き坊の近況 (2018年2月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

2/2-2018
<福島第1>2号機格納容器底部は最大8シーベルト、台座外側より低く(河北新報)

東京電力は1日、福島第1原発2号機で1月に実施した原子炉格納容器の内部調査を巡り、溶融燃料(燃料デブリ)とみられる堆積物を確認した格納容器底部の空間線量が、最大で毎時8シーベルトだったと発表した。原子炉圧力容器を支える台座の外側と比べ大幅に低かったが、「堆積物が溶融燃料の可能性が高い」との見解は変えなかった。

空間線量は、台座内部に調査装置をつり下ろしながら計4カ所で計測。圧力容器直下で7シーベルト、他の3カ所はいずれも8シーベルトだった。一方、台座の外側は15~42シーベルトだった。

台座内部の線量が低い理由について、東電原子力・立地本部の木元崇宏本部長代理は「注水で格納容器底部の放射性セシウムが流された可能性もある」と指摘。同社福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は「理解できない点があり、分析を進める必要がある」と明言を避けた。
一方、経済産業省資源エネルギー庁の木野正登参事官は同日の記者会見で「燃料が溶け落ちる過程で融点が低い放射性セシウムが揮発し、台座外側に付着したため線量が外側の方が高くなった可能性がある」と推測した。

今年1月に行った2号機の内部調査は、先端にカメラや線量計が付いた伸縮パイプを使って実施。小石状の堆積物や燃料集合体の部品とみられる物体を映像で捉えた。 2号機内部の放射線量を巡っては、昨年1~2月に行った最初の調査の際、1度は台座の外側で最大約650シーベルトの推定線量を発表。その後に計測ミスが判明し、最大で推定約80シーベルトだったと訂正した。(図も 河北新報2/2)


圧力容器を支える台座(土台)の外側は今回の測定では毎時15~42シーベルトだった(福島民友2/1)。

この調査に関する最初の東電発表は、本欄 1月20日で扱った。冷却水は絶えず注がれているのだが、水深30cmになっているのは、そういう水深に止まるべくいずれかに(いくつかの)穴が開いていて漏れ出ているから。温度は21℃だった。

いずれにせよ、人が近づけないきわめて高線量であるから、デブリ取り出しのためには高線量に耐える機器・工作機械を遠隔操作するという方式にならざるを得ない。


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2/4-2018
泊原発の審査で北電が証明方針を変更(HBC 北海道放送)

泊原発の敷地内に活断層は無いと主張する北電は、その証明を、火山灰の分析で行うことを断念し、地形の分析で行うことに方針転換しました。

北電は泊原発敷地内の断層について、「活断層ではない」と主張してきましたが、その根拠となる火山灰の層が実際には見つからず、再稼働のための審査は足踏み状態となっていました。

2日の規制委員会の会合で、北電は、断層に積もった火山灰の分析で直接、活断層を否定する方針を断念し、敷地内外の地形の分析で、総合的に証明する方針を明らかにしました。
北電は新たな分析結果を3月中旬に示すとしています。(HBC 北海道放送2/2)

北海道電力が「活断層は無い」と証明することが出来ず苦労していることは、本欄 11月12日(2017)や12月9日(同)などで伝えている。

規制委も心配していたのだが、北電はついに火山灰層を探すことをあきらめ、「地形の分析」で行うと方針転換した。本来「地形の分析」による推論は「地層による直接検証」と併行してなされるものだと思うが、(北電さん、大丈夫?)と、心配したくなる。


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2/7-2018
仏日の高速炉研究見直しか 地元報道、出力規模を縮小(産経新聞)

日本がフランスとの共同研究を目指す高速炉実証炉「ASTRID(アストリッド)」について、フランス側が出力規模の大幅縮小を検討している、などとフランスメディアが6日までに報じた。高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉を決定した日本は、高速炉の開発にアストリッドを活用したい考えで、日本側専門家からは影響を指摘する声が上がっている。

高速炉は、核分裂反応に高速の中性子を使う特殊な原子炉。日本の高速炉開発は4段階で進む計画で、アストリッドは3段階目に当たる実証炉建設に向けてデータなどを得るためのプロジェクト。日本が開発を進める上で不可欠とみられている。

フランス経済紙レゼコー(電子版)は1月末、フランス原子力庁(CEA)がアストリッドの計画を見直し出力規模を60万キロワットから10万~20万キロワット程度に縮小するよう政府に提案したなどと報じた。(産経新聞2/6)

「高速炉」という特殊な原子炉を開発する第2段階にあったもんじゅが挫折し廃炉となったが、日本政府は「国策 核燃料サイクル」をあきらめないために、第2段階は完了したことにして第3段階に進むことにした。しかも、フランスが行っている「ASTRID(アストリッド)」に途中から相乗りする、というご都合主義で参加することにした。

そのアストリッドの縮小計画が提案されたという。「高速炉」計画も先細りとなり、完成しない可能性が大きくなってきている。


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2/9-2018
汚染水処理が停止 原発事故後初装置変圧器に異常か 第一原発(福島民報)

東京電力は7日、福島第一原発の建屋地下にたまる高濃度汚染水から放射性セシウムなどを取り除く処理装置「サリー」が停止したと発表した。セシウム除去は2台の処理装置で実施しているが、もう1台の「キュリオン」は点検作業中のため使用できない。セシウムを除去しなければ大半の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)に移送できない仕組みになっており、セシウム吸着装置の停止によって汚染水処理が止まったのは原発事故後初めて。

■予備施設は、点検中で使えず

東電によると同日午前10時ごろ、東電社員が「サリー」を起動した際、装置の変圧器から異音を確認し運転を止めた。変圧器内を調べたところ、火花が出ていたという。同社は内部の配線の剥離が原因とみて詳しく調べている。

汚染水処理のイメージは【図】の通り。第一原発では1日当たり約100トンの高濃度汚染水が発生している。東電によると、セシウム吸着装置の停止を受け、集中廃棄物処理建屋に汚染水を保管しておけるのは10日間程度という。東電は変圧器を使わずに非常用電源設備でサリーを再起動させる方針で「8日には汚染水処理を再開させたい。すぐには汚染水の管理に影響は出ない」としている。

汚染水処理が3日間停止すると、実施計画で定めた運転上の制限を逸脱するため、原子力規制庁に報告しなければならない規定となっている。(図も 福島民報2/8)


高濃度汚染水は毎日100トンほど発生しており、それの処理が止まることがあってはならない。2つあるセシウム吸着装置(サリー、キュリオン)の意法が点検中の時に他方の変圧器に異常が生じた。汚染水を溜める建屋に10日分の余裕が或るので直ちにあふれることはないという。
しかし、汚染水処理が停止したのは事故発生以来初めてのことだという。

間の悪いことは起こるもので、8日には、第一原発の西側にあるタンクを囲む堰に溜まった雨水をくみ出して処理施設へ移送中に、「ホースの接合部分が外れ、およそ4.8トンが漏れた。漏れた雨水の放射線量は、放射性セシウムが検出限界値未満、全ベータが1リットルあたり1,100ベクレルだった」(FCT 福岡中央テレビ2/8)という。4.8トンは少ない量ではない。幸い、漏れた水は土嚢で止まり、海への流出はなかった。


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2/10-2018
<東通原発>東北電、活断層否定の立証困難 事故時の海水取水口を南側海岸に新設(河北新報)

東北電力は9日、東通原発(青森県東通村)の事故時に原子炉などを冷やす海水の取水口を、現在地から百数十メートル南側の海岸に新設すると発表した。取水口直下を走る「m-a」断層に活動性がないと立証することが困難と判断し、断層を避けた。

取水口は新規制基準の重要施設の一つ。直下の断層が活断層の場合、再稼働できない。

同日あった原子力規制委員会の審査会合で、東北電は「(活動性がないと立証する)これ以上の調査は現実的に難しい」と説明。新たに南側の海岸までの取水路と取水口を建設する計画を作り、既存の取水口は通常時に使用する。安全対策工事を2019年度内に完了させる目標は変えていない。

東北電は昨年5~8月に「m-a」断層の追加掘削調査をした上で、「少なくとも10万年以降の活動がない」と主張。これに対し、規制委は、活動性の定義である後期更新世(12万~13万年前)以降の活動がないかどうかについて「厳密には確認できない」と指摘していた。

東通原発の重要施設直下にある3断層のうち、残る「f-1」は規制委が追加説明を求めた。「f-2」は活動性がないことが確認されている。敷地内には他に「F-3」「F-9」断層などがあり、今後、活動性を議論する。(河北新報2/10)


上図は、東北電力2017年5月17日発表(ここ)、少しトリミングしてあります。

「m-a」断層が活断層ではないことを立証できないと判断して東北電力は、海水取水口を数百メートル南へ(図の右方へ)ずらして新設することにした。一応それで「m-a」断層の問題は避けることができる。「規制委によると、断層を避けるために原発の審査の過程で重要施設を変更する例は初めてという」(朝日新聞2/10)。

東通原発には幾つもの断層が敷地内にあり、まだ、問題が解決したというわけでは無い。


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2/11-2018
原子力文書 公開制度化したのに 規制委 2年半HP載せず100件以上(東京新聞)

原子力規制委員会が、市民らから情報公開請求を受け、開示した行政文書は原則としてホームページ(HP)に掲載すると自ら制度化しながら、2015年9月以降の約2年半、全ての開示文書の掲載を怠っていたことが8日、分かった。未掲載の大半は、規制委の前身組織で、東京電力福島第一原発事故後、情報公開が不十分だったと批判された経済産業省・原子力安全・保安院や原子力安全委員会(いずれも当時)の文書で、100件を超える。規制委は同日、一部の掲載を始めた。

規制委は未掲載の理由について「著作権上の検討やサーバーの容量不足で手続きを止めていた」と説明している。

規制委の情報公開原則は、旧保安院と東電が第一原発事故前、津波の想定を巡って密室でやりとりを繰り返した結果、対策が遅れて事故を防げなかった失敗などを踏まえて制度化された。過去の失敗をさらしてでも透明性を高めようとの理念を自らないがしろにした形で、批判が出そうだ。

この原則は13年12月、規制委事務局の原子力規制庁の森本英香(ひでか)次長(現・環境省事務次官)が記者会見で「原子力規制関連の文書を原則、(HPに)掲載する」と発表し、即日実施された。「規制委自身が透明性を一つの大きな柱にしている」とも説明した。
未掲載の100件以上の文書は第一原発事故関連が多いとみられ、規制庁は詳細な件数は「集計中」としている。原則が適用されてから15年9月までは、開示済み文書38件が掲載されていた。

8日に掲載されたのは、第一原発事故前の10年11月に旧原子力安全基盤機構(規制委・規制庁に統合)がまとめた文書。東北電力女川原発の津波に対する安全性評価の報告書など2件だった。
この報告書がHPに未掲載なことについて今月2日に共同通信が「情報公開の原則から逸脱しているのでは」と指摘。規制庁も未掲載と認め6日に「掲載を再開する」としていた。(東京新聞2/9)

再掲載を始めたという原子力規制委のHPは ここ

2015年9月24日から、共同通信に指摘を受けた後の、2018年2月8日に飛んでいる。


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2/13-2018
<福島第1>大雨の流入対策が急務 未解明の流入経路も存在か(河北新報)

東京電力福島第1原発で発生する汚染水を巡っては、台風など大雨時の対策が急務となっている。1~4号機の原子炉建屋に流れ込む雨水のうち、屋根の損傷部分以外に未解明の流入経路が存在する可能性が出ており、東電は原因を調べている。

第1原発の汚染水発生量は、サブドレンや凍土遮水壁の運用で減りつつある。だが、台風が襲来した2017年10月は1日当たり310トンと前月(120トン)から急増。豪雨のたびに汚染水が増えるもろさが露呈した。

1~4号機建屋の屋根は広さ計約4万平方メートル。このうち約7千平方メートル分が水素爆発で穴が開くなど損傷している。汚染水の増加分はこの損傷部に降った雨が主因とみられていた。  東電が昨年10月以降、台風時の降雨量とサブドレン水位の変動を分析した結果、実際の建屋流入量が、地下水と屋根損傷部からの流入量を大きく上回ることが判明。他の流入経路の可能性が浮上した。
建屋周辺に降った雨が地中に染み込まず建屋に流れ込んだ可能性などが指摘されるが、現段階で確認できていない。東電は「対策を取るため、原因解明を急ぐ」と説明する。(図も 河北新報2/12)


地下水の増加分の評価が誤っている可能性はないか。
この数年、台風に限らず、各地で従来はなかったような豪雨、長期の集中豪雨などが起こっている。大規模な気候変動の一環とも考えられる。

豪雨によって汚染水処理が破綻する可能性もあるのだから、きちんとした究明と対策が求められる。


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2/14-2018
3号機プールの核燃料、年内搬出 福島第1原発を報道機関に公開(中日新聞)

東京電力は13日、事故から間もなく7年となる福島第1原発を報道機関に公開した。炉心溶融(メルトダウン)を起こした3号機は、使用済み核燃料プールに残る燃料を2018年内に搬出し始める予定。水素爆発で外壁が吹き飛んだ原子炉建屋最上部では、搬出のための屋根カバーの設置作業が大詰めを迎えていた。

屋根カバーはドーム型で、全長約57メートル、高さ約18メートル。プールや搬出用の燃料取扱機、クレーンをすっぽりと覆う。8分割して設置し、最後の一つを2月中に取り付ける。

プールには566体の燃料が残る。水面は暗く濁り、付近の空間放射線量は毎時約600マイクロシーベルト。 (写真も 中日新聞2/13)


屋根カバーの設置が進む、東京電力福島第1原発3号
機の原子炉建屋最上部=13日午後、福島県大熊町

このニュースは先月すでに伝えられており、本欄では1月25日に「3号機は18年度中頃の撤去開始を予定する」(河北新報1/23)を載せた。

デブリの取り出しなどの前に、燃料プールに残る燃料はどうしても安全な場所へ搬出する必要がある。高い放射線量の中での作業であり、作業員への被曝が心配される。


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2/15-2018
城南信用金庫顧問の吉原毅さんの話「原発輸出より送電線線開放」(2月8日 YouTube 35分)を見た。
本欄が1月5日に扱った「日立の原発をイギリスへ輸出」することについて、痛烈に政治-経済癒着の利権構造を批判している。「それは金儲けですらなくて、利権を守るというだけの“反社会的”とさえ言える企みだ」。それで、つい最後まで見てしまった。「ソーラー・シェアリング」が有望であるという主張も聞いておく価値があります。


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2/17-2018
玄海3号機 燃料装着 九電、来月の再稼働目指す(毎日新聞)


燃料集合体の1体目を装着する玄海原発3号機の原子炉
容器(右側)=佐賀県玄海町で2018年2月16日
午後5時半ごろ、九州電力提供
九州電力は16日、玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の原子炉に核燃料を装着する作業を始めた。原子炉の機能点検などを実施後、九電は3月中旬~下旬の再稼働を目指す。玄海原発については、4号機停止後約6年間運転されておらず、3号機への燃料装着で再稼働手続きが最終盤に入った。

九電は同日午後5時、使用済み核燃料プールから専用クレーンで1体目の燃料集合体(約21センチ四方、長さ約4.1メートル、重さ約700キロ)をつり上げて原子炉に入れた。九電は作業開始後「安全確保を最優先に慎重かつ丁寧な作業に努める」とのコメントを出した。

玄海3号機はプルサーマル発電を実施する方針で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料32体を含む燃料集合体193体を24時間態勢で取り付け、作業は21日に終える見込み。

作業完了後、九電は重大事故を想定した訓練を実施するほか、原子炉内を運転時と同じ高温・高圧状態にして設備を確認する検査などを経て、制御棒を引き抜いて原子炉を起動し再稼働させる。約4日後に発電と送電を始め、原子力規制委員会の最終検査を経て4月に営業運転へ移行する。ただ、規制委の今後の使用前検査次第で再稼働が遅れる可能性もある。 (写真も 毎日新聞2/16)

玄海原発は阿蘇山など周辺に活発な火山があり、火山灰対策で「非常用ディーゼル発電機の吸気口に火山灰の侵入を防ぐフィルター」を取り付けたのを更田委員長が11日に視察したばかり(中日新聞2/11)。
MOX燃料をも装荷して同時に燃やすプルサーマル方式をとるが、通常の核燃料だけの場合よりも不安定になりやすく、周辺自治体でも再稼働に反対を表明している首長がある(長崎県の松浦、平戸、壱岐の3市長、佐賀県伊万里市長など)。

黒田成彦・平戸市長は11日視察で訪れた更田委員長へ「ゼロリスクではないと住民に説明しても理解されない。避難道路の整備を国に要望しても無視されている」と訴えた。更田委員長は「再稼働を判断する主体は(経産省などで)規制委とは別」と答えた(毎日新聞2/11)。


トップページの写真を、ホシヒメヨコバイからカメムシ目サシガメ科ヒゲナガサシガメ幼虫に替えた。

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2/18-2018
JR常磐線再開へ進む復旧 大野―双葉間、沿線除染や橋架け替え(福島民友)


線路の復旧工事が進む現場。両側ののり面にはモルタルを吹き付けた=福島県大熊町下野上(河北新報2/17より)

東日本大震災から丸7年となるのを前に、運行を休止しているJR常磐線富岡―浪江間(20.8キロ)のうち、原発事故で帰還困難区域となっている大野(大熊町)―双葉間(5.8キロ)の除染と復旧作業の現場が16日、報道陣に公開された。

比較的高い放射線量が計測された地点では除染を重点に、震災で損壊した橋の復旧が進んでいる。

JR東日本によると、運休区間全体の7割で除染が完了。2020年3月までの運転再開を目指し、線路などの復旧作業が本格化しており、水戸支社の堀込順一設備部長は「放射線量が高く、被害も大きく厳しい環境だが、おおむね予定通り進んでいる」と述べた。

今回は3カ所で取材が認められた。大野駅から北側約0.3キロの大熊町下野上字大野地区では、上下線沿いの高さ7~8メートルの斜面がモルタルで覆われていた。

16年3月に除染に着手する前は線路上の放射線量が毎時約10マイクロシーベルトあったが、表土を5~10センチ剥ぎ取った結果、毎時1.8マイクロシーベルトに低減した。同支社によると、周辺の除染は17年6月に完了した。 放射線を遮り、斜面の強度を高めるため、モルタルを吹き付けたという。

第1原発から約3.3キロの大熊町夫沢字中央台地区は、除染前に毎時約20マイクロシーベルトを測定。生い茂った草木を刈り、表土を剥ぎ取るなどして毎時2.8マイクロシーベルトに下がった。線路を敷き直す作業に入り、整地した上で枕木や砕石を交換する。レールの大部分は再利用される。

双葉駅から南側約1.6キロの双葉町前田字下川原地区では、震災で上り線の橋が折れたり、下り線の橋脚にひびが入ったりした第1前田川橋りょう(長さ96メートル)が架け替えられた。震災前、大野―双葉間は複線だったが、JR東は下り線のみを復旧させ、上り線については緊急時の乗客避難や修繕用の通路とする方針だ。(写真は河北新報 福島民友2/17)

JR常磐線の不通区間が現在も21km弱ある。そのうち帰還困難区域となっている部分の除染とあわせた復旧作業がかなり進んでいる。線量の高いところでは表土をはぎ、モルタルを吹き付けている。震災で壊れた鉄橋の架け替え工事なども行われている。

毎時10~20マイクロシーベルトあったところが、除染工事後は毎時1.8~2.8マイクロシーベルトとなっているという。かなり高線量下での工事となるので、作業員の被曝が心配である。空間線量だけでなく、粉塵などを吸い込む内部被曝を充分に注意する必要がある。

間もなくフクイチ事故から7年目となる。大規模な核施設事故からの復旧が、いかにやっかいで手間の掛かるものであるかを思わざるを得ない。


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2/19-2018
<福島第1>雨水流入抑制 破損の建屋屋根補修へ(河北新報)


穴が開いた3号機のタービン建屋。現在は仮設の屋根で穴を覆っている(東京電力提供)撮影年月日は不明

東京電力福島第1原発で発生する放射能汚染水を減らすため、東電は水素爆発で穴が開くなどした1~3号機の建屋屋根の補修工事に着手する。損傷が最も激しい3号機タービン建屋にカバー屋根を設置するなどし、汚染水の原因となる雨水の流れ込みを抑える。

原発事故では1、3、4号機が水素爆発。原子炉建屋上部から吹き飛んだがれきが落下し、隣接するタービン建屋や廃棄物処理建屋の屋根に穴が開くなどした。破損箇所から雨水が地下に流れ込み、高濃度汚染水の増加要因となっている。

1~4号機の屋根4万平方メートルのうち、6900平方メートル(約17%)が損傷しているとみられている。炉心溶融(メルトダウン)しなかった4号機は防水工事などの対策が終わっているが、1~3号機は堆積したがれきの影響で放射線量が高く、本格的な補修は手付かずだった。

計画では、がれきや壊れた鉄骨を除去した後、コンクリートを敷設するなどして屋根の防水性を回復させる。約100平方メートルの大きな穴が開いている3号機タービン建屋には、開口部を覆うカバー屋根(約1500平方メートル)を取り付ける。
作業は全て遠隔操作で実施。2018年度に大型クレーン設置に向けた準備工事やがれき撤去を始め、20年度中にカバー設置など一部工事の完了を目指す。

建屋地下に流れ込む雨水を巡っては、破損した屋根以外からも流入している可能性が浮上している。東電は屋根の補修と併せ、流入経路の特定を進める。(写真も 河北新報2/19)

降雨時に建屋に流入する水量のうちで、かなりの部分が不明経路からのものだという報道は、本欄 2月13日で扱った。

7年前の爆発事故で損傷した屋根の修理がまったくできていないことが、問題の根本だ。屋根修理は汚染水対策の重要なひとつであるのだが、高線量下の工事であるために容易ではないのである。「作業は全て遠隔操作で実施」されるということからも、難工事であることが分かる。


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2/21-2018
福島第1原発事故 102歳自殺、東電に賠償命令 「耐え難い負担」 地裁判決(毎日新聞)

東京電力福島第1原発事故による強制避難を前に自殺した福島県飯舘村の大久保文雄さん(当時102歳)の遺族が東電に計6050万円の損害賠償を求めた訴訟で、福島地裁(金沢秀樹裁判長)は20日、「原発事故による耐え難い精神的負担が自殺の決断に大きく影響を及ぼした」と原発事故と自殺の因果関係を認め、東電に計1520万円を支払うよう命じた。原告弁護団によると、原発事故の避難住民の自殺を巡る訴訟で東電の賠償責任を認めたのは3例目。

判決によると、大久保さんは飯舘村で生まれ育ち、事故前は日課の散歩や、縁側で友人との茶飲み話を楽しんでいた。だが、事故から1カ月後の2011年4月11日、原発の北西約30~50キロにある飯舘村が避難指示区域に指定されたことをテレビで知り、翌12日朝に自室で首をつって亡くなった。

裁判で原告側は「全ての知人と財産、生きがいが村にあり、原発事故で避難を強いられた以外に自殺の原因は考えられない」と主張。東電側は「自殺との因果関係は不明」と反論していた。

金沢裁判長は、100年以上にわたって築いた村の生活を失い、帰還の見通しすら持てない精神的負担が「最終的な自殺の引き金となった」と認定。一方で大久保さんが、高齢の自身が避難生活に入り、家族に負担をかけたくないと遠慮していたことなども自殺に影響したとして、東電の責任割合は6割が相当と判断した。
東電広報部は「判決を精査した上で真摯(しんし)に対応する」とコメントした。

じいちゃん、安らかに
「『じいちゃん、安らかに眠ってください』とようやく言える」。大久保文雄さんの次男の妻で原告の美江子さん(65)は、判決後の記者会見で東電の責任を認めた判決内容を評価した。

文雄さんは80歳近くまで働き続け、飯舘村以外で暮らしたことはなかった。99歳の白寿の祝いでは100人近い村民が集まり、得意の相撲甚句を披露した。孫が遊びに来るのが楽しみだった。

40年以上前に嫁いだ美江子さんにとって、仕事で留守がちな夫に代わり、文雄さんが日中の話し相手。「じいちゃんと結婚したみたい」と冗談を言うたび「へへっ」と笑う文雄さんが大好きだった。

だが、原発事故がそんな穏やかな暮らしを奪った。村に避難指示が出ることを伝えるテレビを見た文雄さんは「こっから出たくねえ。長生きしすぎたな」とつぶやいた。その夜は、好物の煮物に箸をつけなかった。翌朝、朝食で部屋へ呼びに行くと、首にひもをかけて亡くなっていた。

「村はじいちゃんの全て。飯舘を離れろと言うのは死ねと言うのと同じ」。東電に責任を認めてほしくて15年7月、美江子さんらは提訴に踏み切った。「じいさんで金をふんだくるのか」。心ない言葉もかけられた。でも全国から100通近い激励の手紙も届いた。

年内に避難先の福島県南相馬市のアパートを離れ、飯舘村の自宅に戻るつもりだ。そして「東電には(仏前で)線香の一本でもあげてもらいたい」。東電が責任を認め、文雄さんに謝罪することを願う。(毎日新聞2/21)

本欄 11月15日(2014)は、東電を提訴したときの報道を取りあげている。

フクイチ事故は、102歳の老人に「こっから出たくねえ。長生きしすぎたな」と言わしめて自死を選ばせるような事故であった。また、残された遺族たちに、どうしても東電の責任を問うて提訴しようと決断させるようなものであった。「残された家族が前を向いて生きていくためにも、原発事故がなければみずから命を絶つことはなかったと証明したい」(NHK11/14-2014)という遺族の志は立派だし尊い。福島地裁がそれを肯定的に判断したことは、とてもよかった。



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2/22-2018
「核のごみ」説明会を再開=謝礼問題で運営見直し-NUMO(時事通信)


原子力発電環境整備機構(NUMO)と経済産業省が開いた
「核のごみ」に関する説明会の様子=21日午後、東京都港区

原子力発電環境整備機構(NUMO)と経済産業省は21日、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関する一般向け説明会を東京都内で開いた。委託業者が謝礼を約束して学生を動員した問題で中断していたが、NUMOの直営にするなど運営方法を見直して再開した。

説明会は国が昨年7月に公表した処分場に適した地域の地図「科学的特性マップ」を周知し、国民の理解を深めるのが目的。外部有識者の提言を踏まえて直営にしたほか、電力会社の社員が一般参加しないようにするなど改めた。(写真も 時事通信2/21)

NUMO(の下請け会社)が「核ごみ説明会」のために、学生に金を渡して出席を依頼していた問題を本欄が扱ったのは、12月25日12月29日(2017)だった。

最近になってNUMOは、東京電力社員を一般参加者を装って参加させていたことが分かってきた。NHKの報道が詳しいので、引用する。
核ごみ説明会に東電社員多数(NHK)

大学生を動員していたことなどが発覚したため、中断されているいわゆる「核のごみ」の処分場の説明会で、東京電力は宇都宮市やさいたま市など6か所で開かれた説明会に80人以上の社員が出席していたと発表しました。主催する「NUMO=原子力発電環境整備機構」は「社会の信頼を得られるよう事業運営の改善に最大限の努力をしたい」としています。

去年10月から全国各地で始まった「核のごみ」の処分場についての説明会では、「NUMO」から委託を受けた会社が、大学生に謝礼などを約束して動員したことや、NUMOの職員が東京電力のグループ会社の社員に参加を呼びかける不適切なメールを送っていたことが明らかになり、説明会は中断しています。 こうした中、東京電力では社員の参加状況などについて調査した結果を20日発表しました。

それによりますと、去年10月と11月に東京、宇都宮、前橋、さいたま、横浜、甲府の1都5県の6つの会場で、合わせて少なくとも81人の社員が説明会に参加していたということです。これは参加者全体の17%ほどにあたり、社員は一般の参加者と同じように質疑などの場にも参加していました。

このうち、宇都宮市で開かれた説明会には東京電力の支社の課長が最大9人の職員に対し、「参加をお願いしたい」と要請し、説明会に参加した68人のうち10人が東京電力の社員だったということです。

これについて、東京電力は「参加の要請は、NUMOの活動を知るためで動員にはあたらないが、動員と疑念をもたれるおそれがある。また、参加自体は止められないが、一般の方と同じ席にいた点は不適切だった」として、再発防止策を図るとしています。
(NHK2/21)
「東京電力の支社の職員」に課長が出席要請をしていたのなら、さらに、東電の下請け会社に動員要請していた疑いもぬぐえない。


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2/24-2018
除染業者「法令違反」44% 福島労働局発表、廃炉業者は38%(福島民友)

福島労働局は22日、2017(平成29)年の1年間、東京電力福島第1原発事故に伴う廃炉作業と除染作業に携わった事業者の労働基準法など関係法令の違反件数を発表した。廃炉作業では336業者のうち129業者で、除染作業では274業者のうち121業者でそれぞれ違反が見つかった。

廃炉作業に携わった業者の違反率は38.4%(前年比7.6ポイント減)で違反件数は210件だった。放射線業務の従事者に被ばく線量を定期的に知らせていなかったり、時間外労働などに対する割増賃金の不払い、賃金台帳に労働時間を記載していなかったりした。

除染事業の業者の違反率は44.2%(前年比13.3ポイント減)で違反件数は179件だった。作業員が防じんマスクを装着していなかったり、1日8時間を超える作業なのに1時間の休憩時間を与えていなかったりした。

同局は違反が確認された業者に対して重点的に指導を行い、是正と改善状況を確認するとしている。(福島民友2/23)

あきれるほど違反率が高い。しかも、それは前年比「13.3ポイント減」、「7.6ポイント減」などというのだから、まったく驚いてしまう。事業者らがいかにボロもうけしているかの証左のひとつである。そのしわ寄せは、現場労働者に集中している。

フクイチ事故以来7年を経過するというのに、この実情である。


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2/27-2018
福島第1、地下水流入量が増加 一時通常の4倍に(中日新聞)

東京電力は26日、福島第1原発1、2号機の原子炉建屋などの地下に流入する地下水の量が2月に入って増え始め、一時通常の4倍近くになったと発表した。付近を通る排水路の補修作業の影響で流入量が増えた可能性があるとしている。

東電によると、今年1月1日から2月8日までの流入量は平均で1日当たり約48トン。しかし、2月8~15日は雨が降っていないにもかかわらず平均約131トンに増加した。19日には約179トンでピークとなり、20日から減少に転じた。

第1原発では建屋に地下水が流入して汚染水と混ざり、新たな汚染水の増加につながっている。(中日新聞2/26)

本欄 2月13日で取りあげたが、大雨の際に地下水の増量があるが、それ以外に不明の増分が存在するという不可解な内容であった。上記の「通常の4倍近くになった」という驚くべき増加分は、同一現象についての続報のようである。

地下の水路の在り方は自明なものでなく、フクイチのような常に監視している現場でも把握できていないのである。時に水路が変化したり、新たな水脈が生じたりしているのであろう。

地下で実際に何が起こっているのか分かっていないのであるが、それが汚染水の急増につながるので、危険この上もない。

【追記 2/28】 東電は増水の原因として「K排水路の逆流」を新たにあげている。
1~4号機建屋の西側を通る「K排水路」の補修作業中に排水路を流れる雨水などが逆流したことが要因とみられる。
東電によると、1月1日~今月8日の建屋への平均流入量が1日当たり約48トンだったのに対し、8~15日は同131トンまで増加した。東電が調査した結果、排水路の補修作業で排水路内の水を止めるせきを設けていたことが判明。このため、せき止められた水の一部が逆流し、地中に流れ出たとみられる。ただ地中に流れ出た原因は分かっておらず、東電が調査を進めている。
(福島民友2/27)
補修工事の一環としてせき止め工事を行っていた、それが原因かもしれない、というのだが、何だかウカツな話で腑に落ちない。

トップページの写真を、ヒゲナガサシガメ幼虫からハエ目ミバエ科ムラクモハマダラミバエに替えた。

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2/28-2018
ふげん燃料、搬出完了9年先送り 廃炉完了時期は変更せず、機構表明(福井新聞)

福井県敦賀市で廃炉作業中の新型転換炉ふげん(原子炉廃止措置研究開発センター)について日本原子力研究開発機構の児玉敏雄理事長は26日、2017年度末としていた使用済み燃料の県外搬出完了時期を9年先送りし、26年度まで延期することを明らかにした。33年度としている廃炉完了時期は「変えることなく、しっかり対応していく」と強調した。福井県庁と敦賀市役所で西川一誠知事、渕上隆信市長と面談し、変更案を説明した。

原子力機構は、近く使用済み燃料の搬出時期を変更する廃止措置計画を原子力規制委員会に申請する。18年度上期に海外搬出先や輸送回数など具体的な計画を明示し、5年程度かけて輸送に必要な容器を製造するなど準備を進め、23年度から26年度までの4年間に搬出を完了したい考え。

児玉理事長は、西川知事との面談で搬出完了時期が遅れることを陳謝した。これに対し、西川知事は「廃止措置計画が認可された08年以降、1体も県外に搬出されていない」と指摘。「具体的な搬出計画がないまま、期限を9年延ばすというのは極めて遺憾」と不快感をあらわにした。

原子力機構が18年度上期に示すとしている搬出計画については「相手国や関係機関との手続きは必要だが、できるだけ前倒ししてほしい」と求めた。計画が示された段階で、使用済み燃料の県外搬出の状況を県として確認する項目を盛り込むため、廃炉協定を見直す考えを示した。

このほか解体廃棄物の処分場の確保、地元経済の持続的発展、国の積極的な関与―などを求めた。

ふげんは03年3月に運転を終了し、08年2月に廃止措置計画の認可を受け廃炉作業が進んでいる。貯蔵プールには現在、使用済み燃料466体が保管されている。当初は東海再処理施設(茨城県)に搬出し再処理する計画だったが、東京電力福島第1原発事故後、新規制基準対応で多額な費用がかかることから、14年に同施設を廃止。海外での再処理を視野に検討を進めていた。(福井新聞2/27)

新型転換炉ふげんは、プルトニウム燃料の実現を目ざした日本独自の原子炉形式の「原型炉」であった。それに続く「実証炉」は青森県大間町に建設予定であったが、1995年に高コストを理由に建設が電力会社によって拒否され、開発計画そのものがすべて無くなってしまった。

ふげんは2003年3月末で運転停止したが、それまでに748本のMOX燃料を使用している。このうち貯蔵プールには使用済み燃料が466体保管中である。この使用済み燃料を福井県外に2017年度末までに搬出するという福井県との約束を日本原子力研究開発機構が守れないことは明らかとなった。そのため9年間先延ばしして2026年度末までと変更したのである。
ただし、県外搬出といってもあてがあるわけではないが、外国をふくめた搬出計画を今年度上半期に明示するとしている。

使用済みのMOX燃料の持って行き先がないというのだが、廃炉作業で生じる多量の高線量の「解体廃棄物」の処分場の確保さえできていないのである。
日本の原子炉計画全体が“ふん詰まり”状況にあることが如実に伝わってくる。


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