き坊の近況 (2018年4月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 04 03 02 01 月

’17 ’16 ’15 ’14 ’13 ’12 ’11 ’10 ’09 ’08 ’07 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 

 先月 次月 HOME 


日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

4/1-2018
放射性物質の外洋流出続く 福島大教授発表、漁業影響なし(福島民友)

東電福島第1原発の汚染水問題で、放射性物質セシウム137が今も外洋(原発港湾外)に1日約20億ベクレル漏れているとする研究結果を福島大学環境放射能研究所の青山道夫教授が28日、大阪府吹田市で開かれた原子力学会で発表した。濃度は原発の南約8キロの福島県富岡町沿岸で海水1リットル当たり0・02ベクレル程度。漁業には影響がないとしている。

13年の1日約300億ベクレルから大幅に減ったが、流出は依然続いており、青山氏は、海水中のセシウムとトリチウムの分析から「汚染水源は溶融した核燃料を冷却した水で、建屋から海につながる流出経路があると推定できる」とみている。(福島民友3/28)

数日前の情報だが、重要なものなので取りあげておく。
建屋から海につながる流出経路があって、それを伝って、溶融した核燃料(デブリ)に触れた冷却水が汚染水となって漏出している。おそらく、港内外の海底に漏出口が何ヵ所かあるのだろう。それら流出経路はいまだ東電には把握できていないのである。

重要な点は、現在もフクイチからの海洋汚染は続いている、ということである。幸い減少してきているのであるが、けして海洋汚染がなくなったのではないのである。

青山道夫教授は一貫して放射能による海洋汚染の問題を追及しており、本欄では何回も取りあげている。例えば4月27日(2015) では、2016年4月までには「800テラベクレル」のセシウム137が北米西海岸に到達するとし、それはフクイチが海洋へ放出したセシウム137全量の約5%にあたる、としていた。


Top
4/2-2018
玄海3号に直径1センチの穴 九電、蒸気漏れ配管で確認(東京新聞)

九州電力は1日、玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の2次系配管での蒸気漏れトラブルを受けて実施した同日の点検で、配管に直径約1センチの穴が見つかったことを明らかにした。九電は穴が開いた原因などを調べており、2日も点検を続ける。点検期間は未定としている。

蒸気漏れは3月30日夜、原子炉格納容器内の蒸気発生器に送る水から、酸素などを取り除く2次系配管の一部の空気抜き管で発生した。高温の空気抜き管の温度を下げるためにタービンを止める必要があり、九電は同31日、発電と送電を停止した。4月1日午後2時20分に点検を始めた。原子炉は止めない方針。 (東京新聞4/1)

問題の配管の直径や材質は発表されていない。腐食だったのかどうか、より詳しい状況が知りたい。この配管には「断熱材」が巻いてあり、それを剥がさないと「直径約1センチの穴」は見えない。

毎日新聞に次のような談話が載っていたが、適切な評だと思った。
脱原発を訴える「九電消費者株主の会」の深江守事務局長(61)も「保守点検していても、7年間も運転していなければ不具合が出ない方がおかしい。玄海原発の劣化が進んでいることが浮き彫りになった。早く運転を停止する決断をしてほしい」と訴える。(毎日新聞3/31)
直径1cmの穴は、かなりの大きさであり、なぜ、そんな穴ができたのか。「玄海原発の劣化」の一端を示す徴候と考えるのは妥当だ。むしろ、再稼働を認めた原子力規制委員会が軽率だったのではないか。


トップページの写真を、マダラスジハエトリから甲虫目タマムシ科フチトリヒメヒラタタマムシに替えた。


Top
4/3-2018
雨水浸透で配管腐食か=玄海3号機の蒸気漏れ-九電(時事通信)


雨水浸透で配管腐食か=玄海3号機の蒸気漏れ-九電の画像
九州電力は2日、配管で蒸気漏れが見つかった玄海原発3号機(佐賀県玄海町)を点検した結果、2次系の装置「脱気器」の空気抜き管16本のうち1本に穴が開き、外装板などにさびが付着していたと発表した。屋外にある装置の管に雨水が浸入して腐食したとみられ、九電は全ての空気抜き管や外装板などを交換する。作業は原子炉を止めずに行うが、24日に予定していた営業運転への移行は遅れる見通し。

九電によると、2次系は原子炉で発生させた蒸気で発電用タービンを回す設備で、循環する水は放射性物質を含まない。脱気器は微量の酸素などを除去する装置で屋外に設置されており、上部にある空気抜き管の1本で穴が貫通していた。

穴は長さ13ミリ、幅6ミリ。空気抜き管を包む保温材と外装板には変色やさびがあった。九電は外装板の隙間から浸入した雨水を保温材が吸収し、湿潤状態になって腐食したとみている。

空気抜き管は16本とも1994年の運転開始以降、交換していなかった。2006年の定期検査で保温材の一部を取り除いて状態を確認したが、異常はなかったという。九電は1日3回程度、見回りをしていたが、管は通常の巡視では見えにくい場所にあると説明している。(映像も 時事通信4/2)

一番踏み込んで書いていたのは地元紙・佐賀新聞だった。その一部。
穴が開いた配管は屋外にある。運転中なら100度程度になり「雨水が浸入しても熱で蒸発する」(九電)ため、これまで問題化しなかった。2010年12月からの運転停止で、しみこんだ雨水は蒸発することなく、結果的に赤茶色の配管の周りは湿ったままの状態になり、黒く変色した。 (佐賀新聞4/3)
やはり、7年間超の停止の後の再稼働がこの腐食穴を作り出したということになる。九電にも原子力規制委にも油断があったといえる。
ただ、写真の様子では、腐食孔というより穿孔のように見えるので、わたしは納得しきれていない。


Top
4/4-2018
731部隊将校の学位取り消しを 人体実験疑い論文で京大に(京都新聞)

ペストを投与した人体実験の疑いがある論文を執筆した旧関東軍731部隊の将校に京都大が医学博士号を授与したとして、池内了名古屋大名誉教授らが「満州第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」を設立、2日に京大で記者会見し、検証の必要性や学位の取り消しをアピールした。

旧満州で細菌兵器を研究し、捕虜らに人体実験をしたとされる旧731部隊には、部隊長の石井四郎中将を始め京大医学部出身者が所属していた。京大は約20人の731部隊関係者に学位を授与しているという。731部隊の問題で、大学に対し学位撤回を求める運動は全国で初。

問題になっている論文は、京大医学部出身の平澤正欣軍医少佐(1945年戦死)による「イヌノミのペスト媒介能力に就(つい)て」。

検証を求める会事務局長の西山勝夫滋賀医科大名誉教授は「特殊実験で用いられた実験動物は人間だった疑いが強い。人体実験が事実なら論文はねつ造であり非人道的だ。京大はヒトだったか検証する義務がある」と指摘。今の科学で論文の妥当性を検証すべきとした。
会は検証を求める署名を集めており、7月にも京大学長や医学部長に検証を要請するという。

「満州第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」が設立され、活動をはじめたことは意義のあることだ。 多数の優秀な医学者らが集められ(京大・東大が多い)、この残虐行為を指揮したのであり、その結果を論文にして学位を得ていれば、当然取り消されるべきだ。

NHKが「731部隊の眞実」を放送したのは2017年8月13日(日) のNHKスペシャル。YouTubeにあがっている(ここ、多数アップされている中国語版のひとつ)。NHKが自ら解説用に作った文書(2017年12月19日)はここにある。

人体実験で殺された中国人・満州人・ロシア人らが3000名に上がるといわれる。
これまで日本軍によって行われた残虐行為をソ連-ロシアが主張するばかりで「でっち上げ」視するむきがあったのだが、このNHK「731部隊の眞実」は1949年のハバロフスク裁判の音声記録をもとにしているために、否定しがたい。

現代の日本人(特に若い世代)がこういう歴史的事実をごまかしなく知っておくことは重要だと考える。それなしに中国・ロシア・韓国などをはじめとしてアジア諸国と自由で真実の交流が行われることは不可能である。


トップページの写真を、フチトリヒメヒラタタマムシ♂からトンボ目イトトンボ科ホソミイトトンボに替えた。


Top
4/6-2018
川内原発 1号機、核燃料棒1本から放射性物質漏れ(毎日新聞)

九州電力は5日、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で1次冷却水の放射性ヨウ素濃度が上昇した問題について、1本の核燃料棒から放射性物質が漏れていたことが判明したと発表した。

核燃料棒は二百数十本を一つに束ねて燃料集合体として使用されているが、老朽化で固定力が弱まり、燃料棒が細かく振動したことなどから1本に微細な穴が開いたとみられる。

川内1号機は昨年3月以降、1次冷却水の放射性ヨウ素131の濃度が通常値より上昇。ただ、保安規定で定められた制限値を大幅に下回っていたため、測定の頻度を増やすなどして運転を続けた。
今年1月からは定期検査で原子炉を停止し、燃料を取り出して詳しく調べていた。燃料を交換し、今年6月下旬の営業運転再開を目指す。(毎日新聞4/5)

玄海原発3号機の配管腐食に続いて(本欄 4月3日)、この事故も「老朽化」に伴うものだという点が深刻である。深刻な段階の事故ではないが、あちこちで類似の事故が生じているので、原子力規制委員会の再稼働認可も信頼性を失ってくる。

日和見を決め込んでいる三反園鹿児島県知事は、こういう際に、九電にキッチリ文句を付けるべきじゃないのか。「県民は不安を覚えている。しっかりやってもらわないと困る」ぐらいのことは言えるだろう。


Top
4/7-2018
講演の原発説明 変更要求 北海道経産局、ニセコ高で(東京新聞)

北海道ニセコ町の町立ニセコ高で昨年10月、国の委託事業の一環として開かれたエネルギー問題の外部講演を巡り、経済産業省北海道経産局が講師の大学助教に原子力発電に関する説明を変更するよう事前に求めていたことが分かった。一部住民は「教育への介入だ」と問題視。経産局は「中立公平な内容とするため助言した。不当行為ではない」としている。

ニセコ高は2017年度、経産省資源エネルギー庁の委託で日本科学技術振興財団が実施するエネルギー教育モデル校事業の対象に選ばれた。昨年10月16日、北海道大大学院の山形定(さだむ)助教が原子力や火力、太陽光などエネルギーの特徴をテーマに講演した。

町教育委員会などによると、町から山形助教を紹介された高校が、講演の計画書を財団に提出した。その後、経産局の職員が山形助教の研究室を訪れ、講演資料にあった原発の発電コストに関する記述や東京電力福島第一原発事故の写真について、「特定の見方に偏っている」「印象操作なので使わないでほしい」と変更を求めた

山形助教は、自然エネルギーの事故リスクに関する内容を追加したが、変更には応じなかった。取材に対し、「要求の対象が原発に集中し、違和感があった。教育への介入という観点からも容認し難い」と話した。

ニセコ町は、北海道電力泊原発(泊村)の三30キロ圏内にある。町によると、経緯を知った住民の一部が問題視し、昨年12月~今年3月に住民説明会を3回開いて片山健也町長らが対応した。
町教委の菊地博教育長は取材に対し、「高校に直接要求したわけではないので、教育への介入に当たるかどうか判断は難しい」と語った。

◆「教育内容への不当介入
<姉崎洋一・北海道大名誉教授(教育法学)の話> 現在の原子力行政の推進を前提にした、教育内容への不当な介入に当たるとみられる。大学の研究者には学問の自由があり、科学的な判断に基づいて講演内容を構成する。主催者とはいえ、事前に研究者の部屋を訪ねてまで講演内容の修正を迫ることは問題だ

<泊原発> 北海道泊村にある北海道電力の加圧水型軽水炉。営業運転開始は1号機が1989年6月、2号機が91年4月、3号機が2009年12月で、出力は計207万キロワット。3基とも停止中。(東京新聞4/6)

北海道経産局の職員が大学研究室を訪れ、講演予定の研究者に講演内容の変更を求めるという、極めて露骨で直接的な干渉であって、悪質である。前川前文部事務次官の講演内容や講演料などについて国会議員が調査したという事例があったが、それとは比べものにならない悪質さだ。

財務省が決裁文書を改ざんして、国会を欺く。自衛隊が防衛大臣の指示を無視して(いいように解釈して)、日報を隠蔽し続ける。問題の本質は同じ事だ。わが国の国民主権という大前提が平然と踏みにじられている。


Top
4/10-2018
売却額は1ドル 東芝、米WH株の売却完了を発表(朝日新聞)

東芝は6日、経営破綻した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の株式の売却手続きが完了したと発表した。WHのグループ企業分も近く完了する見込み。いずれも売却先はカナダ系投資ファンドのブルックフィールドグループで、売却額は計1ドル(約107円)の予定。すべて完了すれば、WH株に関連する損失額が確定して税負担が軽減され、株主資本(3月末時点で約4600億円になる見込み)がさらに増強される。(朝日新聞4/6)

東芝は2006年にWH社を54億ドル(6210億円)で買収した。東芝は、日本だけでなく世界の原発市場で原発受注を勝ち取り、当時ライバル会社であった日立製作所を圧倒する、という目論見であった。
08年秋にリーマン・ショックが起き、09年3月期で東芝は2500億円の営業赤字を出す。11年3月11日のフクイチ事故がとどめを刺した。

06年のWH社買収直後の西田東芝社長は
地球環境を保ちつつ、世界的なエネルギー需要に応えることのできる原子力は、今後確実に成長する分野だ。(ライブドアニュース2/8-2006)
原発はクリーンで無限にエネルギーを生み出し、世界の原発市場が拡大し続けるという「神話」を疑わなかった東芝の判断が、大間違いであった。そののち、世界は自然エネルギー利用を軸にして、大きく転じたのである。

本欄 5月7日(2017)は、独・シーメンスと米・GEの好調さと対比して、東芝の経営判断の誤りを強調している「Rief 環境金融研究機構」の記事を引いている。
シーメンスとGEの共通点は、福島の事故を機に、それまで電力事業の柱であった原発事業から距離を置き、事業の新たな柱を天然ガスと再生エネ分野に切り替えたことだ。両社にとって、電力事業は100年以上の歴史を持つ中核事業である。しかし、新旧両方の発電手法の費用対効果を、経済面と安全面の両方から冷静に評価し転換したからこそ、電力ビジネスで勝ち残ることができたわけだ。

一方の東芝は福島の事故後も、原発にこだわり続けた。事故直後の11年4月、当時の佐々木則夫社長は、「原発売上高の1兆円の旗は下ろさない」と宣言。目標の達成は当初の2015年度よりは遅れるが、その後、原発受注が拡大するとの経営判断を示していたという。
(Rief5/5-2017)
東芝が判断を間違えたのは、日本政府がいつまでも原発推進を「国策」として掲げ続けているのが大きな原因であろう。


Top
4/11-2018
津波の可能性、旧東電担当者が証言 信頼性に疑問も(朝日新聞)

福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力元会長の勝俣恒久被告(78)ら旧経営陣3人の第5回公判が10日、東京地裁であった。事故前、東電の「土木調査グループ」で同原発の津波対策を担った東電社員が証人として出廷し、国の専門機関による地震予測を「取り入れるべきだと考えていた」と述べた。

東電は2008年3月、この地震予測「長期評価」に基づき「15・7メートルの津波が(福島原発に)押し寄せる可能性がある」とした子会社の分析結果を得た。出廷した社員は、長期評価を考慮するべきだと考えた理由について「土木学会による地震学者らへのアンケートで、過半数が支持していた」と証言した。

社員は当時、土木調査グループの責任者を務め、検討内容を元副社長の武藤栄被告(67)に報告する立場だった。検察官役の指定弁護士は、重要証人と位置づけているとみられる。

公判では、長期評価が事故前にどれだけ重要視されていたかが、争点の一つになっている。勝俣元会長や武藤元副社長らは長期評価について「信頼性に疑問がある」と主張。15・7メートルの津波高も、「試算に過ぎない」などとして、事故を予見できたとする起訴内容を否認している。(朝日新聞4/10)

この土木調査グループの責任者(当時)だった社員は、武藤元副社長が津波対策を保留したことについて、「力抜けた」と証言した。
被告の武藤栄元副社長(67)が2008年に津波対策を保留したことについて、社員は「検討を進める方向だと思っていたので、力が抜けた」と証言した。検察官役の指定弁護士の尋問に答えた。(中日新聞4/10)
直接に津波対策を担ってきていた現場の技術者たちは、地震学者らが支持する津波予想に対して、当然東電として対策をとるものと考えていたことが分かる。
東電経営陣はそれを裏切ったのである。


Top
4/13 -2018
東海第二原発、審査打ち切りの可能性 書類4割未提出(朝日新聞)

日本原子力発電が再稼働と20年間の運転延長をめざす東海第二原発(茨城県、110万キロワット)について、原子力規制委員会の更田豊志委員長は11日、「夏以降に議論が残っているなら時間的に不可能だ」などと述べ、審査の打ち切りに言及した。原電による必要書類の提出などが遅れており、運転40年を迎える今年11月までに間に合わなくなる可能性があるという。

東海第二原発は、2014年から新規制基準への適合審査を受けている。今年11月下旬までに再稼働するための設置変更や設備の工事計画、20年間の運転延長の三つの許認可を得られなければ、廃炉を迫られる。

原電は今月5日、規制委が報告を求めた約1740億円の安全対策費について、東京電力ホールディングスや東北電力による資金支援の確約を得たと説明し、審査は一つの山場を越えた。計画の審査に必要な書類の4割が未提出で、設備の性能を確かめる試験も遅れており、結果がまとまるのは6月末になることが原電の説明から明らかになったという。審査担当の山中伸介委員は「サボタージュとさえ感じられ、怒りすら覚える」と遅れを批判した

原電は、大手電力などが出資する原発専業会社。日本原子力産業協会の今井敬会長は9日、東海第二原発について「運転開始から40年を経過すると審査の結論が出る前に廃炉が確定する。このようなルールは合理的でないので見直してほしい」と述べるなど、業界には危機感が広がっている。(朝日新聞 4/12)

東海原発の抱える最大の問題は、人口密集地のただ中に位置しているということである。30km圏内に約96万人が居住しているという。本欄3月29日で取りあげたように、原発所在地である東海村と30km圏内の5市(水戸、日立、ひたちなか、那珂、常陸太田)との間で、「新協定」を締結した。

この6市町との事前了解を得ることもかなり困難であるが、それ以前に、原電の準備遅れのために規制委による「適合審査」が時間切れになってしまう可能性も大きい。
規制委の更田豊志委員長も11日の定例会見で、「6月末までに見通しがたたないなら非常に深刻。夏を越えて本質的な議論が残っていたなら、時間的に不可能だ」と話した。(東京新聞4/12)
ただし、山中伸介委員の「サボタージュとさえ感じられ、怒りすら覚える」という発言は、原子力規制委員会がいまや完全に「原子力ムラ」の発想をしていることを雄弁にものがたっている。彼ら・原子力規制委員会は一刻も早く原発を再稼働させたいと考えていて、原電の不熱心な態度に苛ついているのである。
本来の規制委であれば、原電が「適合審査」の準備に不熱心なら淡々とそのことを確認して「東海第二原発の再稼働は認められません」と判定すればいいことだ。


トップページの写真を、ホソミイトトンボから甲虫目ハムシ科ムナキルリハムシに替えた。


Top
4/14-2018
<指定廃焼却施設>軽装のまま焼却炉点検も「復興の最前線で働く人の安全ないがしろ」男性作業員怒り(河北新報)

福島県飯舘村の指定廃棄物仮設焼却施設を巡り、労働審判を申し立てる方針の男性作業員は河北新報社の取材に「復興の最前線で働く人の環境や安全がないがしろにされている」と怒りをにじませた。

施設では、村内で解体された家屋や稲わらなど1キログラム当たり8000ベクレル超~1万ベクレルの指定廃棄物を焼却。放射性物質は焼却時に濃縮される特性がある。男性によると、当初は防護服や全面マスクを着用したが、2017年4月ごろから半面マスクと通常の作業着で作業する回数が増えたという。

男性は「軽装のまま床にたまった焼却灰をほうきで掃いたり、粉じんが舞う焼却炉の内部を点検したりすることもあった。『死ぬかもしれない』と同僚と言い合っていた」と振り返る。
男性は1月中旬、宮城県内の病院で健康診断を受けた。「今後、体調に異変が出るのではないかと不安だ」と心中を明かした。(河北新報4/13)

これは焼却炉に伴う作業を行う労働者の放射能防護が、いい加減になっているという告発である。こんご長年月続くとても大事な問題が、わが国では意図的に曖昧にされ、正面から論じられないように圧力がかかっている。

YouTube に多数ある「おしどりマコ&ケン」の講演動画は、どれもレベルが高く興味深いが、動画「福島の現在を語る」(2017年4月26日)(2時間28分)で、「農民の農作業における被曝」が取りあげられている。46分頃から1時間3分頃まで。
“風評被害で作物が売れない”というような声が挙がっているのかと思っていたら、そうじゃなくて、“毎日土をいじって作業する自分らの被曝のことを、どこで誰が議論してくれるんだろうか”というのが農民の切実な声だった」というマコさんのコメントは優れている。


Top
4/17-2018
新基準適合の7原発14基 稼働10年で核燃プール満杯(東京新聞)

東京電力福島第一原発事故後に策定された原発の新規制基準に適合済みの7原発14基は、いずれも稼働後10年以内に使用済み核燃料を保管するプールが満杯になることが、電力各社への取材で分かった。保管場所を確保しない限り、運転が続けられなくなる。使用済み核燃料の保管も最終処分のめどもつけぬまま、各社は原発の見切り稼働を進めている。

新基準適合の原発は、関西電力が3原発7基と最多。うち再稼働済みは、大飯3号機と高浜3、4号機(いずれも福井県)。5月9日には大飯(おおい)4号機が再稼働を予定しているが、どの号機もプールが満杯になるまで5~8年程度しかない。

九州電力は2原発4基が適合。再稼働済みの玄海3号機(佐賀県)は3、4年ほどで、川内(せんだい)1、2号機(鹿児島県)は6~10年で満杯に。5月中の再稼働を予定している玄海4号機も3年程度しか余裕がない。

東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)はプールが満杯まで1年以内と切迫している。東電は東海第二原発(茨城県)を保有する日本原子力発電(原電)と共同出資し、青森県むつ市に核燃料の中間貯蔵施設を建設中。予定通り年内に稼働しても、自治体との協定で保管期間は最長50年間と決まっている。

他の電力各社は、プール内で核燃料の間隔を狭めて容量を増やしたり、専用容器で空気冷却したりする取り組みを検討しているが、抜本的な解決にならない。
使用済み核燃料は再利用のため、青森県六ケ所村の再処理工場に運ぶ計画だが、安全対策の遅れで稼働の見通しも立っていない。再処理で出る高レベルの放射性廃棄物の最終処分地も決まっていない

調査の方法 大手電力九社と原電に核燃料集合体をあと何体、プールに収容できるかを取材。13カ月の通常運転ごとに使用済みとして取り換える燃料の目安量を聞き、プールが何年で満杯になるかを計算した。

<使用済み核燃料> 原発は通常、13カ月間運転するといったん定期検査に入り、4分の1~3分の1程度の核燃料を使用済みとして交換する。使用済み燃料でも長期間、放射線と熱を発し続けるため、プールでの継続的な冷却が不可欠となる。(図も 東京新聞4/16)

六ヶ所村の再処理工場は運転できる見通しが立っていない。そのために全国各地の原発で使用済み燃料が一杯で“ふん詰まり状態”となっている。しかも、仮に再処理工場が運転できたとしても、再処理によって生じる「高レベル放射性廃棄物」の持って行く最終処分場がない。

「使用済み核燃料」というと、何となく穏やかな印象を持つが、爆発したフクイチで溶融して原子炉底部へ漏れ落ちた「デブリ」というのがまさにこの使用済み核燃料に他ならない。水をかけ続けて冷やしていないと2000℃を超える高温になって全ての金属を溶かしてしまう猛烈なものなのである。
再処理工場では、燃料棒を切り開いて、核燃料の被覆管断片と内容物に分離し、内容物(核燃料+核分裂生成物)をプルトニウムとウランと廃液に分離する。もっともやっかいなのがその廃液で、核分裂生成物の雑多な核種が混合している「高レベル放射性廃液」なのだ。これは溶けたガラスと混ぜて「ガラス固化体」として長年隔離保存する計画だ。

再処理工場でやろうとしているのは、このような危険極まりない工程であり、(1) 環境に多量の放射性物質をばらまく、(2) この巨大な化学工程で大量の放射性廃棄物が発生する、という大きく分けて2つの重大な問題がある。

(2)は、上の下線部が示していることである。(1)は、希ガス(クリプトン)やヨウ素ガスなどの放射性ガスが大気中へ逃げ出してしまうこと、トリチウムは希釈して海へ捨てる計画だ。「原発1年分の放射能を1日で出す再処理工場」と言われる。
日本からも再処理を依頼しているイギリスのセラフィールド再処理工場やフランスのラ・アーグ再処理工場の周辺域で、すさまじい環境汚染が報告されていることはよく知られている。ラ・アーグについては1978年~92年のデータを用いた確度の高い小児白血病の調査(0歳~24歳)が行われており、
ラ・アーグの工場から10キロメートル圏で暮らす子供の小児白血病発症率は、フランス全国平均の約2.8倍に達するというものだった。(原子力資料情報室/原水禁 編著『破綻したプルトニウム利用』2010、p52)
日本では、再処理工場で2006年から「アクティブ試験」(実際の使用済み核燃料を用いた試験)を始めた。しかし、ガラス固化体を造る炉が目詰まりしたり、突っ込んだかくはん棒が抜けなくなったりで、中断している。再処理工場の建設申請は1989年で、そのときは97年に操業開始としていた。いまや、完成は延び延びとなり30年を経ようとしている。つまり、操業しないまま工場の老朽化が心配される年月なのである。異常と言うほかない。
それにもかかわらず、国は原発再稼働を押し進めようとしている。


トップページの写真を、ムナキルリハムシからカメムシ目ワタフキカイガラムシ科オオワラジカイガラムシに替えた。


Top
4/19-2018
21市町村の輸送完了 中間貯蔵施設への除染廃棄物搬出(福島民報)

中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)への除染廃棄物の輸送で、2017(平成29)年度に棚倉町と新地町で輸送が完了し、これまでに対象52市町村のうち21市町村で除染廃棄物の搬出を終えた。

環境省がまとめた中間貯蔵施設への輸送状況は【地図】の通り。2017年度は33市町村の仮置き場から除染土など計52万9549立方メートルを中間貯蔵施設に搬入し、目標の50万立方メートルを上回った。輸送を始めた2015年度からの搬入量の累計は75万8665立方メートルになった。

2018年度の輸送は残る31市町村から前年度の3倍超となる180万立方メートルを計画している。(福島民報4/18)


フクイチ事故の現場を囲むように造られた広大な「中間貯蔵施設」に除染廃棄物を搬入し始めたのは2015年3月からだった。例えば,本欄3月28日(2015)を参照のこと(除染土搬入に関しては 本欄10月29日(2017)を参照して下さい)。
そのあと3年を経過して、図に示すような搬入実績が実現している、という。

18年度の搬入予定はこれまでの3倍超で、とても激しい予定になっている。搬入途中の事故や作業員の被曝被害などが生じないことを祈る。

ところで、「中間貯蔵施設」という名称から分かるように、この場所に除染廃棄物を置くのは30年間に過ぎず、その後は「最終処分場」に持って行くというのが国の公約である。この広大な「中間貯蔵施設」に匹敵するような場所を国内に確保して「最終処分場」を建設するということが可能であると、おそらく官僚たちの誰も考えていない。彼らはなりゆき任せのつもりなのだ、どうせ30年後は自分らは現役じゃないんだから、と。

いま官僚たちが考えていることは、8000ベクレル/kg以下の除染土を全国の道路・公園などに土台などとして埋めることができないかということだ。「汚染土再利用計画」というが、本欄 1月6日(2017)参照。少しでも除染廃棄物の量を減らそうと画策している。これは日本全国を薄く放射能汚染土で覆ってしまおうという恐ろしい計画である。けして許してはならない。


Top
4/21-2018
玄海原発3号機の発電を再開 蒸気漏れ停止から18日ぶり 「2次系の点検態勢に甘さ」識者が指摘(西日本新聞)

九州電力は18日、蒸気漏れトラブルで停止していた玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で発電と送電を再開したと発表した。発送電再開は3月31日の停止以来、18日ぶり。当初4月下旬を予定していた営業運転開始は、5月中旬になる見込みという。

九電は18日に原子炉の出力を上げ、午前9時すぎにタービンを起動、午後3時すぎに発電を再開した。今後は段階的に出力を上げながら必要な試験や検査を行い、5月中旬に原子力規制委員会による最終的な検査を受ける。
九電は「引き続き、国の検査に真摯(しんし)に取り組むとともに、工程にとらわれることなく安全確保を最優先に慎重に進めていく」としている。

蒸気漏れは、放射性物質を含まない「2次系統」設備の配管で発生した。九電は原因調査後、問題の配管と同種の配管全てを今月10日までに新品に交換。佐賀県が発電再開の条件にしていた再発防止策も17日に提出し、了承を得ていた。

「再稼働後のリスク理解を」識者
再稼働した直後の九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で発生した蒸気漏れトラブルは、九電が再発防止の報告書を佐賀県に提出し、18日に3号機の発電を再開した。原因と推定されたのは、雨水による屋外配管の腐食。どれほど事故対策に注力しても「想定外」(九電幹部)を防ぐ難しさが改めて浮かび上がった。トラブルが示した教訓について、識者に聞いた。

玄海原発などの加圧水型軽水炉は、原子炉を循環する水が核分裂で発生した熱を受け取る1次冷却系と、その熱を別の水に伝えて蒸気をつくり、タービンを回して発電する2次冷却系に分かれている。

2次系の事故であっても、軽視してはいけない
九電によると、トラブルは、2次系の設備から余計なガスを抜く「脱気器」で発生。屋外にある空気抜き管の1本に直径約1センチの穴が見つかった。2次系のガスや水は放射性物質を含まず、外部への放射性物質の流出はないという。
「同様の配管設備は火力発電所でも使われる。事故そのものは軽微だった」。九州大の渡辺英雄准教授(原子炉材料)は九電の説明に理解を示しつつ、点検態勢に首をかしげる。

原子力規制庁によると、1次系の設備は原子炉等規制法や規則で点検が義務付けられるのに対し、2次系の多くは電力会社の社内規定に基づいて点検される。今回の脱気器は2次系にもかかわらず「原子炉等規制法に伴う規則に基づく点検対象」(九電)だったが、巡視では配管外部のさびを確認しながら、内部の穴を見落としていた。
渡辺准教授は「2次系設備をどのレベルで点検しているのか。安全重要度が低い設備に関しても、点検方法の詳細を明らかにするべきだ」と話した。

大事故にならなかったのは結果論
東京大の井野博満名誉教授(金属材料学)は「たとえ2次系の事故であっても、軽視してはいけない」とくぎを刺す。
関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)では2004年8月、タービン建屋内で、点検リストから外れていた2次系の配管から蒸気漏れが発生。高温の蒸気を浴びた作業員5人が死亡、6人が重傷を負う事故が起きた。

今回の脱気器には約170度の温水が流れ、圧力は7気圧ほどだった。九電は漏れた蒸気を「微少」とするが、井野名誉教授は「配管は相当量の蒸気が噴出する圧力。発見が遅れれば蒸気が噴き出し続け、2次系の水位が下がる。連動する1次系にも影響し、原子炉の冷却機能が失われた恐れもある」と警告する。

元東芝の原子炉格納容器設計者の後藤政志さんは、トラブルが再稼働直後に起きた点に着目する。
九電川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)では、再稼働の9日後に蒸気を水に戻す「復水器」の不具合が発生。関西電力高浜原発4号機(福井県高浜町)でも再稼働の3日後、発電機と変圧器の故障を知らせる警報が鳴り、原子炉が緊急停止した。

後藤さんは「原発は停止時の方が経年劣化が進みやすい。大事故にならなかったのは結果論にすぎず、九電は安全上、より重要な機器でもトラブルが起こるリスクを理解するべきだ」と指摘した。(西日本新聞4/19)

蒸気漏れ個所の写真は 本稿 4月3日にある。長年の運転および停止期間によって2次系配管が腐食し13ミリ×6ミリの穴が開いていた。「2次系の安全重要度の低い設備の点検手順を明確に定め、公開すべきだ」という渡辺九州大准教授の指摘はその通りだ。

地元紙らしく、西日本新聞は長文の報告を載せていたので、本欄はその全文を使用した。
問題の配管は全部で16本あり、その内の1本に今回穴が開いていた。九電はこれらの配管全部を新品に交換したというが、交換された残りの15本に異状がなかったのか、知りたい。そこまで突っ込んだ記事なら満点なのだが。


トップページの写真を、オオワラジカイガラムシからチョウ目シジミチョウ科ヤマトシジミに替えた。


Top
4/24-2018
島根原発3号機 中国電力が県に事前了解打診 県は本格議論へ(NHK)


松江市に建設中の島根原子力発電所3号機について、中国電力が来月中旬までに島根県に国の安全審査の申請に必要な事前了解を求める申し入れを行い、6月の県議会で稼働の是非をめぐる議論が本格化する見通しになりました。
松江市に建設中の島根原発3号機は東京電力・福島第一原発の事故を受けて国の規制基準が見直され、審査のやり直しが必要となったため、ほぼ完成した状態で止まっています。

審査の申請にあたっては、中国電力が地元の島根県や松江市に事前に了解を得る必要があります。

こうした中、中国電力が早期の稼働が必要だとして、島根県に対し、事前の了解について、6月の定例県議会にはかってほしいと打診していたことが関係者への取材でわかりました。
さらに島根県も来月中旬までに中国電力からの正式な申し入れを受けて、県議会にはかる方向で最終調整を進めていることがわかりました。

島根県の溝口知事は、これまで3号機の稼働の是非について明言を避けてきましたが、今後、申し入れをきっかけに議論が本格化する見通しです。

全国で新たな原発の稼働に向けた手続きが進められるのは、青森県で建設中の大間原発に次いで2例目です。(図も NHK4/24)

新造原発の稼働にむけての動きであるので、要注意だ。ぜひ止めるべきだ。
島根原発の周辺には下記の6市があって、島根県・鳥取県の両県の避難計画なども容易ではないと考えられる。
    [島根県] 松江市、出雲市、安来市、雲南市
    [鳥取県] 米子市、境港市

本欄が島根原発に関して取りあげたのは11月10日(2017)、地図があるので参考にして下さい。


トップページの写真を、ヤマトシジミからチョウ目ヤママユガ科オオミズアオに替えた。


Top
4/25-2018
伊藤忠 トルコ原発離脱へ 事業費倍増、利益確保困難に(毎日新聞)


三菱重工業、伊藤忠商事などがトルコで進める新型原発建設計画から、伊藤忠が離脱する。2015年から3年間、事業化に向けた調査が行われたが、現時点で事業化のめどが立っていないことから参画を見送る見通し。原発は安全対策費の上昇で建設費が膨らんでおり、日本が官民挙げて進めてきた原発輸出に逆風となっている。

伊藤忠が離脱するのは、トルコ北部の黒海沿岸シノップの原発建設計画。三菱重工とフラマトム(旧社名アレバ)の共同出資会社「アトメア」が開発した新型軽水炉「アトメア1」(110万キロワット)4基を建設し、23年の稼働を目指している。

日本、トルコ両政府が13年、アトメアによる受注で事実上合意した。三菱重工が主体となり、18年3月末まで事業化に向けた調査を実施。その過程で、13年の計画当初、4基で2・1兆円程度と見積もられていた総事業費が2倍以上に膨らむことが判明した。三菱重工は調査期間を夏まで延長している。

事業化した場合、参画企業が建設費を負担し、発電による利益で回収する計画だが、建設費の上昇で当初想定した利益が得られない可能性が高まっている。伊藤忠関係者は「もともと3月末まで調査に協力することになっており、その役割を終えた」と説明した。

政府関係者によると、政府は事業費の増加を受けてトルコ政府に資金面での負担を求めているが、交渉は平行線をたどっている。伊藤忠が事業への参画を見送れば、事業費を負担する企業が減ることになり、事業の実現性はより厳しくなりそうだ。アトメア1の建設は、トルコの他、ベトナムやヨルダンでも構想されたが頓挫しており、開発構想自体が見直される可能性も出てきた

一方、日本の原発輸出では、日立製作所も英国中部で建設計画を進めている。3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が融資し、大型の軽水炉2基(計270万キロワット)を建設する計画。原発事故などのリスクがあるため、政府がメガバンクの融資の全額を保証する「オールジャパン体制」を敷いているが、英政府や英銀行の出資・融資が日本側の要望する水準に達せず、協議が続いている。(地図も 毎日新聞4/24)

「オールジャパン体制」で原発輸出を図るというのは、実質的には“社会主義国家”のやり方であり、自国内で建設が難しくなっている原発を海外で建設しようとするものだ。311福島事故で多くの国が原子力発電を見直しているというのに、当事国である日本ががむしゃらに原発輸出を行おうとしているのは、世界に対してまったく説得力がない。倫理的にも恥ずかしい。

核兵器開発と表裏の関係にある原子力発電からわが国は率先して手を引き、世界に対して原子力発電を止めるべきであることを説得する立場にあるはずだ。現実には、わが国はまったく逆の方向に進んでいる。

原子力発電はすでに経済的にペイしないことが明らかになっており、しかも、通常運転していてさえ地球全体にうすく広く放射能をまき散らしている。深刻な原発事故が起これば、そのあと長期にわたって広範囲に人が住めない地域ができ、多数の人びとが放射性障害に苦しめられ、しかも子孫にまで影響が伝わる。

原子力発電のもうひとつの致命的欠点は、使用済み核燃料の処置が困難だということである。数十万年もの間、生物圏から隔離しておく必要がある。そんなことを人間が確実になせるとは思えない。原子力発電はできるだけ早く止めるほかない。


Top
4/26-2018
噴火影響「高浜原発の想定は過小」 滋賀・原発差し止め訴訟(京都新聞)

滋賀県の住民らが福井県の若狭湾周辺にある大飯、高浜、美浜の関西電力3原発の運転差し止めを求めた訴訟の第18回口頭弁論が24日、大津地裁(西岡繁靖裁判長)であった。住民側は、大規模な噴火に伴う火山灰の影響について、関電側の高浜原発の想定が過小だと主張した。

住民側は、今年3月にあった原子力規制委員会の定例会合で、原子力規制庁が大山(だいせん 鳥取県)の噴火後に降り積もった火山灰の厚さについて、大山から約190キロ離れた京都市右京区越畑地域で26センチの可能性があるとの見解を示したと指摘。これに対し、関電側が大山などの噴火で想定している高浜原発での火山灰の厚さは最大10センチであることから「高浜原発は大山から約180キロと越畑より近く、少なくとも想定を26センチにすべきだ」と訴えた。

また想定を26センチとした場合、火山灰などが堆積した際の重さが、原子炉建屋の許容限度を上回るほか、非常用ディーゼル発電機に不具合が生じるなどの悪影響が出るとした。

関電側は、住民側が老朽化を問題視している高浜原発1、2号機と美浜原発3号機について、適切に検査していて、安全性は確保されていると主張した。(京都新聞4/24)

大山(だいせん 1709m)は、中国山地から離れて立つ独立峰の火山で、その裾野は日本海まで達している。『出雲風土記』の国引き神話で知られる由来の古い信仰の山で、平安時代以来山岳信仰の霊山として有名である。

火山としての歴史をウィキペディアから引いておく。
約100万年前から50万年前に山体の基礎が形成された蒜山(ひるせん)火山群の活動期と、古期大山と新期大山に大別される。約35万年以降に20回のプリニー式噴火があり、最新の活動は約1万7千年前と考えられている。なお、約3000年前の烏ヶ山(からすがせん)と弥山(みせん)の中間付近での火砕流を最新の活動とする研究もある。

本欄が4月24日に取りあげた島根原発は大山から52kmほどであり、高浜原発どころではない近さである。


Top
4/28-2018
コイやナマズなど数百匹に上る魚の死骸…硫黄山噴火、長江川で強い酸性 宮崎県、取水自粛呼び掛け(西日本新聞)


鹿児島県伊佐市の川内川で見つかっ
た魚の死骸
宮崎県えびの市の霧島連山・えびの高原(硫黄山)から噴出する硫黄などが原因とみられる周辺河川の白濁化について、県環境管理課は27日、川内川支流の長江川流域での水質検査の結果、硫黄山から約6キロの大原橋付近で環境基準を超える強い酸性を示す数値が出たと発表した。

検出された水素イオン指数(pH、数値が低いほど酸性)は2・1。県は、周辺の井戸水、湧水に異常を感じたら直ちに飲用を中止するよう住民に呼び掛けた。また、農作物の生育への影響も懸念されることから、JAえびの市などに対し、当面は長江川とその支流からの取水と農業用水の利用を控えるよう通知した。

えびの市では21日以降、同川流域でコイやナマズなど数百匹に上る魚の死骸を回収している。川内川下流の鹿児島県伊佐市や同県湧水町でも25日以降、コイやフナなどの死骸が大量に見つかった。24日の雨で増水した長江川から流れてきたとみられる。伊佐市の川内川上流漁業協同組合は25日、アユの稚魚150キロを放流したばかり。宮脇和生組合長(74)は「恐らく全滅だ」と肩を落とした。

宮崎県は、白濁化の連絡を受けた21日と26日に長江川などで採水。川内川への影響については、国土交通省川内川河川事務所が26日に採水して調べており、詳細な結果は5月中旬にまとまる予定。ともに「状況を注視していく」としている。(写真も 西日本新聞 4/28)

硫黄山(いおうやま)の噴火は、NHKがLive映像を流しているが(ここ)、白い蒸気なので、なんとなく「穏やかな噴火」のように感じていた。
しかし、西日本新聞が昨日・今日と報道している白濁している川(ここ)や魚の死骸の写真を見ると、現地では大きな影響が出ていることが分かる。

【追記 4/29】 宮崎県にある硫黄山が4月、噴火したあと、水が白く濁るようになったふもとのえびの市の川で、環境基準のおよそ200倍のヒ素が検出されました。宮崎県は地下水が汚染されるおそれもあるとして、川の周辺では井戸水やわき水を飲み水として使わないよう呼びかけています。
環境基準を超えるヒ素が検出されたのは4月19日に噴火した硫黄山のふもとの宮崎県えびの市を流れる長江川です。(NHK4/28)


Top
4/29-2018
原発「基幹電源」を維持 基本計画骨子案 再生エネ「主力に期待」(東京新聞)

経済産業省は27日、2030年に向けた「エネルギー基本計画」の見直しの骨子案を審議会に示した。原発は「重要な基幹電源」と従来の位置付けを維持。再生可能エネルギーは「主力電源化に期待」と明記したが再生エネをどれだけ推進するかは判然とせず、「原発推進」という既定路線を変えたくないという意図も透けて見える。

見直しは14年以来、4年ぶり。前回は30年に向けた指針のみだったが、政府は50年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大幅に削減する目標を定めており、今回は50年に向けた戦略も含めた。5月に基本計画を取りまとめ、6~7月の閣議決定を目指す

骨子案は原発について「可能な限り依存度を低減」という前回計画を踏襲。再生エネには「主力電源化」との文言が新たに加わった。だが30年の総発電量に占める目標比率は原発が20~22%、再生エネが22~24%と前回から変わっていない。「主力」の意味合いが見えにくく、この日開かれた審議会では委員から「分かりにくい」との声が上がった。

骨子案は「原子力政策の再構築」も打ち出しており、消費者団体の辰巳菊子氏は審議会で「むしろ原子力の拡大政策になっている」と疑問を呈した。審議会の座長を務める坂根正弘コマツ相談役が「原発を可能な限り低減する前提ではCO2の大幅削減はできない。原発の重要性は変わらない」と強調する場面もあった。

14年以降、世界的に再生エネのコスト削減が進む一方で、原発は建設費や事故リスク対応費が膨らむなど、エネルギー情勢は大きく変化している。しかし、審議会では従来の基本計画を抜本的に見直す議論はほとんど行われなかった。(東京新聞4/28)

経産省が「骨子案」を審議会に示したというのであるが、これが日本の官僚主導の進め方である。骨子案をつくるのは審議会の「事務方」というわけだが、骨子案で大筋が決まってしまい、それを大幅に(あるいは抜本的に)変更することはまず無い。なぜなら、お役所の眼鏡にかなった人選があらかじめ行われていて審議会が構成されているからである。

原発が二酸化炭素(CO2)を出さないというのは、核燃料を燃やす過程においては事実だが、原子力発電所の建設と、その前後の長い工程があることを無視した議論だ。ウラン鉱石の採掘・輸送、精製と濃縮、使用済み燃料の保管・処理・最終処分場建設の各工程で多量の石油資源を使う。地球全体の規模で考えれば、原子力発電はけして二酸化炭素の「大幅削減」につながるようなものではない。

骨子案は「原子力政策の再構築」の中で原子力人材や産業基盤の維持・強化を打ち出しており、辰巳菊子氏の指摘のように「むしろ原子力の拡大政策になっている」のである。


Top


このページのトップ 先月 次月 旧「き坊の近況」 HOME




inserted by FC2 system