き坊の近況 (2018年3月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

3/1-2018
原発事故 甲状腺がんの子ども 約1割の8人再発し再手術(NHK)

東京電力福島第一原発の事故のあと甲状腺がんと診断された子どもの支援を行っている民間の基金が、子どもたちの手術後の経過を調べたところ、およそ1割に当たる8人ががんを再発して再手術を受けていたことがわかりました。
民間の基金、「3・11甲状腺がん子ども基金」は、原発事故後に甲状腺がんやがんの疑いと診断された25歳以下の子どもたちに1人当たり10万円の療養費の支援を行っていて、1月末までに114人に支給しています。

このうち事故当時福島県内に住んでいた84人について基金が術後の状況を調べたところ9.5%に当たる8人ががんを再発して甲状腺を摘出するなどの再手術を受けていたことがわかりました。
8人は、事故当時6歳から15歳で最初に手術を受けた時期から最も早い人で1年後にがんを再発していたということです。

福島県が行っている甲状腺検査では、これまでにがんやがんの疑いと診断された人は194人に上り、再発するケースが出ていることはわかっています。しかし県の検討委員会でも詳しいデータは明らかになっておらず、基金では国や県はがんの再発のケースを詳しく検証してほしいと話しています

基金は、事故から7年を前に3日医師による無料の電話相談を行う予定で、電話番号は、0120-966-544です。(NHK3/1)

本来、国・県や東京電力がやるべき甲状腺がんとなった子供たちのフォローを、民間の「3・11甲状腺がん子ども基金」がやっている。そのことだけでも、苛立たしい事態だ。
術後経過を調べ、再発が1割り近く出ているという。若い人たちのため、病気の進行が早いことがうかがわれ、痛ましく感じられる。

県民健康調査(甲状腺検査)を受けていない該当者(フクイチ事故時に0歳~18歳の福島県民)や、フクイチ事故時に19歳以上の青壮年であった福島県民たち、近隣の都県の若い人たちの中に甲状腺がんが発症していないのだろうか。甲状腺手術の症例数などを国が統計を出すことは容易だろうと思う、やる気さえあれば。

チェルノブイリ原発事故の例では、事故後10年、20年経過してからのがん発症がピークを迎えている。事故時の年齢が上がるほど、発症までの経過年数が多くなる。日本は7年経過しようとしているところだ。これから悲惨な状況をむかえる可能性がある。


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3/2-2018
甲状腺がん:福島県外の子どもらに重症化傾向(毎日新聞)

NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」(事務局・東京)は1日、東京電力福島第1原発事故後、甲状腺がんと診断され療養費を給付した114人(福島県内84人、県外30人)のうち、県外の子どもらに重症化の傾向があることを明らかにした。甲状腺の摘出手術後、再発の危険性が高いとして放射性ヨードを服用する「アイソトープ治療」を受けたのは福島県内2人(2%)に対し、県外11人(37%)だった。

原発事故との因果関係は不明だが、同基金は子どもが甲状腺がんになるリスクはゼロではないとして、放射性ヨウ素が拡散したとされる東日本の1都15県で暮らしていた25歳以下(事故当時)の人を対象に、甲状腺がんやがんの疑いと診断された場合、一律10万円を支給している。

福島県は事故当時18歳以下だった人を対象に甲状腺検査を継続しており、同基金はこの検査が早期発見につながり、重症化を抑えていると分析。一方、県外の場合、自覚症状が表れるなどがんが進行してから治療を受けるケースが多く、福島県民に比べて発見が遅れがちとみている。同基金の副代表理事、海渡雄一弁護士は「福島県の子どもだけが検査を受けるのは一種の『差別だ』と言う人もいるが、本来は国の責任で関東などを含む広範囲で実施すべきだ」と述べた。

日弁連も昨年12月、環境省の担当者らを招いて衆院第1議員会館で院内学習会「多発する子どもの甲状腺がん-福島県民健康調査はこのままで良いのか-」を主催した際、井戸謙一弁護士らは福島県での検査継続と、他県での検査実施を求めた。

原発事故から7年となるのを受け、同基金は3日午前10時~午後4時、甲状腺がんに関する電話相談(フリーダイヤル0120・966・544)を実施。医師4人が対応する。(毎日新聞3/1)

「3・11甲状腺がん子ども基金」は25歳以下の人で甲状腺がん(含む疑い)と診断された人に療養費を支援しているが、今年1月末までに、114人に支援を行った。そのうち、福島県外の人が30人だったが、より重症とみられて「アイソトープ治療」を受けた人が11人あった。
「基金」から支援を受けた福島県内の人が84人だったが、そのうち「アイソトープ治療」をうけたのは2人だった。

福島県では甲状腺検査を継続しているので早期に発見されやすいが(これまでに194人が見つかっている)、福島県外では自覚症状が出てから治療を受けることになるので病状が進行している場合が多くなるという訳だ。

国および東京電力の責任で、周辺都県の子供たち(事故時に子供であった人たち)に対して甲状腺検査を継続的に行うべきである事は論を待たない。


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3/3-2018
凍土壁 効果は限定的 汚染水防止 1日95トン(東京新聞)

東京電力は1日、福島第一原発1~4号機への地下水流入を抑え、汚染水の発生量を減らすための凍土遮水壁について、1日95トンの地下水流入を防いでいるとの試算結果を発表した。凍土壁が無く、他の対策だけの場合、189トンに上ると想定。これを半減できているとしたが、効果は限定的にとどまっている。

凍土壁は「全く水を通さない」という触れ込みで、政府と東電が345億円の国費を投じて造った。2016年3月末から凍らせ始め、維持費用は電気代など年間十数億円に上る。

福島第一では、汚染水が大量に発生。東電は凍土壁のほか、建屋近くの井戸から水をくみ上げるなどして地下水が建屋に入らないように対策を講じている。

東電によると、凍土壁の運用前は1日に平均約490トンの汚染水が発生。凍土壁がほぼ完成した17年冬には、1日約110トンと4分の1にまで減った。今回の試算で、凍土壁は1日95トンの低減効果があるとした。だが、地下水が直接建屋に入り込む西側部分を見ると、低減できる量は17トンで2割に満たず、効果を発揮していない。

凍土壁は、地中に長さ30メートルの管約1600本を打ち込み、零下30度の冷却液を循環させて周辺の土を凍らせている。建屋東の海側はケーブルや配管を収容する地下トンネルがあり、その下は凍っていない。

東電の福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏・最高責任者は会見で「凍土壁ができて、他の対策も効果を発揮しやすくなった。検証は続ける」と話した。(図も 東京新聞3/2)

凍土壁の効果が疑わしいという意見は、凍土壁の計画が出て来た時からあった。しかし、ともかく345億円の国費を投じて、凍土壁を造り、それを冷やし続け(永続的に猛烈な電気代など、年十数億円を要する)、地中温度がすべて0℃以下になったと東電が発表したのは昨年11月3日だった(本欄 11月4日-2017)。

凍結前の汚染水発生量が約490トン/日だったのが、現在、平均約110トン/日となっている。減少分は380トン/日だが、これは「井戸から汲み上げ」+「凍土壁」の効果が重なったもので、東電の計算では凍土壁は95トン/日の低減効果がある、としている。これがどういう計算なのか、分からない。

東電は「より詳しい解析結果を来週にも示す方針」であると言っている(日本経済新聞3/1)。

◇+◇

本欄 2月21日 で取りあげた、当時102歳だった福島県飯舘村の大久保文雄さんが自殺した件の福島地裁判決について、東京電力が控訴しない方針を表明した。
東電は「判決内容を踏まえ、総合的に判断した」と説明。大久保さんに対し「心よりご冥福をお祈りする」との談話を出した。
大久保さんの次男の妻で原告の一人、美江子さん(65)=南相馬市に避難中=は「じいちゃんに『良かったね』と声を掛けたい。東電は線香の一本でもあげてほしい」と話した。
(河北新報3/2)


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3/5-2018
プレハブ仮設に1.3万人=173世帯退去めど立たず・被災3県―東日本大震災7年(時事通信)

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で、仮設住宅に入居している避難者は1月末現在、岩手、宮城、福島の3県で計2万9619人いる。

6年前と比べ約10分の1まで減少したが、半数近い1万3564人がプレハブ仮設で暮らす。3県などによると、入居開始から7年となる3月以降に供与期間が終了する約8900世帯のうち、昨年12月時点(岩手は今年2月時点)で173世帯の転居先が未定となっている。

未定の世帯に対し、3県の担当課は戸別訪問や電話相談を行っているが、転居先が決まらない理由はさまざまだ。福島県の担当者は「経済力はあっても、子どもを転校させずに済む物件が見つからないという世帯もある」と明かす。

宮城県が住居探し支援を委託する一般社団法人「パーソナルサポートセンター」(仙台市)の平井知則自立相談支援部長は「単なる経済的事情とひとくくりにはできない」と指摘し、仮設に暮らす単身の高齢者と家族の意見がまとまらない例を挙げる。連絡が取れない世帯もあり、「新たに負担する家賃など現実を見るとつらくなり、電話や相談に応じないのでは」と話した。

転居先の災害公営住宅が未完成だったり、帰還困難区域に指定されていたりするなどの理由で、3県計1万3492世帯は期限が入居後8年に延長される。うち約3割がプレハブだ。

宮城県石巻市内のプレハブ仮設に夫と暮らす西條けい子さん(67)は、今秋にようやく市の災害公営住宅に移る予定だ。夏には仮設暮らしも7年を超える。「市がきちんと土地を選べば、もっと早く公営住宅を建てられたはずだ」と不満をこぼした。

老朽化対策も課題だ。災害救助法はプレハブ仮設の使用を2年以内と定めるが、東日本大震災では期限を延長するケースが相次いでいる。岩手県は2016年度中に、約1700戸の基礎補強や玄関階段の床板張り替え工事を計約4億円かけて実施した。(図も 時事通信3/3)

岩手・宮城・福島の3県あわせて、仮設住宅住まいが計2万9619人いる。その内でプレハブ住宅住まいが1万3564人いる、ということ。
また、3県合計で約8900世帯は、仮設住宅の供与期間が3月で終了する。そのうち173世帯はまだ転居先が決まっていない(昨年12月現在)、という。

公営住宅の建設が遅れていたり、フクイチ事故によって帰還困難区域に指定されていたりして、311震災からもうすぐ8年目に入るのに、仮設住宅住まいが続く人たちが、3県で1万3492世帯もある。


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3/6-2018
甲状腺がん、2巡目は52人 福島県の子ども対象検査(共同通信)

東京電力福島第1原発事故の健康影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会が5日、福島市内で開かれた。県内の全ての子ども約38万人が対象の甲状腺検査で、2014年度から始まった2巡目では甲状腺がんと診断された人が前回の報告(17年12月)から1人増えて52人となり、疑いが1人減って19人に上ったと報告された。

甲状腺検査は11年度から始まり、14年度には2巡目、16年度からは3巡目が行われている。
今回の報告で1~3巡目を合わせると、確定は160人、疑いは36人となった。(共同通信3/5)

1巡目(先行検査ともいう、2011年度~13年度)では、がん及びがんの疑い116人。うち手術実施が102人でがん確定が101、良性1。
2巡目(本格検査1回目、14年度~15年度)では、がん及びがんの疑い71人。うち手術実施が52人でがん確定が52。
3巡目(本格検査2回目、16年度~17年度、つまり今月末まで継続中)では、がん及びがんの疑い10人。うち手術実施が7人、がん確定7。

2,3巡目でがんが発見されるというのは、それまでの検査で発見されていなかったということであり、前回検査から2年間ほどの間にがんが発症、成長していたということなのである。
受診率がどんどん下がっていることも、心配だ。1巡目:81.7%、2巡目:71.0%、3巡目:56.9%。

3月5日の県民健康検査の資料は、福島県HPにあります。


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3/8-2018
「セシウムボール」のこと

NNN(3/6)とJNN(3/7)で、セシウムボールについて報道された。本欄では昨年5月に扱ったが(5月29日-2017)、重大な危険性を含むものであるので、その概要をまとめておく。

311事故直後に茨城県つくば市で見つかっていたが、改めて研究チームが調査をし発表したのが昨年5月25日の日本地球惑星科学連合大会であった。それによると、セシウムボールは直径数マイクロメートル(昔はミクロンと言っていた、千分の1ミリ)ほどの球形や不定形のガラス状の微粒子である。その成分は、放射性セシウム・ウラン・鉄・モリブデンなどで、原発がメルトダウンした際に炉心で生成された微粒子であろうと考えられている。それら諸成分が融解したままガラス状に冷え固まったものである。

この微粒子が関東一円に飛び散ったのであるが、このガラス状微粒子のもっとも重大な特徴は水に溶けないという性質である。通常のセシウムは水溶性であるため、地面に落ちても雨水などに溶けて、植物に吸収され、生物の生態系循環に入る。また川に流されて海へ流出する。
それに対してセシウムボールは非水溶性であるために、土壌中でいつまでも微粒子のまま存在する。土埃などと共に舞い上がり、呼気として人体に吸収される。肺の粘膜に付着するが、非水溶性のため微粒子のままで存在し体内へ吸収されにくい。附着した放射性の微粒子の周りは放射線濃度が高濃度となり、とても危険である。

通常の放射性セシウムは水溶性のため、肺の粘膜から体内に(血液中などへ)吸収されるので、体内の生理にしたがってやがて排泄される。その期間は体内の危険な放射性物質として振る舞うのであるが、排泄されれば終わる。しかし、セシウムボールはそれと比べものにならないほど危険性が高い。NNN3/6の「事故から7年・・・“謎の放射性粒子”の正体」(約10分)の7分以降がこの問題を丁寧に解説している。

JNN3/7「“目に見える”放射性物質の粒・セシウムボール」(約4分)は、セシウムボールそのものを環境の中で探索することやその物質の形態について、詳しく述べている。


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3/10-2018
もんじゅの警報装置が故障 中央制御室で6日から(福島民友)

日本原子力研究開発機構は9日、廃炉が決まった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の中央制御室で、音やランプの点滅で異常の発生を知らせる580種類の警報の一部が6日に故障、復旧作業を続けていると発表した。

機構によると、年1回の設備点検を6日に実施。点検ごとに計画書を作成しており、今回は通電したまま回路の接続を変更するよう定めていたが、昨年までは電源を切断してから接続を変更していたとみられ、計画書そのものに誤りがあった可能性がある

職員らが6日、計画書に沿い通電したまま回路の接続を変更したところ、警報を鳴らす装置の基板が故障した。(福島民友3/9)

年に一度の設備点検の計画で、昨年と違い通電したまま接続変更操作を行うように変更していた。おそらく、基板に異常な電圧が掛かったのだろう、壊れた。

もんじゅ廃炉を担当する日本原子力研究開発機構が、ますます士気が落ち、危なくなってきているのではないか。もともと機構のとんでもないだらしなさに、原子力規制委が愛想を尽かせて廃炉を決断したのだった。その同じ組織が廃炉を担当していくということで本当に大丈夫なのか。このさき、困難なナトリウム抜きや、MOX燃料抜きの工程が待っている。


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3/11-2018
大飯原発3号、14日にも再稼働 関電、4年半ぶり(福井新聞)

関西電力は7日、大飯原発3号機(加圧水型軽水炉、出力118万キロワット)を早ければ14日に再稼働させると明らかにした。原子力規制委員会に原子炉起動予定日を届け出た。3号機の起動は2013年9月以来、約4年半ぶり。

新規制基準に適合した福井県内原発の再稼働は、営業運転中の高浜3、4号機に次いで3基目。11年12月以来、立地場所が違う複数原発が動きだす。

大飯3号機は2月9日に193体の燃料装荷を始め、同13日に完了した。原子炉容器の組み立てや非常用ディーゼル発電機の検査を終了。原子炉起動に向けて、1次冷却水系統の温度や圧力を上昇させて通常運転に近い状態にするため、原子炉本体の試験使用を求める申請書を規制委に提出し3月6日、承認された。

検査などが順調に進めば、原子炉内の核分裂反応を抑える制御棒の駆動検査を行い、14日に原子炉を起動する。4月上旬の営業運転を目指す。

大飯4号機は4月上旬に燃料装荷し、5月中旬に原子炉を起動。6月上旬に営業運転に入る見込み。大飯3、4号機を巡っては昨年11月、西川一誠知事が再稼働に同意した。(福井新聞3/8)

再稼働に反対する人々の活発な動きも当然ある。「舞鶴市は反対すべきだ」と市民団体が市へ申し入れを行った。
関西電力が今月中旬に再稼働を予定している大飯原発3号機(福井県おおい町)について、再稼働を反対する市民グループが7日、再稼働反対の表明と住民説明会の開催などを求める要望書を舞鶴市に提出した。

要望書を提出したのは、反原発5団体でつくる「避難計画を案ずる関西連絡会」のメンバー有志ら13人。京都府)舞鶴市は大飯原発から半径32・5キロのUPZ(緊急防護措置区域)に含まれ、人口の94%がその域内で暮らしている。事故の備えとして、甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の事前配布を全域で行うことも求めた。
(毎日新聞3/8)
また、福井県小浜市の明通寺住職、中嶌哲演さん(76)は10日~14日の間の断食をもって抗議するとして、断食行に入っている。中嶌さんが最初に断食行の座り込みで抗議したのは1977年で、福井県内に当時9基あった原発を増設する動きに対して県庁前などで1週間決行した。それから原発を巡る重要な節目ごとに断食を行い、今回で6回目となるという(毎日新聞3/8 による)。


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3/13-2018
川内原発:1号機の燃料集合体1体から放射性物質漏れ(毎日新聞)

九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で1次冷却水の放射性ヨウ素濃度が上昇した問題で、九電は12日、燃料集合体1体から放射性物質が漏れ出ていたと発表した。外部環境や作業員に影響はないという。燃料集合体の中にある核燃料棒を覆う管に穴が開いている可能性があり、今後、損傷具合や原因などの詳細を調べる。

川内1号機は昨年3月以降、1次冷却水の放射性ヨウ素濃度が通常値より上昇。制限値を下回っていたが、今年1月からの定期検査で、燃料集合体157体を調べていた。

九電によると、九電の原発で同様の放射性物質漏えいは10例目で、川内原発では2例目。(毎日新聞3/12)

川内原発1号機は今年1月29日から発電を停止して定期検査に入った。だが、1号機は昨年3月から1次冷却水の放射性ヨウ素の濃度が高くなっていた。制限値以下だったので運転はそのまま継続して、定期点検に入ったのである。

157本ある燃料棒のどれか(複数の可能性もある)に、ピンホールが明き、そこから1次冷却水に放射性物質が漏洩していると考えられる。このトラブルは原発でよくあるもので、九電は定期検査で1次冷却水の汚染濃度を下げながら、どの燃料棒に穴が開いているかを探していて、今度見つかったと発表したのである。
この影響で、今の定期検査の終了が一月ほど延びて、再稼働して営業運転に復帰するのは6月下旬になると九電は発表している(毎日新聞2/27)。

川内原発がけして万全なものではなく、危ういリスクを抱えていることが良く分かる。
県民多数の反原発の意志を受けて当選した三反園訓[みたぞのさとし]知事は2016年7月に就任したが、当選前と態度が変わり「私に原発を稼働させるか稼働させないかの権限はない」と言いはじめ、川内原発の再稼働を容認する姿勢となった。
わたしは県知事は県民の生命・財産を守ることに責任があり、「県民の避難計画が十分ではないので、再稼働に反対である」とする立場は取り得たのではないかと考え、三反園知事を批判してきた(本欄 2月23日-2017 など)。


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3/14-2018
大飯原発3号機、14日午後5時に再稼働 4年半ぶり、新基準では6基目(産経biz)


大飯原発3号機(右)と4号機=福井県おおい町
関西電力は13日、大飯原発3号機(福井県おおい町)を14日午後5時に再稼働させると発表した。原発の新規制基準下での再稼働は4原発6基目。大飯3号機は平成24年(2012)7月、当時の民主党政権が定めた暫定基準に基づきいったん稼働し、25年9月に定期検査で停止。運転は4年半ぶりとなる。営業運転開始は4月上旬の見込み。

福井県内では、大飯原発から約14キロ西にある関電高浜3、4号機が昨年再稼働し、営業運転中。東京電力福島第1原発事故があった23年(2011)以来、初めて近接する複数の原発が同時に稼働することになるが、事故時の住民避難計画は同時事故を想定していない

関電は25年7月、2基の審査を原子力規制委員会に申請。敷地周辺の活断層の評価を巡り審査は長期化し、29年(2017)5月に合格した。福井県の西川一誠知事が同11月、再稼働に同意した。

関電は当初、3号機を今年1月に再稼働させる予定だったが、神戸製鋼所の製品データ改ざん問題で延期。三菱マテリアル子会社製のゴム部品でも改ざんが発覚し、品質基準を満たすか確認できない部品を使っていた装置を交換した。4号機は5月に再稼働する計画。(写真も 産経biz3/13)

本日大飯3号機が再稼働する。九州電力の玄海3号機は今月23日に再稼働するという。上の記事にあるように関電は、5月に再稼働する計画であるという。ぞくぞくと原発再稼働が行われる。

大飯原発3号機は高浜原発3、4号機と直線距離で約13キロしか離れていないのである。それぞれの原発のリスクに加えて、「同時発災」の危険性があり、ふたつのオフサイトセンタ-の一元化や、同時発災のときの住民避難計画の立案など難しい課題がある(内閣府が検討しているという)。
それらのリスクに目をつむったまま再稼働に突き進むことを、許して良いのか。


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3/15-2018
原発、巨大噴火リスクの考慮必要 弁護団、規制委に抗議声明(福島民報)

巨大噴火が起きた場合の原発へのリスクについて原子力規制委員会が「発生の可能性は低頻度で社会通念上、容認される水準」との考え方を示したことに対し、脱原発弁護団全国連絡会は13日、「原子力安全の常識を無視する見解だ」として、規制委に撤回を求める抗議声明を出した。

規制委は今月7日、巨大噴火に関しては原発以外の分野でも法規制や防災対策が実際されていないなどとしてリスクを容認できるとの考え方をまとめた。

声明は、規制委が1千万年に1回以上の航空機落下による原発火災を想定する一方で、6千年に1回程度とそれに比べ高頻度の巨大噴火を考慮しないのは不合理だと指摘した。(福島民報3/13)

起こる確率が低い事象により引き起こされる深刻な原発事故について、原子力規制委が「巨大噴火は発生の可能性は低頻度で社会通念上、容認される水準である」という通俗論に与してしまったは情けない。人類が20世紀半ばではじめて手にした原発は、万一深刻な事故が起こるとそれまでに人類が経験していない重大で長期にわたる災害となる。低確率であっても起これば極めて深刻な災害となるような事象に対する対処は、「社会通念」が形成されていないのである。
低頻度だが極めて深刻な災害となる原発災害に対して、原子力規制委は率先してどのように対処すべきなのか、指針を打ち出すべき責務がある。

311大震災から半年後の2011年10月に、柳田邦男さんが「ラジオ版 学問ノススメ」で「大震災と原発」という談話を残している(YouTube 1時間23分)。有意義な内容なので聴取をお勧めします。
その中で、柳田邦男さんが311大震災から得た教訓の心髄を、次の3個条にまとめている。心髄を3様に言い換えて表現している。
    《1》原子力災害では、起こる可能性のあるものは必ず起こる。

    《2》確率が低くても起こったら一大事というものには、はっきりと取り組まないといけない。

    《3》「想定外」という語は、手前勝手な御都合主義である。


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おまけで、わたしの左手人差し指と一緒に写したものを掲げます。


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3/17-2018
原発避難訴訟 「国に責任」判決相次ぐ「津波予見できた」(毎日新聞)

全国で約30件が争われている原発避難者の集団訴訟で、16日の東京地裁判決は改めて国の責任を厳しく問う内容となった。国が被告に含まれる訴訟で出された5件の判決のうち、4件が国を免責しなかったことになる。賠償額については東京電力のみを相手取った1件を加えた6件全てで、東電の既払い額からの上積みが認められた。原告らは東電と国の責任に関する法的議論は決着がついたとして、救済策拡充を求める動きを本格化させるが、国は控訴するとみられ、全面解決への道筋は見通せない。

原告側は各地の訴訟で「国は福島第1原発への巨大津波を予見できたのに、東電に津波対策を命じるなどの規制権限を行使せず事故を招いた」と主張。国側は(1)東電に対して津波対策を命じる規制権限はなかった(2)巨大津波襲来は予見できなかった(3)仮に東電に津波対策を命じても事故は防げなかった--と反論する。

(1)については、国の賠償責任を唯一否定した昨年9月の千葉地裁を含む5地裁の判決が全て「規制権限があった」と認定(2)についても、5地裁の判決は全て、政府機関が福島沖に巨大津波が起きうると予測した2002年の「長期評価」を引き合いに「襲来は予見できた」と結論付けた。規制権限の不行使が違法となる時期について、16日の判決は、原発の新耐震基準が策定された06年の年末以降と認定。前日(15日)の京都地裁判決とほぼ同じ判断となった。
(3)については、昨年3月の前橋地裁判決は「電源の高所配置」、同10月の福島地裁判決は「建屋の水密化」、東京地裁判決は、より簡易な「全電源喪失を想定したバッテリー設置とマニュアル策定」を行っていれば、被害を防止か軽減できたとした。

原発事故に詳しい海渡雄一弁護士は「16日の判決は先行判決を参照しつつ、集大成的な判断をしようとしたことがうかがえる。司法判断は、国の責任を認める方向に集約されつつある」と分析している。(以下略)(毎日新聞3/16)

02年の巨大津波の長期評価は、何れかの近い将来に巨大津波の襲来を予測したものであるが、それが切迫した予測なのか、漠然としたものであったのかはっきりしてはいない。しかし、15mの巨大津波に対する対策は15mを超える防潮堤を建設するという土木的発想だけとは限らないのである。
津波に襲われて水浸しとなっても、原発の暴走を防ぐことができることが最低限要求される。つまり、10割の防御ができなくとも、2~3割の防御で最低の防衛線を確保するという作戦もあり得たのである。

東電はそのような容易な作戦さえも、一切とろうとしなかった。それは「日本の原発は完璧で安全である」という謂われなき安全神話を盲信していたからである。彼ら「原子力ムラ」は、原発の脆弱性を様々に指摘する人たちをせせら嗤ってまったく聞く耳を持たなかった。
フクイチ事故のために犠牲になった人々、今なお避難生活に苦しんでいる人々に対して、国と東電と「原子力ムラ」は加害者であり有罪である。彼らは(刑法的にも)罰せられるべきだと思う。


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3/18-2018
【玄海再稼働】原発まで130キロ阿蘇火山リスクは? 九電→破局的噴火予兆わかる 専門家→データに限界予測困難(西日本新聞)

原発に対する火山の危険性が注目されている。広島高裁は昨年12月、熊本県の阿蘇カルデラの噴火リスクを理由に四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを決定。群馬県の草津白根山や宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)など各地の火山で噴火も相次ぐ。再稼働が間近に迫る九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と阿蘇カルデラの距離は、伊方原発とほぼ同じ約130キロ。安全性に問題はないのか。噴火の想定が難しいこともあり、見方は分かれる。

原子力規制委員会は火山対策指針として「火山影響評価ガイド」を策定。原発から160キロ以内の火山を対象に、安全性確認や対応策を電力会社に求めている。

九電は玄海原発に関し、阿蘇カルデラや雲仙岳、九重山など17火山を「将来活動の可能性がある」と判断。その上で、過去の噴火履歴や地質調査を根拠に、いずれも原発が稼働している今後数十年の間に火砕流が発生しても原発敷地内には達しないと結論づけた。火山灰が到達する可能性はあるが、降灰時も非常用発電機が機能を維持できるように昨年11月、吸気口にフィルターを設けた。

広島高裁が指摘した「破局的噴火」のリスクについては、九州で過去に破局的噴火を起こした五つのカルデラを調査。約9万年前に阿蘇カルデラで発生した破局的噴火では山口県付近まで火砕流が到達したとされるが、活動周期や地下のマグマに関する文献から「破局的噴火の直前の状態ではない」とする。大規模噴火を起こすマグマの動きは地殻変動や地震を引き起こすことから「破局的噴火の予兆は捉えられる」と九電の瓜生道明社長は説明する。
◇      ◇
一方、火山の専門家は噴火予測の難しさを指摘。東京大地震研究所の中田節也教授は噴火履歴に関するデータは限られており「巨大噴火の想定には限界がある」と語る。火山影響評価ガイドについては「立地選定の情報にするなら分かるが、既存の原発の安全性審査に用いるのは違和感がある」と疑問を呈す。
熊本県阿蘇市にある京都大火山研究センターの大倉敬宏教授は、阿蘇カルデラで巨大噴火が起こる可能性は当面は低いとの認識を示しつつ「観測データから噴火の前兆はある程度捉えられるが、規模や時期まで予測するのは難しい」と話す。

九電は「できるだけ多角的に捉えることが重要」とモニタリングを強化する方針だ。ただ、破局的噴火は九州全域に大被害をもたらすような規模。両教授とも「原発だけの問題ではなくなる。噴火規模をどこまで想定するか国民的な議論も必要」とする。(図も 西日本新聞3/17)


広島地裁の「伊方差し止め」判断は、本欄12月14日-2017 で取りあげた。この判決に対して、藤井敏嗣氏(火山噴火予知連 前会長)は
今回の判断は、これまで社会が向き合ってこなかった巨大噴火にどう対応するのかという大きな問題を突きつけた。
と述べていた。本欄 3月15日で取りあげたが、柳田邦男氏は311大震災の半年後に
確率が低くても起こったら一大事というものには、はっきりと取り組まないといけない。
と述べていた。

「今後数十年の間に火砕流が発生しても原発敷地内には達しない」(九電社長)という発言は、科学的根拠に根ざすものではなく九電の願望を述べたに過ぎない。火山学者は、巨大噴火が近く起こる確率はたしかに低いが「規模や時期まで予測するのは難しい」という立場である。
深刻な事故が起こると破滅的影響が及ぶ原発は再稼働すべきではない。火山・地震・津波の多いわが国では原発はできるだけ早く廃炉処理をし、太陽電池・風力・水力発電などに切り替えるべきである。


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3/19-2018
<原発自主避難訴訟>「ようやく避難者と認めてもらえた」原告ら、つらい生活振り返る(河北新報)

東京電力福島第1原発事故を巡る集団訴訟の判決で、東京地裁が16日、自主避難の合理性を認めたことについて、原告らは「ようやく避難者と認めてもらえた」と、つらい避難生活を振り返って喜んだ。ただ賠償対象と認定された避難期間は短く、原告側弁護団は不十分さも指摘した。

判決後に開かれた原告側の記者会見。原告団長の鴨下祐也さん(49)は「司法が被害を認めた意義は大きい」と強調した。

いわき市から都内に自主避難した。「周囲から『偽避難者』のような扱いを受けてきた。避難が正しかったのかと逡巡(しゅんじゅん)してきた」と多くの自主避難者の思いを代弁した。
福島県内から2人の娘と都内に自主避難した40代女性は「『避難は正しかった』と誰も言ってくれなかった。最後の頼みだった司法に認めてもらい、とてもうれしい。避難生活を続けていける」と涙を見せた。

弁護団の中川素充弁護士は「全17世帯の避難に合理性を認めた」と判決を評価。ただ原発事故との因果関係を認めた避難期間は原則2011年12月までで「対象期間が短い。認められた慰謝料も(同種訴訟の判決では)高い水準だが、やはり物足りない」と語った。

原発事故を招いた国の責任を認めた判決は今回で4件目。中川氏は「国の加害責任は明白。被害者救済の施策を取るように訴えていく」と強調した。


東京電力福島第1原発事故で福島県から東京都などへ自主避難した住民ら17世帯47人が、国と東電に計約6億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、双方の責任を認め、42人に計約5900万円を支払うよう命じた。国と東電は津波を予見する義務があり、対策を取っていれば事故は回避できたと判断した。
全国で約30件ある同種の集団訴訟の判決は6件目。国は被告となった5件のうち4件で賠償を命じられ、司法が国の責任を認定する流れが定着した。(図は東京新聞3/17 河北新報 3/17)

京都地裁、東京地裁と立て続けに勝訴の判決が出たことはよろこばしい。本欄 3月17日で取りあげたように、「巨大津波の予見」等についてはほぼ原告側の主張が認められる流れとなったことは確実である。

自主避難の正当性を司法が認めたことは大きな成果だが、必ずしも全面勝利ではなく、今後への課題を残している。


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3/20-2018
大間原発訴訟 「悔しくて悔しくて…」請求棄却で原告(毎日新聞)

建設の差し止めなどを求めた訴訟 函館地裁、原告の請求棄却
Jパワー(電源開発)が青森県大間町に建設中の大間原発をめぐり、北海道函館市の市民団体らがJパワーと国に建設の差し止めなどを求めた訴訟。19日、函館地裁(浅岡千香子裁判長)は原告の請求を棄却した。判決後、原告らは「極めて不当だ」と憤った。竹田とし子代表は函館地裁の前で「悔しくて悔しくて仕方がない。あまりにも不当な判決だ。司法が力を発揮せず失望している」と嘆き、目に涙を浮かべた。大間町の熊谷厚子さん(63)は「まだ建設中のものだからこそ、今ここで見直して止めるべきではないのか」と憤った。

記者会見した原告弁護団共同代表の河合弘之弁護士は「稼働の見通しが立っていないので判断せずとは、肩すかしをくらった印象だ。もっと丁寧に審理し、安全審査が終わってから判断すべきだったのではないか」と話した。

一方、立地する大間町の金沢満春町長は19日、出張先の青森県むつ市で報道陣の取材に応じ「望んでいた結果になって良かった。司法においても問題なく進められるとの判断だ」と述べ、原発推進の考えを改めて強調。同町の団体職員の男性(34)は「日本のどこかに原発は建てなければならない。大間は仕事もないので電源開発に頼る部分が大きい」と話し、判決を評価した。

ただ、事故への不安から「原発との共存共栄」の考えを変える町民も少なくない。60代の女性漁師は「町長らが推進しても大間の総意ではない。反対でも本音を声に出して言わないだけだ」と語った。(毎日新聞3/19)

「まだ建設中だから差し迫った危険性はない」という函館地裁の論法は奇妙で、腑に落ちない。
浅岡千香子裁判長は、原子力規制委員会が新規制基準の適合審査中であり、「現時点で重大事故発生の危険性があると認められない」と判断した。東日本大震災後、建設中の原発への司法判断は初めて。(毎日新聞3/19)
これでは、司法的には「建設差し止め」を主張することができなくなる。まして「建設計画を止める」ことができなくなる。原告側は判決を不服として控訴する方針。

なお、大間原発をめぐっては、この訴訟とは別に函館市が14年4月、自治体として初めて原発建設の差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こし、審理が続いている。この東京地裁の判断が注目される。


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3/20-2018
玄海原発差し止め認めず 佐賀地裁決定 火山「具体的危険なし」(東京新聞)

九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡る仮処分申し立てで、佐賀地裁は20日、運転差し止めを認めない決定をした。焦点だった阿蘇山の大規模噴火リスクについて、立川毅裁判長は「重大な被害が生じる具体的な危険は認められず、九電の安全確保策は合理的だ」と判断した。

3号機は23日に再稼働を予定し、4号機は5月に運転再開を計画している。

仮処分を申し立てたのは山口、福岡、佐賀、長崎、熊本五県の約七十人。

決定は、火山の影響を評価する際、破局的噴火が発生する相応の根拠が示されない限り、原発の立地が不適切とはならないと指摘。阿蘇カルデラは地下10キロ以内に大規模なマグマだまりがなく「破局的噴火の可能性は極めて低いとした九電や原子力規制委員会の判断は合理的だ」とした。
東京電力福島第一原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発の耐震性や避難計画、火山灰対策も適切で「玄海原発は安全性に欠けない」と結論付け、申し立てを却下した。住民側は即時抗告する方針。

立川裁判長は昨年6月、別の住民による同様の再稼働差し止めの仮処分申し立てを退けていた。住民側は今回の仮処分と併せて同種訴訟を起こしており、国内外の約1万人が原告となっている。

火山リスクを巡っては原発から160キロ圏内の火山が審査対象となる。昨年12月の広島高裁決定は、阿蘇カルデラの巨大噴火の可能性を懸念。約130キロ離れた四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を禁じた。玄海原発もほぼ同じ距離にある。

 <玄海原発> 佐賀県玄海町にある九州電力の加圧水型軽水炉。1~4号機が1975~97年に順次営業運転を始めた。3号機は2009年、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマルを国内で初めて導入。3、4号機は17年1月に原発の新規制基準に適合し、同4月までに地元同意の手続きも終えた。九電は老朽化した1号機の廃炉に着手し、2号機の存廃を検討する。(東京新聞3/20)

「火山の影響を評価する際、破局的噴火が発生する相応の根拠が示されない限り、原発の立地が不適切とはならない」という佐賀地裁の判断は、世間の俗論に迎合したに過ぎないのではないか。本欄 12月14日(2017)で広島高裁の論拠を説明する際に引いた原子力規制委員会の「火山ガイド」(ここ)は160km以内にある火山のリスクを評価せよ、としている。そして、いかに小さい確率のリスクであっても、もし起これば破滅的影響が生じるようなリスクの場合はキチンと対策しておくべきだ、というのが311大震災の教訓ではなかったか。

佐賀新聞は玄海原発の再稼働について、放射性廃棄物の捨て場所がないこと・MOX燃料を使用することの問題性など、鋭い論点を挙げている。さすが地元紙である。なお、玄海町の岸本英雄町長は、熱心な原発推進派である。
「3号機の再稼働は核燃料サイクルにとっても大きな意味がある」。そう話すのは玄海町の岸本英雄町長。発言の背景には先行きの見えない日本の核燃料サイクルがある。国は当初、プルトニウムを生み出す高速増殖炉をサイクルの軸に据えていたが、もんじゅ(福井県)の廃炉が決まり頓挫。国内のプルトニウム消費をプルサーマル発電に頼るしかない現状がある。

ただ、玄海3号機が再稼働してもプルサーマル発電を行う原発は4基にすぎない。プルトニウム消費量はわずかで、国内にたまる核兵器数千発分の約50トンをどうやって処理するかは不透明なまま。加工が難しいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の製造は国外に頼っており、価格は約20年前から5倍に高騰し、コストも膨らんでいる。

行き先が見えないのはプルトニウムだけではない。3、4号機が再稼働すれば、使用済み核燃料と使用済みMOX燃料が出る。使用済み燃料は日本原燃の原子燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)へ送り、再処理、MOX燃料に加工する計画だが、肝心の施設がまだ動いていない国は使用済みのMOX燃料も再処理する方針だが、こちらは再処理する工場さえない

再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、昨年7月に国が適地マップを公表。設置場所選定に動き出したが、地元との意見交換会で学生アルバイトの動員が発覚し反発がくすぶる。

玄海が再稼働すれば、使用済み燃料プールは3号機が約7年、4号機が約5年で満杯となる。九電は燃料の間隔を詰めて保管スペースを増やす「リラッキング」や、特殊な金属容器に入れて空冷する乾式貯蔵施設建設を検討しているが、具体的な時期は未定だ。

「原子力資料情報室」(東京都)の共同代表を務める伴英幸氏(66)は「日本では原発の運転と、使用済み核燃料や廃棄物の処理問題は切り離して考えられてきた。出口対策を放置したまま再稼働するのは無責任」と批判。その上で「このままでは、廃棄物や燃料が行き場をなくし、原発を止めざるを得なくなるだろう」と指摘する。
(佐賀新聞3/20)
通常の「使用済み燃料」でさえ日本は国内でうまく処理できない(再処理工場が完成しておらず、もんじゅは廃炉となった)。MOX燃料はプルトニウムの割合が多く、それの「使用済みMOX燃料」の再処理は危険性がきわめて高くなるために不可能だろうと言われている。世界のどこでもやっていない。つまり、使用済みMOX燃料はそのまま何十万年も貯蔵・保管しなければならない。その最終処分場をどこにするかという課題が控えている。

伴英幸さんの言うとおりだ、「出口対策を放置したまま再稼働するのは無責任である」。


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3/22-2018
福島県内「放射線監視装置」撤去へ 避難12市町村以外2400台(福島民友)

県内の空間放射線量を測定している放射線監視装置(モニタリングポスト)について、原子力規制委員会は20日、原発事故で避難指示が出た12市町村以外にある約2400台を2021年3月末までに順次、撤去する方針を決めた。線量が低く安定して推移していることを理由としている。

規制委は20日の定例会合で、県内に約3000台設置されたモニタリングポストの配置を議論。このうち学校や公園などに設置され、線量が低く安定した地域にある約2400台を撤去することを決めた。高線量も測定可能な可搬型の監視装置約600台は従来通り測定を継続するとしている。

一方、避難区域や避難区域だった地域がある南相馬、双葉、大熊、浪江、富岡、楢葉、広野、川内、葛尾、飯舘、田村、川俣の12市町村は従来通り測定を継続する方針も決定。撤去したモニタリングポストを活用できる場合は、12市町村内に再配置する。(福島民友3/21)

何十年か先にフクイチの廃炉が終了した段階でモニタリングポストを片付けるというのなら話が分かるが、これからやっとデブリ撤去の手順を試そうとしている段階である。311事故当初の爆発やプルーム(放射能雲)の発生などの頃はもちろんのこと、がれき撤去や除染や放射性廃棄物の搬送などで放射性物質がばらまかれ、それを知らせまいとして情報隠蔽してきたのが東電と国だ。
今後も中間貯蔵施設への搬入や、除染廃棄物の焼却などが計画されている。モニタリングが不用になるどころではない。

福島民友は次のような批判的記事を載せている。
規制委は避難指示が出た12市町村以外にある約2400台を2021年3月末までに撤去する方針だ。今後、中間貯蔵施設への除染土壌の搬出を控える福島市の木幡浩市長は「地域の実情を踏まえた対応が必要。市と十分協議し、連携を図りながら進めていくよう願う」とした。会津若松市の室井照平市長は、放射線に不安を感じる市民もいるため国にモニタリング体制の維持を求めてきた経緯を踏まえ「今回の撤去の決定は残念。国には、今後とも放射線対策について責任ある対応を願う」と求めた。

双葉地方町村会長の松本幸英楢葉町長は「廃炉を安全、着実に進める上でモニタリングポストは情報公開のために重要な設備だ。むしろ県全体に増やすべきであり、国の対応は理解できない」と疑問を呈した。その上で「住民から(粉じんに含まれる放射性物質濃度を測定する)ダストモニターの設置を求める要望もあり、国はしっかりと対応してほしい」と訴えた。
(福島民友3/21)
ここでいうモニタリングポストは地上1mでガンマ線を測定しているものだ。これは「外部被曝」をモニターしていることになる。
農作業や家事で地面に触れたり、ホコリをかぶったりすることがあるのは当然だが、そういう際に、呼吸と共に肺や喉から体内に放射性物質を取り込んでしまう。これは「内部被曝」を受けることになり、外部被曝では問題にならないベータ線やアルファ線が主役となる。数年~数十年かかってガンなどを発症する原因となる。ダストモニタはホコリなどに含まれる放射性物質を調べるもので、内部被曝のリスクをモニターすることになり,とても重要である。

双葉地方町村会長の松本幸英楢葉町長の発言は、勘所を押さえた重要なものである。


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3/23-2018
<原発事故避難者集団訴訟>古里喪失の損害認定 東電に賠償命令 地裁いわき支部(河北新報)

東京電力福島第1原発事故で古里が失われたなどとして、福島県双葉郡の住民ら216人が東電に慰謝料など計約133億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は22日、213人に計約6億1000万円を支払うよう命じた。判決は争点の「古里喪失」の損害を認定。巨大津波の予見を巡っては、現実的な可能性はないとの東電の認識を「著しく合理性が欠けるとまでは認められない」と判断した

全国で約30ある同種の集団訴訟で7件目の判決。古里喪失の損害認定は昨年9月の千葉地裁、今年2月の東京地裁に続いて3件目。国の賠償基準の中間指針を超えて認めた賠償額は少なく、原告側弁護団は同日、控訴する考えを示した。

島村典男裁判長は判決理由で「地域生活が崩壊した」などと指摘。ただ、古里喪失と避難による精神的苦痛を分けて認定するのは「極めて困難」として、慰謝料を合算して算定した。

中間指針を超える認定額は、帰還困難と居住制限、避難指示解除準備の各区域の原告が150万円、旧緊急時避難準備区域の原告が70万円。原発事故当時、福島県外にいた原告ら3人の請求は棄却した。

巨大津波に関しては、政府機関が2002年に公表した大地震の発生確率に関する「長期評価」などを基に「東電は遅くとも08年4月ごろには、津波襲来の可能性を認識していた」と指摘。ただ、東電の認識に加えて、事故回避の対策を取らなかった対応も「著しく合理性を欠くとまでは認められない」と結論付けた。

原告側は相手を国を除いて東電に絞り、1人当たり古里喪失の慰謝料2000万円と避難に伴う精神的苦痛に対する慰謝料月50万円を求めていた。判決後、代理人は「慰謝料額があまりにも低く、残念極まりない判決だ」と話した。
東電は「判決内容を精査し、対応を検討する」との談話を出した。

これまで6件の集団訴訟の判決はいずれも東電に賠償を命じた。古里喪失に対する賠償を求めたのは今回が4件目で、昨年10月の福島地裁判決は中間指針を超える損害を認めず、判断が分かれていた。(河北新報3/23)

損害賠償については、216人の総額133億円の要求に対し福島地裁の判断は6億1000万円でわずか4.6%に過ぎない。いくら何でも少なすぎる。「故郷喪失」と「避難の精神的苦痛」に対する金銭的賠償を認定したのは前進だと言うが、「司法は被害者の方を向いていない」と怒りの声が上がるのは当然だ。
原告団事務局長・金井さんは、「地域の当事者として声を上げ続けなければ、ひとたび事故が起きれば、何もかも失うという現実が矮小化されかねない」と語っていた(河北新報3/23)。

また、この判決は巨大津波の予見を巡っては、現実的な可能性はないとの東電の認識を「著しく合理性が欠けるとまでは認められない」と判断しており、過去の司法判断から大きく後退しており、強く批判されるべきだ。
本欄 3月17日で述べたが、巨大津波の予想に対して「完璧な防御」が必ずしも必須だというわけではない。非常用電源を水密化したり高所へ移動したり、防水の蓄電装置を準備したりによって、外部電源が断たれた場合でも原子炉冷却だけは可能にする対策は容易に取り得たはずだ。東電は、原子炉暴走によって環境を放射能汚染することを防ぐ手を是が非でも打つべきであった。しかし国と東電はなにひとつ手を打たず、ただ、漫然と311大津波を待っていたのである。
そういう国と東電に対して、司法は「著しく合理性が欠けるとまでは認められない」などと甘いことをいうべきではない。厳しく問い詰め糾弾するべきである。


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3/24-2018
玄海原発3号機再稼働 離島避難 不安拭えず(東京新聞)

九州電力玄海原発3号機(佐賀県)が、周辺4市の反対をよそに再稼働した。離島の住民は事故時の避難に不安を抱える。玄海原発は使用済み核燃料の保管場所に余裕がなく、根本的対策がないままの見切り稼働となった。

◇地元同意拡大を
「住民の不安が拭えない」。30キロ圏内の長崎県壱岐、平戸の両市議会は23日、再稼働反対の決議を全会一致で可決した。8日には圏内の同県松浦市も反対を決議し、佐賀県伊万里市も反対を訴える。

30キロ圏内の自治体は避難計画をつくる義務があり、佐賀、長崎、福岡の3県の8市町が対象。一方で、再稼働の前提となる地元同意の対象は、原発が立地する玄海町と佐賀県のみだ。

東京電力福島第一原発の事故後、同意が必要な「地元」を広げるべきだという声は根強い。日本原子力発電の東海第二原発(茨城県東海村)では、「地元」が30キロ圏内の水戸市など6市村に広がる動きがある。

◇孤立化の恐れも
玄海原発の30キロ圏内には約20の離島があり、住民は約3万人。本土との橋がない17島には約1万9千人が暮らす。重大事故の際は船やヘリコプターで避難するが、悪天候が重なれば孤立する恐れがある。

壱岐市は市役所のある壱岐島南部が30キロ圏。周辺の小島を含め約1万5千人が住む。計画では島南部の住民は島北部の一時避難施設に逃げる。しかし福島第一原発事故のように、風向きによっては30キロを超えて放射能汚染が広がる。

平戸市の平戸島は本土との間に橋があり、車やバスの避難も想定。ただ、市側は「島内の一本道では渋滞が予想される」と懸念する。船による避難も護岸の整備が間に合っていない。

◇4、5年で満杯 玄海原発自体にも課題がある。使用済み核燃料を保管するプールの空きに余裕がない。3号機は運転を続けると4、5年で満杯になる見通し。5月に再稼働予定の4号機も同じだ。

使用済み核燃料は本来、青森県六ケ所村の再処理工場に運ばれるが、工場はプールが満杯。再処理稼働の見通しもたっていない。
九電は、プール内で核燃料の間隔を狭めて、保管量を倍近くに増やすほか、専用容器で空気冷却することを原子力規制委員会に申請する方針。ただ、プールに核燃料を詰め込めば、冷却性能が低下する恐れがある。専用容器に移すには、プールで15~20年冷やさないといけない。

また、3号機は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する混合酸化物(MOX)燃料を使う。使い終わったMOX燃料は有害な放射性物質の量が格段に多く、処分の方法は何も決まっていない。(図も 東京新聞3/24)


5月には4号機の再稼働が予定されている。

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3/27-2018
伊方2号機、廃炉へ=27日表明-四国電(時事通信)

四国電力が停止中の伊方原発2号機(愛媛県伊方町、出力56.6万キロワット)を廃炉にする方針を固めたことが26日、分かった。再稼働に必要な安全対策費の負担が大きい一方、将来の電力需要の拡大は見込めず、採算が合わないと判断したもようだ。2011年の東京電力福島第1原発事故後に廃炉を決めた国内の商業用原発は、福島第1の6基を除き9基目となる。

四国電の佐伯勇人社長は27日午前に愛媛県庁を訪れて中村時広知事と会談し、廃炉の方針を伝える見通し。

伊方2号機は1982年3月に運転を開始し、福島第1原発事故後の12年に停止。佐伯社長は昨年11月、再稼働させるか廃炉にするかをめぐり、今年3月末までに判断する方針を示していた。(写真も 時事通信3/26)


四国電力の伊方原発。(右から)1号機(円筒状の建物)、
2号機、3号機=2017年9月、愛媛県伊方町

伊方原発の1号機は1977年に運転開始し、2016年5月10日に運転終了した。現在は廃炉作業中。
3号機は2017年12月13日の広島高裁で、今年9月30日まで運転差し止めの決定。

伊方原発は、佐多岬半島という細長い半島の付け根に位置しているために事故の際の住民避難が困難であること、瀬戸内海に面しているために事故の際にこの豊かな内海[うちうみ]を汚染してしまうリスクが大きいことなど、立地的な欠点が強く指摘されている。広島高裁の判決理由も阿蘇山の巨大噴火のリスクだった。


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3/28-2018
エネルギー基本計画 原発リプレースに含み 30年度、電源構成維持案了承(毎日新聞)

経済産業省は26日、国のエネルギー政策の基本方針を定める「エネルギー基本計画」の見直しに向けて議論を行う有識者会議を開き、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)の目標について原発20~22%など現状を維持する案をおおむね了承した。また、新増設・建て替え(リプレース)については含みを残した。

30年度の電源構成について、他に再生可能エネルギー22~24%、液化天然ガス(LNG)27%などとする目標を堅持する方向でおおむね了承した。また、原発について「依存度低減」「重要電源」を併記し、大きな位置づけの変更は行わなかった。再生エネについて「主力電源」と明記した。

原子力政策では、原発の今後の人材・技術維持のために「生きた現場の連続的な確保による『現場力』の維持・強化」との文言を盛り込み、今後の新増設・建て替えについて含みを持たせた。

基本計画の見直しは、50年のエネルギー政策も議論して反映し、今夏の閣議決定を目指している。含みを持たせた原発の新増設・建て替えについて、多少なりとも踏み込むかが焦点になりそうだ。(毎日新聞3/27)

日本式の“空気読み”に徹した訳の分からない「エネルギー基本計画」を、有識者会議が発表した。
原発について「依存度低減」「重要電源」を併記した上で、再生エネについて「主力電源」と明記しているという。また、原発の新増設・建て替え(リプレース)については含みを残したという。こういう曖昧模糊たる提言が許される「有識者会議」というのは、いったい何なんだ。

委員名簿(18名)を眺めたければ、どうぞ。西川福井県知事もいるね。26日の会議資料などはここ


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3/29-2018
茨城・東海第2原発 周辺5市「事前了解権」 原電、新たな安全協定(毎日新聞)

日本原子力発電は29日、東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働に際し、立地自治体の同村に加え、県内にある周辺5市にも「実質的な事前了解権」を認めるとする新たな安全協定を結んだ。「事前了解権」を周辺自治体まで拡大して盛り込んだ安全協定は、全国で初めてとみられる。

同原発から半径30キロ圏内にある、水戸▽日立▽ひたちなか▽那珂▽常陸太田--の5市。同日夜、東海村も含めた6市村の首長や原電の村松衛社長らが集まり、村役場で新協定を締結した。協定によると、原発の再稼働や運転延長の際、原電に対して意見したり回答を求めたりすることができるとした。

放射能汚染が広範囲に及んだ東京電力福島第1原発事故を受け、立地自治体に認められている事前了解権の拡大を求める動きが原発の周辺自治体で相次いだが、原発事業者は認めていないのが現状だ。(写真も 毎日新聞3/30)


停止中の東海第2原発(手前右側)。手前左側は廃炉作業中の東海原発
=東海村で2017年3月4日、本社ヘリから長谷川直亮撮影

首都圏の人口密度が上がるばかりで、東海第二原発の30km圏内に96万人が住むという。万一深刻な事故を起こした場合、避難することは不可能だろう。
本欄では、昨年11月24日25日26日で連続して扱った。

原電と東海村を含めた6市村がどのようにこの安全協定を運用していくか、今後が注目される。


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3/31-2018
玄海原発 再稼働の3号機が発送電停止へ、配管の蒸気漏れ(毎日新聞)

九州電力、物質の漏れもない
九州電力は30日、玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の2次系配管から微量の蒸気漏れがあり、31日に発電と送電を停止すると発表した。九電によると、原子炉の運転に問題はなく、放射性物質の漏れもないという。3号機は23日に7年3カ月ぶりに再稼働したばかりで、発電出力を段階的に上昇させていた。今後の3号機の工程がずれ込むのは必至で、5月中の再稼働を見込む玄海4号機にも影響を与えそうだ。

九電によると、30日午後7時ごろ、巡回中の作業員が保温材に覆われた2次系の配管から微量の蒸気が漏れているのを目視で確認した。31日午前1時から発電出力を下げる作業に着手。約5時間後には発電と送電を停止する見込み。制御棒は入れずに、原子炉内の核分裂反応が連続する「臨界」は維持する。配管の状態を確認後、配管の取り換えなどの対応を検討する。

九電は玄海4号機を5月中に再稼働させる方針だが、田尻浩昭・環境広報グループ長は30日深夜の記者会見で「4号機の工程と重なることは極力避けたい。影響はゼロではない」と述べ、再稼働工程がずれ込むとの認識を示した。

原子力規制委員会によると、東京電力福島第1原発事故後に再稼働した原発がトラブルで発電と送電を停止するのは、2016年2月の関西電力高浜4号機に続き2例目。
新規制基準に基づく再稼働後の発電出力上昇作業中のトラブルを巡っては、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で15年8月、配管に穴が開き、海水が混じり込むトラブルが発生、出力上昇を延期したことがある。

再稼働した3号機は30日には電気出力が75%まで上がっていた。その段階で、2次系配管のうち「蒸気に含まれる微量の酸素や炭酸ガスなどを取り除くための設備につながる配管」(NHK3/31)で、微少な蒸気漏れが起こっているのを発見した。

5時間ほどかけて電気出力を0%まで落とし、蒸気漏れの原因を調べてから、配管交換などの修理をするという。4号機再稼働の予定がずれ込むことは確実である。九電が慎重に構えていることは確かだが、何が起こるか分からない巨大装置の不気味さを改めて感じるトラブルだ。


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