き坊の近況 (2019年7月)


旧 「き坊の近況」

【2019年】: 07 06 05 04 03 02 01 月

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

7/2-2019
久しぶりに渡辺満久氏の講演がYouTubeにアップされているのに気づき視聴した。「六ヶ所再処理工場周辺の活断層評価への疑問」、6月28日講演(1時間23分、その後質疑が45分間ほど、司会は原子力資料情報室・澤井正子さん)。講演は大変分かりやすく、懇切で丁寧な図版を駆使したものでした。氏は冒頭に「難しい専門用語を使わないように努めます」と言っておられる。

「六ヶ所処理工場に活断層が存在する」ことを基礎的な事実からきちんと説明するという趣旨で講演が行われている。(わたしが理解した基礎的事実とは)下北半島全体の隆起に伴い昔の浅海底が干上がって「海成段丘」が半島の海岸沿いにできているのであるが、段丘は浅海底に積もる土砂が干上がったものであるから本来は水平面をなしているはず。日本原電の理論の前提もこれである。ところが、渡辺教授の変動地形学は、その段丘面の一定の場所に「撓曲 とうきょく」(たわみ)が見られることに着眼する。それは、地下に逆断層が存在することを必然的に推定させる。
「たわみ」と言っても1~2㎞の水平距離で、30~40mの鉛直差がでるという程度の、ゆったりした坂道である。斜度が2゜ほどで、専門家に指摘されないと見過ごしてしまいそうなものである。


講演スライドから。左が2008年の渡辺説、右が日本原燃説。

渡辺説では、この撓曲の事実から地下に大きな逆断層(六カ所断層)が存在していることが推定され、(原燃による)地震波などによる地下構造の測定はそれを裏付けている。原電は海成段丘の表面は水平面であるとし、地下の構造とは無関係であるという見解をとっている。

段丘を形成している土砂には火山灰が含まれ、年代を決定する指標になる。それによって12.5万年前、10万年前の地層が特定され、その間に規模の小さな断層が存在することを実地露頭で説明した映像が紹介される。「層面すべり断層」という専門用語を、モデル実験をみせて、説明する。10万年以降に層面すべり断層が地表(ウラン濃縮工場敷地の東端)で見られるのだから、地下に大きな逆断層が存在すると結論できる。すなわちそれが10万年以降にズレた活断層であることは明瞭。

視聴をお勧めします。


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7/7-2019
ロシア 火災の調査艇、原子炉搭載を公表(毎日新聞)

ロシア軍の深海調査艇がバレンツ海で火災を起こし14人が死亡した事故でプーチン露大統領は4日、この艇が原子炉を搭載していたことを明らかにした。

ロシア大統領府は同日、ショイグ国防相がプーチン氏に事故への対応を報告する映像を公開した。この中でプーチン氏は調査艇について「原子炉の状態はどうなっているのか」と質問。ショイグ氏は、火災が迅速に鎮火されたと説明し、原子炉については「完全に隔離した」と答えた。

ロシア政府は1日に火災が発生し乗組員14人が死亡したと発表した以外は「機密情報に値する」(ペスコフ大統領報道官)として、調査艇の種類や火災発生時の状況などの説明を避けてきた。ロイター通信によると、バレンツ海で接するノルウェーに対し火災の発生を連絡しなかったことも判明している。(毎日新聞7/7)

このロシア軍の深海調査艇(6000mまで潜水可能)の乗組員総数が発表されていない。死亡14人が全員なのか、一部なのか。2000年の原子力潜水艦クルスク沈没事故では、おそらく全員118名が死亡している。
事故の経緯が分からないが、原子炉事故ではなく一般火災による吸煙で死亡事故となったという風に読み取れるが、
インタファクス通信は国防省の発表として、「ロシア海軍の要請で海洋環境を調査していた深海科学探査艇で火災が発生した」とし、「煙の吸入により14人の乗組員が死亡した」と報じていた。(ロイター7/5)
14人も死亡者が出ているのに「迅速な鎮火」と言うのは、助かった乗組員が多数いるからか。 産経新聞(7/9)が伝えているところでは、
露メディアは6日までに、潜水艇は海底通信ケーブルからの通信傍受など、極秘作戦に従事していた可能性があるとの見方を報じた。


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7/9-2019
甲状腺がん、累計173人に=昨年末から5人増-福島県(時事通信)

福島県は8日の県民健康調査検討委員会で、東京電力福島第1原発事故の発生時に18歳以下だった県民を対象とする検査で、甲状腺がんと診断された人が3月末時点で累計173人になったと報告した。2018年12月末から5人増え、がんの疑いも含めると218人となった。

県が14~15年度に実施した2巡目の検査については、今年6月に同委員会の部会が評価をとりまとめ、「現時点では甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」と報告していた。

8日の会議では、有識者から断定的な表現を懸念する声も上がり、委員会座長の星北斗県医師会副会長は「説明が足りない部分があり、理解しやすい表現に改めたい」と述べ、7月末までに何らかの修正をする意向を示した。(時事通信7/8)

この検討委員会はOurplanetがライブ配信した(ここ、4時間0分46秒)。Ourplanetのサイトの「会議概略」はとても有用です。この会議で使用されている資料は福島県サイトに置いてある。
同じものがYoutubeにもアップされている(ここ)。

臨床心理士の成井早苗氏が発言を始めるのは1時間50分ごろから、地域差が存在していると理解できる資料を座長(星北斗氏)の許可を受けずに配布しようとするのは2時間丁度あたりから。富田哲氏(福島大学教授)が、「なぜ被曝との関連がない」と断定する結論が出てくるのかという疑問を出し始めるのは、2時間17分頃から。
成井や富田の鋭い発言があるたびに、高村昇(長崎大)が内容のない形式論で論点をぼやかす発言をくりかえすのも印象的だった。


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7/10-2019
安倍首相決断、参院選意識も=政府内「主戦論」退け-ハンセン病訴訟(時事通信)

安倍晋三首相がハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決を受け入れる方針を表明した。

控訴すべきだとの政府内の「主戦論」を退けて首相が決断。21日投開票の参院選を意識したとみられる。18年前、ハンセン病訴訟対応をめぐる判断で政治主導を印象付け、好感された小泉純一郎首相(当時)の影響を受けたとの見方もある。

熊本地裁判決について政府内では、時効で賠償請求権が消滅したとの主張が退けられたことへの抵抗が強く、首相は9日、記者団に「一部には受け入れ難い点があることも事実だ」と判決に不満を示した。同時に「筆舌に尽くし難い経験をされたご家族の皆さまのご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」と述べ、家族に寄り添った判断だと強調した。

ハンセン病元患者の家族をめぐる訴訟では、鳥取地裁と広島高裁松江支部で原告の家族の請求を退ける判決が続き、現在は最高裁で係争中。厚生労働、法務両省は熊本地裁判決について控訴に向けて準備を進めていた。根本匠厚労相は9日の記者会見で「通常の訴訟対応の観点からは控訴せざるを得ない側面があるのも事実だ」と漏らした。
政権側は、控訴すれば世論が離れ、参院選に悪影響が及びかねないと危惧。政府関係者は「選挙中に控訴してもしょうがない」と述べ、選挙への考慮があったことを認めた。官邸幹部は「法律的な判断と政治的な判断は別だ」と語った。

ハンセン病訴訟をめぐっては、小泉内閣が発足直後の2001年5月、元患者への損害賠償を国に命じた判決について控訴しないと決定。内閣支持率は上昇し、2カ月後の参院選で自民党は大勝している。
ただ、家族に対する差別の問題は置き去りになった。首相は当時の小泉内閣の官房副長官で、今回の決断の背景には「(ハンセン病問題への首相の)思い入れがある」(政府高官)との見方もある。(時事通信7/10)

「筆舌に尽くし難い経験をされたご家族」と発言するのが、ハンセン病元患者たちにその「経験」を長年にわたって与え続け、国際的な常識や批判を無視して、悪法を廃止することを怠ってきた国の代表であることに、むしょうに腹が立つ。

国際的に稀な差別的な「らい予防法」は1953年に公布され、廃止されたのはなんと1996年のことである。ぼんやりしていると戦前の帝国憲法時代の話じゃないかと思ってしまう。そうではないのである。平成も8年になって、やっと廃止されたのである。

ハンセン病の差別法、わが国の明治から平成まで続いた「絶対隔離」を基本とするハンセン病政策が、いかに我々日本人の差別感覚を深く醸成してきているか。そのことに思いを致すべきだ。近頃の韓国に対する日本政府の態度、放射能汚染にまつわる「イジメ」などに、近代日本が日本人の間に醸成した差別感覚がすこしも消えていないことに思い当たる。

ネット上のハンセン病文献としてぜひ紹介しておきたいのは、日弁連が膨大な量を公開している(質も素晴らしい)「ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書」(2005年)。歴史的な状況を把握するには
 第二 1907年の「癩予防ニ関スル件」―強制隔離政策の開始と責任―
 第三 1931年の「癩予防法」―強制隔離の強化拡大の理由と責任―
 第四 1953年の「らい予防法」―強制隔離の強化拡大の理由と責任―
この辺りにまず目を通すのがお勧め。さらに
 第十五 国際会議の流れから乖離した日本のハンセン病政策
が近代日本の特異な在り方をよく示していると思う。また、「断種」問題を赤裸々に述べているのは、
 第七 ハンセン病政策と優生政策の結合
でしょう。

なお、わたしは25年前に「癩」ノートという拙文を書いておりますので、紹介しておきます。


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7/14-2019
河合弘之監督「東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故

が、Yuotubeで公開されました。約26分間。明解・平易で分かりやすい。ぜひ、ご視聴下さい。

裁判判決は 9月19日です。


告訴団長・武藤類子さんからのメッセージ

福島原発刑事訴訟支援団と河合弘之監督映画「日本と原発」のKプロジェクトが、短編映画『東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故』を制作、公開しました。

福島第一原発事故の刑事裁判の判決が9月19日に下されます。

被告人である東電元経営幹部3名が事故の原因である巨大津波を予見し、津波対策工事を計画していながら経営悪化を恐れて対策自体を握りつぶした大罪を司法は、いかに判断するのか、世界からも注目されています。
闇に葬られかけた津波対策計画の動かぬ証拠の数々を解析し、いかなる経緯で対策が握りつぶされたのかを描きました。
ぜひ、みなさんに見ていただきたい、26分間です!!!

拡散をお願いいたします。
映画はこちらからも、どうぞ。

▇ 短編映画 『東電刑事裁判  動かぬ証拠と原発事故
*福島原発刑事訴訟支援団 https://shien-dan.org/
*河合弘之監督映画サイト http://www.nihontogenpatsu.com/


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7/15-2019
<福島第1原発事故>自主避難者への「2倍家賃」撤回を 市民団体、県に申し入れ(河北新報)

国家公務員宿舎に居続ける東京電力福島第1原発事故の自主避難者らに、福島県が「損害金」を支払うよう求める請求書を送付した問題で、市民団体「原発事故被害者団体連絡会」などは12日、請求の撤回を求める内堀雅雄知事宛ての申し入れ書を県に提出した。

申し入れ書では、期限後も退居しない避難者に県が家賃の2倍の損害金を求めたことを「断じて認められない」と批判。「直ちに請求通知を撤回し、退居条件が整うまで入居継続を保障してほしい」と訴えた。
インターネット上で募った請求撤回に賛同する約1万4000人分の署名簿も提出。復興庁にも今月中に同様の署名簿を出す。  対応した県の担当者は請求撤回の要求には回答せず「(避難者の)個別の事情に合わせて新たな住まいが見つかるよう支援したい」と述べるにとどめた。

県によると、請求書は9日に送付した。対象は3月末の退居期限後も東京と埼玉、神奈川、茨城、京都の5都府県の国家公務員住宅に残った63世帯。4月分として1世帯当たり2~15万円の納付を今月26日までに求めている。損害金の総額は約300万円になるという。(河北新報7/13)

原発事故を起こしたのは東京電力だ。住民たちは何の落ち度もない被害者であり、高放射能の土地から避難したのである。「避難の権利」はすべての国民に保証されている憲法上の権利だ。
いまだ放射線量の高い故郷へ帰りたくないという避難者が、空いている公務員住宅に住むというのは当然の処置で、合理性もある。被害者側は「国家公務員住宅の戸数が不足していることはなく、避難者の退去の条件が整うまで入居継続を保障する」ように求めているに過ぎない。

なんで、こういう非情で血の通わない施策が、福島県によって強行されるのだろう。国や県の指示に従わず「自主的に避難」した者たちを目の敵にして徹底的に虐め尽くそうとしている。懲罰的に家賃を倍にするというのである。
県は住民を守ってくれる身近な自治体であるはずだ。国の省庁などが無茶な方針をゴリ押ししようとするときに、住民の楯となってかばってくれていいはずなのに。日本の地方自治の在り方は、まったくおかしくなってしまっている。

アッピール原発避難者への懲罰的な「2倍家賃」請求を止めてくださいここです。


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7/16-2019
マーシャル諸島の汚染、依然深刻 核実験後の残留物質、米大調査(共同通信)

1946~58年に米国が核実験を繰り返した太平洋のマーシャル諸島の北部で残留放射性物質の濃度が依然として高く、食料になる果実の一部は国際基準値を超えていたとする調査結果を米コロンビア大の研究チームが16日までにまとめた。最後の核実験から約60年を経ても深刻な影響が残っていることを示す結果。

汚染度の高い島はいずれも島民の避難が完了しているが、帰島を望む人は多く、チームは「安全な帰島のためにはさらなる除染などの対策が必要だ」と指摘している。米科学アカデミー紀要電子版で詳細を報告する。(共同通信7/16)

マーシャル諸島・エニウェトク環礁に作られたコンクリート製ドームに、杜撰なやりかたで核実験による放射性廃棄物を投棄したために、放射性物質の漏出の危機にあることを、国連のグテレス事務総長が今年5月16日に懸念表明した。本欄では、5月17日に取りあげた。

いずれ、このコロンビア大の調査の詳細が判明したらとりあげたい。


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7/19-2019
あさって21日の参院選に関する新聞評論で、今朝の西日本新聞がよかった。以下に紹介する。

「真実」政府ひた隠し 実質賃金の伸び率、年金財政 参院選(西日本新聞)

参院選では、消費税増税や年金など社会保障制度の在り方が大きな焦点となっている。ところが、政府はその現状や将来予測を示す実質賃金(参考値)の伸び率や公的年金の「財政検証」を公表せずに選挙戦に突入した。有権者は政策の是非を判断する「事実」を知らされぬまま1票を投じることになるため、識者からは政府の姿勢を問題視する声が上がっている。

厚生労働省の毎月勤労統計で伸び率が異常に上振れして注目されたのが、上振れ要因を取り除き、実勢に近いとされる実質賃金伸び率の「参考値」だ。

野党は2018年の伸び率を前年比マイナス0・3%と独自に試算し「公式値」(0・2%増)との隔たりを指摘して、今年の初めから厚労省に正式な試算を要求。ところが、同省が設置した有識者検討会が難色を示して公表しておらず、実質賃金が伸びているか否かはあやふやなままだ

実質賃金が下がっているのに、消費税引き上げで物価が上昇すれば、生活を直撃する。「まさに泣き面に蜂。アベノミクスの失敗という『不都合な真実』がばれるのが嫌だから出さない」。安倍政権の経済政策「アベノミクス」を検証した著書のある明石順平弁護士は、そう指摘する。

「実質賃金の真実は、消費税増税の是非に直接関わる。正しい情報を出さないのは有権者にとって大きな不利益だ」と批判する。

公的年金の健全性を5年に1度、チェックする厚労省の財政検証も、6月に公表される見通しだったが、参院選後に先送りされた。

財政検証は将来の人口や経済状況など変化予測を踏まえ、おおむね100年間の年金給付を試算し、制度が維持できるかを調べる。結果次第で保険料や給付水準を見直すことになる。

老後資金2千万円問題で不安が高まる中、有権者の関心が高いテーマ。少子高齢化で将来の給付水準の低下が見込まれるため、選挙への悪影響を避けた形だ。

元総務相で早稲田大大学院の片山善博教授は「判断材料を示さなければ、有権者が誤った判断をしかねない」と指摘。安倍政権が公文書改ざんなどによる「隠蔽(いんぺい)体質」を批判されながら高支持率を維持する現状を踏まえ、「隠しても支持率は下がらず、やり過ごせると高をくくっている」と分析する。

片山氏は、野党の追及力不足や相次ぐ不祥事に有権者の鈍感さが増していることも背景にあるとした上で「権力側が情報公開しなければ、民主主義は成り立たない。今、民主主義が崩れる過程にある。それを正せるのは選挙しかない」と警鐘を鳴らす。(西日本新聞7/19)

都合の悪いことはウソをついてでも、隠す。各省庁の官僚が書類をねつ造してまで官邸におもねって情報を隠す。こんなひどい政治の状況になっても、内閣支持率は下がらず、参院選はなんとか「やり過ごせると高をくくっている」.

大阪日日新聞の「「財務官僚ら起訴を」 森友事件、豊中市議ら要請」(7/18)も良い記事。木村真豊中市議らが大阪地検前でアッピール集会を行った。


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7/20-2019
福島第2、月末に廃炉決定へ=費用、人材確保にめど-東電HD(時事通信)

東京電力ホールディングス(HD)が福島第2原発(同県楢葉町、富岡町)全4基の廃炉について、月末に開く取締役会で正式決定することが19日、分かった。東電の小早川智明社長は昨年6月、福島第2を廃炉にする方針を表明。廃炉費用の手当てや作業員などの確保にめどが立ったため、機関決定するとみられる。

事故を起こした福島第1原発の全6基と合わせ、福島県内の原発はすべて廃炉となる。東電は近く、福島県に廃炉決定を伝えるほか、2019年度中に原子力規制委員会に対し、廃炉計画を提出する予定。廃炉作業は福島第1と並行して実施し、完了までには30年以上かかる見通しだ。

東電は、福島第2の廃炉と施設解体の費用を約2800億円と見込んでおり、18年度までに2100億円を準備している。(時事通信7/20)

東電は福島第1の5,6号機の廃炉についてさえ、なかなか承知しなかった。5,6号機の廃炉を地元自治体に説明したのは、安倍首相が広瀬直巳社長に廃炉要請をした(2013年9月)後だった。地元は福島第2の廃炉を求めてきたが、東電はなかなか承知しなかった。
福島第2原発については、同じく県が廃炉を求めており、再稼働は極めて難しい情勢だが、東電は当面、廃炉の判断をしない見通しだ。(河北新報 本欄2013年11月21日
やっとのことで今度、東電が福島第2廃炉の方針を固めたという報道である。

なお、福島第2が東日本大震災の時「フクイチの炉心溶融と同様の事態になるまでに紙一重のところだった」と当時の所長が語ったという話はよく知られているが、ウィキペディアの「福島第二原子力発電所」(ここ)に詳しい。


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7/23-2019
南相馬「妊婦」...セシウム検出されず 地元食品を7割超が敬遠(福島民友)

南相馬市立総合病院の医師らでつくる研究チームが、2012(平成24)年4月~16年2月の間、南相馬市の妊婦の内部被ばくを測定した結果、放射性セシウムが検出された人は一人もいなかった一方、多くの人が地元食品を消費することをちゅうちょしていたことが分かったとする研究成果をまとめた。20日までに英医学誌「BMJ Open」に発表した。

研究チームは、12年4月~16年2月に同病院でホールボディーカウンターによる内部被ばく検査(参加は任意)を受けた妊婦579人のデータを分析。結果、全ての妊婦からセシウム134、セシウム137は検出されず、検出限界未満だった。一方、内部被ばく検査時に妊婦に行った食品の消費行動についてのアンケートによると、スーパーで本県産か県外産かを見て食品を購入するという回答が12年時点で78.4%、15年時点でも75.0%に上った

研究チームはこれらの結果から、「原発事故後の妊婦の内部被ばくは極めてわずかであるにも関わらず、多くの妊婦が依然として地元の農産物を消費することへの懸念を持っていた」と指摘。「市場に流通している地元の農産物の汚染はほぼ存在しない。今後は内部被ばくの危険性について妊婦に科学的な理解を促進することが大切」としている。(福島民友7/21)

ホールボティーカウンターは、体内にあるセシウム137などが放出するガンマ線を体外で測定して、体内にどれほどのセシウム137などが存在しているかを推計する、という仕組み。したがって、次の諸点がポイントとなる。
  1. 全身を装置に入れ、外部からの放射線(バックグランド)をできるだけ遮断することが必須。
  2. 体内から放射される(弱い)ガンマ線を測定するため、測定時間が長いほど精度が上がる。
  3. ガンマ線を出さない放射性物質(ストロンチウム90など)は測定できない。
南相馬市立総合病院がどのような測定方法で実施し、「検出限界値」がどれだけであったか、まったく示されていないので、この報道はきわめて不充分なものである。通常は測定時間は「座位で5分、立位で2分」とされているが、これでも子供などは難しい。
検出限界値は体重60kgの人で、5~10分の測定時間で300ベクレル程度であるという(環境省 「放射線は、どこまで測定できますか」)。つまり、ホールボディーカウンターの検出限界値はとてつもなく高いのである。したがって、この測定によって「セシウム134、セシウム137は検出されず」と判定されても、ほとんど意味がない。

ホールボティーカウンターよりも測定精度が100倍上がる(矢ヶ崎 克馬など)といわれる「尿検査」による体内被曝検査が多くの学者によって推奨されている、たとえば本欄2017年6月14日。そこで児玉龍彦は、「福島先生(化学)の尊敬すべき仕事」として
尿検査で放射性セシウムが6(Bq/L リットル当たり・ベクレル)が15年間続くと膀胱ガンになる
という研究結果を紹介している。
あまりにも検出限界値が高いためホールボティーカウンターによる測定はほとんど無意味であり、国を挙げて尿検査による内部被曝測定を行うべきなのである。

福島県の妊婦の7割以上の人たちが、福島産の食品を敬遠しているというのは、けして「風評」などに振り回されているのではなく、彼女たちは本能的な直感に突き動かされて「危険から遠ざかりできる限り安全へ近寄りたい」とする行動をとっているのだと、わたしは思う。


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7/24-2019
仏南部の原発、猛暑で一時停止 パリで40度超の予報も(共同通信)


ウィキペディア「ゴルフェッシュ原子力発電所」による。

フランス電力は23日までに、今週続くと予想される猛暑のため、南部ゴルフェシュ原発2基を同日以降一時停止すると明らかにした。地元メディアが伝えた。パリでは25日に40度を超すと予測されている。

同原発はガロンヌ川の水を原子炉の冷却に利用し、川に排出する。生態系に悪影響を与えないよう、川の水温が一定水準を超えないよう規制されている。2号機は23日から、1号機は24日からそれぞれ停止し、30日に再開する予定。

フランスなど欧州は6月末にも熱波に見舞われ、同国南部では本土の観測史上最高となる46度を記録した。(共同通信7/23)

日本は島国のため海水を原発の冷却水として使用するのが当たり前になっているが、大陸では河川の水を冷却水にすることが多い。原発排水は温水であるためそのまま河川に廃棄せず、冷却塔である程度温度を下げてから捨てる。したがって、大陸の原発では冷却塔が付き物になっている(もちろん、原発以外のゴミ焼却炉その他にも冷却塔はある)。
ヨーロッパでは今夏の猛暑のため河川の水温がもともと高くなっており、原発排水は冷却塔を通しても河川に捨てられないほどであるため、原発を一時停止する処置をとったのである。

これは河川の生態系保護のための処置であるが、日本など海へ原発排水を捨てているところでは、排水口周辺の生態系の破壊などにはお構いなしに温水を捨てている。熱帯魚などの南方系の魚が排水口の周辺に棲み着いているというレポートがあった。
例えば川内原発について「原発「温排水」 知られざる脅威」(2012-3/12)。原発が捨てているのは「熱」だけでなく、放射性物質や「次亜塩素酸ソーダ」などの防錆薬品など原発で日常的に使用している物質を垂れ流ししている。それが周辺の生態系を壊していることはいうまでもない。
冬場、川内原発の温排水の放水口周辺は、釣り人の間では有名な釣り場となっており、釣り雑誌にもたびたび紹介されるほど。大型のクーラーを覗くと満タン。すごい釣果に驚いたことがあります。(中略)他所では釣ることのできないカスミアジ、ロウニンアジなどが大量に釣れる。これらの魚は南方系で、夏に日本周辺まで北上し冬場に海水温が低下すると死んでしまう死滅回遊魚や、水温の高いところを好む魚たち。原発周辺が高温化して冬場も集まっているんです。 (上記「原発温排水 知られざる脅威」より)


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7/25-2019
<福島第2原発>廃炉正式表明 東電社長、知事に(河北新報)

東京電力の小早川智明社長は24日、福島県庁で内堀雅雄知事と会い、運転停止中の福島第2原発(福島県楢葉町、富岡町)全4基の廃炉を近く正式決定すると表明した。廃炉作業に伴う使用済み核燃料の一時的な貯蔵施設を構内に新たに設置する方針も併せて打診した。事故を起こした福島第1原発(同県大熊町、双葉町)と合わせ、県内の原発全10基が廃炉となる。

小早川社長は内堀知事との会談で「第2原発の廃炉を取締役会に付議する準備を進めている」と説明。廃炉完了までには1基当たり30年程度、全4基に40年以上要すると明らかにした。
1~4号機建屋のプール内に保管する使用済み燃料など計約1万体は新設する貯蔵施設に移し、金属容器に収めて空冷する「乾式貯蔵」を採用する方針を示した。

燃料の最終的な保管場所は「廃炉作業終了までに全量を県外に搬出する方針」と述べた。地域振興策として資機材調達に地元企業を参画させることも明言した。(以下略)(河北新報7/25)

本欄7月20日で扱った福島第2原発の廃炉を東電小早川社長が福島県の堀内知事に正式表明したということ。ポイントは幾つかあるが、上では使用済み燃料および未使用燃料を同所に新設する空冷式施設で保管するが、廃炉作業終了までに 「全量を県外に搬出」する、と述べた。
わが国には最終処分場は存在しないし、最終処分場を建設できる見通しもないのであるから、これは「言ってみるだけ」の空約束で先延ばしされることになるだろう。

福島県楢葉、富岡の立地2町にとっては、危険な原発がなくなるのは喜ばしいことであるが、交付金や固定資産税計約20億円の大幅減額となることは重大な問題である。
宮本皓一富岡町長は「大きく経済、財政に影響する。雇用面などで地域全体を支えてきた面があった」と第2原発廃炉の影響に懸念を語った。
約20億円の半分は原発立地に伴い国から支給される電源三法交付金、もう半分は発電所の固定資産税。福島第1原発事故前、一般会計予算の歳入で楢葉は約40%、富岡は約25%を占めた。事故後は復旧復興関連で予算規模が膨らみ、2019年度は当初ベースで楢葉約20%、富岡約10%と比率は低下した。
(河北新報7/25)
原発がなくなれば、関連する交付金・税収もなくなる。復旧復興関連で一定の交付金などがあってもいずれなくなる。原発のような国策・大企業にたよることなく、自生的な地場産業によって生きていくことが求められる。もちろん、それが健全な地方の在り方であることはいうまでもない。


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7/26-2019
福島県の甲状腺検査 がん・疑い 17人が報告漏れの可能性(NHK)

原発事故のあと、福島県が子どもを対象に行っている甲状腺検査で、がんやその疑いがあるという報告に含まれていない可能性がある患者が、少なくとも17人いることが民間の調査でわかりました。長期にわたって県民の健康状態を把握するとした県の調査の在り方が問われることになりそうです。

福島県は原発事故のあと、被ばくの影響を受けやすいとされる事故当時18歳以下だった子ども、およそ38万人を対象に、甲状腺の検査を行っています。
この検査で甲状腺がんやその疑いと診断された人はことし3月末時点で218人いますが、専門家の委員会では被ばくとの関連は認められていません。

これに対し、甲状腺がんと診断された子どもなどを支援しているNPO「3・11甲状腺がん子ども基金」は24日、記者会見を開き、県の報告に含まれていない可能性がある人が少なくとも17人いることを明らかにしました。
このうち16人は、県外などで自主的に受けた検査でがんやその疑いと診断された人たちで、もう1人は県の検査で経過観察となったあとにがんと診断されたため、県の報告に含まれていないとみられるということです。

報告に含まれていない人たちは、おととしにも12人見つかっており、今回、新たに判明したことで、長期にわたって県民の健康を把握するとした調査の在り方が問われることになりそうです。

NPOの崎山比早子代表理事は「正確な人数を把握しないまま、被ばくの影響について検討しているのは大きな問題だ。県には集計から外れる人をなくし、信頼できる解析を行った結果を報告してもらいたい」と話しています。(NHK7/24)

福島県にいて311フクイチ事故に遭遇した18歳以下の人たちについて、全員の甲状腺検査、ガン手術について完全な資料をあつめることは、福島県の責任においてやるべきだ。県外に転出したりして県外の病院で手術を受けたケースをフォローすることは、県が努力すれば可能なはずだ(件数だけの報告であればプライバシー問題はクリアできよう)。
ところが福島県の甲状腺検査では、いったん「経過観察」となった人がかりに福島県立医大で甲状腺ガンの手術を受けても検討委の資料には加えられない(本欄 2017-4/1で扱った。そのあと検査法の改善があったかどうかは、不明)。

311フクイチ事故の時19歳以上であった人の甲状腺ガンの手術数を福島県として調査すべきである。

少なくとも東北・関東の都県で、同様の手術数の集計はなされるべきであり、今後数十年かけて継続していく必要がある。この調査は、2011年3月11日以降の居住地の変更を考えると、全国の病院を対象とした調査となる。国を挙げての調査であるべきである。
国家規模で調査を行いそれを毎年公表し、311事故の影響がないということが(発症の潜伏期間を過ぎた数十年後に)判然としてくれば、「311事故」はたいしたことはなかったんだと言えるし、それで初めて「風評」がなくなる。

国・県がやっているのは、真逆なことばかりだ。
せめて被曝限度は国際的基準に合わせるべきであるが、「年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実と確認された区域は、住民の方が帰れる準備をするため“避難指示解除準備区域”になった」(福島県HPより 避難区域の変遷)という、信じがたい高線量を基準とした。
これでは、「自主避難」する人が出てこざるを得ないのは当然なのだ。そして、自主避難した人たちは“お上のいうことを聞かない不届き者”というような扱いをされている。たとえば本欄7月15日の「懲罰的な2倍家賃」。


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7/29-2019
<女川1号機廃止措置計画>廃棄物処分が焦点に(河北新報)

東北電力が女川原発1号機の廃止措置計画をまとめ、廃炉作業の輪郭が浮かび上がった。30年以上に及ぶ廃炉の過程では、東北電が使用済み核燃料や放射性廃棄物を責任を持って搬出し、確実に処分できるかどうかが大きな焦点となる。

廃炉工程は4段階。第1段階で1号機燃料プールの使用済み燃料821体を3号機に搬出。既に1号機から女川2、3号機に移している161体を含む計982体を、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)へ譲渡する
再処理工場は2021年完成の予定だが、完成延期を20回以上も繰り返す上、原子力規制委員会の審査も続いている。東北電の関係者は「地元に『敷地内に留め置かないでほしい』との懸念はあると思う。計画的に譲渡できるよう検討する」と話す。

女川2、3号機の燃料プールも貯蔵余力は10年程度とされる。今後、東北電の狙い通りに2、3号機が再稼働すれば、さらに使用済み燃料などが増える。
元原子力資料情報室(東京)の沢井正子氏は「女川原発は燃料貯蔵が逼迫(ひっぱく)する事態や、再び東日本大震災のような災害が起きた場合の事故のリスクを抱えている」と指摘する。

東北電は廃炉作業に伴い、制御棒や原子炉内構造物といった低レベル放射性廃棄物が約6140トン生じると推定する。放射能の強い順に「L1」から「L3」に分けて埋設処分する考えだが、現時点では「処分先の確保は原子力事業者共通の課題」(幹部)と述べるにとどまる。
先行して廃炉に取り組む原発も、放射性廃棄物の対応に苦慮する。01年に廃炉に着手した日本原子力発電東海原発(茨城県)は、原子炉解体工事開始を3度延期した。中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県)は4段階の工程のうち第2段階まで進んだが、処分先が決まらず一部を建屋内に保管する。
市民団体「脱原発東北電力株主の会」の篠原弘典代表は「廃炉の時代が到来していることは明らか。廃棄物対策は待ったなしで、東北電としてはっきりとした処分先を示せないのは大きな問題だ」と訴える。(河北新報7/27)

女川原発1号機(出力52万4千kW)の廃炉を東北電力が発表したのは18年10月25日だった(本欄2018-10/26)。どの原発廃炉でも解決不能の課題が、放射性廃棄物の捨て場がないということだ。もっともやっかいなのが使用済み核燃料であり、ついで制御棒などの金属部品や鉄筋などの構造物また放射性を帯びているコンクリート塊など。結局、それらを原子炉敷地内にとどめて保存するしかないだろう。

澤井正子さんが指摘していることは、東北電力が再稼働するとしている女川原発2,3号機(出力各82万5千kW)については燃料プールに余裕が少なくなっていること、東日本大震災級の地震・津波に耐える防災設備増設が必須であることなどである。2,3号機を再稼働する合理性がないのである。



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