き坊の近況 (2019年10月)


旧 「き坊の近況」

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

10/2-2019
関電幹部に金品、元助役自宅にメモ(TBS)

関西電力の経営幹部らが福井県高浜町の元助役から3億円分の金品を受け取っていた問題で、元助役の自宅から提供先や金額などが書かれたメモが見つかっていたことが、関係者への取材でわかりました。

関西電力は、経営幹部20人が、原発がある高浜町の森山栄治元助役から、およそ3億2000万円に上る金品を受け取っていたことを会見で明らかにしました。

関係者によりますと、金品の提供は金沢国税局の税務調査がきっかけで明らかになりましたが、森山元助役の自宅から、金品の提供先や金額などが詳細に書かれたメモが見つかっていたことがわかりました。また、このメモをもとに調査を進めたところ、関電の経営幹部の自宅から記載されていた金品が見つかり、菓子袋などに入ったまま、ほぼ手付かずの状態で保管されていたものもあったということです。

関電は、10月2日に会見を開き、社内調査の内容を公表することにしています。(TBS10/1)

関西電力は原発を福井県の3つの町に持っている。美浜町(1,2号機は廃炉決定、3号機は定期検査中)、おおい町(1,2号機は廃炉決定、3,4号機は18年に運転再開)、高浜町(1,2号機は定期検査中、3,4号機は17年から運転再開)。
これらの町に原発マネーがイヤというほど投下され、原発関連産業が潤い、県や町にはハコモノなどが無数にできた。その影には、合法・違法に懐を肥やした多くの“有力者”が居たことだろう。・・・ここまではいわば“常識”だだったが、今回の事件は高浜町から関電へ多額のキック・バックを行っていたというのだから、あっけにとられてしまう。

高浜原発について、今回明るみ出た地元の原発関連産業というのは「吉田開発」(1981設立)という建設会社だが、地元にはもっと多数の原発関連会社があるはずだ。そういう会社が町役場の顔役・森山栄元助役らにコネクションを結ぼうと必死に工作したであろうことは想像に難くない。今回明るみに出たキックバック3億円余は、氷山の一角に過ぎない。
言うまでもないが、美浜町やおおい町が潔癖であったとは到底考えられない。国税局など司直はしっかりと手を入れてほしいものだ。
全国の全ての原発立地には、この観点から厳正な調査を入れるべきだ。また、ジャーナリズムは今回のような、金沢国税局の後からおそるおそる記事にするようなみっともない姿勢では、まったく情けない(ジャーナリズムは電力会社からの巨大な広告収入で、すっかり牙を抜かれてしまっている)。

関西電力は司法・警察などの天下り先として有力受け皿であり、検察がこの件でどこまで動くか心配である。フクイチ原発事故でも東電幹部を不起訴にし、後に検察審査会で強制起訴にした。そして、9月19日東京地裁が旧経営陣3名に無罪判決を出し、検察官役の指定弁護士らが「正義に反する」として東京高裁に控訴したのは9月30日のことだ。
電力会社はその豊富な資金を元に、司法をもそのコントロール下に置いている、とさえ言えるのである。


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10/7-2019
高浜町元助役、地元警察署幹部にも多額の商品券 1990年代(福井新聞)

関西電力の役員らに金品を渡していた福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)が1990年代、高浜町を管轄する福井県警小浜署の複数幹部に多額の商品券を贈るなどしていたことが10月4日、関係者への取材で分かった。関電役員らのほか、福祉行政や嶺南振興担当の福井県幹部にも贈答品を渡していた森山氏が、県当局に加え警察との関係性を深めようとしていたとみられる。

多額の商品券を贈られた元幹部は「そのまま送り返した」としている。別の元幹部は取材に対し「(森山氏は)警察にも顔が利くということを誇示したかったのではないか。警察が何らかの便宜を図ることはありえない」と話した。

関係者によると、中元や歳暮、餞別(せんべつ)などを贈られた幹部も多数いたという。助役退任後も教育委員などとして町と関係を持ち続けていた森山氏に、同町役場で餞別を受け取ったある元幹部は「常識の範囲内だったと記憶している」と話した。京都府舞鶴市で酒席を共にした幹部もいるという。(福井新聞10/5)

高浜町が潤沢な原発マネーを元手に、各方面の有力者へ多額の金品の付け届けを行ってきていた実態が少しずつ暴露されてきている。
高浜町元助役の関連会社が、地元の国会議員・稲田朋美が代表の自民党支部へ「2011年からの3年間で36万円を献金」していたこと、稲田氏の政治資金パーティー券を関電とその関連会社が2017年に計50万円分購入していた(赤旗10/5)

J-Castニュースが2014年の朝日新聞の報道を残していた。歴代総理に毎年2000万円献金を続けていたという。
関西電力が少なくとも1972年から18年間にわたって、在任中の歴代首相7人に年に2000万円ずつ献金を続けていたことが明らかになった。2014年7月28日、朝日新聞が内藤千百里(ちもり)・元副社長(91)の証言として報じた。

献金の対象になっていたのは、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登の各元首相(中曽根氏以外は故人)。朝日新聞のウェブサイトで公開されている内藤氏のインタビュー動画によると、盆暮れに1000万円ずつ、年に2000万円を献金していた。内藤氏は献金の存在について
「ほとんど知らないでしょうね」
「一般の役員でも知らないでしょう」
と話し、社内のごく一部でしか把握していなかったことを明かした。このタイミングで証言を決意した経緯については、
「正しいことは言うておかないかん、という素朴な、死を前にした気持ち」
と話した。
(朝日新聞2014/7/28)
いま明らかになってきているのは、関西電力の福井県高浜町に関する部分だけであり、関電に限らず全国のすべての電力会社の原発の地元へ落ちる原発マネー(国からの交付金も含む)の流れを厳正に明らかにする必要がある。電力会社は公益性が高く地域独占企業であるから、パーティー券購入を含め政治献金は禁じらるべきものである。


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10/10-2019
中村哲医師、アフガン名誉国民に 「最も勇敢な男」 大統領が授与(西日本新聞)

アフガニスタンのガニ大統領からアフガン市民証のIDカードを授与された中村哲医師(左)
=7日(ペシャワール会提供)

アフガニスタンの支援を行う福岡市の非政府組織「ペシャワール会」は9日、現地代表の中村哲医師(73)=福岡県出身=が、同国のガニ大統領から同国市民証を授与されたと発表した。長年にわたる用水路建設などの人道支援が評価された。駐日アフガニスタン大使館によると、日本人への授与は異例。今後は査証(ビザ)が免除されるなど名誉国民として待遇される。

中村医師はアフガンを襲った大干ばつを受け、2003年に東部ナンガルハル州大河クナール川周辺で用水路建設を開始。事業で潤った土地は、福岡市の面積の約半分に当たる約1万6500ヘクタールに及ぶ。

会によると、中村医師は7日、首都カブールの大統領官邸で開かれた式典に出席。ガニ大統領は、洪水が頻発するクナール川の特徴を踏まえ「狂った川を、愛をもって制したのですな」とユーモアを交えて話し「最大の英雄」「最も勇敢な男」とたたえた。最後に「いつでも官邸に来て、困ったことがあれば知らせてほしい」と述べたという。

今後は、アフガン入国時のビザが免除されるほか、土地や会社が所有できるようになる。中村医師は「日本の良心的支援とアフガン人職員、地域の指導者による協力の成果。これで文字通り現地に溶け込んだ活動になる。私たちの試みで、より大きな規模で国土が回復されることを希望する」とコメントした。

中村医師は18年には同国の国家勲章を受けている。(写真も 西日本新聞10/9)

中村哲氏を本欄が最初に取りあげたのは、2003年のこと(2003-4/12)で、それ以来ときどき記事にしている。2014年6月6日の本欄をお勧めしておきます。
わたしはらい病について勉強していて、ペシャワールに入って現地のらい問題と取り組んでいる中村哲医師の生き方にふれて、深く打たれた(たとえば中村哲『ペシャワールにて』石風社 1989、『ペシャワールからの報告』河合ブックレット 1990)。

単なる医療の次元を超えて、現地の治水事業に乗り出すことによってより深くアフガン民衆の問題を把握しそれに関わることを試みて来られたように思う。長年にわたる活動がアフガニスタンの人々に強く支持されていることがなによりも喜ばしい。


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10/11-2019
関電幹部が京都府北部の自治体に謝罪 綾部・舞鶴両市長が不信感、原発再稼働に難色(京都新聞)

関西電力役員の金品受領問題を受け、関電の近藤佳典・原子力事業本部副事業本部長が9日、高浜原発がある福井県高浜町と隣接する京都府綾部市の山崎善也市長、京都府舞鶴市の多々見良三市長と相次いで面会し、謝罪した。両市長は同日辞意を表明した八木誠会長、岩根茂樹社長以外についても「関与者の引責」を求め、同原発1、2号機の再稼働に難色を示した

近藤本部長は綾部市役所を訪れ、山崎市長に謝罪。第三者委員会を設置して調査し、再発防止を図ると説明した。山崎市長は「(受領に)関わった方は責任ある行動を」と求めた。

山崎市長は面会後の報道各社の取材で、高浜原発1、2号機の再稼働について「信頼回復が最優先でその上での議論」と現時点で論外とした。会長、社長の辞任について「それだけで済むのか。第三者委の報告を待ちたい」とし、トップ以外の関与者も辞任も含めて責任を取るべきとの考えを強調した。

多々見良三市長も「少なくとも金品受領に関わった人は辞めるべき。ガバナンス(企業統治)がおかしい今は、再稼働を判断する段階ではない」と述べ、関電への強い不信感を表した。(京都新聞10/10)

高浜町に隣接する綾部市・舞鶴市の市長が、原発再稼働について厳しい批判的意見をのべた。当然のことである。

電力会社は公益性の強い事業であるために、地域独占を法的に認められており、「総括原価方式」(全ての費用を総括原価としてコストに反映し、その上に一定の比率で利益を加算する)であるため、電力会社は費用を大きくするほど儲かる仕組みである。電力会社はおのれの欲する利益を電気料金に上乗せすればよいのだ。これは公益性を担保するために特別に認められているのであるが、電力会社はこの制度によって確実に潤沢に集まる電気料金を「原発マネー」として、地元対策・政権対策にふんだんにばらまいてきたのである。国民に対する裏切りである

関電の何人かが引責辞職すればよいというような個別の問題ではない。全ての電力会社、すべての地元自治体の原発建設時代からをきっちりと検証すべきである。さらに電気料金の決め方が「総括原価方式」という悪法になっていて、それが今度の問題の根源であることを中心の問題にすべきである。


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10/13-2019
台風19号は伊豆半島⇒東京⇒福島県⇒三陸沖へと通過した。各地の河川氾濫が大きな被害を出しているようだが、RIEF(一般社団法人環境金融研究機構)が、台風19号が近づいた頃(10月10日)から最接近し通過した13日早暁まで、福島第一では立て続けに汚染水の漏洩に関する警報が鳴っていたことを取りあげている(ここ)。
なお、RIEFが取りあげている10日~13日までの10回の警報については、東電による「報道関係各位一斉メール 2019年」の最新情報にすべて含まれている。

そのうちの最新メールを引用しておく。
本日(10月13日)午前0時33分、使用済セシウム吸着塔一時保管施設(第三施設)において、漏えい検知器が作動したことを示す警報が発生し、同時刻にクリアしております。その後、警報の発生とクリアを繰り返しております。

 状況は以下の通りです。
 ・発生時刻     :午前0時33分
 ・発生場所     :使用済セシウム吸着塔一時保管施設(第三施設)
 ・警報名称     :06BL 21G-A漏えい検出

 今後、現場状況を確認し、状況が分かり次第お知らせします。
「漏洩を検出した」という警報が鳴ったというだけで、実際に漏洩があったのか誤作動だったのか、漏洩量やどんな処理をしたか、などは不明である。なお警報が鳴った「10月13日午前0時33分」というのは、台風19号がフクイチに最接近して通過後2~3時間経った時である。

なお、最初の警報(10月10日09時47分)については、移送ポンプから実際に滴下があり、ネジの「締め増し」などで止まった。滴下水は拭き取った、としている。その次の警報(10月12日16時55分)は現場確認したところ漏洩はなく、「漏えい検知器の作動は雨水によるものと判断しました」としている。
お粗末だが、雨水を誤認した警報というのが本当なら、台風通過に伴って警報が頻発したということはあり得よう。ただしRIEFは「どさくさ紛れに汚染処理水を『放出』しかねないとの見方」もあるので、今回のことについて東電が「漏洩量と処理量、対策」についてきちんと情報を出すかどうか、注視したいと述べている。


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10/17-2019
上記13日付けで、東電の多核種除去設備・淡水化処理設備・使用済セシウム吸着塔などで10回にわたり警報が続発した件について、東電は15日付けで「台風19号通過後の福島第一原子力発電所の状況について」という文書を発表した。このうち8件の漏洩警報は
台風接近に伴う雨量の増加と同時に、各建屋に設置されている検知器による漏えい警報が8件発生したが、警報原因は、台風の降雨による雨水
であると判断したという。つまり、汚染水など放射性物質を含む液体の漏洩ではなく、雨水であったということなのだろう。東電はそう判断した根拠を具体的に示すべきである。測定線量の数値など。
更に、これらの装置は台風の雨水が降り込むような貧弱な設備であることになるが、それも深刻な問題となる。装置の詳細を示すべきである。

残り2回の警報については「故障と誤作動」としているが、引用しておく。
台風との因果関係は不明であるが、「1号機タービン建屋1階漏えい監視盤用 直流電源の異常を示す警報の発生について」、「使用済セシウム吸着塔一時保管施設(第三施設)における漏えい警報の発生について(10月13日午後0時59分発生分)」の2件が発生しており、それぞれ故障と誤作動と判断している。
これも、「故障と誤作動」と判断した根拠を示していないので、情報を読む方は東電の言い分を単に聞くというだけに終わってしまう。誠意のない信頼感を醸成しないやり方だ。隠蔽したければいくらでも隠蔽できるやり方だ。


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10/19-2019
除染廃棄物2カ所で流出=仮置き場から川に、台風影響か-福島(時事通信)

福島県川内村は17日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を入れていた18袋が仮置き場から川に流されたと発表した。台風19号による増水が原因とみられる。除染で出た草木が入っており、全て回収したが、2袋は中身が全て流出したという。

同県二本松市も同日、除染で出た草木を入れた15袋が仮置き場からなくなったと発表した。近くを通る川からの浸水で流された可能性があり、市などは下流域を調べている。

除染廃棄物の川への流出は同県田村市、飯舘村でも確認されている。(時事通信10/17)

各地に野積みになっている膨大な量の汚染廃棄物の山は、処理されないままになっている。そういう除染廃棄物のフレコンバックが洪水で流出したというニュースがいくつか出ている。袋の中身は雑草・木枝などや汚染土である。そのいくつかからは、明らかに汚染物質が環境に出てしまった。馬鹿な環境大臣・小泉進次郎は「現時点では環境への影響は無い」と言ったが、とんでもないことだ。すぐ影響が現れるほどの高線量ではないからやっかいなのだ。環境へ広く薄くまき散らされた放射性物質が植物などに吸収され回り回って人間に蓄積する。それが数十年を経て人間に影響がでるのは常識だ。

フレコンバックが流出したというだけではない。台風19号による大水害の写真を見た人は、住宅街や田畑が泥海になり、そこを氾濫河川水が勢いよく流れているのを記憶に止めているだろう。8年前の311フクイチ原発事故で環境に放出された放射性物質の多くが山野や田畑に降り積もり、植物に吸収されたものもあるが多くは泥に吸着し地中へ沈下し、また雨とともに流れ下る。それの行き先は川底や池・沼の底などである
今回の関東から東北にかけての大水害による氾濫によって、川底や池底に溜まっていた放射性物質を吸着している泥が泥水として流出し泥海を作ったのである。改めて地表を泥水として蔽ったのである。また、海まで流下したものも少なくないであろう。したがって、後片付けを安易に子供たちに手伝わせないようにと警告を発している団体があるが、もっともなことだ。子供は放射能に敏感だから大人と同列に考えてはいけないのだ。

もう一つ、政府が盛んに宣伝している「汚染土を道路や堤防の盛り土に再利用」するという手法がいかにでたらめで、危険なことであるか、大水害の映像を目にすれば一目瞭然だ。毎年台風に見舞われ水害や土砂崩れが避けられないわが国では、間違っても汚染土を再利用するというような手法はやってはいけない。泥海とともに放射性物質が広範囲に広がり、手に負えなくなるのである。


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10/24-2019
森山栄治(1928~2019)は元福井県高浜町助役であったが、関西電力の原発マネー汚職の中心人物として注目されている。彼は87年に高浜町役場を退職しており、その後は高浜町教育委員長や地元建設会社の副社長や顧問などを努め、「高浜町のドン」として町長浜田倫三とともに調整に君臨したという。

柴野徹夫『原発のある風景』(上下、未来社1983)は、「赤旗 日曜版」などに連載した全国の原発の現場におもむき、“原発ジプシー”と呼ばれていた下層労働者たちを直に取材したルポルタージュとして名高い。わたしはこの書物の存在は知っていたが読む機会が無かった。こんど関西電力のあまりにもひどい原発マネー問題に接し、地元の図書館から借りだして読んでみた。実に面白いルポで、多くの“ジプシー”たちが素面をさらし本名で語っているのに迫力を感じた。35年以前の書物だが、今読んでもすこしも古さを感じない。

この本で森山栄治が登場するのは下巻p143が最初である(名前なしの助役としては数ページ前から出ている)。その部分の引用をする。1979年4月の町議会選挙の情勢説明のくだりである。
高浜町では、関電と直結した浜田倫三町長と森山栄治助役が、町行政の隅ずみにまで君臨し、私利私欲をむさぼっていた。少しでも町政を批判する者には、たちまち脅迫と報復で報いた。
町政の実質的なボスは森山助役であった。彼は町内の同和地区西三松部落に自ら組織した「部落解放同盟」を指揮して、だれかれ容赦なく“糾弾”をくり返してきた。町議会までが町長・助役の脅迫に屈し、その“親衛隊”に成り下がっていた。
住民は頼るべき拠ろもないまま、戦々恐々として、自由にものもいえない空気が町を支配していた。町長・助役は、悪事のやり放題であった。
(前掲書 下p142~143)
「悪事のやりたい放題」の実例は同書で読んで欲しい。関電から高浜町への9億円などの「協力金」が流れ込んでいた一件を引用しておく。1978年4月ごろマスコミが巨額の「協力金」の存在をかぎつけ、高浜町も対応せざるを得なくなった。数ヶ月かかって受取額や年月日の改竄ををすませて、同年8月に町の「広報」で「関電から受けた協力金9億円と、利子2千8百万円について」を発表した。
町の説明によれば、この協力金は76年10月から翌年6月にかけ3回にわけて浜田倫三町長の「個人名義の預金口座」に振りこまれたという。9億円のうち「3億3千万円を78年4月に町内の5漁協に分配した。あとの残りは、77年9月補正予算から3回にわけて町予算に入れた」とのことだ。

中略)1979年9月町議会で(上記4月の町議選で初当選した共産党の)渡辺町議の追求で町長は「高浜1・2号機に関する協力金2億5千万円も、じつは関電が1969年から74年にかけて町に支払ったので、学校設備費などにあてた」と78年度決算案で、はじめて報告されたのである。(中略)十年も前に受け取っていた協力金が、いまになって突然報告されるのも異常なら、巨額の協力金が「町長の個人名義の通帳」に振りこまれていたというのも常識では考えられないことである。
(前掲書 下p140~141)
これが、35年以前の関電と高浜町の原発マネーによるどす黒い関係の一端である。このどす黒い関係はすこしも浄化されないまま継続し、今回の「関電幹部らが福井県高浜町の元助役から3億円分の金品を受け取っていた問題」(TBS10/1)にまで直結していることは明らか。
高浜町側から関電側へ「原発マネー」を環流させるという“逆流”が起こったことに関しては、後藤 康浩「関西電力「高浜事件」は「NIMBY」から「KIMBY」への変質が原因」(フォーサイト 時事通信配信 ここ)があるが、わたしは半信半疑で読んだ。

森山栄治が「部落解放同盟」の福井県高浜支部の結成に尽力し、1970年から2年間、解放同盟福井県連書記長に就いていた。この件について、部落解放同盟が執行委員長・組坂繁之の名による「コメント」(10月7日 ここ)を出している。
一部マスコミが“森山の恫喝は部落を背後に置いて怖がらせようとしたものだ”というような同和差別的な煽り記事を書いていることへの反論である。この「コメント」は抑制の効いた文章で、わたしは概ねその通りだと思った。
解放同盟や同和問題という力を利用して隠然たる力を持つに至るという短絡的な問題ではなく、原発の建設運営をスムーズに持って行こうとする福井県、高浜町、関西電力による忖度が、森山氏を肥大化させ、森山氏が首を縦に振らなければ原発関連の工事が進まないという癒着ともとれる関係にまで膨れあがったのである。また、助役退任後は、京都に住むところを移し、原発関連の企業の役員となり、権限を振るっていたという事実を見れば、「部落解放同盟の力を笠に着て」という範囲のものではないことが理解できるだろう。(部落解放同盟「コメント」)


トップページの写真を、アダンソンハエトリからハチ目コハナバチ科アカガネコハナバチに替えた。

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10/27-2019
核燃サイクル袋小路 もんじゅ廃炉、再処理工場完成遅れ 「既に破綻」批判根強く(西日本新聞)

国が原発推進の前提としてきた「核燃料サイクル」が行き詰まっている。原発で出る使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出して再利用する計画だが、中核を担うはずの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)は廃炉が決定。使用済み核燃料の再処理工場の本格稼働も見通せない。青森県の関連施設を訪ね、核燃料サイクルの必要性や実現性について改めて考えた。

■トラブル続き
広大な敷地に四角い建物が立ち並ぶ。同県六ケ所村にある日本原燃の原子燃料サイクル施設。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を作る工場などの建設が続く。

施設の中心となる使用済み核燃料の再処理工場は当初、完成予定が1997年だった。だが工程でトラブルが続出し、完成見通しは24回も延期されている。
目下の目標は原子力規制委員会の審査をパスすること。原燃の上島慶信報道部長は「審査は最終盤。2021年度上期の稼働を見込む」とするが、規制委幹部は「問題がないとは確認しきれていない」としており、審査に通る保証はない。

国内の原発から運び込まれた使用済み核燃料の貯蔵プールは、ほぼ満杯で、受け入れは停止中。各原発で使用済み核燃料がたまり続けるが、原燃は「工場が稼働すれば、貯蔵分は数年で処理できる」と説明する。

■作業員まばら

電源開発が建設中の大間原発。原子炉建屋
(左奥)など建設が進んでいない施設は
カバーで蔽われていた=青森県大間町
ゴゴゴ…。大音量とともにモニター画面が明滅した。同県大間町に電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発。制御室を模した部屋で、社員たちが大地震を想定した訓練に励んでいた。

全燃料をMOX燃料で賄う世界初の「フルMOX炉」。他原発でMOX燃料の利用が増えれば大間の利用を減らし、逆なら増やす計画で「MOX燃料を柔軟に利用する政策的な役割がある」(Jパワー)という。

だが、同原発も規制委の審査に時間を要し、原子炉建屋など主要設備の工事が進んでいない。津軽海峡を隔てた北海道函館市は14年に建設差し止めを求めて訴訟を起こしており、現在も係争中。現場には大型部品が防さび用のビニールに覆われたまま置かれ、作業員もまばらだった。

■国策の大転換
トラブル続きだったもんじゅの廃炉が決まったため、MOX燃料は高速増殖炉よりも燃料効率が良くないプルサーマル原発で使うしかないのが現状だ。だが国内のプルサーマル原発は、九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)をはじめ、建設中の大間を含めても5基だけ。生産されるMOX燃料を無駄なく使うのに必要とされる「16~18基」に及ばない。

反対論も根強い。前原子力規制委員長の田中俊一氏は、核兵器に転用可能なプルトニウムが生まれることを念頭に「(核燃サイクルは)やらないほうがよい」と公言。コスト高から「既に破綻している」と批判する研究者もいる。

再処理しなければ、使用済み核燃料の取り扱いを巡る問題が生じ、原子力政策は大転換を迫られる。国や電力業界は核燃サイクルに固執し続けるべきなのか。十分な検証と議論が必要だと痛感した。 (写真も 西日本新聞 吉田修平 10/27)

西日本新聞が「核燃料サイクル」が行き詰まっており未来がないことを丁寧に述べた好記事を出していた。

「核燃料サイクル」は「国策」と銘打った日本の原発政策の根幹をなすものだったが、中核施設である「もんじゅ」はすでに廃炉作業に入っており、他の建設計画がトラブル続きでまったくはかどっておらず、田中俊一にさえ「やらないほうがよい」と言われる始末だ。現場の士気がどうしようもなく落ちており、無理に引っ張ると大事故につながる。

「核燃料サイクル」計画が国策として名目だけでも生き続けている限り、(建前だけだが)使用済み核燃料は新たな燃料(プルトニウム)を生み出す価値ある資産であるとして、わが国は本気になって核廃棄物の処分法を検討してこなかった。
  • 数万年以上の超長期の危険施設を建設するのだから、その地域の人々の承諾が必須であり、しかも子々孫々の人々が納得できるようなものである必要がある。
  • 原発建設の時のような札束で頬を張るような手法はありえない。将来は政府や国家の変貌もありうる。
  • 日本列島で地層処分がほんとうに安全で安定したものなのか、現状では不確かである。未来に向かって何段階かの質の異なる段階的計画を立てる必要があろう。
  • 次の氷河期の到来も想定しておくべきだ。
  • とりあえずまず、処分すべきトータルの使用済み核廃棄物の量が決まらなければ、誰も説得に応じない。そのために原発の廃止が前提である。
高レベル放射性廃棄物を地層処分するといって「NUMO」(原子力発電環境機構)とかいう訳の分からない組織が動いているが、この組織が仮になにか具体的な策をつくったとして、それの実施主体は電気事業者とは別に、またまた税金を喰う組織ができるだけのことだ。(低レベル放射性廃棄物の処理は電気事業者が処分主体となることが決まっている。)


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10/30-2019
おしどりマコ・ケンさんのポータルサイトに「【福島第一原発、汚染水問題】誰が「タンクの置き場所が無い」と決めたのか」(前編 10/28)という優れたレポートが出た。8月9日に開催された「第13回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」に関するレポートである。福島第一で増え続ける汚染水を貯留するタンク。その置き場は本当に無いのか?という疑問に対しては、下図が一目瞭然の回答を示している。

図は上が東で太平洋、左が北。「タンクの設置場所が無い」と東電が言うときの地図が白っぽい長方形。その外側の白点線の内側がフクイチの全体、黄色が目立つ6号線の上側は環境省が確保している土地で、中間貯蔵施設を作るためと言っている(この図はおしどりさんが3枚の地図を重ねたもの。わたしのこの地図に関する説明は雑で不正確です。詳しくは上のサイトで読んで下さい)。

東電が「タンクの設置場所が無い」ことを説明するときの地図(真ん中の白い半透明な部分)には、たしかにタンクなどがいっぱいに建てられているが、その左側(北側)には「土捨場」に予定している広い土地があり、東電は「敷地内で設備の建設の際に出た土の捨て場で、土は敷地外に出せない」と説明している。この説明に対して小委員会では委員から「土は敷地外に出せず、水は敷地外に出せるのか。」という質問が出たという。

更に、その外側には環境省が中間貯蔵施設を作るためと言っている広大な土地がある。しかし東電はタンクを建設する土地がぎりぎり一杯でもう汚染水(近頃は「処理水」と言っている)を海洋放出するしかないと主張している。それに対して漁民や国民の強い反対があることは当然で、国際問題に発展している。

このレポートの「情報公開しない経産省」(前編の後半部)もぜひ目を通す価値がある。この小委員会は冒頭部のみ撮影許可し、「撮影・録音も不可、議事録も無い」なのだそうだ。
そして、今、海外から、汚染水の海洋放出の問題に関して疑義が出ている。その論拠の一つに「情報公開がなされていない」というものがある。この小委員会の重要な議論が、撮影・中継禁止で、議事録も無い状態で、情報公開がなされているといえるだろうか?


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