き坊の近況 (2019年5月)


旧 「き坊の近況」

【2019年】: 05 04 03 02 01 月

’18 ’17 ’16 ’15 ’14 ’13 ’12 ’11 ’10 ’09 ’08 ’07 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

5/2-2019
原発廃炉 費用総額 少なくとも6兆7000億円に(NHK)

8年前の福島第一原発の事故後、11基の原発で廃炉が決まり、日本の原子力は「廃炉の時代」を迎えています。NHKのまとめでは、原発や関連施設の廃止にかかる費用の総額は少なくとも6兆7000億円に上り、費用には電気料金や税金などが充てられることから、作業の安全を図りながらどうコストを下げられるかが課題です。

福島第一原発の事故のあと、原発などの安全対策を求める国の規制基準が厳しくなり、福島第一原発以外ですでに7原発11基の廃炉が決まるなど、日本の原子力は「廃炉の時代」を迎えています。

こうした中、NHKが各電力事業者や研究機関の国への報告をまとめたところ、全国各地の原発や原子力関連施設の廃止にかかる費用の総額は少なくとも6兆7205億円に上ることが分かりました。

このうち、建設中の3基の原発を除いた53基の廃炉にかかる費用は3兆578億円になり、1基当たりの平均は577億円でした。

原発以外では、青森県にある使用済み核燃料の「再処理工場」が1兆6000億円となり、最も高額です。

また、日本原子力研究開発機構では、全国79の施設の解体などの費用が1兆9100億円と公表され、人件費などを含めると3兆3000億円ほどに上る可能性があるとしています。

福島第一原発の廃炉にも8兆円かかる見通しの中、こうした費用には電気料金や税金などが充てられることから、作業の安全を図りながらどうコストを下げられるかが課題です。(NHK5/2)

廃炉の時代」というが、その費用は国民から徴収する電気料金や税金があてられ、電気事業者や原子力研究機関が困るわけではない。

上の記事を理解するために、廃炉費用の概算数字を示しておく。記事はすべての数字を表してないので、合計金額が6兆7000億円には足りない。

既設の原発、53基3兆 578億円
建設中の原発、3基  -----
原発以外の79施設   3兆3000億円
(原発以外の施設のうち再処理工場 1兆6000億円)
  
福島第一の事故原発4基など 8兆円

なんと、物凄い金額であることか。これで“原子力による発電は安上がりだ”と言い続けてきたのだから、あきれる(今でも言ってる)。これは解体したり放射性廃棄物を処理したりするという段階までで、その放射性廃棄物の持って行き場所がないのである。何万年か何十万年か(百万年という学者もいる)保守・管理する必要があるが、その費用は入っていない。だれにも算定できないから。


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5/3-2019
「故郷、奪われたまんま」 福島第一 原発避難(東京新聞)

30日午後7時、小雨が降る福島県大熊町の国道6号を車で北進すると、暗闇の中にほのかに光を放つ3本の排気筒が東側に見えた。2011(平成23)年3月11日から、事故の収束作業が続いている東京電力福島第一原発だ。

大型連休中、福島第一では汚染水処理を除き、ほとんどの作業は休止している。平日は約4千人が働くものの、この日は出入りする車はほとんどなかった。正門につながる道では持参の線量計が毎時2・4マイクロシーベルトを示し、警告音が鳴りやまない。放射線量は東京都心部の20倍を超える

原発事故では、多くの人が避難を強いられた。避難指示が解除されても、自治体によっては戻って住む人は事故前の1割以下だ。

「元号さ変わっても、うれしくも悲しくもねえ」。福島県富岡町から同県いわき市に避難を続ける渡辺敏子さん(56)は、解体を終えた同町の生家跡地に立って言った。事故前に住んでいた同町夜ノ森地区は線量が高い帰還困難区域。「故郷さ、奪われたまんまだよ

東電は、福島第一の事故収束を終える廃炉まで40年かかると見込む。しかし、原子炉で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなど困難な作業が山積となっている。原発で働く40代の男性作業員は「おれが百歳になっても終わんねえ。令和の間なんて夢のまた夢だよ」と笑った。(東京新聞5/1)

改元騒ぎで日本中が浮かれているが(マスメディアが煽っているが)、こういう冷ややかな記事を出す新聞が存在することを知って、心強く思う。

ついでに、今朝ネットを漁っていたら、BIGLOBEニュース(4/13)が載せていた福島県広野町議会議員の阿部憲一氏へのインタビュー記事を知った。「政府は現実をことごとく隠す」(tocana)。その一節。安倍健一氏は洋野町議員として2015年以来、原発被害をアッピールすべく孤軍奮闘している方。
福島の復興は経済産業省の主導で行われていますが、「高度汚染地域に住民を戻して、地域を発展させる」というのが政府の意向です。あの震災と原発事故の影響で、日本は原発50機もの輸出が困難になりました。そこで、それまでは「原発は安全」として売り込みしていたのを、高濃度の汚染地帯に住民を戻して、自分たちの手で除染をさせ、「あんな過酷な事故があっても、ほらこの通り、住民が戻って普通に暮らしていますよ」というセールスに切り替えようとしているのです。国や県はJヴィレッジを復興のシンボルにして、その近くにわざわざ新駅までつくり、飯館村(福島県相馬郡)を“モデルルーム”のように位置づけています。

実は放射線量は『平均化』して報道されています。空間線量率(対象とする空間の単位時間当たりの放射線量)の数値が瞬間的に上がっても、原子力規制庁は各「環境放射線モニタリングポスト」から衛星で1分または30秒ごとに送られる数値を10分単位の平均値にして公開しているということです。しかし、各地域に置かれたモニタリングポストの放射線量グラフを見ると、一気に放射線量が上がる瞬間があります。特に福島の東半分では、毎日のようにモニタリングポストの数値が跳ね上がっています。2012年に1mSv/h超えはしょっちゅうでした。原子力規制庁の監視情報課は、その原因について「高濃度のダストへの反応で、吹き溜まりが舞い上がっている」と私には語っており、福島原発からそのまま飛来している可能性も否定していません。

つまり、住民はずっと吸引被爆の危機にいるのです。国は、その“恐ろしい瞬間”を取り上げず、数値はみんな平均化して、「大したことはない」と思わせているようです。
(ビッグローブ4/13)
「発表される放射線量の数値は、時間的に平均化されている」という指摘は、重要だ。放射性の塵埃は微細粒子として空中を漂っており、それを吸入したり皮膚に附着したりして体内に入り、内部被曝する。放射性物質の粒子が空中を漂っているのを線量計で測定すると、線量の鋭いピークが不規則に現れる。平均値は小さくなるが、粒子を吸い込むと取り込まれたホットパーティクルなどの放射性物質が局部的に強い被曝を生じさせる。それはとても危険なものだ。
時間的平均値だけ見せて、“問題にならないほど低い線量だ”と言うのは、ひどい欺瞞なのだ。


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5/7-2019
子ども、38年連続減 14歳以下1533万人 (日本経済新聞)


総務省は4日、「こどもの日」を前に4月1日時点の子どもの人数を推計した。外国人を含めた14歳以下の人口は1533万人と前年より18万人減り、比較可能な1950年以降、過去最少を更新した。減少は38年連続。総人口に占める割合も同0.2ポイント低い12.1%で、45年連続で低下した。

子どもの人数は89年(平成元年)の2320万人から787万人、3割超減った。ピークだった54年の2989万人と比べるとほぼ半減している。出生児数の減少による少子化の流れが続いている。

都道府県別(2018年10月1日時点)では、東京都が8千人増加、沖縄県が横ばいで、そのほかの45道府県では減少した。子どもの割合が最も大きかったのは沖縄県の17.0%で、最小は秋田県の10.0%だった。

男女別では男子が785万人、女子が748万人と、それぞれ9万人減となった。(以下有料)(図も 日本経済新聞5/4)

社会の人口減少には多様な原因があるとされる。結婚しない若い人が増えている、晩婚傾向が進んでいる、子供の教育費などの高騰、3人以上の子供を持つ余裕がなくなっている、・・・・。若年層の貧困化が進む。その一方で社会の高齢化が進行しており、高齢層の貧困化が深刻になっている。
社会全体に無気力がはびこり、チャレンジングな社会的試みが避けられ、無難な「責任回避社会」に向かう。
人口減少社会では、若者の比率がどんどん減少して、企業の管理職や政治家、行政をつかさどる官僚や役人も、すべてが年寄り中心の社会になっていく。チャレンジよりも安定志向が強く、現在の生活レベルを脅かすことには臆病になる。 (岩崎博充「日本人は“人口減少”の深刻さをわかっていない」東洋経済5/7)
現にわたしたちは、この傾向がだいぶ前から始まっていることを感じている。

子供たち、殊に胎児は放射線に極めて敏感であり、妊婦や赤ん坊に対する被曝防護は国を挙げてはかる必要があり、またそうする価値がある。国がいま採用している「20mSv/y 年被曝量20ミリシーベルト」などはまったく論外である。


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5/8-2019
島薗進氏(宗教学者、上智大教授)の見解が「政策推進優先の科学に反省を」(毎日新聞5/7)に特集されていた。氏はフクイチ事故後の学者や政府の原発事故に対する対応がおかしいことを鋭く指摘し続けててきた。長文なので、抜萃で紹介する。
放射線被ばくで懸念されるのが小児甲状腺がんだ。原発事故前には「年間100万人に1人」とされていたが、福島県が事故当時18歳以下と胎内にいた子ども約38万人を対象に11年6月から始めた検査などでは、179人が小児甲状腺がんと診断された(昨年12月末現在)。原子炉から放出された放射性ヨウ素の影響が疑われるが、半減期が約8日と短く、事故直後でなければ測定は難しい。一方で、国は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)の予測結果を事故から約2週間公表せず、多くの人が無用な被ばくを強いられた。

島薗さんによると、福島県での初期調査は、国の原子力災害対策本部が11年3月下旬に実施したいわき市、川俣町、飯舘村の子ども1080人の簡易測定と、弘前大の調査班による同4月の南相馬市と浪江町の住民62人などに限られる。チェルノブイリの原発事故では20万人近くが測定を受けたのと比べると、わずかなデータしかない。

さらに国の対策本部は、内閣府原子力安全委員会(当時)から、より精密な追加検査を求められたが「地域社会に不安を与える」などの理由で応じなかった。また弘前大チームも、福島県から「人を測るのは不安をかき立てるからやめてほしい」と要請され、継続検査を断念したという。


「原発推進を続けたい政府と産業界にとって、放射線の被害が少なければ、再稼働への道も開け、被災者への補償など社会的コストも抑えられる。科学者である放射線の専門家らもその見方を共有しているように見える」と島薗さん。では、彼らはどんな役割を果たしたのか。「放射線の健康への影響に関して『心配することがよくない』と盛んに発信してきたことが大きい。健康への影響は解明されていないのに、不安を持つことによる精神的影響が問題なのだと、一方的に被災者らに教え込もうとしたのです」

科学者が「放射線の影響は考えにくい」と世間に広めたことの危うさを島薗さんは今、強く感じている。「原発事故で苦難を被った責任は、原発を推進してきた国や自治体、企業、科学者ではなく、被害者自身に帰せられる。つまりは原発事故そのものではなく、不安を持ち、勝手に避難するなどしたことによる自己責任になってしまう。その考え方は社会的公正さよりも個人の責任を重視する新自由主義とつながっている。だから弱い立場にある被災者たちが健康不安を口にすると『風評被害を起こすのか』と、ものを言えない状況になっているのです」
島薗氏は原発に対する歴史的な視点、哲学的な視点から論を立てて、しかし、とても鋭く鮮明な主張を行っている。アイマイな“学者っぽい”微温的結論にとどまるような人ではない。更には生命倫理の問題や、近代天皇制についての発言、「日本会議」批判なども、鋭い発言をしている。

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5/10-2019
スリーマイル島原発、9月30日までに閉鎖へ 40年前に米史上最悪の原発事故(AFP)


米ペンシルベニア州ミドルタウンにあるスリーマイル島原子力発電所
(2019年3月26日撮影、資料写真)。(c)ANDREW CABALLERO-REYNOLDS / AFP

1979年に米史上最悪の原発事故を起こした米ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電が、今年9月いっぱいで閉鎖されることになった。同原発を運営する米電力大手エクセロンが8日、明らかにした。
エクセロンは採算のとれないスリーマイル島原発の操業を継続するため、ペンシルベニア州議会に助成金の交付を求めてきたが、燃料購入期限内の実現は不可能と判断した

エクセロンのキャサリーン・バロン上級副社長は、「スリーマイル島原発用の燃料購入期限の6月1日までに、政策変更に向けての前進は望めないと考えている」と述べ、ペンシルベニア州ミドルタウンにあるスリーマイル島原子力発電所1号機を、9月30日までに閉鎖する方針を明らかにした。

同社は2年前、州議会からの支援がなくなれば、スリーマイル島原発は閉鎖を余儀なくされる恐れがあると警告していた 。スリーマイル島原発は、2034年までの運転が認められていた。

原発は近年、天然ガスなどによるより安価な発電方式との競合にさらされてきた。

スリーマイル島原発で1979年3月28日に発生した部分的な炉心溶融事故は、1986年にウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故や2011年の東京電力福島第一原子力発電所の大惨事と比べるとかすみがちだが、今なお米史上最悪の原発事故となっている。

0から7までの国際原子力事象評価尺度(INES)で、スリーマイル島原発事故は「レベル5」、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故は「レベル7」に位置づけられている。
スリーマイル島原発事故では死者や重傷者は出ていないが、原発の安全性に対する懸念を米全土に巻き起こし、原発新設にブレーキをかけた。(写真も AFP5/9)

アメリカの原発運転事情が極めて厳しい経済的条件にさらされていることがよくわかるニュースである。州議会の事情で「助成金の交付」が間に合わないために、1号炉(写真の白煙を吐いている原子炉)を閉鎖することにした。

写真左の白煙が出ていないのが1979年にレベル5の事故を起こした2号炉(96万kW)である。
事故時には炉内の核燃料の45%ほどが溶融し、炉の底部に溜まった。約130トンという。つまり、容器を破って外に出はしなかった。
デブリは極めて硬く、場所により硬さや形状も異なるため、同時並行で工具を開発。先端部に人工ダイヤモンドを含む掘削用ボーリング機器などが使われた。東京新聞3/27
最終的に1トンほどのデブリは取りきれず、炉底部に残ったままになっている。

これと比較すると、フクイチの状況が如何に困難なものであるか、良く分かる。事故を起こしたのは1~4号炉の4基あり、1~3号炉は、炉心溶融を起こしデブリが炉を破り、格納容器底部に達していると見られている。さらに格納容器を破っている可能性もある。
デブリを取り出す作業がスリーマイル島原発より格段に困難であることが予想される。ことに、デブリの全量を完全に取り除くことが如何に困難であるか、スリーマイル島事故でも取り残しが1トンほど在り、今後1,2号炉の廃炉作業の中でデブリ取り出しが行われるのであろう。
作業状況が比べものにならないほど悪いフクイチで、デブリの完全な取り出しはまず不可能と考えられる。


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5/11-2019
福島第1原発、20日から排気筒解体=東電(時事通信)

東京電力は9日、福島第1原発1、2号機の排気筒(高さ約120メートル)の解体作業を20日から始めると発表した。支柱などが破断して倒壊する恐れがあるためで、年内に上半分を解体する計画だ。

排気筒は事故当時、原子炉格納容器の破損を防ぐため、外部に放射性物質を含んだ気体を放出する「ベント」に使われた。このため内部は汚染され、排気筒下部は放射線量が高い。

クレーンでつるした解体装置を遠隔操作し、上部から輪切り状に切断していく。20日に先端部のはしごなどを撤去し、21日から排気筒本体の切断を始める。(時事通信5/9)

フクイチの外部にある施設のうち、最も高線量であるとされる排気筒(「排気筒の根元付近では、事故直後に毎時10シーベルト超、2015年の調査でも毎時2シーベルト」朝日新聞5/9)を解体する作業に20日から取り掛かるという。すべて遠隔操作で、巨大クレーンを操って、上部から2~4m間隔で輪切りにしていく。
排気筒を支える鉄柱に破損やひび割れが見つかっており、崩壊が心配されている。解体工事の進め方によっては、危険性が生じるのではないか。放射性粉塵が飛び散ることがないか、強風などで安全に作業が進められないのではないかなど、心配な点が多々ある。

YouTubeに「排気筒解体モックアップの状況」など、いくつかの動画がアップされていて、作業の様子が推察できる。


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5/12-2019
6知事、再稼働賛否示さず 当事者意識低さ浮き彫り 東海第二原発アンケート(東京新聞)

日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す東海第二原発(茨城県東海村)について、本紙は茨城を除く関東一都五県の6知事に再稼働の是非をアンケートしたところ、賛否を明確に示す知事はいなかった。首都圏は深刻な事故で被害を受ける危険性があるが、再稼働の判断を国に委ねる回答が複数あり、当事者意識の低さが浮き彫りとなった

原電は二月、東海第二の再稼働を目指す意向を正式表明。東海第二から一都五県の距離は東京電力福島第一原発より近く、放射能が漏れる深刻な事故が起きれば、福島事故を上回る被害が想定される。立地自治体の茨城県の大井川和彦知事はこれまでに再稼働への賛否を明らかにしていないが、「判断に当たっては県民の声に耳を傾ける」と説明している。

だが、原発三十キロ圏の住民約94万人の約半分は千葉、埼玉、栃木、群馬を含む5県に避難する計画のため、影響が及ぶのは茨城県だけではない。

再稼働の賛否について、3知事が「どちらとも言えない」、残りの3知事は回答なしだった。

神奈川県の黒岩祐治知事と栃木県の福田富一知事は「地元の理解が不可欠」と理由を説明。県議会が原発再稼働推進の意見書を可決した埼玉県の上田清司知事は「隣接県が軽々にものを言うことはできない」とした上で、「地元の理解と支持を得ることが不可欠」と回答した。

一方、東京都の小池百合子、千葉県の森田健作、群馬県の大沢正明の三知事は、原発の再稼働は国が責任を持って判断するべきだと答えた。

小池知事は希望の党代表として臨んだ二〇一七年の衆院選で、三〇年までの原発ゼロ達成を掲げた。本紙インタビューにも「できない、と言うよりどうやって可能にするかを考えたい」と語っていたが、回答にそうした記述はなかった。

アンケートでは原発が立地する自治体の知事に再稼働を止める権限があると考えるかどうかも聞いたが、知事の権限を肯定する回答はゼロだった。(東京新聞5/11)


この6知事のうち、もっともましな意見を表明したのが「地元の理解が必要」の神奈川県知事・黒岩祐治氏と栃木県知事・福田富一氏。東京新聞5/11の別記事「命かかる判断 国に丸投げ 東海第二再稼働アンケート」より、一部引用。
神奈川/黒岩祐治:許認可の内容について,地元住民や自治体などに十分説明し、理解を得ることが必要不可欠である。
栃木県・福田富一:再稼働については、安全性が確保された上で、まずは、地元住民や立地自治体などの理解を得ることが重要。
「地元住民」というのは、立地する茨城県民を指しているのか、それとも、知事が生命・財産の保全に責任を持つべき当該県民をさしているのか。あいまいなままだ。他の知事に至っては、「国が責任を持って判断すべき」というばかりで、自分はどう考えているのかを表明しようとしない。

都民・県民の無関心さを反映した、知事らの無責任で当事者意識のない態度であると考えられる。
しかし、避難計画を立てようもないほどの首都圏人口密集地で、原発再稼働を「国の判断」へ丸投げしてしまうことがどうして許されるだろう。知事に権限があろうが有るまいが、当該都県民の安全を重視すべき責任者として「再稼働には反対だ」と、どうして言えないことがあろう。


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5/14-2019
福島第一原発 排気筒の解体作業延期 クレーンの高さ足りず(NHK)

東京電力福島第一原子力発電所の高さ120メートルの排気筒の解体について今月20日に始める予定でしたが、模擬の装置で確認したところ、クレーンの高さが足りないことがわかり、作業は延期となりました。作業開始の時期は未定だということです。

福島第一原発の1号機と2号機の建屋の隣には、事故で内部に高い濃度の放射性物質が付着している高さ120メートルの排気筒があり、地元の協力企業が今月20日から解体作業を始める予定でした。

しかし11日、模擬の解体装置をクレーンでつるして確認したところ、クレーンが必要な高さよりも1.6メートルほど足りないことがわかったということです。

東京電力は余裕をもって設計していたとしていますが、実際にはクレーンのアームの角度に誤差が生じ、想定よりも高さが足りなかったということです。

このため今月20日の解体作業は延期となりましたが、作業開始の時期は未定だということです。(NHK5/14)

いったい、これは何?信じがたい話だ。

本欄5月11日でも紹介しているように、YouTubeなどには、東電自らが発表している立派な実物模型(モックアップ)や、それを用いた煙突を切断する試行状況などが示されている。こんな立派な装置を作って準備していたのに、クレーンが必要な高さに1.6mも足りなかった、などと言うことがありうるのだろうか。
東電は「余裕をもって設計していた」と言い訳をしているらしいが、120mに対する1.6mは約1.3%ですね。東電の技術者は目分量でやっつけていたんじゃないだろうね。解体装置の重量とクレーンの長さから、たわみ量をチェックしていなかったのだろうか?

東電の管理体制だけでなく、現場技術者らの士気が落ちているとしか思えない。


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5/16-2019
泊原発、再稼働見通せず…規制委が断層資料要求(讀賣新聞)

原子力規制委員会は15日、北海道電力泊原子力発電所(北海道泊村、停止中)1~3号機について、敷地内の断層の評価状況などを取りまとめた資料の提出を北海道電に求めることを決めた。更田豊志ふけたとよし委員長は会合で「1年間ぐらいは原発本体の審査を始められない」と語った。泊原発の再稼働は当分見通せなくなった。

泊原発の敷地内に、活断層が存在する可能性が出てきたことなどが理由。規制委は今年2月、1号機の近くにある「F―1断層」について「活断層である可能性が否定できない」との見解をまとめている。重要施設の直下に活断層がある場合は原発は運転できない。F―1断層の直上には重要施設はないとされているが、地震の揺れの想定が大きくなる可能性がある。

北海道電は2013年7月に、泊原発1~3号機の安全審査を申請した。当初、火山灰の分析などから「敷地内に活断層はない」と主張したが、その後の調査で火山灰が見つからず、規制委を納得させるデータを示すことができなかった。

泊原発と同時期に安全審査を申請した関西電、四国電、九州電の原発は、いずれも既に審査に合格し、再稼働している。(讀賣新聞5/15)

本欄でも,この問題は長いあいだ追いかけて来ている。「F-1断層」などの議論がでてくる北海道新聞の記事が参考になる(2017年11月12日)。そこに引用しているYouTubeや北海道電力の資料(PDF)のリンクはいまも生きています。

敷地内に「活断層が存在しない」という北電の主張が、ことごとく根拠薄弱だったり説得力に乏しいものであって、規制委を納得させることができない。讀賣新聞は、すでに審査合格して再稼働している関電・四電・九電を列挙して、残念がっている(?)。


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5/17-2019
太平洋の「核のひつぎ」から汚染物漏出の恐れ、国連総長が懸念(AFP)


マーシャル諸島・エニウェトク環礁ルニット島にある、放射性廃棄物を投棄したコンクリート製ドーム。米国防総省核兵器局提供(1980年撮影)。
(c)GIFF JOHNSON / US DEFENCE NUCLEAR AGENCY/FILES / AFP

国連のアントニオ・グテレス事務総長は16日、核実験で生じた汚染物を投棄するため20世紀に建設されたコンクリートのドームから、放射性物質が太平洋へ漏出することへの懸念を表明した。

太平洋の島国フィジーを訪れ、学生らを前に演説したグテレス氏は、マーシャル諸島のエニウェトク環礁に建設されたこのドームについて、冷戦期の太平洋における核実験の遺物であり、「一種のひつぎ」だと表現した。
さらにグテレス氏は、マーシャル諸島のヒルダ・ハイネ大統領と同様に、このドームに封じ込められている放射性物質の漏出の恐れを非常に懸念していると述べた。

同環礁の一部を成すルニット島に1970年代後半に建設されたドームは、核実験で生じた放射性汚染物質の投棄場となっている。
放射性物質を含んだ土や灰が、クレーターに運び込まれ、厚さ45センチのコンクリート板で覆われている。

当時は一時投棄との位置付けで、クレーター底面には何らの加工もされていないことから、汚染物の海洋流出の危険性が指摘されている。何十年も経過したドームには複数のひびが入っており、サイクロンが直撃した場合には崩壊しかねないと危惧する声もある。

グテレス氏はドームへの対応策には直接言及しなかったものの、太平洋の核の歴史は過去のものではないという見方を示した。(AFP5/16)

第2次大戦直後から1960年代まで続いた、米・英・仏を中心とした太平洋での核実験は、まったく傍若無人のひどいものだった。ここではネット上に公開してある斉藤達雄「核と太平洋-大国の横暴-」(ここ)から図を借用させてもらう。曲線と国名はミサイル発射実験を表す。

広島・長崎の実戦と、戦後の太平洋・セミパラチンスクなどのソ連・西域での中国・米国内のネバダ砂漠などでの核実験によって、人工放射能が地球全体にまき散らされた(なお、上図のオーストラリア大陸での実験は英国)。
太平洋諸島に太古から住んでいた住民たちは強制的に立ち退かされたり、実験場近くであるにも関わらずそのまま実験を行ったりした。日本をはじめとする多数の漁船に被曝被害が生じたことは、知られているがその実態は充分に明らかになってはいない。

AFPが掲げた1980年の写真は、核実験で生じた核廃棄物を、きわめてズサンなやり方で投棄したエニウェトック環礁につくられた廃棄物処理場。珊瑚礁の島に巨大な穴を掘り、そこへ核廃棄物を捨てコンクリートでフタをしただけという。コンクリートの寿命は100年もないだろう。核廃棄物は少なくとも数万~数十万年は隔離・保管する必要がある。国連のグテレス事務総長がこの問題を取りあげ指摘したことを評価したい。

なお、日本は被害者ヅラばかりしておれないことを、きちんと認識しておく必要がある。1970年代に科学技術庁(当時)が低レベル放射性廃棄物の海洋投棄を決定し、小笠原諸島の北東の公海、水深6000mの海底に投棄しようという計画であった。5千~1万缶の放射性廃棄物の入ったトラム缶を「実験的に投棄」すると実施計画の1年前1980年に日本政府はアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドおよびミクロネシア諸島へ通告している(小柏葉子「南太平洋地域の核問題と日本」ここ)。ミクロネシア諸国だけでなく、世界中から強い反発を受け、中曽根首相(当時)は1985年に「放射性廃棄物の太平洋への投棄計画を無期停止する」と発表した。
2011年のフクイチ事故で膨大な量の放射性物質を太平洋へ流出させ、現在もそれは続いている。また、「トリチウム水を太平洋に廃棄するのが最も安上がりだ」と原子力規制委は何度も表明している。

日本の原発企業に限らないが、「一定の濃度以下に薄めて」放射性汚染溶液を大量に沿岸から放出している(濃度規制のみで総量規制を設けていない)。また、原発の廃熱の捨て場所として膨大な量の温水を海へ廃棄している。彼らは太平洋を自分らのゴミ捨て場だと思っている。この体質は全世界の原発企業に共通のようだ。強く監視している必要がある。
海は原発企業だけのものではないし、ヒトだけのものでもない。海棲のすべての生物のためにかけがえのない生活圏であり、さらに地球のすべての生物のためのものだ。


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5/20-2019
地震予知失敗、100回中99回 南海トラフで学者回答(中日新聞)

南海トラフ巨大地震について、事前に発生する時や場所、規模を正確に言い当てる直前予知を100回試みても99回程度は失敗すると日本の地震学者が考えていることが、林能成関西大教授(地震学)が行ったアンケートで19日、分かった。

観測データを基に危険性を判断するのが地震学者で、予知の実用化が不可能に近いことを改めて示す結果となった。

林教授は、予知の難しさが市民や行政担当者に正しく伝わっていないと指摘。「突然の地震でも被害を少なくする防災を進めるのが先。予知を防災の前提としてきた過ちを繰り返さないようにすべきだ」としている。(中日新聞5/19)

地震学者たちが地震(いつ、どこで、大きさ)の予知がほとんど不可能であると考えていること、むしろ地震災害の予防に努めることが大事だという。

わが国では東海地震の観測網を整備しその予知を前提に防災訓練などを行ったりしたことが、国民の間に地震予知が可能であるという誤解を広めたのではなかったか。この誤解の下地となったのは、わが国民通弊の“科学主義”的な信奉があったように思われる。

◇+◇

本日朝9時半にアップされた西日本新聞の「日向灘の周期地震警戒を 「ここ数十年で最も危険性高い」専門家が警鐘」は地元紙らしい力作。


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5/21-2019
<ADR打ち切り訴訟>東電と国、請求棄却求める 福島地裁初弁論(河北新報)

東京電力福島第1原発事故の和解仲介手続き(ADR)の決裂を受け、福島県浪江町の町民109人が計約13億1800万円の損害賠償を東電と国に求めた訴訟の第1回口頭弁論が20日、福島地裁で開かれ、東電と国は請求の棄却を求めた。

東電側と国側はともに「原発を襲う津波は予測できなかった」とする従来の主張を繰り返した。町民は地域コミュニティーの喪失を損害と主張するが、東電側は「新たに平穏な日常生活とその基盤を形成することは可能で、必ずしも元に戻らなくなったとはいえない」との見解を示した

訴えによると、町民は2011年3月11日の東日本大震災と原発事故の発生直後から17年3月まで全町避難を余儀なくされた。町民は
(1)コミュニティーの破壊
(2)長期の避難生活
(3)健康被害への不安
によって精神的苦痛を受けたなどとしている。

訴訟に先立ち、町は13年5月に町民約1万5700人の代理人となって慰謝料増額を東電に求める集団ADRを申し立てた。原子力損害賠償紛争解決センターは月額5万円を上乗せする和解案を提示したが、東電が拒否。18年4月に手続きが打ち切られていた。
20日は町民115人が追加提訴した。弁護団によると、最終的に1500~2000人が原告に加わる見通し。(河北新報5/21)

浪江町のADR(フクイチ事故の和解仲介手続)が申し立てられたのは2013年5月29日のことで、そのときADRに参加したのは町民の7割を超える約1万5700人もの人たちだった。ところが東電がADR拒否を続けたため、町民側は「問題の早期解決が目的である筈のADRが、機能不全に陥っている」という判断から、18年11月27日に提訴に切り替えたのである(例えば、ADRを申し立てた町民のうち900人以上がそれまでに亡くなっている)。(本欄18年12月1日参照)

「提訴は1割以下の1500~2000人にとどまる見通し。訴訟はADRに比べ費用と時間がかかるため、敬遠する声が多い」(河北新報5/21)という。東電と国側は、「ADR拒否」という卑怯な手法が奏功したことをほくそ笑んでいることだろう。こういう非道がまかり通っていることに対して、国民はもっと怒らないといけない。

東電の主張「新たに平穏な日常生活とその基盤を形成することは可能で、必ずしも元に戻らなくなったとはいえない」はヘドを催すような鬼畜の主張だ。町民は放射能に汚れた町から避難して別の場所で、あるいは放射能に汚れた元の町で、平穏な生活を送れないとは言えまい。東電は町民に敗北を強要し、敗北の下で「平穏な日常生活」を作ったらいい、と言っているのである。
負けちゃ、いかん。決して、負けちゃ、いかん。


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5/22-2019
韓国原発で重大事故の恐れあった」 運営会社の安全軽視に批判(共同通信)


韓国原子力安全委員会は21日までに、南西部の全羅南道・霊光にあるハンビッ原子力発電所1号機で原子炉の熱出力が制限値を超えて急上昇したのに、即時停止を定めた運営指針に反し、運営会社の韓国水力原子力(韓水原)が停止させたのは異常感知から約11時間半後だったと発表した。放射性物質漏えいはなかったが、同委員会は重大事故につながる恐れがあったとみている。

同委員会は安全措置不足と原子力安全法違反を確認したとして1号機の使用停止を命令。委員会職員に捜査権を持たせた特別司法警察官を投入し原因や管理態勢を調査している。(共同通信5/21)

詳細の報道はこれからだと思うが、わたしが目にしたうちでは中央日報(日本語版)が最も詳しかった。その記事の末尾で、韓国内では原発事故が相次いでいる、と述べている。
今年に入って韓国国内の原発で稼働が不意に停止する事故が相次いでいる。1月24日には定期検査を終えて稼働を準備していたハンビッ2号機が突然停止した。運転員が蒸気発生器を誤って操作したことで発生した事故という結論が出た。また、1月21日には月城3号機が自動停止し、停止過程で煙と火花が出る事故もあった。月城3号機の停止は部品問題と確認された。(中央日報5/21)
放射能漏れを伴う重大事故に至らないことを、切に祈る。
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お知らせ:プロバイダーとの関係で、「き坊のノート」の半分ほどを別のプロバイダーへ移動する作業を昨日行いました。もし、「リンク切れ」などの表示が出た場合は、わたしのサイトの「ノート 目次」から、たどり直して下さい。


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5/24-2019
5月10日に起こった韓国・霊光のハンビッ原発1号機の事故について、ハンギョレ新聞が詳しい、また、鋭い記事を出している。「爆発の危険ある原発」止めず、12時間稼動した韓水原(5/21)、原発ハンビッ1号機の熱出力計算・判断ミスは危険極まりない「ヒューマンエラー」(5/23)。
上のリンク記事に示してある同紙の関連する原発記事はいずれも重要で興味深いものである。目を通すことを勧めます。


原発ハンビッ1号機の熱出力計算・判断ミスは危険極まりない「ヒューマンエラー」(ハンギョレ新聞)

前略)21日、原子力安全委員会(原安委)と韓国水力原子力(韓水原)側の説明を総合すると、10日、ハンビッ1号機の熱出力が運営技術指針書上の制限値の5%を超え、18%まで急騰した原因は、原子炉の制御棒運転者らの計算と判断による制御棒の過多抜き取りだった。制御棒は原子炉の出力を調節する設備の一つで、制御棒が挿入されると出力が減少し、抜き取ると増加する。

制御棒は完全挿入時には0ステップ(段階)、完全抜取時には231ステップと表現される。原安委によると、制限値である5%の熱出力を維持するためには、制御棒は当時43ステップでなければならなかった。しかし、原子炉操縦士の免許がない韓水原職員が100ステップまで制御棒を抜き取った。これによって1時間に最大3%ずつ高くなるべき出力が、わずか1分で18%まで跳ね上がる事態が起きた。原安委は、当該職員に密着し口頭指示を下さなければならない原子炉操縦監督者免許所持者(発電チーム長)の指示・監督不行き届き情況を確認し、追加で調査している。(中略

制御棒の過多抜き取りは、当時の現場作業者の中性子反応度の手記計算ミスと抜き取り可否の判断ミスのためだという。原発総合設計技術公企業である韓国電力技術で制御棒に関連する業務を行っていたハン・ビョンソプ原子力安全研究所長は「単純な操作ミスや設備の欠陥ではなく、人間の理性的行為の結果、事故が起きたことに注目しなければならない」と指摘した。実際に報告された制御棒関連事故のうち、設備異常による落下事故はあったが、運転者の制御棒の過度な抜き取りによる出力急増事故は今回が初めてだ。これに先立ち、1979年米国のスリーマイル、1986年ウクライナのチェルノブイリ、2011年日本の福島事故も、外部の要因よりはヒューマンエラーが主な原因だったという指摘が多い。(以下略)(ハンギョレ新聞5/23)

「43」とすべきところを一気に「100」としてしまったために、0から18%まで1分間で上昇した。仮に18%まで上昇させるのなら、本来なら6時間かけて上昇させるべきなのである。急激に出力を上げることによって、燃料棒の破損(ピンホールが無数に生じるなど)の危険性がある。

更に重要なことは、一気に「100」とした操作は、中性子反応に関する計算ミスと制御棒操作の資格のない者(つまり,経験知がない人間)によって行われたため、正当な「理性的行動」だったと思い込んでおり、そののち11時間以上も原発停止の処置がとられなかった。本来は「熱出力が制限値を超過すれば直ちに原子炉を手動停止しなければならない」と「運営技術指針書」に規定されているという。(5月10日午前3時から「制御棒の制御能測定試験」が始まっており、出力が18%に急増したのは午前10時30分ごろ、それを元に戻したのが同32分、そのまま稼働をつづけ指導が入って手動停止したのが約12時間後の同日22時2分だったという。)


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5/25-2019
浜岡原発津波、最大22・5メートルに 中電試算、防潮堤超える(中日新聞)


防潮堤に囲まれた中部電力浜岡原発=1月、静岡県御前崎市で、本社ヘリ「まなづる」から

中部電力は24日、南海トラフ巨大地震で浜岡原発(静岡県御前崎市)に押し寄せる最大の津波高について、従来より厳しい条件で試算した結果、22・5メートルになったと明らかにした。3、4号機の再稼働に関する原子力規制委員会の審査会合で報告した。中電はこれまで21・1メートルと想定し、すでに22メートルの防潮堤を建設。今回の試算は過大な設定で「あくまで参考値」と説明するが、規制委からは従来の試算への疑問が相次いでおり、かさ上げなどを迫られる可能性がある。

中電は内閣府の想定などを基に、津波対策の前提となる最大の津波高を21・1メートルと試算してきた。しかし、規制委は昨年12月、さまざまな可能性の検討が必要として、震源となるプレートの破壊が始まる地点を複数考慮した試算を要請。中電があらためて試算すると、従来より1・4メートル高い結果となった。

中電は会合で、従来の試算も「科学的知見の範囲を超えて影響を大きく設定している」とし、新たな試算を採用する必要はないと説明した。規制委側は、今回の試算結果を用いるべきかの評価は示さなかったが「参考値とする意味がわからない」「根拠や説明が足りない」と中電の主張を受け入れなかった。

中電は「全体を整理してもう一度提示したい」として、議論は持ち越しとなった。規制委を納得させる説明ができない状態が続けば、再稼働はさらに見通せなくなる。

中電幹部は24日夜、本紙の取材に「すぐに自社の想定を見直すことはない」としながらも「規制委との技術的な議論を通じ、落としどころを探る必要がある」と語った。(写真も 中日新聞5/25)

津波のシミュレーション計算をするのに、初期条件を色々と変えて行ってみたら、従来の計算結果を1・4m超えるものが得られたということ。安全を考えれば,当然、現在完成している防潮堤を少なくとも1・4mかさ上げしなければいけないということになる。

中部電力は、この試算は「過大な設定」をしたもので、結果は「参考値」に過ぎないとして、言い抜けようとしている。規制委側は更に議論を続けるという立場のようだ。
浜岡原発は東海地震の予想震源域のほぼ中央に位置しているとして、2011年3月のフクイチ事故の2ヶ月後に菅首相(当時)が運転停止を命じた。それ以来停止しているのだが(1~5号機のうち、1,2号機はすでに2009年に運転終了)、再稼働の見通しがさらに先に延びることになる。


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5/28-2019
甲状腺検査で1人がん診断 丸森町が3回目の結果公表(河北新報)

宮城県丸森町は22日までに、東京電力福島第1原発事故当時18歳以下だった町民らを対象とした3回目の甲状腺検査の結果を公表した。1人が甲状腺がんと診断された。町の検査では4人目

2018年6月から今年3月まで、対象者の55%に当たる1270人が受診した。要精密検査が6人、経過観察は106人だった。がんの発症が放射線の影響かどうかは判断していない。

検査は町民の不安解消を目的に、町が独自に実施。12年3月に1回目を開始した。事故当時18歳以下の町民のほか、事故直後の転入者や出生者も対象に含め、3年ごとに行っていた。4回目以降は今後検討するという。(河北新報5/23)

宮城県丸森町は宮城県の最南端の町で、福島県と接している。宮城県内では丸森町だけが公的に甲状腺検査を実施している(フクイチ事故のとき、18歳以下の子供たちが対象)。
第1回目検査結果 検査実施者1982人、要精密検査5人 (甲状腺ガン1人)
第2回目検査結果 2015年7月~16年4月に実施、甲状腺ガン2人
第3回目検査結果 要精密検査6人 うち甲状腺ガン1人
「第2回目検査結果」は、丸森町のサイトで見付けられなかった。また、甲状腺ガンと判定された人数については不明なところがあり、新聞報道と「東北教区放射能問題支援対策室いずみ」(ここ)を参照した。
どうやら情報封じが行われているらしいことを、感じる。

検査対象者が2323人と第1回目報告に記されている。2千余名の子供たちに4名の甲状腺ガンが発症していることはまちがいない。小児甲状腺ガンの発症率は100万人に数名と言われているのであり、400倍以上の倍率で発症していることになる。
当然のことながら、放射能汚染は県境を無視して広がっているのである。


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5/30-2019
保育園・学校に埋めた放射能汚染土、移設を 横浜市に要請(神奈川新聞)

東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故後、放射性物質に汚染された土壌が横浜市内の保育園のうち少なくとも300園と、市立小中学校4校の敷地内に埋められたままとなっており、この汚染土を掘り起こし北部汚泥資源化センター(同市鶴見区)に移設するよう求め、市民団体「神奈川・子どもを守りたい」は27日、林文子市長あてに要望書を提出した。市民などの署名約5400筆を添えた。同団体の中井美和子共同代表は、「学校によっては汚染土の埋設が引き継がれておらず、存在を知らなかった」とし、市の情報公開と対応を求めている。

原発事故後、汚染土は市内の学校や保育園などに保管され、2017年3月に同センターに移設された。だが、いまだに多くの保育園や一部小中学校では、埋設されたまま放置されている状態だ。埋設は汚染土を10センチの土で覆う方法で行われており、埋められたままの学校を視察した同団体は「埋められた正確な場所が分からなくなっている例もあった」と明かす。

同団体は「年齢の低い子どもほど放射線の影響は大きい」として、汚染土の移設を求める署名活動を18年度に始めた。横須賀市では市立小中学校、高校、特別支援学校43校の敷地に埋設していた放射性汚染土の下町浄化センター(同市三春町)への移設を、18年3月に完了している。このため、要望では「横須賀市と同様、汚染土をすべて掘り起こし、センターへの移設を求める」としている。

要望書提出後の会見で、中井共同代表は「(汚染土との)因果関係ははっきりしない」としながらも、市内の保育園で2人の子どもが白血病を発症したことを確認したと明かした上で、「不安要素を取り除くのが市政の仕事」と訴えた。

ごみ問題に詳しい環境ジャーナリストの青木泰さんは「行政が除染した汚染廃棄物を各園に保管していること自体、まったくおかしい。しかも2年前に移設した際にも放置し、今日まで何もやっていなかったのは本当に驚き」と述べ、白血病の件については「子どもが健康に楽しく遊び生きていける場を保障するのが大人の役割。調査もしていないのはとんでもない」と市の対応を非難した。(神奈川新聞5/27)

横浜市で放射性物質を市内の小・中学校で保管していることが問題になったのは、2016年のことだった。ドラム缶で保管しているものには、「指定廃棄物」(8000Bq/kg超)もあり、8000Bq/kg以下の「汚染土」もある。詳細は「はまれぽ.com」の「「指定廃棄物」が市立小中学校など17校に合計約3トン置かれたままになっているってどういうこと?(2016年09月02日)」が好記事です。

この記事の時点で「指定廃棄物」は17校で計約3トンだったという。(「汚染土」は、ずっと大量あるはず。)
「指定廃棄物」などは発生場所で保管することになっているが、学校施設で保管している自治体は全国で横浜市だけだという。
いくら何でも、小・中学校で「指定廃棄物」や「汚染土」を保管し続けるというのはおかしいということになり、横浜市は16年度中に、「北部汚泥資源化センター」へ移動し「保管」することになった。

詳細ないきさつは分からないが、17年3月で小・中学校の「汚染土」は「北部汚泥資源化センター」へ移し「保管」することになった。ところが、いまだ市内の多くの保育園では「汚染土」が園内に埋めたままになっており、小中学校4校も同様だという。これが上引の5月27日の神奈川新聞だ。
市の管理がいいかげんで(それは国の姿勢を反映している)、「汚染土」の埋設場所の申し送りがされていないところさえあるという。10cmの蔽い土しかされていないので、心配である。白血病2名の発症は、行政による汚染土の雑な扱いと無関係とは言い切れないだろう。


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5/31-2019
大山[だいせん]噴火で3原発に火山灰の恐れ 規制委、関電に対策強化命令へ(毎日新聞)


高浜・大飯・美浜原発と大山の位置

原子力規制委員会は29日、鳥取県の火山、大山の噴火で関西電力の大飯、高浜、美浜の3原発(いずれも福井県)に想定を超える火山灰が降る可能性が判明したとして、原子炉等規制法に基づき、関電に3原発の対策強化を命じる方針を決めた。最新の科学的知見を反映する同法の「バックフィット」制度で、適用するのは初めて。

この制度は、2011年の東京電力福島第1原発事故後に同法が改正されて導入された。以前は安全審査の合格後は、必ずしも最新の安全対策を取り入れる義務はなかった。

規制委は今後、関電の主張を聞いて命令を出すかどうか最終決定する。大山は活火山ではなく、切迫した状況ではないため、再稼働した大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の運転停止は求めない

原発に想定を超えた火山灰が降ると、非常時に原子炉を冷やすための発電機のフィルターの目詰まりが起こる可能性があり、フィルターの交換頻度を上げるなどの対策が必要になる。関電の3原発は安全審査に合格した際、噴火時に敷地に積もる降灰を10センチ程度と想定していた。

しかし、過去の噴火が想定より大規模だったとする新たな論文が発表され、規制委は昨年12月、関電に噴火の影響の再評価を指示。関電は3原発の降灰予測を21・9~13・5センチと改めていた。

規制委の方針を受け、関電は「適切に(各原発の)設置変更許可の申請を行いたいと考えている。今後も規制委の審査などに真摯に対応したい」とのコメントを発表した。(図も 毎日新聞5/29)

大山[だいせん]のウィキペディアは引用文献が充実していて、上質な内容となっている。それを使わせてもらうが、大山の特徴的な活動としては、
・約21万年前の奥津降下火砕物(DOP)を噴出させる活動
・約13万年前の松江降下火砕物(DMP)を噴出させる活動
・約4.7万年前から4.5万年に大山倉吉降下火砕堆積物(DKP)を噴出させる活動。この噴出物は日本海側に広く分布している。
が挙げられるのだそうだ。なお、約3000年前の烏ヶ山[からすがせん]と弥山[みせん]の中間付近での火砕流を最新の活動とする研究もある。

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