き坊の近況 (2018年11月)


旧 「き坊の近況」

【2018年】: 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 月

’17 ’16 ’15 ’14 ’13 ’12 ’11 ’10 ’09 ’08 ’07 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 

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日々の見聞や関心事を示して、自分の心的近況を表そうとしている。とくに準備なしで書けるような、「朝刊を開いてひとこと」というようなことを試みている。さらに、生活上の随想なども書く。

11/2-2018
河川の9割から微小プラ検出 都市近くに多い傾向(共同通信)


河川で見つかったマイク
ロプラスチック(片岡智
哉・東京理科大助教提供)
北海道から沖縄の29河川の調査で、9割に当たる26河川から微小なマイクロプラスチックが検出されたとの結果を、東京理科大と愛媛大のチームが1日までにまとめた。住宅地や都市部の近くを流れる河川で多く見つかり、レジ袋や発泡スチロールの容器由来とみられるものが確認された。

チームの片岡智哉・東京理科大助教(水工学)は「人の影響が大きい河川でマイクロプラスチック汚染が進んでいる。海に流れ込んで汚染が広がっていると考えられ、プラスチックごみの適正処理や削減が重要だ」と指摘している。

水1立方mに含まれる数が最も多かったのは、千葉県の大堀川で11.9個だった。(図も 共同通信11/1)

本欄がマイクロプラスチック問題を取りあげたのは、10月15日だった。関東・関西の11河川、26ヶ所での調査で、河川の上流域でも発見されたという。

今回の報道は、全国の29河川の調査で、26河川からマイクロプラスチックが検出された。写真は、前回の報道で「人工芝と見られる」とされた小片のようだ(人工芝と確定してはいない)。

人体に取り込まれているかどうかの予備的調査で、ウィーン医科大などのチームが発表したところでは、日本を含む8カ国の糞便からマイクロプラスチックが検出されたという(共同通信10/24)。
今年の6月に次のような報道があった。魚をよく食べる日本人は十分気をつけるべきだ。
黒潮によって、プラスチック排出量の多い東南アジアからの海流も入ってくる東京湾。そこで獲れたイワシを調査したところ、8割からマイクロプラスチックが検出された。(AbemaTIMES 6/19 ここ
同じ6月にカナダで行われたG7で、日本とアメリカが「海洋プラスチック憲章」への署名を拒否した。日本の拒否理由は「国内法が十分に整備されていないから」ということだった。本当だろうか。
G7では前々から討議されてきた議題であって、けして、突然登場したわけではない。
G7サミットで、海洋プラスチック問題を扱うのは今回が初めてではない。2015年にドイツで開催されたG7エルマウ・サミットでは、海洋プラスチック問題に対処するアクションプランが定められ、2016年の日本でのG7伊勢志摩サミット、2017年のイタリアでのG7タオルミーナ・サミットでも再確認されている。2016年には、国連開発計画(UNEP)からも詳細な報告書も発行された。それを受け、EUや英国、米国の一部州や市ではすでに、プラスチック用品の使用を大規模に規制する法案が審議に入っている。Sustainable Japan 6/11
日本は一日も早く「海洋プラスチック憲章」への署名をすべきだ。

「ナショナル ジオグラフィック」(10/24)の人体にマイクロプラスチック、初の報告はお勧めです。


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11/3-2018
<福島第1原発>3号機核燃料取り出し機器不具合 模擬燃料できょうから動作確認(河北新報)

東京電力福島第1原発3号機で使用済み核燃料の取り出しを前に機器のトラブルが続いている問題で、東電は3日、模擬燃料を使った機器の動作確認を始める。機器自体の点検と併せ、より本番に近い作業で燃料を安全に扱えるかどうかを確かめる。

福島市で2日にあった廃炉などに関する国の会議で説明した。模擬燃料1体を入れた専用容器を敷地内の共用プールから3号機の燃料プールに移し、燃料取扱機で容器のふたの開け閉めや燃料の出し入れを行う。動作確認は3週間ほどかかる見通し。

トラブル続発を受けて9月に始めた機器点検は、約400項目の半分程度が終了。プール内のがれきをつかむ装置の動作不良、クレーンのつり上げ時のエラー発生など9件の新たな不具合が見つかった。
9件のうち4件は不具合への対応が済んだり、めどが立ったりしたが、残り5件は原因を調査中。東電は「模擬燃料での動作確認に使わない機能で実施に問題はない」と説明した。実際の燃料取り出しは、不具合への対応などを全て終えた後に始める。(河北新報11/3)

フクイチ3号機の燃料取り出し機器の不具合について、本欄を振り返ると8月10日10月6日がすぐ見つかる。なぜ、このような不具合が続発しているのだろう。フクイチは大地震と爆発で思いも寄らないような深い疵を負っているのではないのか、と思いたくなる。あるいは、機器メーカーが基準に満たないものを納入していたのじゃないのか、など勘ぐりたくなる。

デブリ取り出しは最終的にあきらめることになっても(その可能性は大きいとわたしは考える)、使用済み燃料を安全なところへ移動することは、ぜひやりとげなければならない。


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11/4-2018
原子力機構 もんじゅ 核燃料取り出し作業を再開(毎日新聞)

日本原子力研究開発機構は3日、機器整備などのため中断していた高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の使用済み核燃料取り出し作業を再開した。冷却材の液体ナトリウムが固着した機器を洗浄するなどのメンテナンスで10月13日から作業を中断し、安全確認が長引いたため11月1日の再開予定を延期していた。

機構は8月30日に作業を開始し、これまでに1日1体のペースで炉外燃料貯蔵槽から33体の燃料を取り出している。再開後は作業態勢を見直し、年内に100体を取り出す計画に変更はないという。(毎日新聞11/3)

もんじゅのトラブル騒ぎは昔からのことで、今更の感があるが、今年7月からの予定であった核燃料取り出しがそもそも遅れて始まった。
準備段階で機器のトラブルが相次ぎ、当初の7月開始予定から1カ月遅れで、30年に及ぶ本格的な廃炉作業に入った。(朝日新聞8/30)
その後も、何度かトラブルで作業を中止した。例えば、
日本原子力研究開発機構は(9月)25日、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で使用済み核燃料の取り出し作業を再開したと発表した。19日に燃料出入機の異常を知らせる警報が鳴ったため、中断していた。(福島民報9/25)
11月1日からの作業開始予定を延ばして、3日から燃料取り出しを再開したというのが、上引の報道。

もんじゅの運営組織(日本原子力研究開発機構)が原子力規制委から見放されて廃炉となったのだが、世界的に見ても「高速増殖炉」は無理だろうという流れがあり、その中で、運営組織の士気が落ちていったことは推測できる。
核燃料取り出しは廃炉工程の第一歩に過ぎないのだが、難航している。今後ももんじゅ廃炉は、危なっかしいことだ。重大事故が起きないことを祈るしかない。


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11/5-2018
<原発のない国へ 全域停電に学ぶ> (1)北海道電安定供給を犠牲に(東京新聞)

北海道が最大震度7の地震に見舞われ、戦後初めての全域停電(ブラックアウト)を引き起こす4カ月前、電力需給対策を検討する経済産業省資源エネルギー庁の専門委員会が開かれた。その会議の資料に、こんな言葉が残っている。
「発電所一機の計画外停止が与える影響が大きい北海道では、厳寒時の需給逼迫(ひっぱく)が国民の生命・安全に及ぼす影響が甚大である」
つまり、北海道電力の供給態勢は危うい。国の委員会は2012年以降、毎年同じような警鐘を鳴らしてきた。

北海道電は泊原発(泊村、総出力207万キロワット)と、石炭が燃料の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(厚真町、同165万キロワット)を電源の柱としてきた。2つの総出力は、1日の最大需要525万キロワット(17年度)の7割以上を占める。

しかし、12年5月に泊が定期点検で停止。柱の1本を失った中、頼りの苫東厚真が地震で止まった。「12年から6回の冬を越してきたが、それだけ道民を危険にさらしてきた」。電力業界に詳しい橘川武郎(きっかわたけお)・東京理科大大学院教授は、北海道電の供給態勢のあり方を厳しく批判する。

北海道電は、原発を再稼働させて「2本柱」に戻そうと必死だった。有価証券報告書によると、13~17年度の5年間に、停止中の泊原発に1887億円を投じた。火力や水力を含めた発電所への投資総額は3738億円。実に半分以上が、原発への投資だった。投資は、再稼働に必要な新規制基準適合に向けた工事費が中心。しかし原子力規制委員会の審査は停滞し、再稼働は見通せない。

結果的に、他の発電所への投資が後手に回った。北海道電は大手電力10社の中で北陸電力とともに、出力の調整能力が高い液化天然ガス(LNG)の火力発電所を稼働させていない。緊急時に電力を地域間で融通する基盤も弱い。本州とつなぐ北本(きたほん)連系線の容量は60万キロワット。四国-本州の約6分の1、九州-本州の約9分の1という小ささだ

LNG火力を19年2月から稼働させる。北本連系線も30万キロワット増強を進めているが、いずれも実現しないうちに地震に襲われた。 電力需給を検証する委員会のメンバー、松村敏弘・東大教授は「経営陣は安定供給を犠牲にすることを承知の上で、原発への投資を判断したということを認識しておくべきだ」と話す。

「原発は即効性があり、打ち出の小づち」と橘川教授。原発は安価とされる電力。いずれも2原発4基を再稼働させた関西電力と九州電力は、財務体質を改善し、関電は料金値下げにも踏み切った。ただし、橘川教授はこう続ける。「原発は順調に動いていると依存度を高めて、経営資源を集中させてしまい、他のことを考えなくなる。それが恐ろしさだ」
原発依存の落とし穴にはまった北海道電は、太陽光や風力など再生可能エネルギーの適地とされるのに出遅れた。13~17年度の再生エネへの設備投資額は全体の0・5%。エネルギー政策に詳しい高橋洋・都留文科大教授は指摘する。「世界的に再生エネが伸び、飛躍のチャンスがあるのに、北海道電は大手で一番遅れている」(東京新聞11/4)

北海道電力は国の委員会から何度も繰り返して、電力の安定供給の基盤が脆弱で、危険であることを警告されていた。それにもかかわらず、泊原発への投資集中を止めず、9月6日の震度7の地震で警告されていたとおりに全道のブラックアウトという最悪の事態を招いた。

このたびの全道のブラックアウトは、北電の責任が強く問われる。

原発の放射能危険性や核廃棄物の処分法が無いことはよく知られているが、上の記事によって、原発を稼働すると電力供給の原発依存性が自動的に高まってしまい、電力の安定供給の基盤が脆弱にならざるをえないことを認識した。殊にわが国のような地震多発地帯では致命的な事態につながりかねない。


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11/7-2018
<原発のない国へ 全域停電に学ぶ> (2)稚内 再生エネ生かせず(東京新聞)


宗谷岬近くの丘陵に立ち並ぶ風車群。今回
の全域停電時は電力を供給できなかった=
北海道稚内市で
「非難ごうごうだよ。こんなにたくさん発電施設があるのに、何の役にも立たねえのかよ、って」
日本最北端の北海道・宗谷岬近くのガソリンスタンドの社長、安田龍平さん(56)が、9月6日未明に北海道地震で発生した全域停電を振り返った。周辺に数多くの風車が立ち並ぶというのに、知り合いのリース業者からディーゼル発電機を借り、普段より1時間遅れで開店にこぎ着けた。
岬のある稚内市は海に突き出た地形から、年間を通じて風に恵まれる。市は再生可能エネルギーを中心とした「環境都市」を宣言し、風力発電所の建設を推進している。

市内には84基(出力計約10万六千キロワット)の風車が立ち並び、発電能力は市内の電力需要を上回る。それでも、まる2日間、市内のほとんどで停電が続いた。
たくさんの風車は、停電で安全装置が働き、発電を停止。再開しようにも、北海道電力の送電網が、風力などの再生エネは出力が不安定だとして受け入れられない状態だった。「なぜ停電が続くのか」。市役所には、苦情に近い問い合わせが何件も寄せられた。

その中で、ほぼいつも通りの営業を続けたレジャー施設があった。東京ドームが14個入る約65ヘクタールの広大な敷地に、ロッジやキャンプ場、パークゴルフ場などがある「道立宗谷ふれあい公園」。隣接地に、市が保有する大型蓄電池付き大規模太陽光発電所(メガソーラー)があり、直に送電線をつなぎ、ふだんから電力を受けていた。
メガソーラーはつくった電力を蓄電池にため、主に北海道電へ送っている。停電で保護機能が働き、いったんは送電を停止したが、市は朝のうちに、北海道電の送電網から切り離す「自立運転」に切り替え、再開。園の電力は全面復旧し、太陽光による電力のみで通常営業を続けた。
職員の田渕百合子さん(31)は「ひょっとすると対策本部をそちらに設置するかも、と市から言われました」と明かす。園内には26人の宿泊者がいたが、停電を知らない人もいたという。「停電でほかの宿泊先からこちらに来た人もいた。携帯電話の充電場所も提供しました」

メガソーラーと直につないでいたのはこの公園ぐらいで、市内の多くの民家や施設には電力を供給しようにも手がない。この経験から、市は災害時も停電を回避できるように、風車や太陽光が生みだす電力を市内に直接供給するルートをつくれないか模索する動きを急速に強めている。
風車群の電力は声問(こえとい)変電所に集め、北海道電に売っている。市環境エネルギー課の市川正和課長は「災害時は、この変電所から市内各地に送電できないか。実現すれば、北海道電に頼らずに自立した電源を確保できる」とみている。
実現のためには、天候によって左右される再生エネの電力を、大型蓄電池などを使い安定させて送電網と結ぶ必要がある。市川課長は機運の高まりを明かす。「国の実証事業として、容量を増強するための新たな送電線建設が始まり、かつてない規模の大型蓄電池も併設される。こうした動きもにらみ、自立電源の確保につなげたい」 (東京新聞11/5)

北海道は風力発電、地熱発電など自然エネルギーを使った発電にすぐれていると言われている。ところが、2ヶ月前の震度7の大地震で北海道電力がブラックアウトの事態をひきおこしたが、ただちに自然エネルギー発電に切り替えて地元地域だけの「自立発電」とすることができたのは、「道立 宗谷ふれあい公園」だけだったという。
これは明らかに人災である。

太陽光発電、風力発電などは、地域の電力を自力でまかなう状態をまず第1の目標とし、不足するなら北電など電力会社から買い、余るなら売るという体制を取れるようにすべきなのである。余力ができたら蓄電装置を増強していくことを、絶えず行なって、自然エネルギー発電の弱点である不安定さを可能な限り補うようにすべきなのである。

電力も地産地消をめざす「自立発電」によって国中をおおうことが、最も災害に強く合理性のある電力政策である。巨大電力が必要な分野(電車や工場など、巨大ビル群など)に限って、電力会社が必要であって生き残るかもしれない。
石油社会の時代には日本は確かに資源貧弱国かもしれないが、自然エネルギー発電が主力となる時代には、太陽・風・海流・地熱・水に恵まれるわが国は資源富裕国に数えられることになるだろう。


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11/8-2018
東海第二、延長容認 「住宅密集地避けて」死文化(東京新聞)

日本原子力発電(原電)東海第二原発(茨城県東海村)が運転を始めた当時、国の指針では、人口密集地への原発立地を避けるよう求めていた。指針は規制の基礎だったはずなのに死文化し、国は運転開始から40年で周囲が人口密集地となった東海第二の運転延長を認めた。原電元幹部や識者は「不当だ」などと指摘し、原点を忘れて再稼働に突き進む姿勢を疑問視している。

「建設当時、村内は農地と原子力関係の敷地が多い印象だったが、今は大型スーパーもできて、すっかり住宅地になった。芋畑の中の道を歩いて出勤していた頃、ここまでの状況は想像できなかった」  東海第二の建設当初を知る原電の元幹部は、環境の変化を振り返る。

原発の立地は、1964年に制定された「原子炉立地審査指針」に基づいて判断されてきた。指針では、事故が起きた際の住民の被ばく防止を目的に、立地の条件を「人口密集地帯からある距離だけ離れていること」などと定めていた
全域が原発5キロ圏内の東海村では、指針ができる前の60年、日本初の商用原発だった東海原発が着工。当時の村民は約1万4千人だった。「2号機」に当たる東海第二の建設が始まる3年前の70年には、約1万9千人に増えていた。

だが、指針が原発と人口密集地の距離を具体的な数値で定めていなかったことから、東海第二は運転を始め、村の人口も40年で約3万8千人にまで膨れ上がった。原電元幹部は「原発周辺を住宅街が取り囲む現状は、指針の趣旨を逸脱している」と指摘した。

原子力規制委員会は、福島の原発事故後にできた新規制基準について「放射性物質の閉じ込めに重点を置いており、放出を想定した指針の考え方は取り除いた」と説明。指針が死文化したとの認識を示す。現状では、人口密集地と原発との距離に決まりはない。

著書「原発都市」(幻冬舎ルネッサンス新書)で、この問題を取り上げた茨城大の乾康代教授(住環境計画)は「指針はあらゆる規制の基礎で、軽く扱われてはならなかったのに、半世紀にわたって骨抜きにされてきた。指針を新基準から外したのは不当だと厳しく指摘したい」と強調する。
 東海第二から30キロ圏の人口は96万人と、日本の原発立地地域では最も多い。「人口密集地帯がこれほど接近している原発は、世界的に見ても、ここだけではないか」と乾教授。そしてこう説く。「指針を厳格に運用すれば日本に原発を建設できる場所はない。せめて、東海第二の再稼働を認めるべきではない」(東京新聞11/7)

原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(昭和三九(1964)年五月二七日 原子力委員会)という文書は、当然のことながら現在も文部科学省のサイトに掲げられている。その主要部
【1】原子炉の周辺は、原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。
【2】原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。
【3】原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること。
この「指針」に表されている考え方は明瞭である。「原子炉は人間の居住地域からできるだけ離して建造すべきだ」というものだ。なぜか。原子炉は日常的な運転をしていても危険な物質を絶えず周辺に少量ずつでもまき散らしているからである。

更に、万一原子炉が爆発するような深刻な事故を起こした場合は致命的な有害物質をまき散らすだけでなく、長期間にわたって人間が居住できないような地域を作りだしてしまう。それ故、原子炉の建造地は人間の居住地から遠く隔たっていればいるほど望ましい。

こういう「指針」から出発したはずなのに、現在の原子力規制委員会は「地震や津波などで壊れない原子炉であるか」というハード面での検査をするばかりである。「原子炉は日常的な運転をしていても危険な物質を絶えず周辺に少量ずつでもまき散らしている」という考え方を反古にしてしまった。ある「許容基準」以下の放出であれば問題ない、と彼らは考えているのである。なぜならただちに危険性はないから
こういう発想は原子力発電をしたい電力会社に都合のよいものであって、彼らは「ただちに危険性はない」ような「許容基準」を設けて、それで「合法」だとしている。

われわれは後退に後退を重ねている。少なくとも人口密集地の真ん中の原発・東海第二の再稼働をけして許容してはならない。


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11/9-2018
東芝、5年で7000人削減 英原発子会社解散 米LNG事業撤退(東京新聞)

東芝が今後5年間にグループで7千人規模の人員削減を計画していることが8日分かった。定年退職による自然減が中心で、一部は希望退職制度を活用する。経費を圧縮し、50歳以上の従業員が多い人員構成を適正化するのが狙い。こうした点を柱とする中期経営計画を同日公表した。

米国の液化天然ガス(LNG)事業の撤退を決め、連結子会社の譲渡を2019年3月末に完了させることも発表。売却先の具体的な名前は明らかにしていない。英原発子会社は解散する

東芝の海外も含めたグループ従業員は6月末現在、約13万2千人。過去の不正会計や業績不振に伴う事業売却により人員規模が縮小している。一方で、今後は年間で千人程度の退職者が出る見通しとなっている。

東芝は太陽光や風力などの再生可能エネルギーの世界的な拡大で、大きな成長が期待できない火力発電事業の縮小を検討していた。しかし、保守管理業務は一定の受注が見込めるため、大幅な人員削減を見送る。

また東芝は英原発子会社「ニュージェネレーション」を解散する。海外の原発事業からの撤退を表明、売却交渉を進めたが、まとまらなかった。ニュージェネレーションは英国で原発3基を建設する計画だった

4月に就任した車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)は調達費の節減などを徹底し、利益確保を目指す方針。ただ、利益の大半を稼いでいた半導体メモリー事業は六月に売却しており、代わって柱となる事業をいかに育成するかが課題となっている。
東芝が8日発表した18年9月中間連結決算は本業のもうけを示す営業利益が69億円で、前年同期比80・7%減少した。これは売却したメモリーの業績を除いた比較で、メモリーを含めていた前年同期の営業利益は2317億円だった。六月に計画を公表していた約7千億円の自社株買いは今月9日から始める。(東京新聞11/8)

けさ視聴したBBC放送によれば、この原発建造中止で2万人程度の雇用がなくなり、建造中止となる原発3基はイギリス全体の電力の7%分の発電を担う予定であったという。

本欄が日本企業によるイギリスでの原発建造計画を取りあげたのは、2016年1月25日が最初だった。そこでは、日立がイギリスで4~6基の原発建造計画をぶちあげている。また、それとは別に東芝が計画を進めていると報じている。その記事は日本経済新聞だが、その締めくくりは
先行する日立の英国での計画が順調に進めば、日本の原発輸出に弾みがつきそうだ。(日経新聞1/25-2016)
となっていた。
だが、今年5月には日立がメイ首相に対し「支援が不充分なら撤退もありうる」と伝達している(本欄5月5日-2018)。同29日には日立は英国政府との間で「まだ何も決まっていない」と発表した(本欄5月29日)。
そして、日立とは別個に原発建造計画を進めていた東芝が「英原発子会社は解散する」と発表したのである。

この地球上には一基でも原発(核施設)が少ない方がよいと考えているわたしには、歓迎すべきニュースである。それによって雇用を失う人々がおられることには同情するが、自然エネルギーを用いる発電にこそわが国の大企業は力を入れるべきだと思う。

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11/10-2018
東海第2巡り茨城6市村長が会合(共同通信)

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働を巡り、事前同意対象の6市村長が9日、東海村役場で会合を開き、1市村でも了解しなければ再稼働に進まないとの認識で一致した。東海村の山田修村長が会合後、記者団に明らかにした。会合には原電も出席、首長側は同意権を盛り込んだ協定の解釈などについて見解をただした。

6市村と原電は3月、「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」との協定を締結。だが文言の解釈を巡り首長間で認識にずれが生じていた。(共同通信11/9)

原子力規制委員会は7日の定例会合で、今月27日で運転期限40年を迎える日本原子力発電(原電)の東海第2原発(茨城県東海村)について、最長20年の運転延長を認めた(東京新聞11/7)。
だが、「地元合意」がスムーズに進むとは考えられない。これまでの原電と周辺6市村の協議は次のように進んできた。

本欄12月10日-2017:「原電と とことん協議を継続する」で原電・6市村が合意。
3月29日-2018:前行の内容の「新協定を締結した」
6月21日-2018:「新協定を水戸市議会が可決した」
10月24日-2018:「那珂市長が東海第2の再稼働に反対を表明した」

だが、9日の会合の後、会合に出席していた原電の副社長から「協定には拒否権という言葉はない」という発言があり、もめている。
東海第2の再稼働)認可のあと日本原電の和智信隆副社長は、東海第2原発が再稼働する際に周辺の6つの自治体と結んだ「実質的な事前了解を得る」とする協定について、報道陣の質問に答える形で「拒否権という言葉はない」などと発言していました。

9日夜、茨城県東海村で6つの自治体と日本原電との懇談会が一部非公開で開かれ、自治体側から発言への批判が相次ぎ、発言の撤回と謝罪を申し入れたということです。

懇談会のあと東海村の山田修村長は「発言はごう慢で見過ごすことはできない。撤回と謝罪がなければその先の協議はできない」と述べ、強い憤りを示しました。
(NHK11/10)
日本原電は原子力規制委のお墨付きをもらったとたんに強攻策に出ること(例えば東海村に対して札束攻勢をかけて多数派工作をするなど)が考えられる。沖縄で行われているように、安倍内閣は法常識を無視して平気で強行策を突っ走る可能性があるので、今後の展開をけして楽観できない。


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11/11-2018
もんじゅ燃料出入機で警報、福井 10月に4件目、運用見直し(中日新聞)

廃炉作業中の日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で、10月15日に燃料出入機の異常を知らせる警報が鳴っていたことが10日、機構への取材で分かった。

当時、使用済み核燃料の取り出し作業は機器整備などのため中断中で、機構は「燃料を取り扱っておらず、重大なトラブルではない」としているが、出入機の運用改善を原子力規制委員会に報告した。

機構によると、冷却材の液体ナトリウムが、燃料をつかむ出入機の先端部に付着して固まったのが原因とみられ、同様の理由による警報は7月以降、4件目。(中日新聞11/10)

7月の最初のトラブルは7月4日のこと。本欄では7月27日に取りあげて、論じている。同じトラブルの4件目がまた起きた。

燃料を取り扱う前の準備段階で、同じトラブルが何度も繰り返されて先へ進めないのである。工程を先延ばしにしている(本欄 7月27日)。これは「重大なトラブル」と言いたい。


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11/13-2018
<福島第1原発>燃料搬出機器が停止 3号機・模擬燃料移動中(河北新報)

東京電力は12日、福島第1原発3号機の使用済み核燃料取り出しに向けた機器の動作確認で、機器が模擬燃料を移動中に停止するトラブルが11日にあったと発表した。通信用の周辺装置の電源が落ちていた。12日に復旧したが、詳しい原因は調査中。

東電によると、燃料取扱機(FHM)で燃料プール内の模擬燃料をつかみ、同じプール内の専用容器に入れるため移動させていた。遠隔操作室内の監視用モニターが映らなくなり、通信異常の警報が鳴ってFHMが緊急停止した。
電源が落ちたのはFHMと遠隔操作室をつなぐ通信用の光ケーブルの付属装置だったが、原因は分かっていない。復旧して模擬燃料がプール内の元の場所に戻るまで、トラブル発生から約22時間を要した。

東電は模擬燃料を使った動作確認を3日に開始。今回と逆に模擬燃料を専用容器から保管場所に戻す作業を実施した9日に異常はなかった。東電は「FHMは電源が落ちても燃料をつかみ続ける構造で、プール内の環境に影響はない」と説明した。(河北新報11/13)

プールの中にある模擬燃料をつかみ、水中を移動して同じプール内の専用容器に入れるという操作。その途中で付属装置の電源が落ちて、緊急停止した。回復までに22時間かかった。
この移動装置は途中で電源が切れても燃料を放すことはない仕組みであり、しかも、模擬燃料であったので問題はなかった、という東電の説明である。しかし、もし本物の使用済み燃料であったら、22時間の間に何か異常が起こり燃料が漏れ出すような事態がありうるのじゃないか。

次のような指摘もある。
3号機では今年3月以降、遠隔操作で燃料を取り出す燃料取扱機と、輸送容器をつるすクレーンでトラブルが頻発。11月に予定した燃料搬出は年明け以降にずれ込み、2018年度内の開始も難しい状況になっている。 (日本経済新聞11/12)
要するに、危なっかしいのである。


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11/15-2018
<幌延深地層研究センター>核のごみ処分「さらに深い所理想」 地下350m閉じ込め性能試験(河北新報)

国内最北端の稚内空港から南へ40キロ。2300人が暮らし、酪農が盛んな幌延町にJAEAの幌延深地層研究センターがある。西立て坑からエレベーターで降りて約4分。地下350メートル、水平に掘った8の字形の調査坑道(全長757メートル)に着いた。
トンネルの掘削現場に似ている。海に近く、軟らかい堆積岩の地質。壁には1メートル間隔でアーチを支える鋼材が食い込む。塩気のある水があちこちで染み出し、道端の排水溝にたまる。湧水量は1日60トン。ぷくぷく浮かぶ気泡はメタンガスを含む。2013年には湧水が急増。メタンガス濃度が基準値を超え、作業員が避難する事態が起きた。

坑道の一角で、核のごみの「模擬」埋設試験が15年から行われている。垂直に掘った穴に、ガラス固化体を収納する金属容器(高さ173センチ、直径82センチ、重さ6トン)を置き、ブロック状の緩衝材で覆う。穴を埋め、坑道をふさぎ、厚さ3メートルのコンクリートでふたをした。
地下深部は酸素がほぼなく、水の動きは極めて遅いという。容器の内蔵ヒーターを100度まで加熱し、ガラス固化体から出る熱を再現。周囲を水で満たすため、圧力をかけて注水する装置がガタガタ音を立てる。
試験は少なくとも19年度まで続け、放射性物質を閉じ込める性能を確かめる。センターの佐藤稔紀深地層研究部長は「施工は想定通りクリアした。千年万年後の現象を予測するシミュレーションに使う熱や水、応力、化学のデータを取っている最中」と説明する。

センターは01年に調査を開始。本年度末までの総事業費は566億円に上る。現在は約100人が働く。研究期間は20年程度で終期が迫る。佐藤氏は「もう少し深い所で亀裂や断層がない領域が出てきそうだ。研究の場として、より理想的な条件に近づく」と指摘。「350メートルでの研究を継続するか、(当初計画の)500メートルまで掘るか、埋め戻すか。19年度末までに方針を示したい」と話した。(以下略)(河北新報11/15)

大金を掛けて、なんとムダな研究を続けているかを確認するために、取りあげた。

海の近くで深い縦穴を掘ると、海水が染み出してくるのは当然なのだ。地震地帯の島国ではどこで実験しても似たようなものであろう。十数億年の安定岩盤に縦穴を掘っているヨーロッパでさえ、穴を掘って工作することによって地底にひずみが生じ、地下水の染み出しが避けられないという(もっとも、日本のようにザブザブ出てくるのとは程度が違うそうだが)。

日本で処理が必要な「高レベル放射性廃棄物」は「使用済み核燃料は約1万8000トン」もあり、日本では再処理をする建前になっていて「ガラス固化体」で2万5000本相当になる。それ以外の「高レベル廃棄物」がほぼ同量ある。原発を再稼働すれば、むろん増加する。
日本では再処理できないため、フランスに処理を依頼し、「ガラス固化体」も残りの「すべての放射性廃棄物」も全部送り返してもらっている。例えば
関西電力高浜原発4号機用のプルトニウム・ウラン混合化合物(MOX)燃料を積んだ輸送船が(2017年9月)21日午前7時ごろ、同原発に到着した。東京電力福島第1原発事故後、国内にMOX燃料が到着したのは、2013年6月の高浜3号機用以来、2回目。(中略)委託を受けたフランスのアレバNC社が16年8月から今年3月にかけて16体を製造。同7月に輸送船がフランスのシェルブール港を出港した。(福井新聞9/21-2017)
船便の危険さは言うまでもない。しかも、高額の出費だ。

さらに、それら「放射性廃棄物」を廃棄する場所がない。原子力発電は危険なだけでなくいかに高く付き、しかもムダな骨折りばかりしていることか。現代のわれわれが消費した電力の後始末で、先の先の未来まで費用がかかるが、その費用は現在の電気代には含まれていないため、未来の人々が請求される。


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11/16-2018
伊方3号機 停止認めず 「破局的噴火 根拠不十分」(東京新聞)

四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、愛媛県の住民が申し立てた仮処分の即時抗告審で、高松高裁は15日、申し立てを退けた松山地裁決定を支持し、運転を認める決定をした。四国電は10月27日に3号機を再稼働させており、運転を継続する。

神山隆一裁判長は火山リスクについて、伊方3号機から約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラで運用期間中に「破局的噴火」が起きる根拠は不十分で「立地が不適とは考えられない」とした原子力規制委員会の判断を追認した。また規制委が策定した新規制基準のうち、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)に関する定めに合理性があると判断。3号機は基準に適合し「最新の科学的、専門技術的知見に照らしても相当」とした。

一方で避難計画について「住民の輸送能力や放射線防護施設の規模が不十分」と指摘し、改善を求めた。

伊方3号機を巡っては広島高裁が昨年12月の仮処分決定で、阿蘇カルデラで破局的噴火が起きた際の火砕流到達のリスクを指摘し、運転禁止を命令。しかし今年9月の異議審決定で同高裁が覆し再稼働を認めた。昨年7月の松山地裁決定は、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」の近くに立地する伊方原発の基準地震動について、震源モデルを適切に考慮するなどし不合理な点はないと指摘。火山についても約9万年前の阿蘇カルデラ噴火の火砕流が、同原発がある佐田岬半島で確認されたとの知見はなく、運用期間中に危険性がないことは相当の資料で立証されたとし、申し立てを却下した。(図も 東京新聞11/15)

火山の「破局的噴火」に関する学問的定説はいまだ存在しない。したがって、リスクが低いとも高いとも断言できない。そのような場合には安全側に立って「リスクが高いかも知れない」とするのが正論だが、司法は原発維持の現政権寄りの判断をした、ということであろう。
それであっても万一の原発事故の場合、住民が逃げ場のない佐多岬半島付け根の伊方原発においては「避難計画」が不充分である、と言わざるを得なかったのである。

わたしたちはフクイチ事故の悲惨な避難状況をよく知っている。原発事故ではたとえ避難できたとしても、故郷に二度と戻ることができなくなるようなことが起こるのである。原発においては避難計画があることが稼働を許容する十分な条件とはならないことを忘れてはならない。


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11/17-2018
ヨウ素剤配布、子ども重点に 規制委が検討、被ばく防止(東京新聞)

原発事故の際の甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の事前配布の仕組みについて、原子力規制委員会が、被ばくの影響が大きい子どもへの配布に重点を置く方向で見直しを検討していることが15日分かった。現在は、緊急時の配布が難しい原発半径5キロ圏の全住民に自治体が事前配布することを原則としているが、行き渡らせるのが作業上困難で、子どもにも配布できていないケースがある。専門家会合を設置し、早ければ年内にも具体的議論を始める。

甲状腺被ばくは、事故で放出された放射性ヨウ素が体内に取り込まれ、甲状腺に集中して起こる。そのため人体に害がないヨウ素剤で事前に甲状腺を満たしておく。(東京新聞11/15)

わが国では、なぜか、ヨウ素剤配布に消極的であった。ヨウ素剤の副作用がまれに生じることがあるが(発熱、発疹など)、そのリスクと甲状腺ガンのリスクとを、冷静に比較した説明は聞いたことがない。医師の判断の下で呑まないといけない、というような高いハードルを設けたりしている。原発事故の際の緊急時に、服用するタイミングがとても重要なヨウ素剤を住民が医師の判断を待って呑むというようなことは不可能である。
そもそも、海苔などに豊富に含まれるヨウ素の錠剤がそれほどの劇薬であるはずがない(人体が一度に吸収できる程度の上限量)。また「有効期限」がどれほど厳守すべきものなのか、不審である。

「みんな楽しくHappy♡がいい♪」が「福島県三春町ヨウ素剤決断に至る4日間 (NHK)」を置いている。福島県は三春町がタイミングを計って服用させ終わったのに、ヨウ素剤の県への返却を要求している。三春町では7000人ほどの人が服用して、副作用が出た人は2人だった、という。(ついでながら、福島県立医大では医大関係者だけにはヨウ素剤を配布して、各自の自主判断としたが、多くの職員はすぐ呑んだという(朝日新聞「プロメテウスの罠」)。)

三春町はその後も積極的にフクイチ事故による子供たちの放射線被害を調べており、「ひらた中央病院」が「医療ガバナンス学会」によせた次のような報告(5/9-2016)がある(ここ)。
2013年9月から3年間、(三春町の)小中学校に通う児童全員を対象に、甲状腺超音波検査と尿中ヨウ素濃度検査を行ってきました。これまで年1回の検査を3年間継続して行い、約96%の児童が検査を受診しています。

結果、2013年9月から2015年11月までに延べ3,447名の甲状腺超音波検査が行われました。3年間で延べ30名の方がB判定、1名がC判定と判断されましたが、甲状腺がんと診断された方は0名でした。尿中ヨウ素濃度検査は、3年間を通して、延べ2,663名が受診。重度のヨウ素欠乏といわれる20μg/L以下の方はおらず、58%が200µg/L以上でした。日常の食生活からヨウ素摂取が十分であり、「放射性ヨウ素からの被ばくに不利である」とされるヨウ素欠乏を示す生徒が非常に少なかったことを示しています。
(医療法人誠励会 ひたら中央病院)
なお、上記引用は全文ではありません。また、上記URLには「福島民友新聞」の丁寧な検査の様子を示している長文記事もありお勧めです。子供たちは検査の日は、待時間に勉強や読書をして待っているなど、ほほえましい内容の記事です。


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11/21-2018
福島の野生ニホンザルに放射性物質の影響か(毎日新聞)


福島市内に生息するニホンザル=羽山教授のチームの今野文治さん提供

二つの研究チームが米科学誌に報告
福島県内に生息する野生のニホンザルについて、福島第1原発事故後、成獣の骨髄で血液のもとになる成分が減ったり、胎児の成長が遅れたりしたとする研究成果が米科学誌に相次いで報告された。事故で放出された放射性セシウムを木の皮などの食べ物から取り込んだことなどによる被ばくの影響の可能性があるという。

成獣を調査したのは、福本学・東北大名誉教授(放射線病理学)らの研究チーム。福島第1原発から40キロ圏内にある南相馬市と浪江町で事故後に捕殺されたニホンザルを調べ、成獣18頭で骨髄中の成分を調べ他の地域と比べた。その結果、血小板になる細胞など血液のもとになる複数の成分が減っていた。さらに、一部の成分は、筋肉中の放射性セシウムの量から推定される1日あたりの内部被ばく線量が高い個体ほど、減り方が大きくなっていたという。福本さんは「健康への影響が表れるのかなど、長期的な調査が必要だ」と話す。

また、羽山伸一・日本獣医生命科学大教授(野生動物学)らの研究チームは、福島市が個体数調整のため2008~16年に捕殺したニホンザルのうち、妊娠していたメスの胎児を調べた。原発事故前後の計62頭のデータを比較したところ、事故後の胎児は事故前に比べ、頭の大きさが小さく体全体の成長にも遅れがみられた。母ザルの栄養状態には変化がなく、チームは事故による母ザルの放射線被ばくが影響した可能性があると結論づけた。

人とサル、異なる被ばく量
羽山教授は「サルは森で放射性物質に汚染された食べ物を採取していた上、線量が高い地面に近いところで生活していたため、人に比べて被ばく量が桁違いに多いはずだ」としている。
環境省が実施する野生動植物への放射線影響の調査対象にニホンザルは含まれておらず、日本霊長類学会など5学会は、ニホンザルを対象に含めることなどを求める要望書を同省に提出した。同学会の中道正之会長は「ニホンザルは寿命が20~30年と長く、定住性もある。世界的に見ても、ニホンザルへの長期的な影響を調べることは極めて重要だ」と話した。(写真も 毎日新聞11/20)

「先進国の中でサルが棲むのは日本だけ」である(毎日新聞 ここ)。人間より「桁違いに多く」被曝している福島県の山に棲むニホンザルの被曝を調査対象にしないという環境省は、まったくどうかしている。

ニホンザルたちはヒトに先駆けて被曝実験をしてくれているのだ。ニホンザルは「旧世界ザル」に属するが、ヒトと共に「狭鼻猿類」に属している。福島県の山中にイノシシやシカが棲んでいるというのと、その被曝における意味合いがまるで異なっているのだ。


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11/22-2018
<女川原発>住民投票条例請求へ 必要署名4万人達成

東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の是非を問う住民投票条例制定を目指す市民団体「県民投票を実現する会」は21日、10月から集めた署名数が5万7294人に達し、宮城県条例制定の請求に必要な県内有権者数の50分の1(約4万人)を上回ったと発表した。

署名集めは一部地域を除いて12月2日まで続け、同12日に各市区町村選管に提出する予定。署名数は各選管での審査、縦覧を経て確定する。
有効署名が必要数を上回れば、実現する会は来年2月中旬にも村井嘉浩知事に県条例制定を請求する。その後、村井知事は条例案に意見書を付けて県議会に提出し、県議会が可否を判断する。

町長選がある宮城県丸森町では、署名集めが今月14日から中断している。県によると、無投票の場合の再開期間は告示翌日の12月12~31日、選挙になった場合は投開票翌日の12月17日~来年1月5日。
実現する会の多々良哲代表(60)=仙台市=は21日、県庁で記者会見し「多くの有権者の共感を得ている。10万人の署名を集め、県民投票を実現させる」と述べた。

女川原発2号機は原子力規制委員会の審査が終盤を迎え、東北電は2020年度以降に再稼働させる方針を掲げている。(河北新報11/22)

河北新報が行った宮城県の首長(35人)+県議(58人)に対するアンケートに対し、女川原発2号機の再稼働について、賛成・どちらかといえば賛成50人、反対・どちらかといえば反対32人、無表明11名であった(調査は10月中旬~11月中旬に実施、全員回答)。つまり、首長さん・県議さんは再稼働賛成派が多い(54%)。

原発事故がもしあれば個々の県民全員に直接関わることであるので、原発再稼働の是非について県民投票を行うことは適当であるとわたしは考える。宮城県で県民投票が実現することを期待する。


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11/23-2018
原子力機構 放射性廃棄物保管のドラム缶腐食 点検には50年(NHK)


茨城県にある日本原子力研究開発機構の施設で、放射性廃棄物を保管するドラム缶が腐食し、中身が漏れ出していたことが分かりました。施設には5万本余りのドラム缶があり、すべての点検には50年以上かかるということです。

問題が見つかったのは、茨城県東海村にある昭和39年度に設置され、その後、増設された低レベル放射性廃棄物の保管施設です。
原子力機構などによりますと、昭和62年から平成3年にかけて行った点検で、ドラム缶が腐食し、中身が漏れ出しているのが見つかっていたことが分かりました。水分を含んだものを分別していなかったことが原因だということです。

原子力機構は改めてすべてのドラム缶を点検するとして、すでに原子力規制委員会に申請していますが、完了までには50年以上かかるということです。

規制委員会では、点検に使われる施設の安全性や、計画の妥当性などを確認することにしています。(図も NHK11/22)

5万本のドラム缶を点検するのに50年以上かかる、という。どうも、あきれたスローペースだ。処理する時間というのではなく、点検する時間である。

ドラム缶保管でもっとも規模が大きいのは、青森県六カ所村の日本原燃の施設である。平成4年(1992)からドラム缶埋設を開始しており、この施設の規模は100万本だが、300万本に増やす予定であるという。
資源エネルギー庁のサイトから借用する(写真も)(ここ)。
原子力発電所の運転に伴い発生した放射能レベルの比較的低い廃棄物については、平成4年より、青森県六ヶ所村にある日本原燃㈱六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで埋設を開始しています。なお、現在の施設を含めて200リットルドラム缶で約100万本相当を埋設する計画であり、最終的には200リットルドラム缶で約300万本相当の規模にすることも考えられています。
これらの施設は、他に持って行きようがないので事実上最終処分場となる。原子力発電の結果生じる放射性廃棄物は、量も多く実にやっかいなものなのだ。


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11/25-2018
原電副社長、6市村長に謝罪 東海第二「拒否権ない」発言(東京新聞)

日本原子力発電の和智信隆副社長は24日、東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働に対する事前同意権を巡る自身の発言について、同意対象の6市村長に「地域の皆さまに大変不愉快な思いをさせてしまい、深くおわび申し上げる」と謝罪した。和智副社長は、首長側が同県ひたちなか市で開いた会合に出席。「不用意な発言だった。撤回させていただきたい」と述べた。

これに対し、東海村の山田修村長は「信頼関係は崩れており、もう一度再構築する必要がある。肝に銘じて今後の対応を願いたい」と強調。首長側は、再稼働の意思もただしたが、原電側は明言を避けた

首長側は、東海第二が最長20年の運転延長の認可を受けた今月7日、和智副社長が「(事前同意を定めた)協定に拒否権という言葉はない」と発言したことに反発。9日に原電幹部を呼んだ会合を開き、「長い年月をかけてできた協定を一言で片付けたのは看過できない」として、発言の撤回と謝罪を求めていた。(東京新聞11/24)

TBSは、次にように伝えている。
ところが、日本原子力発電の和智信隆副社長は、認可が認められた当日・・・

拒否権なんて言葉は、新協定の中にはどこにもないのに」(日本原電 和智信隆副社長・今月7日)

このように発言したため、地元自治体の市長らが反発し、謝罪と発言の撤回を求めていました。和智副社長は、24日開かれた地元自治体の市長らが集まる会合を訪れ、発言を撤回しました。

私は確かにそういう発言をしておりますので、発言についてきちんと撤回をさせていただきたいというふうに思っています」(日本原電 和智信隆副社長)

協定を守る、守らないという前に、この会社が原発というものを動かすに足りうる会社であるのかどうかということを確認するという作業が新たに付け加わったということですよ」(高橋靖水戸市長)

地元の反発は依然として強く、東海第二原発が実際にいつ再稼働できるかは不透明です。(TBS11/24 16:03
地元自治体が何に対して怒っているのかがよく伝わる報道であった。長年日本原電と協議をして来て、昨年12月10日に「原電と、とことん協議を継続する」ということで合意が成立した。ところが、11ヶ月後の今月7日に、原電副社長が「協定には拒否権という言葉はない」と発言して、合意を一気に吹き飛ばしてしまった。自治体側に残ったのは、日本原電という会社は信用ならんという不信の念だ。

6市村の自治体の長たちが怒るのは当然なのである。彼らは、この地に未来永劫生きていかなければならない住民を背景にもっているのだ。東海第二から30キロ圏に限っても人口は96万人である。首都圏全体の住民がこの交渉を真剣に見守っている。


◇+◇

拙論「清水晴風『世渡風俗図会』の研究」をサイトにアップしてから、ほぼ1年を経過した。そもそも『世渡風俗図会』は清水晴風の遺稿として残された大量の資料であり(約580図の絵と文)、拙論には誤りや不充分な点が多数あることが考えられるため、全体を見直し不充分な点に手を入れることに努めてきた。例えば国会図書館がデジタル公開している『新聞集成明治編年史』を読んで、日付のあるデータを見付けてそれを取り込むことなどの作業をしてきた。
この度一応の区切りとし、「改訂版」をアップした。

特に「長文コメント」として、第四巻-25「三橋 みはし」を新たに書き直した。第七巻-24 「秋葉の原」は大幅に書き加えた。

「改訂版」をご案内いたします、 「清水晴風『世渡風俗図会』の研究」


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11/28-2018
原子力削減の期限先送り=35年までに50%-仏大統領(時事通信)

フランスのマクロン大統領は27日、エネルギー政策に関する演説を行い、仏国内の発電に占める原子力の割合を50%に削減する政府目標の期限を2025年から35年に先送りすると表明した。フランス電力によれば、17年に原子力は71.6%だった。

マクロン氏は、35年までに現行58基の原子炉のうち14基を閉鎖すると表明。20年夏に2基、その後30年までに4~6基閉鎖する計画だ。ただ、「エネルギーを輸入したり、他国経済に依存したりするのなら、早急な原発閉鎖は望まない」と主張。「仏および近隣諸国のエネルギー混合状況に応じてペースは変わる」と述べた。

原子力の削減方針は、東京電力福島第1原発事故を受けた世界的な「脱原発」の世論の高まりを背景に、15年、オランド前政権下で決定した。ただ、マクロン氏は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の順守へ向け、全石炭火力発電所の閉鎖を優先。政府は17年11月に、25年の目標を先送りすると発表していた。(時事通信11/27)

原発削減の「先送り」は17年11月にすでに予告していたが、このたびは10年先送りなど具体的に踏み込んだ。「パリ協定」順守を重要視して全石炭火力発電を削減することの方を優先するという方針で、フランスらしく理屈は通っている。

今日の朝のNHKはこのニュースを、「仏大統領 2035年までに原発4分の1閉鎖 依存50%に引き下げへ」という見出しで流しているので、マクロン大統領は原子力削減に積極的なんだ、と誤解する視聴者が多かったのではないか。後の方で「オランド前政権は25年までに原発半減」という政策を打ち出していた、と言うのだが、先送りしたニュースとは受け止めにくい。

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11/29-2018
日本協力の次世代炉、仏が凍結へ 原子力政策に打撃 (日本経済新聞)

日本がフランスと進めている次世代原子炉開発について、仏政府が2020年以降、計画を凍結する方針を日本側に伝えたことがわかった。仏政府は19年で研究を中断、20年以降は予算を付けない意向という。日本はすでに約200億円を投じている。開発計画の大幅な見直しは必至で、日本の原子力政策にとっても大きな打撃となる。

この次世代炉は高速炉実証炉「ASTRID(アストリッド)」で、仏国内に建設する計画だった。…(以下会員制)(日本経済新聞11/28)

フランスで研究が行われているアストリッドについては、青写真の段階で今後どう進展するか分からない、と言われてきた。それが19年で中断・凍結ということになった。
フランスは建設コストの高騰で、緊急性のないアストリッド計画から降りる決断をしたのであろう。その点では、昨日、本欄が取りあげた、マクロン大統領の「原子力削減の10年先送り」と同じ発想である。

「もんじゅ」廃炉のあと、何とか先への望みをつないでおきたかった日本政府ははしごを外され、打撃は大きい。日本の原子力ムラが外国頼みで、自前の技術を積み上げていく自立路線を採ることができないところに根本的問題がある。もんじゅが廃炉に至ったのも、本質的理由はそこにある。



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11/30-2018
霧ケ峰のメガソーラー計画の中止求める 署名5万人分を提出(中日新聞)

諏訪市四賀の霧ケ峰高原近くで進む大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画で、茅野市の住民ら20人余りが29日、県庁を訪れ、計画中止を求める要望書を提出した。反対署名5万122人分を持参し、計画への懸念を訴えた。

計画に反対する住民らでつくる「米沢地区Looopソーラー対策協議会」によると、東京の太陽光発電システム開発会社Looopが諏訪湖の七分の一の規模となる196・5ヘクタールにソーラーパネル31万枚を並べ、20年間売電する計画。水源や貴重な魚類への悪影響、大規模土石流災害の発生などを懸念する住民らに、Looopは「影響ない」と説明しているという。

計画地から下流にある茅野市米沢地区の住民や諏訪市内の酒造会社、諏訪東部漁業協同組合の関係者らが県庁を訪れた。署名は46都道府県と海外4カ国から寄せられたといい、協議会の柴田豊会長は「観光立県を目指す県は、この声をどう受け止めるのか。県の将来にプラスとなる事業なのか検証してほしい」と求めた。

対応した中島恵理副知事は「事業者には地元への説明を丁寧にするよう厳しく指導している。署名を重く受け止める」と応えた。

県は県環境影響評価(アセスメント)条例に基づき、環境に与える影響や保全対策の報告をLooopに求めている。条例では中止命令を出せないが、水源保護などの条件が満たされなければ森林法で開発許可は出ないという。

阿部守一知事はこの日の会見で「メガソーラーは全国的に懸念が出ている。未来に向け、どんな対応ができるか考える」と述べた。(中日新聞11/30)

一般に「ソーラー発電はエコだ」ともてはやされるが、住宅の屋根やビル屋上に設置するようなソーラー発電装置と、「メガソーラー発電」とは話が違う。何十、何百ヘクタールというような広大なものになると、設置するための環境破壊が問題になってくる。

諏訪市四賀に計画されているメガソーラーは、山林破壊、地下水・河川への影響、土砂移動や埋設の悪影響など幾つもの問題点が指摘されている。霧ヶ峰は夏も冬も人気のある観光地であるが、それへの悪影響も計り知れない。
住民側は大規模な伐採や工事で排出される土砂が災害や農業用水への影響につながるおそれがあると指摘していて、米沢地区の対策協議会の柴田豊会長は「計画予定地に住んでいる下流住民の今の安心安全の暮らしが本当に継続できるのか。(SBC信越放送11/29)
MSN DIAMOND on line にある好レポート、有井太郎「メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か」(11/9 ここ)を、お勧めします。
次の写真は、このレポートに置いてあるものです。


長野県・霧ヶ峰の近くで立ち上がったメガソーラー事業の計画予定地。地元住民
による反対活動が過熱している。  Photo:米沢地区Looopソーラー対策協議会


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