済産業省の「廃炉・汚染水対策現地調整会議」で報告された。
東電によると、建屋地下への流入量は、今年に入ってから1日当たり百数十トン程度で推移していたが、10月は同約310トンに急増した。(福島民友11/16)

「流入する地下水」と無造作に書いているが、単なる地下水ではないことが問題なのだ。地下水は溶融して流出した核燃料(デブリ)といずれかの場所で接触し、高濃度に汚染され汚染水となる。地下室にすでに貯留している汚染水に新たに加わるのである。
それを浄化装置アルプスなどを通して汚染の度合いを低めるが、トリチウムは取り除くことができない。そういう処理をした汚染水をタンクへ溜めている。

地下水は雨量豊富な列島の山地で生まれ、長い時間をかけて地下を流れ下り、海へ入る。その途中でフクイチ事故でまき散らされた放射性セシウムなどや溶融燃料(デブリ)と接触して汚染水となる。台風で地下水が増えると汚染水も増加する。この悪循環を断ち切るためには、デブリの取り出しがどうしても必要だ。それが極めて難題であることは言うまでもない。

台風だけとは限らない。豪雨のたびに汚染水が予定以上に急増する。フクイチの現状は、このような不安定さを抱えていることを認識する必要がある。


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11/18-2017
<指定廃>最終処分開始 不安と評価、福島複雑(河北新報)

東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の指定廃棄物などを埋め立てる国の最終処分場が17日、同県富岡町で稼働した。自治体などは保管する廃棄物搬出への一歩と評価したが、受け入れる地域には風評被害などへの不安が根強い。住民は「とにかく安全に進めてほしい」と願った。

焼却灰や汚泥、稲わらなどの指定廃棄物は9月末現在で11都県に計約20万トンあり、福島県分が17万トンを占める。場所の確保など保管に頭を悩ます自治体や廃棄物処理業者は少なくない。
一般ごみの焼却灰などを大量に管理する郡山市清掃課の担当者は「処分場の地元を思えば複雑だが、ようやく始まり安心している」と稼働を歓迎する。

国は指定廃棄物を各都県で処分する方針だが、住民の反対などで福島県以外は計画が進んでいない。同県でも地元住民らは割り切れない思いを抱える。

富岡町から郡山市に避難する女性会社員(52)は帰還意欲への影響を懸念する。町の避難指示は今春、一部を除いて解除されたが、戻った町民は人口の3%。「運搬時の安全性に不安が残る。町民の帰還の妨げにならなければいいが」と不安視する。
搬入路のある楢葉町の地元行政区では稲作が一部再開された。上繁岡行政区の農業佐藤充男さん(73)は「放射能と聞いただけで抵抗感を示す人がいる」と風評被害を憂慮する。佐藤さんは「反対だが諦めるしかないのが現実。始まった以上は安全な運営をお願いするしかない。集落を維持できる対策も求めたい」と話した。(図も 河北新報11/18)

フクイチの事故の後、住宅周辺と農地や道路の除染が行われた。除染で生じた濃度の高い放射性汚染物が住宅周辺や農地に仮置きされてきている。それを「最終処分場」へ搬入する作業が始まったというニュースである。住民にとっては、搬入に伴う不安や不満がたくさんある。

様々な問題点が残っているが、そのうちで最も大きいのは、除染の手が一切付けられなかった広大な森林が残っていることである。この地域はセシウムの半減期30年にしたがってゆっくりと放射能が減衰するのを待つしかない(90年で8分の1となる)。その間に除染した地域へ再度放射性物質が広がってくるので、除染の効果が打ち消されてしまう。
もう一つの問題点は、福島県は最終処分場を何とか造ったが、残りの10都県では手が付いていない。生活圏に除染で出た汚染物質が保管されたままなのである。

大規模な放射能汚染を伴う原発事故は、じつにやっかいで、けして簡単には始末が付かない。


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11/19-2017
(長野県)富士見町で捕獲ニホンジカ 基準超すセシウム(信濃毎日)

長野県)県林務部は17日、諏訪郡富士見町で捕獲された雌のニホンジカ1頭の肉を調べた結果、国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える放射性セシウム137を156ベクレル(1キログラム当たり)検出したと発表した。林務部は同日、県内に30ある食肉加工処理施設に、富士見町で捕獲されたニホンジカの取り扱い自粛を要請。飲食店や県民にも販売、摂取の自粛を求めている。

県内のニホンジカから国の基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは、2012年6月に北佐久郡軽井沢町で捕獲された雄1頭以来で2例目。自粛要請に法的根拠はないが、県は今後、政府の原子力災害対策本部が原子力災害対策特別措置法に基づき、取り扱いの制限を指示する可能性があるとみている。

県は年40頭のニホンジカやイノシシの肉に含まれる放射性セシウムを調べている。富士見町のニホンジカは今月13日に捕獲されたうちの1頭で、16日に県環境保全研究所(長野市)が検査した。

町産業課によると、町内では有害鳥獣駆除と野生鳥獣肉「ジビエ」として販売する目的で年間700〜800頭のニホンジカが捕獲され、半数近くは、県内外のスーパーやレストランなどにジビエとして出荷されている。

ニホンジカの肉の加工、販売を手掛ける町内の関係者は、県の要請を受けて当面販売を中止するとし、「シカは自由に動き回る。八ケ岳山麓一帯のジビエにマイナスイメージが持たれてしまうかもしれない」と不安そうに話した。

また、軽井沢プリンスホテル(北佐久郡軽井沢町)は17日、17〜19日に軽井沢町内2施設で開く計画だった県産ジビエ料理を提供する「信州ジビエフェア」の中止を決めた。検出個体の肉は流通していないが、念のため見合わせるとしている。1施設では17日昼から料理提供を始めたが、食べた客はいないという。もう一つの施設では夕食時からの提供を予定していたが、発表を受けて取りやめた。 (地図はGoogle map 原図 信濃毎日11/18)

ニホンジカがどれほどの行動範囲を持つものなのか分からないが、富士山麓のキノコが基準値を超える放射能汚染しているという報道は何回か有った。例えば、本欄 12月20日-2014。八ケ岳の西麓で捕獲されたシカが基準値を超えていたというのは見過ごせないニュースだ。

野生のシカ肉がいかに美味いものかわたしは知っているので「ジビエ」は賛成なのだが、残念ながら少なくとも東日本の山地全体が放射能汚染で覆われていて、食用には危険である。そう心得ておかざるをえない。
フクイチ事故によって、積極的にシカ・イノシシなどを食用に狩猟するという手段が封じられてしまったことは、誠に残念なことだ。山地・農地の荒廃を防止することや、観光資源としての「ジビエ」など有望な利用法があったのだが。
昨日もセシウム放射能の減衰はゆっくりで、90年で8分の1と書いた。もう一度繰り返しておこう、大規模な放射能汚染を伴う原発事故は、じつにやっかいで、けして簡単には始末が付かない。


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11/20-2017
原電の廃炉費、大幅不足 原発建設に流用、全基停止後も(朝日新聞)


日本原子力発電の廃炉資金の状況
原発専業会社の日本原子力発電(原電)が、廃炉のために準備しておくべきお金を流用し、残高が大幅に不足している。原電が保有する原発4基のうち、東海第二(茨城県、停止中)は来年11月に運転開始40年を迎え、敦賀原発2号機(福井県、同)は建屋下に活断層が走っている可能性が指摘される。これらの原発が廃炉の判断を迫られても、作業に必要な費用を賄えない可能性がある。

原電は近く、東海第二の運転を最長60年に延長できるよう原子力規制委員会に申請する方針だが、廃炉にするにもその資金を確保できないことも背景にある。

経済産業省の省令では、原発事業者は保有する原発の廃炉費用を見積もり、毎年、解体引当金の名目で積み立てるよう義務付けられている。ただ、積み立てたお金を一時的に別の用途に使うことは禁じていない。

原電の場合、廃炉作業中の東海原発(茨城県)、敦賀原発1号機を含む4基の廃炉にあてるため、総額1800億円前後の解体引当金がある計算だが、「大半を流用してしまった」(関係者)という。
複数の関係者によると、東京電力福島第一原発事故の前、原電は解体引当金を敦賀3、4号機(建設中)の建設費に流用することを決めた。金融機関からの借金を増やさない目的だったという。原発事故後、原電の全原発が停止して資金繰りが厳しくなると、穴埋めする余裕はなくなり、流用が続いた。原電は解体引当金をどの程度使ったかを明らかにしていない。(図も 朝日新聞11/17)

原電(日本原子力発電)は、廃炉のための準備金を敦賀3,4号機の建造のために流用してしまっていた、という。3,4号機は福井県敦賀市に建設中で、防波堤や取水口などの工事は終わっており、準備工事は8割以上済んでいるが、6年間中断している。当初の総工事費は約7700億円であったが、新基準対応のために、上振れするだろうという(福井新聞4/21-2017)。

本欄 11月2日で取りあげたように、東海第2の運転延長を申請する期限は11月28日であり、近く原電は申請を行うと見られている。


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11/22-2017
茨城・東海第2原発 20年延長、原電が申請表明 運転開始40年 福島と同型(毎日新聞)

日本原子力発電(原電)は21日、運転開始から来年で40年を迎える東海第2原発(茨城県東海村)の運転期間の20年延長を原子力規制委員会に申請する方針を表明した。
延長申請は関西電力の3基に続いて全国4基目で、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型」原子炉の延長申請は初めて。

原電の村松衛社長が同日、茨城県と東海村を訪れ、24日に申請する方針を大井川和彦知事と山田修村長に伝えた。

福島第1原発事故を受けて改正した原子炉等規制法では、原発の運転期間は稼働開始から原則40年で、規制委の認可があれば最長20年延長できる。原電は再稼働に必要な新規制基準適合審査については申請済みで、規制委の審査はほぼ終了している。(毎日新聞11/22)

昨日の本欄で朝日新聞が原電の資金難を報道していることを伝えた。同紙は本日も同じ問題に焦点を当てている。原電の資金繰りが苦しく、第2原発の再稼働の是非は「債務保証がなされるかどうかだ」と規制委からも指摘を受けているという。
原子力規制委員会は、東海第二の再稼働の是非を審査中だが、焦点になっているのは原電の資金繰りだ。 少なくとも1740億円かかる安全対策工事費用について、規制委の更田豊志委員長は15日、「債務保証者の提示を受けることが次のステップへ移るための課題」と異例の指摘をした。経営難の原電は自力では金融機関から融資を受けられないため、株主の大手電力などから債務保証してもらうことが審査を通る条件になる、との考えだ。
原電の株主で東海第二の電気を買ってきた東京電力ホールディングスは態度を明らかにしていない。東海第二の発電単価が割高になるという試算もあり、「経済性だけでは判断できない」(東電幹部)ためだ。規制委幹部は「期限までにすべての審査が終わるのか。これからも綱渡りが続く」と話す。
(朝日新聞11/22)
30キロ圏内に約96万人が暮らす東海第2原発の運転は、そもそもが無理筋なのだが、資金不足を改善するためにも是が非でも運転したいのである。こういう高リスクの原発の運転を容認してはならない。


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11/23-2017
もんじゅ 廃炉手続き前進 地域振興策、地元受け入れ(毎日新聞)

政府は22日、昨年12月に廃炉を決定した日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、福井県と敦賀市への交付金の増額などを盛り込んだ地域振興策を地元側に提示した。福井県の西川一誠知事は「政府の責任ある対応をいただけた。手続きを進めることを了解したい」と述べ、原子力機構が廃炉計画を原子力規制委員会に申請することを了承した。

もんじゅを所管する林芳正文部科学相は廃炉計画を「8月中に出す」と明言したが、地元が求める地域振興策や安全体制の構築で折り合いが付かず、遅れていた。廃炉決定から約1年、手続きがようやく進む。

地域振興策は、林文科相や世耕弘成経済産業相らが西川知事や渕上隆信敦賀市長に説明した。廃炉期間中に県と市に毎年1億円ずつ支給することになっている交付金について積み増す方針を明示。廃炉開始後も10年程度は約1000人の雇用を維持する。もんじゅの代わりに地元が求める試験研究炉は、2022年度に詳細設計を始めるとした。(毎日新聞11/23)

昨年12月にもんじゅ廃炉を決めたが地元が承知せず、「廃炉計画」が滞っていた。結局、金の増額で決着が付いた。

福井県と敦賀市に廃炉期間中(30年間を想定)は、地域振興策などとして毎年1億円ずつ支給するとしていたが、それに「積み増す」ということで話が付いたということらしい。つまり、60億円にさらに増額するということ。

福井県の西川知事は、国や電力会社から金をもぎ取ってくるのに長けている。しかし、それに乗る国側の税金のこういう使い方はまったくひどいものだ。


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11/24-2017
東海第二 再稼働同意対象を拡大 水戸など周辺5市も(東京新聞)

日本原子力発電(原電)は二十二日、来秋に運転期限の四十年を迎える東海第二原発(茨城県東海村)について、再稼働に向けた同意を求める自治体に、水戸市など五市を新たに加える方針を表明した。再稼働してきた各地の原発では、同意は立地する県・市町村に限定しており、対象を周辺自治体にも拡大するのは全国初。同意対象が増えることで、一自治体でも反対すれば東海第二は再稼働できなくなるなど、よりハードルが高くなる。

原電の村松衛社長が同日、村や水戸市など三十キロ圏の六市村でつくる「原子力所在地域首長懇談会」で、こうした方針を説明した。対象が拡大されると、再稼働には水戸市のほか、ひたちなか、那珂、日立、常陸太田各市、東海村の計六市村と県の同意が必要になる。

懇談会座長の山田修村長によると、原電側は会合で六市村と新たな安全協定を結んだ上で、同意がなければ、再稼働しないという規定を明記する案を提示した。懇談会は、この案を受け入れる方針で、来年三月までに新協定の締結を目指す。

山田村長は「難航したが、出口が見えた」と評価。村松社長は、原発から三十キロ圏に約九十六万人が暮らすことなどに触れ、「茨城の特性を踏まえ、他の原発立地地域に配慮したぎりぎりの決断です」と話した。(東京新聞11/23)

本欄 11月22日 で扱ったが、原電は東海第2原発の運転期間を20年延長する申請を行う方針であることを明かにした。その東海第2の再稼働を同意する自治体を30km圏の自治体のうちの6自治体にまで拡大するという方針を表明した。

30km圏のすべての自治体へ拡大するとしたわけではないが、従来の原発においては県と地元自治体のみに再稼働の同意権を認めるとしていたのであるから、画期的なことである。全国の他の原発の再稼働同意権の論議に影響するところ大であろう。

30km圏内に約96万人が暮らしている東海原発では、実効性ある避難計画を作成することが非常に難しい。あらたに再稼働の同意を求められることになる自治体がどのような態度に出るか。多数の住民の動向も注目される。


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11/25-2017
原電、東海第二の延長申請 40年超原発、首都圏不安(東京新聞)


運転期間延長を申請した東海第二原発(左)
茨城県東海村で、本社ヘリ「おおづる」から
首都圏で唯一の原発で、来年11月で40年の運転期限を迎える東海第二原発(茨城県東海村)について、運営する日本原子力発電(原電)は24日、原子力規制委員会に最長20年の運転延長を求める申請書を提出した。東海第二は事故を起こした東京電力福島第一の原子炉と同じ「沸騰水型」で、同型の延長申請は初。申請は全国で4基目で、東日本では初となる。

原電の石坂善弘常務執行役員がこの日、規制委を訪れ申請書類を手渡した。石坂氏は報道陣に「今回の申請はあくまで審査の一環。再稼働や廃炉の判断とは直接関係ない」と話した。防潮堤の建設など約1800億円をかけて、2021年3月までに対策工事を終えた上で、再稼働を目指す。

東海第二が再稼働するためには、規制委が運転延長を認めるほかにも、新規制基準に基づいた審査で「適合」と判断される必要がある。規制委はこれまでに想定される津波の高さなど、新基準に適合するかどうかの審査をほぼ終えており、年明けにも「適合」の判断が示される見通し。

原電は運転延長の申請のため、原子炉などの劣化状況を調べる点検を10月末までに終えていた。今月28日が期限だった。原発の運転期間を巡っては、福島第一の事故を受け、原子炉等規制法で原則40年に制限された。ただし規制委が認めれば、1回に限り、最長20年の運転延長が可能となる。これまでに、福井県の関西電力高浜1、2号機と美浜3号機の2原発3基が延長申請され、規制委は、いずれも認めている。

ただ、東海第二原発の30キロ圏には約96万人が生活し、14市町村が避難計画を作ることになっているが、いまだにまとまっていない。また、原電は再稼働する際、立地する県と村のほか、30キロ圏の水戸や日立など5市の同意を取ると表明しており、ハードルがある。原電の村松衛(まもる)社長は21日、茨城県の大井川和彦知事と面会し、24日に延長申請する方針を伝達していた。

30キロ圏96万人どう避難
<解説> 東海第二の運転延長が申請されたことで、再稼働にまた一歩近づいた。だが、原発30キロ圏には全国最多の約96万人が生活し、大事故が起きた時に、無事に逃げ切れるのかという問題を残したままだ。住民の不安を拭うことが、最も大切になる。
福島の事故では、放射性物質が広範囲に飛び散り、避難も大混乱した。その反省から、避難計画の策定対象が、原発30キロ圏の市町村に、法で義務付けられた。

どの原発でも、避難計画が「机上」にとどまり、実際の事故で使えるのかが問われている。
茨城県が2015年に作った案では、30キロ圏の住民は、県内のほか、栃木、千葉、福島など周辺5県に避難する。だが、原発事故と、地震や津波が同時に起きる複合災害や、避難先が同時に被災するケースなどを想定していない。

自治体による避難の説明会では、住民から「高齢者や障害者が一人で逃げられない」「長期避難の生活が心配だ」と不安が漏れた。

避難計画は再稼働にかかわらず、原発がある限り必要で、今も住民は危険にさらされている。そもそも、100万人近い人を想定した避難計画を作るのは、無理ではないかとの疑問がある。

原電は再稼働前に立地する県や東海村のほか、水戸など5市も新たに同意を取る方針を示した。自治体側が、再稼働の是非を判断することになる。住民の安全を確保する最善の選択は何か。自治体側にボールは預けられた。(写真と下表も 東京新聞11/24)


本欄が昨日取りあげたように、原電は茨城県と東海村に加えて30km圏内の5市にも再稼働の同意を求めるとする新方針を示した。

共同通信は、再稼働審査は合格するだろうが、そのあとの避難計画および住民合意が難しいだろうとする観測を述べている。
再稼働審査はほぼ終了したが、安全対策費は当初想定の2倍以上の約1800億円に膨らんだ。事実上の再稼働手続きの一環である避難計画の策定は、対象住民が全国の原発で最多の96万人で難航が予想される。地元同意の見通しも立たず、審査合格後も再稼働は極めて困難とみられる。(共同通信11/24)
首都圏直下型地震の可能性はかなり高く(「30年間で70%の確率」という予想がありますが、これの厳密な意味は良く分かりません)、東海第二で深刻な放射能事故が生じる可能性は想定すべきだ。30km圏という想定は、いわばシンボリックなもので、現実に事故が起こればそのときの風向きや降雨の様子によって数十kmから100kmを越える地域に被害が生じうることは、フクイチ事故で体験している。

首都圏が崩壊に陥る可能性があるような原発は、「国益」を大事にしたい政治家にとってさえ、運転すべきではないという結論になるのではないか。電力会社の利益をそこまで重視する理屈は立たないだろう。


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11/26-2017
96万人避難見通せず 東海第二 運転延長を申請(東京新聞)

日本原子力発電(原電)は24日、来年11月に40年の運転期限に到達する東海第二原発(茨城県東海村)について、20年の運転延長を原子力規制委員会に申請した。原電は今後、経営の柱である東海第二の2021年3月以降の再稼働を目指すが、事故が起きた際の避難計画の整備は不十分で、周辺自治体の同意も見通せないまま。首都圏唯一の原発は、課題が山積したまま大きな節目を迎えた。

東海第二の周辺30キロ圏には、全国最多の96万人が暮らす。しかし各自治体では事故に備えた避難計画はいまだに策定中で、完成のめども立っていない。

11年の東京電力福島第一原発事故では首都圏でも、放射線量が比較的高い「ホットスポット」が続出するなど大きな影響が出た。東海第二は東京都庁(新宿区)から約120キロしか離れておらず、大事故発生時の首都圏の影響は格段に大きくなると見込まれる。

再稼働には、運転延長申請のほか、新規制基準に「適合」するかどうか審査を受ける必要がある。審査はほぼ終了しており、年明けにも適合となる見通し。

原発の運転期間は、原則四十年に制限されているが、規制委が認めれば例外で1回だけ最長20年の運転延長が可能。これまで申請された2原発3基は、規制委が延長を認めており、老朽原発の危険性に対処するための「40年ルール」の形骸化も指摘される。

再稼働同意の対象拡大 安全重視の自治体も
東海第二原発が再稼働に近づいた。茨城県や30キロ圏に含まれる市町村は、事故発生時の避難計画作りを急いでいるが、作成は進んでいない。日本原子力発電は、再稼働に向けた同意を求める自治体に周辺五市を加える方針を示しているが、一部自治体は避難計画など住民の安全を重視する姿勢を示し再稼働に向けたハードルは依然として高いのが現状だ。

これまでに県が作った避難計画案では、30キロ圏の約96万人のうち、40万人が県南西部に、56万人が近隣の5県に避難する。ただ、計画案は地震や津波が同時に襲う広域的な複合災害を想定していない

原電は22日、水戸、ひたちなか、常陸太田、那珂、日立の周辺5市にも再稼働に向けた同意を求める方針を明らかにした。

しかし、本紙が6~7月に県内市町村長を対象に実施した再稼働是非のアンケートでは、水戸市が「避難計画の策定などの後、市民の声を十分に考慮し、判断する」、那珂市が「住民の安全を最優先に総合的に判断」、ひたちなか市が「市民の安全や生活を最優先に考え慎重に判断すべき」とそれぞれ回答している。

一方、同意対象自治体を広げた今回の「東海第二ルール」が全国に広がれば、原発推進に対する一定の歯止めにつながる。例えば、電源開発大間原発(青森県)の建設中止を求める北海道函館市が「地元同意」の範囲に入れば、稼働を止められる可能性がある。これまで再稼働した九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)などでは、事業者は立地県の知事と立地自治体の首長の同意を得るだけだった。(図も 東京新聞11/25)

避難計画作りを義務化されている30km圏内の自治体に原発稼働の同意権を認める、とするのは筋が通っている。住民の多数が自治体の避難計画に納得するまでは当該自治体は原発稼働を拒否できる、という原則にすべきだ。
この「東海第二ルール」を全国のすべての原発に適用すべきだ。

今日の東京新聞【社説】「東海第二原発 延命は割に合わない」は、東海第二の再稼働は困難であり、経済的にも割に合わない。むしろ、原電は現在もすでに行っている「東海原発」、「敦賀原発1号機」などの廃炉事業にシフトして先進的な廃炉技術を売り物にしたらどうか、と提言している。廃炉事業は世界的に将来性があり、至極もっともな提言であると思う。


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11/27-2017
大飯原発3、4号機再稼働に同意 福井県知事が記者会見で表明(共同通信)

福井県の西川一誠知事は27日、県庁で記者会見し、関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に同意を表明した。26日に会談した世耕弘成経済産業相から、2基の再稼働に理解を求められていた。

西川知事は判断に当たり、関電に使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の計画を具体化するよう求め、同社の岩根茂樹社長が23日、2018年中に計画地点を示す方針を表明した

知事は今月25~26日、中川雅治原子力防災担当相、世耕経産相と相次ぎ会談。経産相との会談では「県民に信頼される判断をしていきたい」と述べていた。(共同通信11/27)

来年中に、中間貯蔵施設をどこに造るかを明らかにすると関電は約束したので、どこに施設を造るつもりなのか注目される。今の段階では、噂のようなものも浮かび上がっていない。

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11/28-2017
大飯再稼働に地元同意、京都・滋賀で安全懸念や不安の声(京都新聞)


大飯・高浜原発の緊急防護措置区域(UPZ)
福井県の西川一誠知事は27日、県庁で記者会見し、関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に同意を表明した。同日午後、世耕弘成経済産業相に同意したことを電話で伝えた。2基の再稼働を巡っては、おおい町と県議会が既に同意。知事が同意したことで、再稼働に向けた地元同意手続きは完了した。関電高浜3、4号機(同県高浜町)が既に再稼働しており、東京電力福島第1原発事故があった2011年以来初めて、同県内で同時に複数の原発が稼働する見通しとなった。

関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に福井県の西川一誠知事が同意を表明したことを受け、京都府内の自治体は27日、避難路の整備状況や安全対策に懸念を示し、国や関電に一層の責任ある行動を求めた。

原発から32・5キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の人口が7万9千人に上る舞鶴市の多々見良三市長は「絶対に事故が起こることがない運転を強く求める」と訴えた。京都府の山田啓二知事は、広域避難計画の法制化や再稼働に対する立地自治体並みの同意権の付与を求めるなど対策の強化を図りたい考えだ。府は同日、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を受け入れない方針も重ねて強調した。

滋賀県の三日月大造知事はコメントを発表し、「実効性ある多重防護体制の構築はまだ道半ば。再稼働を容認できる環境にない」と改めて反対姿勢を強調した。その上で国や関西電力に対し「県民に不安感が根強く残る現状を重く受け止め、誠意と責任を持って対応してほしい」と万全の安全対策を講じるよう求めた。(図も 京都新聞11/27)

新規制基準下で近接する2つの原発が稼働する初のケースとなる。共同通信は、同時被災のリスクを指摘している。
事故時の住民避難計画は両原発の同時事故を想定しておらず、専門家から「地震や津波の被害が一方のみで生じるとは考えにくく、ずさんだ」との批判も出ている。高浜町役場を挟んで西に高浜、東に大飯の両原発が立地し、その距離は直線で約14キロ。同時に事故が起きれば、役場周辺の住民は東西どちらに逃げても原発に向かうことになる。 (共同通信11/27)
福井県の西川知事の再稼働同意は早すぎたのではないか。県民の生命・財産を守る最高責任者であるという立場から、もっとじっくりと県民の意見を聞くべきだっただろう。世耕経産大臣が福井へ行き、大飯原発を視察したあとで西川県知事と会談したのが、26日のことだった。

京都府は、使用済み核燃料の保管を引き受けないことはすでに関電と約束が出来ていると、改めて強調した。
福井県の西川一誠知事が使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外設置を求めたことを踏まえ、隣接する京都府は27日、「関電との間で、府内につくらないと決着している」として、府内で受け入れない方針を改めて表明した。
中間貯蔵施設の建設場所を巡っては、福井県外で、港を有するといった関電の条件に該当する可能性があった舞鶴、宮津両市が強く反対した経過がある。2015年12月に関電の八木誠社長(当時)が山田啓二知事との面談で「地元同意なく進めることはない」として、府内を候補地としない考えを伝えている。
(京都新聞11/28)
本欄も何度か繰り返しているように、福井県外の中間貯蔵施設の建設場所を2018年中に示す、との方針を関電は23日に打ち出している。


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11/29-2017
もんじゅ 設計、廃炉想定せず ナトリウム搬出困難(毎日新聞)


廃炉が決まっている高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、原子炉容器内を満たしている液体ナトリウムの抜き取りを想定していない設計になっていると、日本原子力研究開発機構が明らかにした。放射能を帯びたナトリウムの抜き取りは廃炉初期段階の重要課題だが、同機構が近く原子力規制委員会に申請する廃炉計画には具体的な抜き取り方法を記載できない見通しだ。

通常の原発は核燃料の冷却に水を使うが、もんじゅは核燃料中のプルトニウムを増殖させるため液体ナトリウムで冷やす。ナトリウムは空気に触れれば発火し、水に触れると爆発的に化学反応を起こす。もんじゅでは1995年にナトリウムが漏れる事故が起き、長期停止の一因になった。

原子力機構によると、直接核燃料に触れる1次冷却系の設備は合金製の隔壁に覆われ、原子炉容器に近づけない。また、原子炉容器内は燃料の露出を防ぐため、ナトリウムが一定量以下にならないような構造になっている。このため1次冷却系のナトリウム約760トンのうち、原子炉容器内にある数百トンは抜き取れない構造だという。

運転を開始した94年以来、原子炉容器内のナトリウムを抜き取ったことは一度もない。

原子力機構幹部は取材に対し「設計当時は完成を急ぐのが最優先で、廃炉のことは念頭になかった」と、原子炉容器内の液体ナトリウム抜き取りを想定していないことを認めた。炉内のナトリウムは放射能を帯びているため、人が近づいて作業をすることは難しい

原子力機構は来年度にも設置する廃炉専門の部署で抜き取り方法を検討するとしているが、規制委側は「原子炉からナトリウムを抜き取る穴がなく、安全に抜き取る技術も確立していない」と懸念する。
もんじゅに詳しい小林圭二・元京都大原子炉実験所講師は「設計レベルで欠陥があると言わざるを得ない。炉の構造を理解している職員も少なくなっていると思われ、取り扱いの難しいナトリウムの抜き取りでミスがあれば大事故に直結しかねない」と指摘する。

■ことば
高速増殖原型炉「もんじゅ」
プルトニウムとウランの混合酸化物を燃料に、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出す原子炉。出力28万キロワット。原型炉は実用化までの4段階のうちの2段階目。1994年に運転開始したが、95年に2次冷却系のナトリウムが漏れる事故が発生し、長期運転停止。その後も点検漏れなど不祥事が相次ぎ、約250日しか稼働しないまま昨年12月に政府が廃炉を決めた。 (図も 毎日新聞11/29)

ただでさえ危険で取扱が難しいナトリウム(しかも、それが数百トンという想像を絶する量)が、放射能を帯びていて、人間が近寄れないという。そこまではこれまでによく知られていたことだが、このニュースはそれに加えて、炉心を取り巻くナトリウムは取り出せない構造になっているという。当初の設計がそうなっているという。

ちょっと信じがたいことだが、当初の設計が廃炉を想定していなかったというのだが、永遠に運転が続けられるとでも妄想していたのだろうか。久しぶりに、昔流行った「専門バカ」という語を思い出した。

廃炉工程の最初が、ナトリウムを抜く作業だという。いずれそのために、炉心へ新たに穴を開けるような強引な工事が必要になるのだろうが、それらすべてを遠隔操作でやる必要がある。もんじゅの炉を我が手の平のように知り親しんでいる現場の技術者がいなくなってしまった時期に、意想外の事故が起き大惨事につながりかねない。


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11/30-2017
「沸騰水型」原発、新冷却装置義務化 浜岡など(静岡新聞)

原子力規制委員会は29日、定例会合を開き、東京電力の福島第1原発や柏崎刈羽原発(新潟県)と同じ「沸騰水型」原発の重大事故対策として、原子炉を冷却する新たな装置の設置を義務化することを正式決定した。新規制基準を改正する

再稼働に向け審査中の電源開発大間原発(青森県)、東北電力の東通原発(同)や女川原発(宮城県)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)、北陸電力志賀原発(石川県)、中部電力浜岡原発(御前崎市)、中国電力島根原発(松江市)の沸騰水型も対象となる。

新装置は、原子炉が損傷するような重大事故が起きた際、原子炉格納容器内の水を外部に引き出して冷却後、再び容器や原子炉に注水する仕組み。沸騰水型は格納容器が小さいため内部の温度や圧力が上昇しやすいが、新装置の設置で事態の収束が見込めるという。

東電が、沸騰水型として初めて事実上の審査合格となった柏崎刈羽6、7号機の審査で設置する計画を示し、規制委は安全性が向上すると評価。規制委は10月、他の沸騰水型にも設置を義務付けることとし、意見公募を行っていた。(静岡新聞11/29)

柏崎刈羽6、7号機の審査合格を本欄が扱ったのは10月5日であるがその記事の中で、東電が新しい冷却装置を“自主的に”設置することを、次のように取りあげている。
東電は審査で、新基準で要求されていない新型冷却装置の設置計画を示し、規制委は過酷事故対策に有効として高く評価。他の原発でも設置を求める考えを示した。(中日新聞10/5)
この時の予告通りに、規制委がこの新装置を「沸騰水型」に対して義務づけることを決定したのである。


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