き坊の近況 (2017年12月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

12/1-2017
規制委員長「取り出しは難しい」もんじゅ1次系ナトリウム(福井新聞)


もんじゅの1次系の概要
日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉を巡り、原子力規制委員会の更田豊志委員長は29日の定例会見で、「1次系ナトリウムの取り出しは難しい」との認識を示した。もんじゅの設計段階では、炉心からの全量抜き取りを想定しておらず、約5年半かかる燃料取り出し後の検討項目の一つとなっている。

もんじゅは燃料の冷却材に液体ナトリウムを使用しており、1次系には約760トンが存在する。水や空気と激しく反応するため、取り扱いが難しい。

原子力機構によると、もんじゅは運転時、炉心に常に燃料を置いておく仕様であるため、配管破断時にも燃料が露出しないよう、炉心のナトリウム液位は常に燃料の上にくる設計となっている。このため、通常点検時の抜き取り方法では、数百トン程度が炉心に残ったままになるという。さらに1次系全体には液漏れ対策の保護容器がかぶせられており、改造も容易ではない。

ただ原子力機構は「燃料を全て取り出した後のナトリウム抜き取りは、原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入り口配管を活用することなどで技術的に可能」としており、今後詳細に検討して決定していく方針。

会見で更田委員長は「(廃炉が先行する)フランスでもかなり苦労している」とした上で、「まずは原子力機構が真剣に技術開発、検討を進めているか確認する」と語った。ただ一方で、「その前の燃料取り出しを進めないことにはどうしようもない」と述べ、まずは最初の5年半で燃料取り出しをしっかり終わらせるべきだとした。
また、もんじゅの廃止措置計画の認可申請が遅れていることについて、監視チームでの議論が進んでいるとして、「申請の遅れそのものが重大な支障を招いているという風には認識していない」と語った。(図も 福井新聞11/30)

日本原子力研究開発機構は 毎日新聞11/29記事(本欄 11月29日)の「ナトリウム回収を当初から想定していない設計」というのは、誤報であるとする抗議の文を発表している(ここ)。

原子力機構は次の2点を誤報として指摘している。
    (1):毎日新聞は「ナトリウム抜取は廃炉初期段階の重要課題」としているが、そうではなく、「燃料取り出し」こそが最初期の重要課題である。燃料取り出しが済んでから、ナトリウム抜取に取り掛かる。また、ナトリウムは運転停止から長時間を経て、14年4月段階で「約0.25μSv/h」と低いレベルとなっており、人が近づけないレベルではない。

    (2):「万一の配管が破断するような事故が発生した場合においても、燃料がナトリウムから露出することが無いよう原子炉容器内のナトリウムを抜き取る設計にはしていない」、しかし、抜取が不可能ということではなく、「メンテナンス冷却系の入口配管を活用するなどにより抜き取ることが技術的に可能と考えている」。しかし、それでも約1立方mほどのナトリウムが残留するが、これは別の方法で抜き取る。
(1)は毎日新聞がナトリウム抜取の困難性を強調する余り、燃料取り出しに充分に触れていなかったこと、人が接近できないほどの強い放射能を持つという運転停止直後のことをそのまま書いていたなど、ややお手つきぎみである。が「誤報」というほどのことではないと思える。
(2)は、毎日新聞の記事でなんら問題ないと思う。ナトリウム抜取を想定した設計になっておらず、たまたま冷却系配管が炉内低部近くに達しているので、それを用いれば抜取が「技術的に可能と考えている」という一案を思いついたというにすぎない。この一案を原子力機構が述べていることが当初設計が抜取を想定したものになっていなかったことをものがたっている。その証拠に、この一案を実施しても、約1立方mほどのナトリウムが残留するのである。

原子力機構は、設計段階で「1次ナトリウム抜取が想定されていなかった」という事実を認めたくなくて、下手な言い訳をして、ぼろを出している。
規制委の更田委員長は「ナトリウム抜き出しは難しい、先行しているフランスでも苦労しているようだ」と指摘した。それを素直に認めて、「慎重に考えます」ぐらいのことがどうして言えないのか。隠蔽と糊塗の体質は変わっていない。


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12/2-2017
<福島第1>2号機格納容器、来年1~2月再び内部調査 カメラ付きパイプ使用(河北新報)

東京電力は30日、福島第1原発2号機の原子炉格納容器の内部調査を来年1~2月に再び行うことを明らかにした。前回調査で走行不能に陥ったことから、自走式ロボットは使わず、先端につり下げ型のカメラが付いたパイプを差し入れる方法で溶融燃料(燃料デブリ)の状況を調べる。

カメラ付きパイプは今年2月のロボット調査に先立つ事前調査でも使用。当時は原子炉圧力容器直下の作業用足場に堆積物がこびり付き、複数の穴が開いた状況などを確認できた。

今回は、広範囲を調べられるよう、パイプの長さを1.5メートル伸ばし、圧力容器を支える台座の内側にカメラを差し入れる。カメラをケーブルで下げながら、格納容器下部の損傷状況や溶融燃料の位置などを映像で捉えたい考えだ。

前回は形状を変えられる「サソリ型」の自走式ロボットを投入したが、堆積物の破片が走行用ベルトに挟まり動けなくなった。

2号機の前回調査では、東電が一時、内部の空間線量が推定で毎時650シーベルトの極めて高い値を計測したと発表。その後に測定ミスが判明し、実際は80シーベルトだったと訂正した。(河北新報12/1)

ハイテクはうまくいかなかったので、ローテクでやってみる、ということ。竿の先にカメラや測定器を付けてケーブルでぶら下げ、挿入口の外にいる人間が操る。

自走式のロボットは高線量に弱いだけでなく、未知の環境の中を走行するというような課題に柔軟に対処することがまるでできなかった。実験室に設置した階段を上り下りすることは出来ても、その階段に不明の厚さの汚泥やゴミやデブリが混合して堆積しているというような現実の状況に、自在に対処することができなかった。
人間が操縦する場合、操縦者の被曝が問題となる。

なお、東電は7月に水中ロボットを用いて行った3号機の内部調査で撮影した写真を精査し、制御棒の一部(ガイド・チューブ)がたしかに落下して水中にあったことが確認できた、と発表した。その発表PDF(ここ)。下図は、その一部を切り取ったもの。ノッチの間隔15cmとして、写真上でチューブ外径を算出すると約28cmとなり、健全なガイドチューブとほぼ合致している、という説明。


こういう根拠付けが幾つも記載されているので、興味のある方は、上のPDFをダウンロードして読んでください。


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12/3-2017
11月27日のニュースだが、1年前にも類似の事故が生じているので、取りあげた。

燃料プールの冷却一時停止、福島 第1原発3号機(福島民友)

東京電力は27日、福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却ポンプが同日午前9時40分ごろに停止したが、その後ポンプに異常がないことを確認、約2時間後に冷却を再開した、と発表した。東電は原因について、配管を塗装していた作業員がポンプにつながる機器のスイッチに誤って接触したためとみている。

東電によると、同プールには使用済み核燃料など566体が保管されており、2018年度半ばの取り出しに向け、作業が進められている。警報が鳴ったため、社員がポンプの停止に気付いた。冷却が停止した時のプールの水温は18度で、停止後も大幅な変動はなかったという。(福島民友11/27)

この翌日には「東京電力では、注意を促す表示を取り付けたという」(FCT11/28)という報道があった。

ちょうど1年前、同じ3号機で「炉心に冷却水を注入するポンプが停止」するという事故があった。炉心にたえず注水してデブリを冷却し続けているのだが、もっとも重要な部分と言える「原発事故後、炉心溶融した1~3号機の炉心注水が停止したのは初めて」であった。本欄 12/6-2016 および12/9-2016

この事故の原因は東電はいずれも社員や協力企業の作業員が誤ってスイッチなどに触れたためであると説明している(12/9-2016)。
今回の事故の原因は、配管を塗装していた作業員が誤ってスイッチに接触したためであるという。

このような重要なスイッチが、なぜ、体が「接触」したら切れるようなままで無関係の作業員にたいしてさらされているのか。東電の体制がたるんでいるとしか考えられない。上で示した本欄12月9日(2016)には
規制庁は冷温停止状態を維持する安全上重要な機器の保護が不徹底だった-と指摘し、人為ミスが起きても冷却などの安全機能が容易に止まらない対策を求めた。(福島民報)
と、原子力規制庁から明確な指示が出ていたのだ。


トップページの写真を、アカハバビロオオキノコから甲虫目ゾウムシ科アルファルファタコゾウムシに替えた。

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12/4-2017
「原発にミサイル発射」イエメン反政府組織 UAE否定(朝日新聞)

中東イエメンの反政府武装組織フーシは3日、アラブ首長国連邦(UAE)西部で建設中のバラカ原子力発電所に向けて「ミサイルを発射し、命中させた」と発表した。AP通信などが報じた。一方、UAEの国営通信は「フーシが我が国にミサイルを発射したとの主張は偽りだ」とする同国危機管理当局の声明を伝えた。

バラカ原子力発電所はアブダビ首長国のサウジアラビア国境近くにあり、韓国企業が建設を請け負った。原子炉4基を備え、一部は来年中にも営業運転を始める予定。

フーシは2014年9月以降、イエメンの首都サヌアを含む同国北部を掌握。UAEはサウジアラビアなどとともに15年3月、イランの支援を受けるフーシを排除するとして、イエメンへの軍事介入を開始した。

だが、フーシは反撃を強めている。今年11月には、サウジの首都リヤドの国際空港に向けて弾道ミサイルを発射。サウジ軍は、ミサイルを迎撃したと発表した。フーシはさらに「次はドバイを標的にする」などとして、軍事介入する連合軍への威嚇を強めていた。(朝日新聞12/3)(地図は ATOMICA ここ による

韓国企業が建設中の原発にイエメンの過激派組織「フーシ」がミサイルを撃ち込んだと発表、UAE側は否定した。したがって、原発へのミサイル攻撃の真偽は不明だが、原発が攻撃目標になるということが現実的になりつつある。

11月28日にスプートニクが伝えたことだが(ここ)、グリーンピース活動家ら20人が、南仏のクリュア原子力発電所に侵入することに成功したと発表した。
グリーンピースは「侵入するのに必要な時間は10分未満だった」としている。数人の活動家は使用済み核燃料が保管されている貯蔵プールの一つによじ登り、他の活動家らは原発の敷地に簡単に侵入できた証として、色のついた手形を壁に残していった。フェイスブックに手形の映像を動画投稿している。(スプートニク11/28)
グリーンピースは原発の保安体制に警鐘を鳴らすためにあえて侵入している。彼らは10月にも、カットノン原発に侵入し、原発から花火を打ち上げてアッピールしている(同上スプートニクに写真あり)。

日本では海岸沿いの原発ばかりであり、船で接近して砲撃を行うことやゲリラ的に侵入するなりの方法があるだろう。もし、本格的に軍事訓練を受けた特殊部隊が侵入すれば手も足も出ないのではないか。


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12/6-2017
住民懸念でベトナム原発建設撤回 日本支援で計画、前国家主席会見(共同通信)

ベトナムのチュオン・タン・サン前国家主席(68)は2日までに南部ホーチミンで共同通信のインタビューに応じ、日本が受注を決めていたベトナム初の原発建設計画を同国が白紙撤回した理由について「世界情勢の不安定さにより国民、特に建設予定地の住民の心配が大きくなった」と述べ、住民の安全への懸念が背景にあったとの考えを示した。東京電力福島第1原発事故などを念頭に置いた発言とみられる

2016年4月の国家主席退任後、サン氏が外国メディアのインタビューに応じるのは初めて。ベトナム政府は白紙撤回決定の際、財政難による資金不足が理由と説明していた。(共同通信12/2)

先月20日、ベトナム国会が日本とロシアが建設する予定だった原発計画を撤回することを決めた。
ベトナム国会は22日、日本とロシアの企業が建設を担う南東部ニントアン省の原子力発電所計画を撤回する案を可決した。安全性を見直したところ建設費が当初計画より倍増し、財政的に難しいと判断した。日本にとっては、官民共同で獲得した原発輸出事業が頓挫することになった。

ベトナムの原発計画は日本の民主党政権下の2010年に合意。第一原発(2基)をロシア、第二原発(2基)を日本が担う計画で、当初は1基目を14年にも着工予定だった。
(朝日新聞11/22)
この時のベトナム側の説明は、もっぱら経済的な理由をあげていた。
ベトナムのニュースサイトVnExpressによると、日本とロシアのコンサルタントは、建設費用が当初見込んでいた100億ドル(1兆1100億円)から270億ドル(約3兆円)に膨らむと試算、発電単価としても割高となることが予想された。2015年末に負債が1600億ドル(約17兆7000億円)に膨らみ、財政再建を進めるベトナムにとって、巨額の設備投資は重荷になった。(ハッフィング・ポスト11/22)
これに対して、上掲の共同通信は経済的理由の他に、東電のフクイチ事故によって住民の不安が高まっていることも理由となったことを明かにしたものである。
つまり、原発建設において、
    (1) 経済的理由から合理性がなく、作られる電気が安くないことが明らかとなっている。
    (2) 周辺住民の安全に対する不安が大きいこと。
などが明らかで、ベトナムがこの原発評価の世界的流れを踏まえて、原発建設を撤回することを決断したのは意義深い。


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12/7-2017
もんじゅ廃炉計画を申請 原子力機構、完了まで30年(福井新聞)

日本原子力研究開発機構は6日、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃止措置計画の認可を原子力規制委員会に申請した。2022年末に炉心からの燃料取り出しを終え、47年度に建物の解体を終え廃炉を完了する。規制委が計画を認可した後に、廃炉作業が本格化する。

機構は福井県、敦賀市と5日に改定、締結した協定に基づき同日夕、地元側に事前に概要を説明した。

廃炉計画は本来、燃料を炉心から取り出した後に認可申請をするが、もんじゅは水プールへの取り出し実績が2体しかなく、特例的にまず22年末までの燃料取り出し作業についての認可申請を行う。その間に後の工程の検討を深め、追加申請を行う方針。

計画では、燃料取り出し期間を廃炉の第1段階とし、ナトリウムで満たされている炉心と炉外燃料貯蔵槽にある燃料計530体を水プールに移す。放射能を帯びていない2次系ナトリウム約760トンは18年度中に抜き取りを終え、タンクで保管する。

47年度までの全体工程は、廃炉が先行する軽水炉や海外高速炉の事例を参考に、4段階に分けた。第1段階が終わった後はタービン建物の解体から始め、ナトリウム機器の解体、建物の解体へと続くが、第2段階以降の期限は明示されていない。廃棄物の発生量は約2万6700トンと推定したが、放射能レベルの区分は調査が必要として明らかにされなかった

全体工程についてもんじゅの安部智之所長は記者団に、「1次系のナトリウムの抜き出しや、さまざまな設備、配管の中に残っているナトリウムをどう回収していくのか、技術的な検討が必要」と説明。1次系ナトリウムの抜き取りは技術的に可能としているものの、今後の大きな検討課題であることを認めた。(福井新聞12/6)

福井県と敦賀市は、これまでの国との議論で、廃炉に対する国の一元的責任を求めてきたが、廃炉の実施主体である原子力機構と結んだ協定の重点項目。
    1点目は 燃料、ナトリウムの県外搬出の検討で、安全かつ速やかに県外搬出することを約束した上、来年末をめどに示される処理処分の方策、技術的課題を報告するよう原子力機構に求めた。
    2点目 は、廃炉連絡協議会で地元側が受けた説明に関し、必要な場合には地元が原子力機構に対応を求めることができることを明記。
    3点目 は地元振興対策として、県のエネルギー研究開発拠点化計画を原子力機構が積極的に推進するとした。
    4点目 は協定書の改定に関する項目で、約5年後に燃料、ナトリウムの県外搬出計画が提示された際には、新たな課題が出ることが想定されるため、協定改定の協議をするとした。
同時に、建設や運転を前提にした安全協定も改定。廃炉に関する計画は地元に事前連絡することなどを盛り込んだ(福井新聞12/6による)。

「1次系ナトリウム」は核燃料に触れているために強い放射能をもつ。本欄11月29日12月1日で扱ってきたように、1次系ナトリウムは当初の設計が抜取を想定していなかったために、抜取そのものに新たに特別な工夫が必要となる。その、難しい工程を越えても「県外搬出」という難問がある。
原子力ムラとその官僚たちは“札束で叩けばなんとかなる”と甘く考えている節があるが、それは311フクイチ事故以前に通用していたことだ。安全で静穏な生活はなにものにも代えがたいという発想が、時間経過とともに広がっている。いまのような原発重視を続ける国家方針の下で「県外搬出」を引き受ける自治体が現れるとは思えない。


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12/8-2017
<原発事故>甲状腺検査、8割超が継続希望 NPO調査「転移や再発心配」(河北新報)

東京電力福島第1原発事故後に甲状腺がんを発症した子どもを支援するNPO法人「3.11甲状腺がん子ども基金」(東京)は6日、福島県による甲状腺検査に関するアンケート結果を公表した。患者や家族の多くが検査の継続を望んでいることが分かった。

アンケートは事故当時、県内に居住し、基金から療養費を受給した67人を対象に、本人か家族が答える形で52人から回答を得た。
事故当時18歳以下としている甲状腺検査の対象年齢や、2~5年に1度の頻度について、28人が「このままでよい」と現状維持を望み、17人が「拡充した方がよい」と答えた。「縮小した方がよい」はいなかった。

現状や将来への不安を感じている人は約8割に上り、「転移や再発が心配」「結婚や妊娠しても大丈夫か」との自由記載があった。

県の検査でがんと診断された154人が手術を受けた。県の委員会で一部識者は手術の必要がないがんを発見する「過剰診断」の可能性を指摘。検査を縮小すべきだとの意見もある。

記者会見した吉田由布子専務理事は「検査の議論に反映されるよう関係機関に働き掛けたい」と述べた。基金は事故当時、福島県と近隣1都15県に住んでいた25歳以下を対象に、1人10万円の療養費を支給している。連絡先はフリーダイヤル(0120)966544。(河北新報12/07)

甲状腺がんあるいはその疑いの診断結果によって手術を受けた人たち、またはその両親が応じたアンケート調査であるから、このような結果が出ることは当然である。検査の縮小を主張したり、実際に県に提言したりしている人々がいるが、それは誤りであるし、小児被曝の可能性の疑われる人たちに対して犯罪的だとわたしは思う。

11月26日にNHKTVが放送した「原発事故7年目、甲状腺検査はいま」は、両論併記式の番組に仕上がっていて番組としての追求がなされず、もの足りなかった。しかし、様々な意見が並べられているために、興味深かった。以下、この番組について取りあげる。

スクリーニングのために「過剰診断」が生じる、という主張は正当な面がある事が、分かりやすく述べられている。番組の初めの方に出ているが、香川県の医師が乳がん検診の際に、成人女性に対して甲状腺がん検診も合わせて行ったことがあったそうだ。1万人以上の方の検診を実施し、その医師が驚くほどの多数の甲状腺がんを発見したという。通常は3万人に1人という甲状腺がんが30人に1人の高率で見つかったのだという。ここで、“通常は”というのは、自覚症状があって検査を受けて甲状腺がんが発見される場合、という意味である。なお、このケースは放射能被曝と無関係である事も注意したい。

これは、成人の甲状腺がんは特殊な性質のものであることを意味し、その多くは「潜在がん」であるという。がんがあっても変化せず何らの悪影響を及ぼすことなく一生涯そのままで終わる、そういうがんを「潜在がん」という。韓国で多数の人々(成人に限ったかどうか不明)の甲状腺検査を1999年~2011年に行ったことがあり、10万人あたり60~70人で甲状腺がんが発見され、ほとんどの場合は手術したという。後にこの多くは「潜在がん」であったと考えられ、成人の甲状腺がんのスクリーニングは、むしろ有害であるという意見が医学界で有力となっているという。したがって、自覚症状があって来院した場合に検査し対応するというのが妥当だという。

「潜在がん」は発見されても短期間ではほとんど変化せず、半年で5mmも増大しているというような(福島の集団検診で見られる)場合とは異なる。また、リンパ節転移が見られるというような場合とも異なる。

福島県の検診の1巡目(2011年11月~2014年3月)では116人の甲状腺がんまたはその疑いが発見されている。これについての議論はひとまず置く。2巡目(2014年4月~2016年3月)では、71人が甲状腺がんまたはその疑いとなったが、そのうち65人は1巡目では「問題なし」の判定であった。3巡目(2017年4月~ )の検査は現在進行中である。

311事故の時18歳以下であった方たち(小児)で、しかも放射線被曝が原因である可能性が疑われるケースでは、成人で被曝とは無関係と考えられるケースで有力な説である「スクリーニングはむしろ有害」説を適用できない(適用すべきではない)。番組では論文を示しているが、チェルノブイリの甲状腺がんでは、(1):攻撃的な腫瘍であること(短期に増殖する)、(2):リンパ節転移の頻度が高い、などが報告されており、福島の2巡目の症例はこれに類似していると考えることができる。

甲状腺がんに関しては、成人と小児で異なること、しかも小児の甲状腺がんについては分からないことが多く現在研究途上であることを強調したい。現実に一月で1ミリ以上も増大している甲状腺がんを、現場の医師は放置することは出来ないだろう。手術する選択肢しかないと思う。

NHKTVは、日本財団が世界中から集めてきた医学者が福島で行ったシンポジウムをかなり詳しく番組の中に組み入れていて、「スクリーニングをやめよ!」と熱弁を振るうシーンがつづく。日本財団(競艇の収益金、笹川良一、陽平)のやっている「ハンセン病制圧」は悪くないじゃないかとわたしは思っていたのだが、やっぱり、ダメだね。

NHKは問題点を絞って、半分の時間の番組に作り直せばインパクトがある良作品となったのだが。


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12/9-2017
泊原発 断層の追加調査指示 データ不足で規制委(毎日新聞)

北海道電力が再稼働を目指す泊原発1~3号機(北海道泊村)について、原子力規制委員会は8日、敷地内の断層が活断層ではないと判断するには根拠となるデータが足りないとして、北電に地盤の追加調査を指示した。北電は新たな根拠を示す必要があり、審査は長期化する可能性がある。

原発の新規制基準では12万~13万年前以降に動いた断層を活断層と定義。原子炉建屋など重要施設の直下に活断層があれば、稼働は認められない。直下以外でも耐震補強工事などが求められる。

これまでの地盤の審査では、同原発の建設前に確認されていた約20万年前の火山灰層が動いていなかったことを根拠に、北電は活断層は存在しないと主張した。規制委も了承する姿勢を示したが、建設前に確認していた火山灰層が建設工事で失われていたこともあり、データを補充するよう北電に指示。しかし、北電が敷地内の複数の地層を掘削調査したところ、火山灰層が確認されなかった。

8日の審査会合で北電は、敷地外の地層に火山灰層があることなどを根拠に、改めて「敷地内に活断層はない」と主張したが、規制委は「根拠を充実させないと判断できない」として詳細なデータ提供を求めた。北電は調査を進め、来年1月以降に報告するとしている。(毎日新聞12/8)

北海道電力は泊原発の地盤を調べ、新たに火山灰層をみつけてその年代測定から「敷地内の断層は活断層ではない」ことを示したい。本欄では先月 11月12日に審査会合の様子を取りあげている。

しかし、北電が敷地内に火山灰層を見つけられなかったので、調査は長引くことになる。このことは、北電にとっては深刻な事態があり得ることを意味する。NHKはつぎのように報じている。
北電は)火山灰の層は確認できなかったものの、火山灰の成分は確認できたなどと主張しましたが、規制委員会側は妥当ではないとし、ほかの評価方法も含め、さらに詳しく調査するよう求めました。

一方、8日の会合で北海道電力は、断層は1号機と2号機の重要な設備の真下にあることを明らかにし、活動性が否定できないとされた場合、想定される最大の地震の揺れが大幅に大きくなり、大規模な対策工事などが必要になると見られます。そうなれば審査の長期化が予想され、場合によっては再稼働できず、廃炉になる可能性もあります
(NHK12/8)


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12/10-2017
原電「とことん協議」 東海第二と6市村 再稼働の事前同意案全容(東京新聞)

首都圏唯一の原発で、来秋に運転期限の40年を迎える東海第二原発(茨城県東海村)について、運営する日本原子力発電(原電)が、再稼働へ向けた同意を求める自治体に示した新協定案の全容が、関係者への取材で判明した。立地自治体である東海村だけでなく、周辺30キロ圏の水戸など5市の同意を取る方針を示したが、新協定案には「6市村が納得するまでとことん協議する」などと明記され、再稼働に一定の歯止めがかかる。ただ、文言には曖昧な部分もあり、課題を残す。

◆事前協議
6市村それぞれが納得するまでとことん協議を継続する
新協定案は先月22日、原電が6市村長との協議の場で提示した。全6条からなり、その内容を解説した確認書も付いていた。案と確認書は、協議途中を理由に公表されなかった。
今回判明した案には、6市村が新たに確保する権限として、再稼働や運転延長について事前に説明を受けることや、意見を述べたり、回答を要求すること、追加対策や現地確認を要求することなど、5項目が明記されている。
特に、事前の協議について「6市村それぞれが納得するまでとことん協議を継続する」と記載。文字通り読めば6市村のうち、一つでも納得しなければ協議は終わらず、再稼働できないことを意味する。
これについて、最も多い27万人の人口を抱える水戸市の高橋靖市長は、本紙の取材に対し「議論も話し合いの場もない方がおかしかった。イエスと言わなければ、議論は続いていくことになる」と評価した。

◆事業者の義務
6市村が対策を要求する権限を確保し、事業者(原電)には、きちんと対応しなければならない重い義務を負わせた
事前協議で自治体が追加対策を要求しても、原電が正面から向き合わなければ事態は進まない。今回の案で、原電は「きちんと対応しなければならないという重い義務を負う」とされた。例えば防潮堤のかさ上げなど、新たな工事が必要になる可能性がある。
他の電力会社では、自治体はここまで優遇されていない。九州電力玄海原発(佐賀県)の場合、30キロ圏で再稼働に反対する伊万里市は、重要施設の変更などの際に意見を言う権限はあるが、九電は応える義務を負わない。市の担当者は「議論は平行線。計画を止められない」と振り返る。
原電は、敦賀原発(福井県)1号機が廃炉になるなど、再稼働の期待は東海第二だけ。「義務」という重い言葉を盛り込み、自治体に譲歩を示した。

◆事前了解
再稼動する際事前了解は規定されていないが、事前協議により実質的に担保されている
一方、案には曖昧な部分もある。再稼働には自治体の事前了解が必要、とはっきり書かれていない点だ。
案では「事前了解に関する事項は規定されていないが」と前置きし、「事前協議により、実質的に担保されている」と続いている。
関係者によると、先月の協議に出席した首長からもこの点に批判が集中した。6市村でつくる懇談会座長の山田修・東海村長は取材に「文言に曖昧な部分が残されているので、修正するよう伝えた」と話した。

原電は来年3月までに懇談会と新協定を締結する意向を示しており、今後、文言の調整が進められる見通し。事前了解の権限が30キロ圏の自治体にも認められれば、全国初。原電が自治体の懸念をどう解消し、新協定の締結に行き着くかが注目される。原電の広報担当者は取材に「成案に至っていないので、コメントは控えます」と話した。(東京新聞12/9)

この報道は、先月11月24日11月25日11月26日に連続して本欄で取りあげた「再稼働同意の対象自治体を拡大する」ということの、踏み込んだ交渉内容を伝えるものである。これまで、「交渉中」であるとして詳細な内容は報道されていなかった。

原電は「とことん協議に応じる」、原電はきちんと対応する「義務を負う」という協定はたいしたものだ。「事前了解」が組み入れられるかどうかは、来年3月を待つことになる。

ともかく、これらの協定が正式に結ばれたとして、それを生かすには自治体側もしっかりした体制が必要だ。何かというと「国が一元的に責任をとるべきだ」という流れになりがちの自治体の「お上任せ」の姿勢をぬぐい去って、「とことん」住民側の安全な生活を原電に向かって主張することが要求される。本格的な自治意識が試される。


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12/11-2017
「おもちゃ博士」で知られている清水晴風(嘉永四年1851~大正2年1913)の『世渡風俗図会よわたりふうぞくずえ』についての研究を、わたしはこの5年間ほど続けていたが、今度このサイトにアップした。

『世渡風俗図会』全8巻には江戸時代から明治にかけての庶民風俗の図が580枚ほども含まれている(江戸期のものの相当数は先行作品の「写し」である)。晴風がそれらの絵につけた短文があり、それもとても興味深いものである。これまでこの短文の翻刻文が発表されたことはないので、その点もこの作品が世に普及しなかったことの理由になっていると考え、その分野にはまったくの素人であるが全巻の翻刻を試みた。
『世渡風俗図会』は稿本のまま国会図書館が所蔵し、現在はデジタル公開されている。

清水晴風『世渡風俗図会よわたりふうぞくずえ』の研究
ここ


晴風の絵をみるだけでも楽しめますので、ご覧になって下さい。
ご感想や、誤りのご指摘など頂ければ幸いです。

拙論全体は分量があり、ミスをみつけて訂正するのに時間がかかっています。いまだ推敲中で、少しずつ訂正しています。ご了解下さい(12/18)。


トップページの写真を、アルファルファタコゾウムシからアミメケゲロウ目クサカゲロウ科クサカゲロウの一種の幼虫に替えた。

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12/13-2017
トップページの写真を、クサカゲロウの一種の幼虫からチョウ目シャクガ科クロスジフユエダシャクに替えた。                           

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12/14-2017
広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを決定した。その最も大きな理由は「阿蘇山の巨大噴火」だった。広島高裁がどのような論理を組み立てていたのか、中日新聞の「社説12/14」が分かりやすい。

【社説】伊方差し止め 火山国の怖さを説いた(中日新聞)

阿蘇山の巨大噴火が起きたら、火砕流が到達する可能性が否定できない――。広島高裁は四国電力の伊方原発の運転差し止めを命じた。自然の脅威を甘く見る風潮こそ、3・11は戒めていたが。

火山ガイド」と呼ばれる原子力規制委員会が策定した安全性審査の内規がある。例えば、原発から半径160キロ以内に位置し、将来、活動の可能性がある火山については、その活動が小さいかどうか調査する。小さいと判断できないときは、噴火規模を推定する。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定し、設計対応不可能な火砕流が原発に到達する可能性が小さいかどうかを評価する。
その可能性が小さいと評価できない場合は原発の立地は不適となり、原発を立地することは認められない――。

以上がガイドだ。当たり前のことが書いてある。
火山である阿蘇山(熊本)から、伊方原発(愛媛)までの距離は約130キロであり、同ガイドの範囲内である。だから過去最大の噴火を想定し、火砕流が原発まで達する可能性も評価せねばならない。

広島高裁はいう。
<火砕流が伊方原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価することはできないから、原発の立地は不適であり、原発を立地することは認められない>
最大級の噴火でない場合も点検している。その場合でも大量の火山灰が降り積もることになり、やはり原発を動かすことも、そもそも立地も不可となる。何と明快な論法であろうか。

だが、同じ火山ガイドをテーブルに置いて、同じ問題意識を持ちながら、正反対の結論になってしまった裁判所がある。昨年4月の福岡高裁宮崎支部である。九州電力・川内原発(鹿児島県)の運転差し止めの求めを退けた。巨大噴火の時期や規模はだれも予測することはできない。だが火山ガイドに従って論理展開せず、同支部は原発政策を「社会通念」で認めてしまった。

火山国であるゆえに、今回の決定は広がりを持つ。火砕流を伴う噴火は九州、東北、北海道でありうる。火山灰であれば、全国どの原発でもありうる。

福島第一原発の事故後、初めてとなる高裁レベルの原発運転差し止めの司法判断だ。理詰めの決定ではあるが、思い知らされるのは、われわれが世界有数の地震国、火山国に住んでいるということだ。(中日新聞12/14)

この判決について、火山噴火予知連の前の会長で東京大学の藤井敏嗣名誉教授は、
「今回の判断は、これまで社会が向き合ってこなかった巨大噴火にどう対応するのかという大きな問題を突きつけたと言える」 (NHK12/14)
と指摘している。

「火山ガイド」(正式には「原子力発電所の火山影響評価ガイド」2011)はここ、(PDFファイル)。
その中の、影響評価の流れ図。


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12/15-2017
京都新聞の「社説12/14」も、やはり伊方原発の差し止め判決について述べている。その後半部が昨日取りあげた「中日新聞社説12/14」を補うところがあるので、引用する。

【社説】伊方原発抗告審  懸念踏まえた差し止め(京都新聞)

前略)原発から約100キロも離れた広島市の住民が訴える被害可能性を認めたことも注目すべきだろう。大津地裁が昨年3月に認めた約70キロ圏を上回る広さだ。原発から離れた自治体も被害想定や避難計画の策定が必要と読み取れよう。

一方で広島高裁は、四国電が算出した地震の揺れ(基準地震動)の信頼性や避難計画、新規制基準による審査については合理性があると判断した。

伊方原発は「日本一細長い」という佐田岬半島の付け根にある。中央構造線断層帯が近くを走り、南海トラフ巨大地震の震源域に入る。阿蘇の噴火が断層に影響するという指摘もある。
計画では内陸に向かうか船で大分県に避難する。だが訓練は想定通りに進まなかった。各地でも避難計画の有効性が問われる実態があるが、政府や電力会社は改善に後ろ向きだ。高裁はこうした現実にも言及してほしかった。(京都新聞社説12/14)

「大津地裁が昨年3月に認めた約70キロ圏」というのは、福井県の高浜原発3,4号機について原発から30~70km圏内に居住する住民らが運転の停止を求める仮処分を申し立てていたことに関して、大津地裁が2016年3月9日に認めた判決を言う。本欄の3月10日(2016)。
ただし、この運転停止は1年後の今年3月28日に大阪高裁が関電の「保全抗告」を認めたので、取り消された。

大津地裁は、原発から70km圏の住民の「被害可能性」を認めた判例であったが、今度の伊方原発に関する広島高裁の判断は、伊方原発から100km離れた広島市民の訴えを認めたのであるから、原発の「被害可能性」を100km圏まで広げた判例である、ということなのである。

ことに伊方原発の場合は長い佐多岬半島の付け根に位置しており、避難計画が机上の辻褄合わせにすぎず、実際的な有効性が疑わしい点を、裁判所が指摘すべきだった、というのは、まったくその通りだと思う。


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12/18-2017
大飯・高浜、同時事故「想定を」6割 30キロ圏と避難先の市町(中日新聞)


福井県にある関西電力大飯原発3、4号機(おおい町)と高浜3、4号機(高浜町)の30キロ圏と、事故時の住民避難先となる兵庫、京都など6府県の計77市町のうち、6割超の47市町が、住民避難計画の中で両原発の同時事故を「想定するべきだ」と考えていることが、共同通信のアンケートで分かった。

関電は高浜3、4号機を既に再稼働させ、大飯3、4号機も来年3月以降の再稼働を目指している。両原発は約14キロしか離れていないが、政府が了承した事故時の避難計画は同時事故を想定していない。避難受け入れ先の市町のマニュアル作りも進んでおらず、万一の事故時の備えが不十分なまま、再稼働が進む実態が浮き彫りになった

アンケートは30キロ圏の14市町と避難受け入れ先の68市町(5市町は重複)が対象。同時事故について「想定しなくてよい」としたのは12市町で、18市町は回答しなかった。政府は受け入れ先の自治体に、避難者の生活支援の手順を定めたマニュアル作成を求めているが、作成したと回答したのは11市町で、受け入れ先の二割に満たないことも判明した。

同時事故を想定すべき理由として「近年、予想不可能な災害が多発している」(兵庫県朝来(あさご)市)、「東日本大震災のような災害があれば、同時に起こり得る」(福井県越前市)など自然災害を挙げる意見が目立った。

徳島県北島町は「重大事故が起きるほどの大規模災害であれば同時被災も考えられる」と指摘。兵庫県小野市は「福島第一原発事故で周辺住民が避難を余儀なくされたことは記憶に新しい。空振りは許されても見逃しは許されない。最悪の事態を想定し、行動することが重要だ」と強調した。

両原発の地元も「想定するべきだ」と回答。高浜原発がある高浜町は「住民安全上の課題や懸念は全て検討しなければならない」、大飯原発があるおおい町は「現地対策拠点となるオフサイトセンターがおおい、高浜両町にあり、運用の明確化が必要」とした。

アンケートは11月中旬~12月上旬に実施。対象となる福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、徳島の六府県の77市町全てから回答を得た。(図も 中日新聞12/18)

このアンケートは、市町の公務員が答えているのだろうが、国民一般の中に起こる確率が低くくても、大災害に対しては災害対策をちゃんとしておかないとダメだという考え方が浸透してきていることを反映している。

本欄 12月14日 で扱った、広島高裁の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止め判決に対しても、同じ事を感じた。「阿蘇山の巨大噴火」は、まさか、この数十年のうちに起きないだろう、と考えている人が大部分だろうが、国が承認している原子力規制庁の「火山ガイド」は、そういう低い確率の大災害に対しても対策をすべきだ、としているのである。広島高裁は「火山ガイド」を厳正に適用しただけなのだ。

2019年に平成が31年で終わること(30年4ヶ月)、2020年に東京五輪があることなどがきっかけとなって、日本社会の安全性に関する考え方が大きく変わる(パラダイムシフト)可能性を漠然とだが予感する。単なる希望的観測に終わるかも知れないけれど。


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12/19-2017
原発MOX燃料が高騰 99年最安値から5倍に(東京新聞)

原発で使うウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の価格が、一体当たり10億円を超え、国内で導入を始めた1999年の最も安かったケースに比べ約5倍に高騰していることが、財務省の貿易統計などから分かった。MOX燃料は毒性の強いプルトニウムを含み加工が難しいため、製造を海外メーカーに依存した結果、価格が高騰したとみられる。

国の核燃料サイクル政策では、原発の使用済み燃料は再処理し、取り出したプルトニウムをMOX燃料に加工して再利用する。プルトニウムは核兵器に転用可能なため、余剰分は持たないのが国際公約だが、消費手段は現状ではMOX燃料だけ。同政策の維持のためには価格が高騰しても一定量、使用する必要があり、電力利用者ら国民の負担となっている。

原発で通常のウラン燃料だけではなく、MOX燃料を燃やすプルサーマル発電は現在、関西電力高浜3、4号機(福井県)と四国電力伊方3号機(愛媛県)で実施。九州電力が来年に再稼働を見込む玄海3号機(佐賀県)でも予定されている。

貿易統計などによると、MOX燃料一体の価格は、99年9月に東京電力が輸入した福島第一原発用が約2億3千万円だった。2010年6月に関西電力が輸入した高浜原発用は約8億8千万円に上昇。第一原発事故後、さらに値上がりし、関電が今年9月に輸入したのは一体10億円を超えた。
電力各社はMOX燃料の価格を公表せず、輸入した数のみを明らかにしている。関係者によると、価格には厳重な警備の費用や輸送料、保険料なども含まれている。

MOX燃料は、使用済み燃料をフランスのメーカーに委託して再処理後、輸入している。プルトニウムの加工などが必要なため価格はウラン燃料より数倍以上高いとされ、これまでも経済性が疑問視されてきた。電力関係者は「価格交渉の余地がなく、値上げされれば従うしかない」と説明する。日本原燃の再処理工場(青森県)は相次ぐトラブルで完成の見通しが立っていない。

MOX燃料は本来、エネルギーの自給自足を目指す核燃サイクルの軸となる高速増殖炉用の燃料だった。しかし、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉が決定。消費手段はプルサーマル発電しかないのが実情だ。
プルサーマル発電 原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して再び原発で利用する発電方法。制御棒の効きが悪くなる懸念があるほか、使用済みMOX燃料の処分方法も未定など課題が多い。2009年に国内で初めて九州電力玄海3号機(佐賀県)で導入され、四国電力伊方3号機(愛媛県)、東京電力福島第一の3号機(福島県)などが続いた。
(図も 東京新聞12/17)

「プルトニウムを日本は消費しています」という国際公約のための、辻褄合わせが必要であるために、いかに高価であってもMOX 燃料を外国(フランス)に製造してもらう必要がある。原発による電気がますます高いものになるのだが、やむを得ない、というわけだ。
もし、MOX燃料消費ができなくなれば、日本はプルトニウムをため込むばかりとなり、“原爆を造ろうとしているのだろう”という国際的な疑念を否定することが出来なくなる。

国の計画では、もんじゅと再処理工場が順調に動いていれば、再処理工場でMOX燃料を造りもんじゅでそれを消費するというつもりだった。再処理工場はトラブル続きで動かず、もんじゅは原子力規制委にまで諦められて廃炉になった。

“原発は安い電力を作る”という神話はとっくに崩壊しているが、電力会社が秘密にしているMOX燃料の単価が判明したことで、ますます原発が高く付くことが明らかになった。原発は危険で、しかも高い。お先真っ暗の見本のようなものだ。それにもかかわらず日本は、強固な官僚制のしばりによって一度決めた「国策」を変更することが出来ないでいる。


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12/20-2017
超巨大地震 北海道沖、M9地震予測 本州にも被害の恐れ(毎日新聞)

政府の地震調査委員会は19日、北海道東部沖の千島海溝沿いで、東日本大震災のようなマグニチュード(M)9級の超巨大地震が、いつ起きても不思議はないとの見方を示した。

30年以内の発生確率は7~40%で、切迫しているとみられる一方、南海トラフや首都直下の地震より国全体の関心は低い。被害は北海道から本州の太平洋岸に及ぶ可能性もあり行政などに早急な対策強化が求められる。

北海道東部の太平洋岸では、17世紀初頭の大津波が知られている。高さは18メートル以上で4キロ以上内陸まで浸水した。調査委は、十勝沖から根室沖を震源域とするM8・8程度の地震が引き金と推定。同規模の地震が、過去6500年間に最大18回発生し、平均340~380年間隔で発生していると判断した。

国の中央防災会議では、千島海溝沿いの超巨大地震を「500年間隔地震」と呼んできた。調査委の指摘はそれより100年以上短い。最後の発生である17世紀初頭から400年が過ぎ、再来が迫っているとみられる。

東北沖の日本海溝との連動も否定できず、本州の広い範囲で大きな被害が出ることもありうる。

調査委は、日本で起きる最大級の海溝型地震の長期評価を2カ所で行い、南海トラフ沿いはM8~9級が70%程度、相模トラフ沿いはM8級はほぼ0~5%としている。千島海溝沿いは13年ぶりの見直しで、M8級とM7級も評価。根室沖でM7・8~8・5程度の地震が起きる確率を70%程度とする。
調査委員長の平田直(なおし)・東京大教授は「東日本大震災から6年半以上が経過したが、改めて海溝では超巨大地震が起き、津波が発生することを肝に銘じてほしい」と求める。(毎日新聞12/20)


政府 地震本部の資料より

この報道で重要なのは、政府の「地震本部」(正式には、地震調査研究推進本部)が、超巨大地震が切迫している可能性があるという予報を出したこと。地震本部は阪神大震災をきっかけに地震に関する調査研究の責任体制を一本化するために作られた。現在は文科省に設置されている(本部長は文科大臣)。

この予報は北海道東部の千島海溝で超巨大地震が起こる可能性を考えているが、もしこれが起これば日本海溝での超巨大地震(2011年の東日本大震災など)へ連動する可能性があるので、日本列島の破滅的災害となる可能性を考えておく必要がある。

もし、原発事故が伴うようなことがあれば、災害が長期化し容易に回復できない深刻で長期化する災害となる可能性がある。


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12/23-2017
大飯廃炉費1160億円 関電、運転延長は採算合わず(中日新聞)

関西電力は22日、運転開始から40年を迎える大飯原発1、2号機(福井県おおい町、いずれも出力117・5万キロワット)を運転延長させず、廃炉にすることを正式決定し、経済産業省に届け出た。2013年に施行された新規制基準下で電力会社が廃炉を決めた商業原発は計8基。このうち福井県内が5基含まれ、全国最多の13基が8基に減る。

出力100万キロワットを超える大型原発の廃炉は、東京電力福島第一原発(福島県)を除くと全国で初めて。関電の岩根茂樹社長は同日、福井県庁で西川一誠知事に決定を報告し、「原子炉の格納容器が狭く、工事後の安全や品質確保を考え、廃止にする判断をした」と説明した。

関電は1、2号機の廃炉費を1160億円ほどと見込んでいる。

1979(昭和54)年に運転を開始した大飯1、2号機は、事故時に格納容器内の圧力を下げる対策として、1250トンもの巨大な氷を備えた「アイスコンデンサ方式」と呼ばれる特殊な構造を国内で唯一採用し、既に原子力規制委員会から認可を受けた3、4号機などよりも格納容器が小さい。新規制基準に適合するには他と異なる対策が必要で、岩根社長は「もともと小さな格納容器内の作業区域がさらに狭くなり、点検保守作業やトラブル発生時の対応が難しい」と廃炉理由を説明した。

関電の計画では、既に再稼働した高浜3、4号機(同県高浜町)を含め、規制委の審査を通過した7基の対策工事に計8300億円かかる。岩根社長は記者団に、大飯1、2号機の対策工事費について「経済性は試算していない」と説明したが、巨額になることが確実視されていた。最大60年まで運転延長しても採算が合わないという判断も働いたとみられる。

大飯原発では3、4号機が来年3月以降に順次再稼働を予定しているが、2基の廃炉で定期検査の回数なども減り、雇用や地域経済への影響は必至。西川知事は岩根社長に「安全対策や地域振興に取り組むことが地元の信頼につながる」と述べ、廃炉作業に地元企業が参画しやすい仕組みなど影響緩和への配慮を求めた。

22日に大飯原発を視察した規制委の更田豊志委員長は「廃止措置が運転させる3、4号機に悪影響を及ぼしていないかどうか、私たちがきちんと見なければいけないし、事業者もきちんと注意を払ってもらいたい」と述べた。(図も 中日新聞12/23)

関西電力の原発のうち、こんどの決定をふくめると廃炉が決したのが、美浜1,2号、大飯1,2号の4基。したがって、関電が運転しようとしているのが残りの、美浜3号、高浜1,2、3,4号、大飯3,4号である。このうち高浜3,4号の2基は今年6,7月より運転再開している。

もちろん、関電の思惑通りに運転再開が進むとは限らない。

22日に記者会見で岩根茂樹社長は「残る原発の再稼働を進め、将来的に自社の発電比率の4割を目指す」と述べ、引き続き全力で再稼働に取り組む方針を示した(東京新聞12/22)。


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12/24-2017
日本原燃 再処理工場とMOX工場の完成を3年間延期(毎日新聞)

日本原燃は22日、青森県六ケ所村で建設中の使用済み核燃料再処理工場とウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工工場について、ともに完成時期を3年間延期すると発表した。再処理工場の延期は24回目で2018年度上期を21年度上期に、加工工場は6回目で19年度上期から22年度上期にそれぞれ変更する。相次ぐ延期に国の核燃料サイクル事業は一層不透明となっている

再処理工場をめぐっては、建屋の雨水流入に関する点検日誌の虚偽記載などで原子力規制委員会が新規制基準の適合審査を中断しており、延期は「審査合格」の見通しが立たないためとみられる。また、これまでの工期延長で建設費が当初の7600億円から4倍の約2兆9500億円に膨らんでおり、今回の延期でさらに建設費が膨らむ恐れがある。

一方、原燃の工藤健二社長はこの日の記者会見で、工期延長について「追加工事の工程上の判断」と強調。追加工事費についても「従来予定の安全対策工事のコストダウン分でまかなえる可能性がある」との見方を示した。(毎日新聞12/22)

恒例の行事と化した日本原燃の「完成延期」について、河北新報は工場の完成を期待する側からの落胆の声をまとめていた。
「もはや信頼の『し』の字も失った」。核燃料サイクルの中核を担う青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の24回目の完成延期を受け、東北の原子力関連施設の立地自治体や関係者からは22日、怒りや不安の声が上がった。

使用済み核燃料の中間貯蔵施設(建設中)が立地するむつ市の宮下宗一郎市長は「(延期は)20年間の恒例行事。変化のない20年と24回目だった。同じ人が同じことを言う日。裏切られた」と怒りをあらわにした。

中間貯蔵施設を運営するリサイクル燃料貯蔵(むつ市)は「当社が工程を変更する予定はない」と平静を保つが、再処理事業が破綻すれば中間貯蔵は無用になる。宮下市長は「中間貯蔵施設の操業開始にも大きく影響する決定」と危惧する。

再処理して作り出すウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う電源開発大間原発(建設中)が立地する青森県大間町の金沢満春町長は「延期は致し方ないが、核燃サイクルや大間原発に影響することがないようにしたい」と語った。

再処理工場の事業認可を巡っては、青森地裁で25年以上係争が続く。核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団の浅石紘爾弁護士は「欠陥工場だということがはっきりした。原燃に工場を運営する適格性があるのかも疑問だ」と突き放す。

2015年11月の前回延期の際、再延期がないよう強く要請した六ケ所村の戸田衛村長は「誠に遺憾」と強調。「安全性向上に対する工事なのでやむを得ないが、3年の延期はあまりに長い」と嘆いた。
(河北新報12/23)
核燃サイクルは、すでに過去のものになったエネルギー産業の発想であり、1日でも早く放棄を決断すべきだ。我が国が高度成長期に入る以前に「国策」として採用したために、原子力ムラの連中が手放すことが出来ないでズルズルと今日まで来た。核燃サイクルが順調に廻ることを期待して、この国策にぶら下がってきた企業や自治体も、発想を替えるべきだ。

日本原燃は、すでに本気で「再処理工場」を動かそうとする気力を失って久しい。それは、今年の夏に明らかになった数々の不祥事を見れば明らか。本欄の10月12日から引用する。
この7月、8月、9月には、日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)では何度も似たような不祥事が発覚している。
    ・7月にディーゼル発電機の配電盤から出火。28年間部品交換せず。
    ・8月29日に非常用電源建屋に雨水約800リットルの流入が見つかった、地下施設の点検、一切せず。
    ・9月4日にウラン濃縮工場で排気ダクトに腐食穴・腐食痕が多数みつかる。腐食の様子からして長年チェックしていない。
ともかく、呆れるほどのだらしなさで、核物質を扱う工場とはとうてい考えられない規律の崩壊状態である。
「部品交換せず」、「点検一切せず」、「長年チェックせず」・・・・しかし日誌には「異常なし」としておく。こういう組織が、全国の原発から集まってくる使用済み核燃料を処理するというのである。原発1基の危険性より一桁以上大きな危険性があることは周知のことであり、米英仏などで実際に確認されている。これは実に恐ろしいことだ。


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12/25-2017
核ごみ説明会「機構が社員要請」 東電、内部告発受け調査(東京新聞)

原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の住民意見交換会に、謝礼を持ち掛けて学生を動員していた問題で、東京電力が独自に社員が参加していたか調査していることが、東電への取材で分かった。主催者の原子力発電環境整備機構(NUMO)が、参加を要請していたとする内部告発があったため。社員に経緯を聴き、状況を詳しく調べる。

機構は電力会社などの利害関係者の参加を把握せず、他の参加者と見分けが付かないような運営をしていた。機構は20日、利害関係者の出席者数などを調べると発表したが、東電としても実態の把握が必要だと判断した。

東電によると、11月下旬、社員を名乗る人物から社内の内部告発窓口に「機構から東電のグループ会社に意見交換会への参加要請があった。要請に基づいて一般参加者として出席するのは問題だ」との投書が届いた。
東電の担当者は「できるだけ早急に結果をまとめたい。機構の調査にも協力する」と説明。機構の担当者は「参加要請の有無は調査中のため、コメントは控える」としている。

意見交換会を巡っては、機構が広報活動を委託した孫請けのマーケティング企画会社が、学生に1万円などの謝礼を持ち掛けて参加させていたことが11月に発覚した。経済産業省の指示で参加者への聞き取りなどの再調査を決め、年内に結果をまとめると発表していた。

◆過去に電力会社 動員や「やらせ」
原発を巡る集会などではこれまでも、電力会社が参加者を動員したり、国が「やらせ」質問を依頼するなどして問題になった。

内閣府の原子力委員会が2005年に福島市で開いた原子力政策に関する公聴会では、東電が自社や協力企業の社員ら43人を動員。05~08年の国主催の原発関連シンポジウムなどでは、経済産業省原子力安全・保安院(当時)が九州、四国、中部、東北、北海道の各電力会社に依頼して参加者を動員し、出席した住民らに質問するよう促していた。

福島第一原発事故後の11年7月には、九電玄海原発(佐賀県)の再稼働に向け国がネットやケーブルテレビで放送した県民向けの番組で、九電社員が子会社社員らに賛成意見のメールを送るよう指示した「やらせメール問題」が発覚した。 (東京新聞12/24)

原子力発電環境整備機構(NUMO)が説明会へ学生を動員するために1万円を約束したり、サークル活動費を援助するなどと約束していたことが分かっている。
さいたま市内で11月6日に開催された、原子力発電環境整備機構(NUMO)主催による意見交換会。参加した学生から、「おカネをもらわなければ、平日の昼間にこんなところには来ない」「自分たちのようなサクラを使ってまで進めるのはよくないのではないか」との発言が飛び出した。(東洋経済11/27)
さらに、東電ないし関連会社の社員に対してNUMOの説明会(意見交換会)への参加要請があったという内部告発があった。学生の動員だけでなく、関連会社の社員の動員があった可能性が、新たに浮上したのである。

NUMOは7月に最終処分場の候補地になり得る地域を表す「科学的特性マップ」(本欄7月29日)を発表したが、国民の「核ごみ」処理に対する理解を進めて、最終的には「候補地」を選び出したいのであるが、このようなヤラセ動員が明らかになって、国民の間にNUMOに対する不信感が根付くことになるだろう。


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12/27-2017
<福島原発事故>甲状腺がん、新たに5人 県民健康調査(毎日新聞)

東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会が25日開かれ、県は事故時18歳以下だった子どもを対象に実施している甲状腺検査で9月末までに新たに5人が甲状腺がんと診断されたと発表した。がんの確定は計159人となった。これまで検討委は「被ばくの影響は考えにくい」と説明している。

検査は事故時、県内に住んでいた子どもを対象に2011年から1巡目を始めた。2巡目からは事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万人を対象にしている。今年度で3巡目の検査が終わる。

検討委では、県が4巡目(18~19年度)の検査を、ほぼ従来同様の形で継続すると明らかにした。受診率の低い19歳以上には受診できる日を増やすなど検査機会の拡充を図る。

甲状腺検査を巡っては手術が不要ながんを見つけ、心身に負担を掛ける「過剰診断」になっているとの指摘があり、検査規模の縮小を求める声もある。(毎日新聞 12/25)

12月25日に行われた検討委員会の資料は、福島県HPのここ
この調査(本格調査、検査3巡目)の市町村別一覧表があるが、そこから、わたしが最も気になっている「受診率」を見ておきたい。 この調査は平成28~29年度の両年にまたがっており、今年度(平成29年度9月30日現在)に行われている分について
受診者人数/対象者人数=受診率 の順で、 4万428人/14万4773人=27.9
前年度(平成28年度)に行われた検査の同じ数字を並べておく。
受診者人数/対象者人数=受診率 の順で、 12万1453人/19万1867人=63.3
今年の4~9月の検査で、受診率が急激に落ち込んでいることが分かる。ただし、検査3巡目は継続中であって、「対象者人数」合計は2巡目では38万人余であったから、上の対象者人数には5万人弱がまだ検査の順番が来ていないことになる。検査完了するのは来年3月であるので、その結果を待ちたい。

しかし、検査2巡目(平成26~27年)のトータルの数字は
受診者人数/対象者人数=受診率 の順で、27万516人/38万1256人=71.0
であって、受診率が急激に落ちてきていることは間違いない。

委員会では「本格検査(検査 3 回目)の未受診者を対象として、再度、検査の案内を行い、周知を図る」と同上PDF文書に示しているが、お座なりな感は否めない。

委員会では「4巡目の検査をほぼ同規模で継続する」とした。当然の方針であるが、検査は“希望者”にという暴論が通らなかっただけでもよしとしないといけない、か。

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12/28-2017
柏崎刈羽原発「適合」 規制委、福島同型で初(東京新聞)

原子力規制委員会は27日午前の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が原発の新規制基準に「適合」しているとした審査書案を正式決定した。福島第一原発事故を起こした東電の原発としても、福島第一と同じ沸騰水型の原発としても初の新基準適合となったが、新潟県などが同意する見通しはなく、再稼働できる状況にない。

この日の会合では、10月5日から1カ月間実施した審査書案への意見募集(パブリックコメント)に寄せられた870件の意見を受けて、更田(ふけた)豊志委員長と委員四人が修正する必要の有無を議論した。その結果、若干の字句修正をし、規制委の正式な審査書とすることで一致した。

審査書は、海抜15メートルの防潮堤の整備や、重大事故時に原子炉格納容器内の蒸気を抜くフィルター付きベント(排気)設備を設置するなどの対策により、福島のような事故は防げるとした。寄せられた意見には、事故当事者である東電に、原発を運転する資格がないとする意見が多かった。しかし規制委は、東電経営陣が「福島事故の収束をやり遂げ、柏崎刈羽を安全第一で運営する」と口頭や文書で約束したことや、経済産業相から「(東電が約束を守るよう)適切に監督・指導」すると回答を得たことを理由に、「資格あり」の判断を変えなかった。

ただし、再稼働に必要な新潟県や柏崎市、刈羽村の同意が得られる見通しは当面ない。特に新潟県は、福島第一事故の原因究明や、柏崎刈羽で事故が起きた場合の住民避難や健康影響に関する独自の検証委員会をつくり、検証を進めている。米山隆一知事は「検証にはあと2、3年かかる」と明言し、それまで再稼働について議論しない方針。

東電は、県と立地自治体だけでなく、30キロ圏にある全9市町村の理解が再稼働に必要だと表明している。だが、本紙の取材にどの自治体も、県の検証を見守る考えだと回答した。(以下略)(東京新聞12/27)

今回の「適合」判断で一番問題なのは、「福島のような事故」というのがどのような事故であるのかキチンと解明できていない点にある。フクイチ事故の原因は津波であるとされるが、それが実証されたわけではない。地震が原因だという説もある。なにせ、どのように事故が始まり、発展し、炉心溶融が生じ、水素爆発に至ったのか、その現場を誰も見てきたわけではない。フクイチ事故がいかに起こったかの実証的データなしで、「福島のような事故」は起きないと保証できるわけがない。

新潟県が行っている「検証委員会」の粘り強い追求がなければ、「炉心溶融」という語を使うなという東電社長の指示があったことさえも、闇の中に止まっていたであろう。検証委員会の調査が一段落するまでは再稼働に関して議論できない、とする新潟県知事の立場には合理性があり、説得力がある。30km圏内の自治体が「県の判断を待つ」としているのは当然のことだろう。フクイチ事故を起こした東電が、同型原発を新潟で再稼働しようとしているのだから。県民の安全に直接かかわることだから。

規制委員会はフクイチ事故が「どのようなプロセスを踏んで生じた事故であるか」の解明をさらに待つ、という判断をなぜとらなかったのか。国や東電に、これまでの事故プロセスの解明が十分でないことを指摘し、徹底解明を改めて指示すべきである。規制委の器量が一段と小さく感じられる「適合」判断であった。


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12/29-2017
核ごみ説明会 新たに学生79人動員(東京新聞)

原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場に関する住民向け意見交換会に、謝礼を持ち掛けて学生を動員していた問題で、原子力発電環境整備機構(NUMO)の調査チームは27日、調査報告書を発表した。今年6月までに開かれた意見交換会やセミナーで、計79人の学生が謝礼を示しての参加要請を受けていたことが新たに判明。少なくとも2人に現金5000円が支払われていた。

この問題を受け、NUMOは当面、意見交換会を中止し、どのような運営方法がいいか検討した上で再開時期を決める。

学生への参加要請が明らかになったのは、2016年7~10月のセミナーで16人
    ▽16年10~11月の意見交換会で34人
    ▽今年5~6月のシンポジウムで29人
の計79人。うち何人が実際に参加したかは分からない。
ただ16年11月に名古屋市と札幌市で開かれた意見交換会で、少なくとも1人ずつに5000円の支払いが確認された。現金の代わりに、会議室提供などの便宜が図られた例もあった。

いずれも、事業を受注した電通から広報業務を再委託された会社が、現場の判断で行っていたという。調査報告書は、NUMOや電通がこうした実態を認識していた証拠は見つからなかったとしている。

一連の問題は、今年11月6日にさいたま市で開かれた意見交換会で、参加した学生が謝礼を持ち掛けられたと発言したことから発覚した。その後のNUMOの内部調査で、福島県を除く46都道府県で10月以降に開かれた意見交換会で学生計39人の動員が分かった。謝礼を約束されていたが問題が発覚したため支払われなかったという。

今回の調査では、10~12月の意見交換会に、電力会社の関係者ら計67人が参加していたことも分かった。各電力会社からNUMOへの出向者が、出向元の知人らに参加を求めるメールを送っていたケースがあった。最終処分を推進する立場からの発言は確認できなかったという。(東京新聞12/28)

本欄12月25日の続報である。

問題の根本は、NUMOが「住民むけ意見交換会」を直接運営せず、下請け(実際には孫請け)に任せてしまうというところにある。下請け会社は、意見交換会がともかく成立することをめざして動員を考えるのは当然である。イベント屋がその持てるノウハウを駆使して「イベント成功」を目差すのは当然である。

NUMOが、住民に対して「核ごみ処理」の必要性を啓蒙しようとしている限り、この問題はけして克服されずどこまでも付いてくるだろう。


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12/31-2017
平成が31年で終わることが決まった(30年4ヶ月)。最終日が2019年4月30日である。
わたしには「平成」そのものに対しては、まったくコレほどの感慨もないのだが、毎日新聞が「平成の記憶」という特集記事で、「平成の主な災害」という年表を発表していた。それをみてわたしは、平成にはこんなに「災害」が多かったのかと、あらためて感じ入った。自分の記憶を新たにするためにも、あらためて自分の手で入力する作業をやってみた。

誤解があってはいけないので書いておくが、今の天皇(今上天皇)は憲法を守ろうという点では、模範的な人物で、安倍晋三総理などよりずっと上等な人だと思う。彼は、自分は「国民統合の象徴」であるという憲法規定を、自分の生き様として実践し続けるという義務を負っている。退位の希望を述べた一連の動きは、そいう唯ひとりの人間の主体的在り方をはじめて示そうとしたという点で、画期的であると感じた。
彼は一種の神(祈り続ける人)であることを強要されているのであって、わたしはそういう個人の存在を要求している(現行の)天皇制に反対である。

大晦日にあたって皆様に、この年表を見てもらうというのも悪くないのじゃないかと思いついた。わたしは「火山」も「地震」も「水害」も、なんとまあ、まんべんなく繰り返されていたのだなあ、と思った。



平成の主な災害
(毎日新聞12/16「平成の記憶」をもとにした)


火山活動地震豪雨水害


平成(西暦)月日災害の内容
3(1991)6月3日長崎県の雲仙・普賢岳で溶岩ドームから大規模な火砕流が発生。死者・行方不明者43人
5(1993)1月15日北海道釧路沖を震源とするM7・5の地震。2人が死亡
7月12日北海道南西沖を震源とするM7・8の地震。死者・行方不明者は230人
6(1994)10月4日北海道東方沖を震源とするM8・1の地震。北方領土で死者11人
12月28日三陸沖でM7・5の地震。青森県八戸市で震度6を記録。3人が死亡三陸はるか沖地震
7(1995)1月17日兵庫県・淡路島北部を震源とするM7・3の地震が発生。神戸市などで震度7を記録。死者6434人負傷者4万人以上、家屋の全半壊は24万棟以上に上った(阪神大震災
12(2000)3月31日北海道・有珠山が23年ぶりに噴火。噴煙は約2・7kmに達した。断続的に噴火を繰り返し、住民約1万7000人が避難。
7月8日三宅島・雄山で噴火。断続的に噴火が続き、三宅村は9月2日に全島民の島外避難指示を発令。
10月6日鳥取県西部でM7・3の地震。約180人が負傷した。住宅の全半壊は約3500棟。
13(2001)3月24日瀬戸内海・安芸灘を震源とするM6・7の地震。広島県、愛媛県を中心に死者2人、負傷者約290人、住宅の全半壊は350棟以上(芸予地震
15(2003)7月26日宮城県北部を震源とするM5・6、M6・4、M5・5の地震が相次いで発生。677人が負傷した。約5000棟の住宅が全半壊。
9月26日北海道釧路沖でM8・0、十勝沖でM7・1の地震が相次いで発生。釣り人2人が行方不明に。負傷者約850人。住宅の全半壊約480棟。(十勝沖地震
16(2004)7月12日新潟・福島両県で豪雨(~14日)。崖崩れや地滑りが多発し、16人が死亡。住宅5000棟以上が全半壊(新潟・福島豪雨
10月20日台風23号が高知県に上陸。その後、近畿、中部、関東地方を通過した。豪雨による土砂災害が各地で起き、死者・行方不明者は98人に。8000棟以上の住宅が全半壊。
10月23日新潟県中越地方を震源とするM6・8の地震が発生。68人が死亡し、約4800人が負傷。住宅の全半壊は1万6000棟以上。山間部の道路が各地で損壊し、多くの集落が一時孤立した。(新潟県中越地震
17(2005)3月20日福岡県西方沖を震源とするM7・0の地震。死者1人、負傷者約1200人、住宅の全半壊は約500棟。玄海島のほぼ全住民が島外に避難した(福岡沖玄海地震
19(2007)3月25日石川県の能登半島沖を震源とするM6・9の地震。死者1人、負傷者約350人。2400棟以上の住宅が全半壊。
7月16日新潟県中越沖を震源とするM6・8の地震。死者15人、負傷者約2300人。。住宅の全半壊7000棟以上。(新潟県中越沖地震
20(2008)6月14日岩手県内陸部を震源とするM7・2の地震。土砂崩れなどによる死者・行方不明者23人。(岩手・宮城内陸地震
7月24日岩手県沿岸北部を震源とするM6・8の地震。死者1人、負傷者211人。
21(2009)7月19日九州北部・中国地方で豪雨(~26日)。土石流などによる死者35人、負傷者59人。住宅の全半壊151棟、床上浸水2000棟以上。
8月11日駿河湾を震源とするM6・5の地震。死者1人、負傷者319人。
23(2011)3月11日宮城県三陸沖を震源とするM9・0の地震が発生。10mを超える巨大津波が東北地方沿岸部の各地を襲った。死者1万9533人、行方不明者2585人、負傷者6000人以上。住宅の全半壊は約40万棟。東京電力福島第一原発で炉心溶融などが起こり放射性物質が放出された。(東日本大震災
9月3日紀伊半島で台風12号による豪雨(~4日)。和歌山、奈良、三重3県の死者・行方不明者は88人
24(2012)7月11日九州北部で豪雨(~14日)。土石流や地滑りなどによる死者・行方不明者は32人。住宅1800棟以上が全半壊、3000棟以上で床上浸水。
25(2013)10月16日台風26号による豪雨の影響で、東京都大島町(伊豆大島)で土石流が発生。死者・行方不明者は39人
26(2014)8月20日豪雨の影響で、広島市で土石流などが発生。死者77人。住宅の全半壊は約400棟。(広島土砂災害
9月27日長野・岐阜両県にまたがる御嶽山[おんたけさん]が噴火。行楽シーズンの週末で多数の登山者が巻き込まれ死者58人、行方不明者5人、負傷者69人であった
28(2016)4月14日熊本地方を震源とするM6・5の地震が発生。ところが、16日にM7・3の地震が発生し、これが本震とされた。死者240人以上、2700人以上が負傷した。4万棟以上の住宅が全半壊した。(熊本地震
29(2017)7月5日福岡、大分両県を襲った集中豪雨(~6日)。朝倉市では時間雨量129(mm/h)という最高記録だった。河川の氾濫、土砂崩れ、土石流などで被害が大きかった。死者・行方不明者41人。1400棟以上の住宅が全半壊した。(九州北部豪雨


阪神大震災(1995)では、われわれの大都市が直下型地震にいかに簡単にねじ曲がり・つぶれ・燃えてしまうものかを実物教育され、圧倒された。やがて来ることが確実視されている東京圏の直下型地震では、より規模を大きくした都市型震災をわれわれは体験することになるのだろう。また、この災害を期に「ボランティア活動」が皆に親しいものになったのも記憶される。
豪雨水害が頻発したことも記憶される。山間部まで無理に住宅地を拡充したところが、徹底的にやられることがあった。手入れの悪くなった植林地帯とも関連する。あの、押し寄せてきた無数の流木の山を見ると、たんなる気象現象としての豪雨だけの問題じゃないと思える。
火山災害も、確実に我が国を襲っている。この表は、そういうことを否応なしに教えてくれる。世界的に火山活動が活発化しているらしいことも、うかがわれる。
原発事故の結果放射性物質が拡散し、いかに深刻な被害を長期にわたって一部の人たちに与えているか、平成の日本国民は考える義務がある。

平成の後に続く時代が、これと同様の(または、それ以上に)災害が襲い来る時代であると考えておかざるを得ない。

◇+◇

わたしにとって今年は、この数年間ずっと努力していた

清水晴風『世渡風俗図会よわたりふうぞくずえ』の研究
ここ

を拙サイトへアップすることが出来たのが、意義深いことだった。まだ細部の修正などで少しずつ手を入れています。
晴風の絵をみるだけでも楽しめますので、ご覧になって下さい。
ご感想や、誤りのご指摘など頂ければ幸いです。

◇+◇

慌ただしい年も暮れ、大晦日です。
この一年、おつき合い下さったことを深く感謝いたします。

みなさまのご健康を、心からお祈り申し上げます。
き坊 2017-12/31        


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