き坊の近況 (2019年9月) |
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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。 |
9/1-2019 |
東京電力は30日、福島第一原発1、2号機原子炉建屋のそばに立つ排気筒(高さ120メートル)の解体作業を再開した。作業は午前6時半ごろから始まったが、切断装置の位置合わせに手間取り、午後には通信トラブルで切断装置を遠隔操作できなくなった。通信が回復した後も切断は進まず、作業は難航している。 解体作業は8月1日から始まったが、筒本体を内側から輪切りにする回転のこぎりが故障したほか、配線が抜けて動かなくなるトラブルが発生した。作業員が熱中症になる事態も起き、3回の作業中断に追い込まれた。 配線の点検を終えて迎えたこの日の作業は、半周を切断したままの頂部で、残る半周を切断してつり下ろす内容。しかし、9割近くまで切断した段階で、無線による切断装置の遠隔操作をできなくなった。 通信は回復し、午後6時すぎから作業が再開されたが、筒の残った部分に大きな重さがかかるなどの原因で、回転のこぎりがほとんど切り進めない状況が続いた。 筒本体は7割以上輪切りにすると、強風や地震による強い揺れに耐えられない可能性が高まり、切断装置を外しての作業中断はできない。(写真も 東京新聞8/31) 通信トラブルなどは高線量下の作業と関連したことなのかどうか不明だが、人が近寄れないためにすべてを遠隔操作で行わなければならない高所作業という悪条件が問題を難しくしているらしい。 円筒形の排気筒の周囲をノコで切っていくという決して難解な作業ではないのだが、地上で大きな丸太をノコで切る場合も「ノコが咬まれないように」クサビを入れていく。絶えずクサビの頭を叩いてほどよくクサビが食い込んでいるように手作業で調節しつつ截断は進む。まさに、そのような現場での手作業を禁じられたのがこの高所での遠隔作業なのだろう。 「7割以上作業が進んだら作業を中断できない」ためなのであろう、30日から作業はぶっ通しで行われているようだ。 30日、最上部の9割を切断し終えたところで、装置のトラブルが起きて作業が中断したが、きょう(8/31)午前には作業を再開して、きょう中に吊り降ろしまで完了させる予定(NNN8/31 13:08)作業がうまく行ったのかどうか、結果は目下不明(9/1朝)。 【追加】(9月2日) 1日午後に「2・3m分の円筒」を切断して地上に降ろすことに成功した。丸3日がかり(?)だった。東電が発表した写真が「1日午後」となっていた。 地上に降ろした後、更に截断・移動・保管する作業が待っているのだろう。どこまで遠隔作業で行うのか。作業員の被曝や環境へ放射性粉塵の拡散が心配される。 トップページの写真を、クスベニヒラタカスミカメからカメムシ目グンバイウンカ科ミドリグンバイウンカに替えた。 | Top |
9/8-2019 | 毎月はじめに河北新報は、その前月の福島原発関連の主要なニュースを列挙した記事「福島廃炉への道」を出す。今月の「福島廃炉への道」(8月1日~31日)から「排気筒解体工事」を拾い出しておく。 この後解体作業は、9月1日午後まで中断なく行われ終了したことは、本欄9月1日に記載した。 | Top |
9/15-2019 | 東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水を浄化した後の処理水に関し、原田義昭環境相は十日の記者会見で「所管外ではあるが、思い切って放出して希釈する他に選択肢はない」と述べた。海洋放出計画の有無に懸念を示す韓国政府に、日本政府は「処分方法は未定」と回答しており、現職閣僚の原田氏の発言は議論を呼ぶ可能性もある。 内閣改造を前に、就任約一年間の仕事を振り返った感想として答えた。第一原発敷地内に立ち並ぶ処理水保管タンクを視察したことや、原子力規制委員会が海洋放出案を支持している点を理由に挙げた。 複数の処分計画案を検討してきた政府小委員会では八月、長期保管の可否についても本格的な議論が始まった。福島県の漁業関係者らは風評被害を心配し海洋放出に反対している。 放出の影響に関し原田氏は、韓国を念頭に「国によっては意見が出ると思うが、誠意を尽くして説明することが何よりも大切だ」と話した。(東京新聞9/10) この前環境大臣が大臣を辞める直前に行った無責任発言はマスコミに比較的大きく取りあげられ、よく知られている。小泉進次郎・新環境大臣が11日にこの発言について前任者の発言を謝罪し「福島の皆さんの気持ちを、これ以上傷つけないような議論の進め方をしないといけない」と述べた。が、「汚染水の扱い方」に関して自分の考えは一切述べていない。 漁業組合がこの原田義昭・前環境相の無責任発言に怒るのは当然だが、多くのレポートの共通するところは、 福島第1原発の処理水の保管用タンクは既に900基を超え、2022年夏ごろに満杯になる見通し。薄めて海に放出することが、最も現実的な手段とみられているが、風評被害を懸念する漁業関係者らの反発は根強い。(日本経済新聞9/10)この辺りであろう。日本のみならず、全世界の原発でトリチウムの放出は(一定の濃度制限を設けて)実施されていることであるから、福島のトリチウム水の分量は多いが(総量は日本の全原発からの放出量の3年分ぐらい)、充分薄めれば許容されるのではないか、という論調である。橋下徹氏は小泉進次郎新大臣が処理法について何も発言しないことを批判して、 僕は福島の海に放出するだけでなく全国の海、それこそ大阪湾に放出してもらいたい」と発言。(デーリースポーツ9/14)しかし、トリチウムはほとんど無害であると言いふらしているのは原発推進派である。大量に発生するトリチウムを海へ放出しないと原発運転ができないので、トリチウムはベータ線しか出さず外部被曝だけならそれほど深刻な被曝被害は生じないことをいいことにして、トリチウムの有害説を言い立てて大騒ぎしているのは反原発の無責任極左だという論をマスコミ総動員で言いふらしている。 トリチウムは内部被曝を問題にすべきなのである。トリチウムはベータ線を出してヘリウムになる特殊な水素(三重水素ともいう)である。ベータ線を出す性質というのはトリチウムの原子核が持っている性質であり、トリチウム原子の外側にある電子のふるまいは通常の水素原子とまったく同一である。したがって、トリチウム水などが体内に取り込まれると生理的性質は通常の水とまったく同一なのでトリチウム原子は細胞の深部にまで容易に入りこんで行く(無論、通常の水素原子と同様に、尿などで排出されるものも多いことは言うまでもない)。 特に心配されているのは、DNAなど遺伝子の構造へ取り込まれたトリチウム原子は、あるとき突如ベータ線を出してヘリウムとなるので、その部分の遺伝子構造が壊れてしまう。ベータ線(実態はは高速の電子)が細胞内で他の構造にぶつかればはげしい破壊が生じる(ベータ線のエネルギーが細胞構造を作っている力に比して桁違いに大きいから)。この二つの作用(ヘリウム化と、ベータ線の作用)によって遺伝子など細胞の重要機能が破壊される。 トリチウムの内部被曝の害は、生体細胞内の現象なので直接観察しにくいが、トリチウムが大量に常に放出されている原発の近くで生活している人々には白血病など発生率が高くなる、という調査結果が全世界で観察されている。 トリチウムは加圧水型原発(PWR)の方が沸騰水型原発(BWR)よりも1~2桁大量に発生する。PWRは冷却水にホウ素(B)を混ぜるので、中性子がホウ素と反応してトリチウムを作るのである。 PWRではホウ酸(中性子吸収材)を水溶性の反応度制御材として減速材中に混入して使用している(ホウ素濃度制御:ケミカルシム制御とも呼んでいる)。(ATOMICA 原子炉機器(PWR)の原理と構造 )原発近くの地域では白血病などの発病が高率となるという日本の例を挙げておく。( 週刊MDSのサイトからいただきました、ここ)
ただ、プラスチック問題などが顕在化し、地球の海はけして無限に広くはないという観点が説得力を持つようになった。この点も、トリチウム水を海洋へ放出する問題と結びついている。 トリチウム問題を世界に先駆けてアッピールしたのはカナダやイギリスであり、世界中の被害の資料などを示しながらさらに考えてみるつもりである。 トップページの写真を、ミドリグンバイウンカからチョウ目ヤガ科ホソオビアシブトクチバに替えた。 | Top |
9/17-2019 |
廃炉作業が進む東京電力福島第1原発で、1、2号機の共通排気筒(高さ120メートル)の解体工事が難航している。8月上旬に着工した後、トラブルが続いて最初の工程である筒頂部の解体に1カ月を要し、第2工程も機器の不具合で着手できない。東電は来年3月末までの解体完了を目指すが、視界は不良だ。 共通排気筒は放射性物質を含む蒸気を外部に放出するベントに使われ、水素爆発を起こした1、2号機とともに事故を象徴する構造物として残った。 爆発の衝撃で部材の一部に破断が生じたため、東電は筒の上半分を輪切り状に解体する工事に着手。周辺は放射線量が高いことから作業は遠隔操作で行う。 8月1日に始まった工事は当初2日間で終える予定だったが、相次ぐトラブルで目算が狂った。2日は作業員が熱中症にかかる恐れが生じたため中止し、7日と21日はカッターが作動しなくなるトラブルなどで中断した。 4度目の作業となった30日も、無線の通信異常などで中断。31日には解体装置を動かす発電機の燃料が切れ、ゴンドラで筒頂部まで運ばれた作業員3人が給油してしのいだ。9月1日午後4時10分ごろ、ようやく筒頂部を地上に降ろすことができた。 相次ぐトラブルに関係者は厳しい視線を注ぐ。2日にあった原子力規制委員会の会合では委員から「満身創痍というイメージだ。作業をこのまま続けていいのか」と懸念する声が出た。 東電は11日、第1工程の不具合の原因と対策をまとめたペーパーを公表し、12日に第2工程に入る方針を発表した。しかし作業前の12日未明に通信異常が見つかり、同日中に着手できなかった。原因調査に7~10日かかるという。 本年度中としている共通排気筒全体の解体完了に関しても、修正に含みを残す。東電の担当者は12日の記者会見で「まずは工程を積み上げ、年度内に終わるかどうかを説明したい」と述べた。(写真も 河北新報9/16) 給油のために作業員3人が筒頂部まで運ばれて作業したということなど、この記事で初めて知った。「遠隔操作」もクソもない決死隊じゃないか。3人の被曝線量などのデータを報道すべきだ。 非常に甘い見通しを立て、それを幾度も幾度も訂正して引き延ばす。東電の致命的な体質と言ってよい。東電に対する住民・国民の信頼度がどんどん落ちていく。 台風15号の千葉県停電災害も同じパターンだ。現場に対する正確な把握ができていなければ「見通しは不明です」と言えばまだしも、「数日で復旧します」というような甘いことを言う。管理部門が現場を把握できておらず、把握できていないことを自認する勇気を持っていない。東電という独占企業総体に巣くっている組織の腐敗である。この腐敗は東電を解体して再出発するしか直りようがない。 千葉の問題では政治の側(内閣府と千葉県)も有効な手を少しも打っていない。内閣改造などでやに下がっている場合じゃないだろう。 | Top |
9/20-2019 | 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(79)ら旧経営陣3被告の判決で、東京地裁(永渕健一裁判長)は19日、3人に無罪を言い渡した。求刑はいずれも禁錮5年だった。未曽有の被害をもたらした原発事故で、経営トップらの刑事責任は認められなかった。 ほかに強制起訴されたのは、原発の安全対策の実質的な責任者だった武藤栄元副社長(69)と、その直属の上司だった武黒一郎元副社長(73)。3人は「大津波は予見できなかった」と無罪を主張していた。 公判の争点は、海抜10メートルの原発敷地を超える高さの津波を予見し、対策を取ることで事故を防げたか。 東電の地震・津波対策の担当者らは、原発事故が起きる3年前の2008年3月、国の地震予測「長期評価」に基づく試算値として、原発を襲う可能性がある津波の高さが「最大15・7メートル」という情報を得ていた。 担当者らは6月、武藤元副社長に試算結果を報告したが、武藤元副社長は翌月、担当者らに長期評価の信頼性を外部機関に検討してもらうよう指示。防潮堤建設などの津波対策は取られなかった。(東京新聞9/19 記事の冒頭部のみ) 今朝の各紙の記事を読んで、違和感を覚えた。 巨大津波が来る可能性を示すデータが出ていて東電経営陣に伝えられていたことはまちがいない。その場合に、経営陣に求められることは何だろうか。経営陣が「巨大津波が来ると言っても、いつ来るのか分かていない。データの信用性はあるのか」という疑問を持つのは当然である。 責任ある研究機関が出したデータなのだからまったく信用性のないデータということはないはずである。巨大津波が来るのは「明日かも知れないし100年後かもしれない」。こういうデータに対して巨額の費用を要する「防潮堤建設」を直ちに決断しなかったという事を罪に問うことはできないだろうと思う。すぐ原発停止に踏み切らなかった事を罪に問えないだろう。今回の無罪判決は、この意味なのだろうか?そうだとすれば、正当な判決だということになる。 原発の経営責任者たちとしては、一般に、自然災害の可能性に対して原発事故のリスクをできるだけ下げる対策をとっておくべきである。いったん深刻な事故(放射能の閉じ込めが壊れること、メルトダウンなど)が生じると社会に対して取り返しの付かない被害を与えるからである。 巨大津波に対して巨大な防潮堤を建設するというのは究極の対応策である。リスクをゼロにしようという対応策である。しかし、リスク・マネイジメントというのはそいうものではないだろう。リスクをゼロにできなくとも、半分にするとか、7割に減らすとかが現実的なマネイジメントであろう。 つまり重要なことは、津波をかぶっても非常用電源は生きていて全電源喪失は回避するとかの次善の策である。東電の経営者たちは「次善の策」さえも手を打たず、漫然とすごしていたことを罪に問われるべきなのではないか。 フクイチでは非常用電源も配電盤も何もかにもが原子炉と同じ平面に設置してあったのだが、それらの一部を高所へ移動することなど、すぐ・安くできたはずである(本欄 2011年11月30日で、木村俊雄さんが東電社員時代、1991年に上司に、津波対策をする必要があることを述べたという体験談を取りあげたことがある)。 完璧な津波対策をすぐにとらなかったこと(報道では「原発停止」などをも取りあげられている)までは罪に問えないとして、無罪判決が出ている。しかし、「次善の策」さえもとっていなかったことはどうして問われないのだ。長年、東電経営者たちが無為無策で終始してきたことは、なぜ罪に問われないのだ。 全電源喪失が回避されていれば、大きな放射能漏れもなく、住民避難も不必要だった。 巨大津波に対する対策は、とりあえずすぐできる「次善の策」こそが大事であること、“打たれ強い”足腰のしっかりした原発をめざすことが東電が実施すべきリスク・マネイジメントだったと思う。それを長年放置していた東電経営陣は、はっきりと有罪である。 | Top |
9/21-2019 | 「「大津波 予見できず」 東電旧経営陣3人無罪 東京地裁判決」(東京新聞9/20)の一部を引用する。 国は2002年、福島沖でM8・2前後の津波地震が発生する可能性を予測した「長期評価」を公表した。東電の地震・津波対策の担当者は08年3月、長期評価に基づくと「最大15・7メートルの津波が原発を襲う」という試算を得ており、指定弁護士は「大津波は予見でき、対策を取れた」と主張。3人は「大津波は予見できなかった」と無罪を訴えていた。事故回避のために何ができたかについて、このたびの裁判で「(検察官役)指定弁護士」は 防潮堤設置などの津波対策工事や、原発を運転停止するべきだったと主張していたという。つまり、大津波に対して完璧なリスク回避を求めていた、ということになる。一種の「完全主義」を求めていたことになる。検察官役の指定弁護士の主張が、戦略的に誤っていたのではないか。大津波がフクイチ敷地内に入ってこないように完全な防潮堤を築くというのは完全主義であって、津波対策として間違っているわけではないが、裁判の戦略としては誤りである。 住民にとっては、放射能漏れがなく大地震・大津波に原発が耐えてくれれば良いのであり、放射能漏れを回避すれば原発施設が少々壊れたり被害を受けたりしてもかまわない。しばらく停電があってもかまわない。放射能汚染によって避難させられたり、周辺地域が何十年も人が住めなくなるような被害が出なければ、よいのである。それが住民側からする絶対に譲れない最低線である。 原発が大津波をかぶっても施設が浸水しても、東電が放射能閉じ込めという最後の一線を守り切ることができれば、住民からすれば最低の「合格点」なのである。住民はけして原発の「絶対的安全性」を求めるわけではない。「放射能閉じ込め」という最低線を堅守することを求める。つまり、それが住民側からする絶対的な最低線である。 東電の責任者が、原発が津波をかぶっても放射能の閉じ込めは死守するという最低線のために,どれだけのことをしていたか。遥か以前から指摘されていた非常用ジーゼルの設置場所についての改善というような、すぐに・安くできることさえせず、漫然と過ごしてきたことは、厳罰にあたいする。311事故で多数の人命を奪い、多数の住民の生活を奪ったメルトダウン事故に関して、かれらは有罪である。重く厳罰に処するにあたいする。 | Top |
9/22-2019 | 米電力大手エクセロンは20日、東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原発の運転を停止したと発表した。米メディアによると、今後60年かけて廃炉作業を完了させる。同原発では1979年に2号機で炉心溶融の大事故が発生。1号機のみ運転を続けていたが、採算悪化で45年の歴史に幕を下ろした。 1号機は74年9月に営業運転を開始し、2000年に同社が取得。近年、安価なシェールガスを燃料とする火力発電との競争で採算が悪化しており、同社が17年に廃止を表明した。 同社幹部は「地球温暖化対策で(温室効果ガスを排出しない)クリーンなエネルギーの需要が高まっているときに、運転継続のための支援を州から受けられないのは残念だ」とコメントした。(時事通信9/21) 世界初の炉心溶融事故を起こしたスリーマイル島原発(TMI原発)が、残っていた1号炉の運転停止し、今後60年もかかる廃炉作業に入る。「作業完了は2078年の予定で、廃炉費用は総額12億ドル(1300億円)程度を見込んでいる」(東京新聞9/21)。 採算が取れず、原子力発電が商業炉として成り立たなくなっていることを分かりやすく示している。 炉心溶融事故を起こしたのは2号炉だが、溶融してデブリとなった核燃料は約130トンとされる。格納容器を破って外に出る(メルトスルー)ことはなかった(レベル5の事故)。しかしデブリは炉底部に固着し全ては取り切れず、1トン程度が残っているという(東京新聞2019-3/27が詳しい)。 フクイチ事故(レベル7)はTMIとは比べものにならないほど深刻な事故で、規模も大きく(1~4号機の同時事故)、大量のデブリを取り切ることは不可能である。東電が約束するような「更地に戻す」ことは不可能と言うべきだ。 | Top |
9/28-2019 | 多額の金品の受け取りを認めた関西電力。原発をめぐる不透明な金品の流れが明らかになりました。 関係者によりますと金沢国税局が去年、高浜原発の関連工事などを請け負う高浜町の建設会社を税務調査したところ、高浜町の森山栄治元助役がこの会社から工事受注などの手数料としておよそ3億円を受け取っていたことが分かったということです。 そして国税局がさらに調査を進めたところ関西電力の八木誠会長などの経営幹部ら6人が森山元助役からおととしまでの7年間にあわせて1億8000万円を受け取っていたことが分かったということで、このうち4人は税務調査が始まったあと、修正申告したということです。 森山元助役も建設会社から受け取ったおよそ3億円を税務申告しておらず調査のあと国税局に修正申告したということです。 関西電力や関係者によりますと国税局から指摘を受けて関西電力が調査したところ森山元助役から金品を受け取っていたのは、国税局の調査で判明した八木会長ら6人を含む経営幹部や社員、あわせて20人に上り、物品や金銭、あわせて3億2000万円相当を受け取っていたことが分かったということです。 関西電力から原発の立地地域に流れた多額の原発マネーが経営幹部らに還流した形になっています。(NHK9/27) 今朝の報道でも、まだ「建設会社」の会社名をあきらかにしていないものが大部分。 関西電力の八木誠会長(69)らが関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役森山栄治氏(今年3月に90歳で死亡)から金品を受領していた問題で、森山氏に約3億円を提供した地元の建設会社は、原発関連工事の受注により、ここ数年で売上高を大幅に伸ばしていたことが分かった。すでに死亡していて全国紙も実名報道している「森山栄 元助役」の実名を明かさない報道がいくつも見られた。たとえば、地元紙の「福井新聞」は昨日の段階で(「関電会長らに高浜町元助役から資金」)「元助役」で通している。 原発マネーに群がる黒い噂はいろいろ取りざたされてきたが、これほど露骨に出て来た(まだまだ不充分だが)ことはなかった。森山元助役は地元では「天皇」とも言われ、関西電力は「森山先生」と呼んでいたそうである。この人物がどれほど自分のふところに収めたかは不明のままである。 元助役の税務調査を進めると、元助役が関電役員ら6人の個人口座に送金したり、現金を入れた菓子袋を関電側に届けたりしていたことが判明。総額は7年間で約1億8千万円に上り、スーツの仕立券などもあった。元助役は「関電にはお世話になっているから」と説明したという。(福井新聞9/27)産経新聞は次のように下世話な評を書いている。 「地元の強力な権力者からの返すに返せない金品。彼が亡くなるまで、情報を明らかにするのが怖かったんじゃないか」。関電幹部はこう明かした。 (産経新聞9/27)これが案外、正鵠を射ているのじゃないのか。原発マネーがどのように電力会社に「環流」しているのか、その闇は深い。 長年にわたって続いていた黒い金の流れの一部が明るみに出かかっているというに過ぎない。「氷山の一角」なのだ。もともとは国民の電気料金なのである。 原発は迷惑施設の面があることは否めず、全国のどの原発建設においても地元の協力を得るために、「金に物を言わせる」やり方が行われてきた。地元の顔役などごく一部の有力者を通じて原発マネーが地元へ落ちる。こういう悪習のうえに建設される原発はその運転開始後も絶えずその中核部は不透明で隠蔽的な存在であり続けている。 中部電力の浜岡原発の例を、今朝の毎日新聞が書いていたので、引用しておく。 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)では、1970年代から80年代、地元地権者らでつくる住民団体に中部電が「協力金」名目で約30億円を支払っていたことが分かっている。住民団体の中でも一部の役員しか詳細を知らされておらず、中部電側がその存在を非公表とするよう求めたとされている。(毎日新聞9/28 ここ)このような札束のばらまきは全国どの原発でも行われてきたはずだ。 巨大企業が地元の少数の有力者を札束でつり上げて、地元との「パイプ」を作ったとし、それに呼応するのが地方の政治だと考えられている。この「大人の常識」を覆さなければ、企業や中央・地方政治がきれい事を作文し読み上げるだけで終わってしまう「悪習」は決して日本からなくならない。 トップページの写真を、ホソオビアシブトクチバからトンボ目トンボ科マユタテアカネに替えた。 | Top |
9/30-2019 | 小ぶりの倉庫のような白い建物は、今もそのままになっていた。1999年9月30日に臨界事故の現場となった核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)の「転換試験棟」だ。 内部は見せてもらえなかったが、同社東海事業所の増井久志副所長(57)が「この壁の向こうに(臨界が発生した)沈殿槽がありました。今は全て撤去して、がらんどうです」と説明した。 臨界収束後も出続けた放射線を遮蔽(しゃへい)するため急ごしらえしたコンクリートの壁が裏手に少し残る以外、事故を思い起こさせるものは何もない。ただ、構内では現在も設備の撤去や除染、ウランを含む廃棄物の管理といった作業が続く。 事故後、当時の所長ら6人は業務上過失致死、JCOは原子炉等規制法違反の罪などに問われ、有罪が2003年に確定。一方で判決は、管理監督の不十分さを指摘され「隠れた被告」とも呼ばれた科学技術庁(現・文部科学省)の責任を否定した。原子力安全委員会(原子力規制委員会の前身の一つ)が設置した事故調査委員会の報告書も、国に甘い内容だった。 ウラン溶液を作る業務を発注した、現在の日本原子力研究開発機構の責任も追及されなかった。末端の民間企業に全ての罪をかぶせて幕引きした形だ。 事故の経緯に詳しい民間シンクタンク「原子力資料情報室」(東京)共同代表の西尾漠さん(72)は「JCOが不正な作業に手を染めた背景には、発注者の無理な注文に応じようとしたことがある。不正な作業を見過ごしていた国の責任も大きい」と指摘する。 中途半端な反省で「原子力ムラ」の安全を軽んじる体質は温存され、その後も事故は続いた。関西電力美浜原発(福井県)では04年、配管から蒸気が噴き出し作業員5人が死亡。07年には、北陸電力が志賀原発(石川県)の8年前の臨界事故を隠蔽(いんぺい)していたことが明るみに。ムラは何も変わっていなかった。 それどころか、国や原子力業界は「原子力ルネサンス」の旗を掲げ、原発の新増設や海外輸出に狂奔。そして「3・11」を迎えた。 JCO事故当時に村長だった村上達也さん(76)は、教訓を生かせなかった国やムラが東京電力福島第一原発事故を防げなかったのは必然だと感じている。「JCOを原子力業界が深刻に受け止めたとは思えない。表面を取り繕っただけで何も変わらなかった。JCOから福島へは一直線だった」 「福島」後も、核燃料物質のずさんな管理は後を絶たない。茨城県大洗町の原子力機構の施設で17年、プルトニウム入りの袋が破裂して5人が被ばく。19年にも東海村の原子力機構の施設で、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)粉末が室内に漏れた。 今月19日、福島の原発事故で業務上過失致死傷罪に問われた東電の旧経営陣に無罪判決が出た。国会の事故調査委員会は「人災」と断じたが、責任の所在はあやふやなままだ。 今も、なお原発は動き続ける。歴史は繰り返されないのか-。不安の声は、かき消されようとしている。(下表も 東京新聞9/29) 臨界事故は1999年9月30日午前10時35分ごろに発生。現場の転換試験棟にいた作業員は「青い光を見た」と証言した。バケツで作業していて硝酸ウラン溶液を沈殿槽に入れ、7杯目の途中で臨界となった、とされる。むき出しの原子炉が出現したことになり、透過力が極めて強い中性子線が環境へ放出された。この状態が約20時間継続する。 バケツ作業をしていて直接被曝した3名を救急搬送するための出動が11時52分。東海村では国・茨城県の対応を待たず村上達也村長独断で「住民に対する屋内避難」の広報を始めた。 現地では事故現場から半径350m以内の住民約40世帯への避難要請、500m以内の住民への避難勧告、10km以内の住民10万世帯(約31万人)への屋内退避および換気装置停止の呼びかけ、現場周辺の県道、国道、常磐自動車道の閉鎖、JR東日本の常磐線水戸 - 日立間、水郡線水戸 - 常陸大子・常陸太田間の運転見合わせ、自衛隊への災害派遣要請といった措置がとられた。(ウィキペディア JCO臨界事故)当初、臨界状態を収束させる手を誰も打たなかったが、「国の代理人」からJCOへ対して収束作業をするように要求され、 JCO社員が18人を2人1組で1分を限度に現場に向かい、冷却管の破壊、アルゴンガスを注入して冷却水を抜く、ホウ酸を沈殿槽に投入する作業を行い、(約20時間後に)連鎖反応を止めることに成功した。 (同前)救急搬送を受けた3人のうち2人は死亡、作業員や救急隊員をはじめ周辺住民をふくめた被曝者総数は667名だった。 このJCO臨界事故は、一般住民に広く被害を及ぼす可能性があっただけでなく | Top |
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