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第八巻 63
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ビッコの乞喰人形を遣ふ

此乞喰の人形 演劇等に
関せるに非す何やら
要領を得さる言
を弄し人形を遣ふ
もの也

明治三十年頃

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芸のない者、できない者はそれなりの工夫をして乞食稼業を行っていた。

単に低頭するだけの「物貰い」をしたのは、病人や老人や幼年などの特別の場合に限られていたようである。明治20年代の下谷万年町(もと山崎町)に潜入して先端的なルポを残した櫻田文吾『貧天地饑寒窟 探検記』(明治26年1893)は、山伏町の貧民窟の住民の職業を列挙するに先立って、次のように述べている。
さて此等の可憐なる貧民と雖も各手職のあるものにて、乞食渡世は不具もの、廃疾、老衰幼弱の男女に限るなり。
しかし、晴風はこの限定した意味の「乞食渡世」はほとんど描いていない。晴風はどんな些細なものでも「芸」を描こうとしている。唯一の例外が第二巻-43「宿なし乞喰の類」。

足の不具者を扱っているものを集めておく。「片足」巻二-33幽霊の乞喰、「いざり」巻四-34いざり、「ちんば」巻五-35いい女にや只やろう

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